・「透水量<蒸発量」となった時に、地下の塩類が表土に集積して起こる高濃度障害。(土中水分の蒸発量が、地下への浸透量を上まった時に発生する)
比較的降水量の多い日本では、施設栽培など十分な潅水量が得られない場所で起こる”特殊な”環境での障害のように考えられている事も多いが、いくら降水量が多くても透水性が劣る場合は、雨水が地表を流れ去って透水量が不足するので、露地でも集積が起こり得る。(降水量ではなく、透水量が重要!)
・干ばつ時にひび割れが発生するような場所は、「有機物が少ないせいだ」と誤解されている事も多いが、実際には正反対で、有機物含量が高くなるにつれて亀裂も大きくなる。
亀裂の大小は概ね土壌の保水力と一致し、保水力が高い土壌ほど、吸湿時に膨潤するため、乾燥すると亀裂を生じるほど収縮すると云う単純な原理によるもの。
大きな亀裂が発生する条件は、CECが高く良質な粘土と云われる1:2型粘土鉱物(モンモリロナイトなど)と有機物を多く含んだ土に、Na+やK+を多量に含んだ場合で、いずれも保水力が増すために起きる現象。
保水力は雨水の地下へ浸透する力と逆の働きだし、土壌の膨潤する事で間隙が減るので透水性は益々低下する。この結果、十分な降雨や潅水が行われても土の表面を流れ去ってしまうので、表土に塩類が集積してしまう原因となる。
耕盤の形成も透水量を低下させ、雨水などが土表を流れ去る原因になる。
※保水力:土壌粒子と水分子の親和性によるものは、土壌粒子表面から数層〜最大で7層程度の水分子が取り囲んだもので、土中の孔げきに保持される水分は、木の枝などに付いた水滴と同じ状態のもので、土や枝の表面に親和した微量の水分に表面張力でぶら下がった水滴なので、この2つは根本的に異なる。
※表面張力:表面積を小さくしようとする働きで、結果として球状になる。これを妨げる働きのあるものが界面活性剤で、集まって球状になるのを防ぐ。
【土中の主要塩類】
NH3,HNO3,K2O,H2SO4,Cl2,CaO,MgO・・・これらによって、
CaSO4,CaCl2,Ca(NO3)2,MgCl2,KNO3・・・を生じる
ハウス内で障害を起こす主要な塩類は、硝酸カルシウム(ノルチッソ)と硝酸カリ(硝酸根は有機態やアンモニア態チッ素が酸化されて生じる。硝酸カルシウムは極めて水溶性が高い)
通常、1作だけで障害を起こすほどに集積する事はないので、定期的に除塩する事が有効。
【集積や被害を大きくする要因】
・灌漑水中の塩類が多い。
・土壌水分が少ない。
・施設栽培では、砂地だと集積が早まる。
・施肥が局部的に行われる(偏肥)と被害が大きくなる。
・土壌が酸性になると被害が大きい。
・作物の生育が悪くなるので、追肥されることがあり、さらに悪化する。
電気伝導度(E.C.)で代用する。
土壌 2g を採取して蒸留水 100ml を加え、1時間振盪する。
ハウス内では、施肥位置や根張り位置を考慮して採取する。
上層は下層よりも高いので、収穫中は根の活動層から採取し、収穫後は全層混和して採取する。
E.C. に反映されるのは主として窒素肥料なので、施肥直後にはアンモニアと硝酸、施肥の30日後には硝酸イオンの濃度を測定する事で実態把握に役立つ。
| E.C. | 0.2 | 0.5 | 0.7 | 1.0 | 2.0 | 3.0 | 5.0 | 10.0 |
| m・mol | 2 | 5 | 7 | 10 | 20 | 30 | 50 | 100 |
| 浸透圧 | 0.09 | 0.23 | 0.33 | 0.49 | 0.98 | 1.46 | 2.45 | 4.91 |
| 不足 | ← 適 → | ← 過剰 → | ||||||
EC:1.5〜2.0 以上、土中の硝酸態チッ素:40〜50mg/100g土 以上の時
・潅水を増やす。
・被覆を外して雨に当てる。
・畦肩部分の土を畦間に削り落としてから、畦間に水を流して流亡させる。
EC:1.0 、土中の硝酸態チッ素:30mg/100g土 以上の時
畦肩部分の土を畦間に削り落とすだけでも進行を止めることが出来る。
硝酸化成抑制剤の散布(如雨露で全面散布する)
施肥量の制限。
・植付前のEC値が0.3以下なら計画全量を与えても良い。
・ 0.5 なら1/2にする。
・ 1.0 なら1/3、または中止して追肥のみにする。
・緩効性窒素肥料を使用する時は、温度が高いと肥効発現が早くなるので注意する。
・有機質肥料は一般に分解が遅いが、一時的であっても高温になると土壌の還元化や有機酸の生成が急激に進んで根を傷めることがある。
| 砂質土 | 腐植・粘土質土 | |
| 生育の停滞 | 0.5 | 0.7〜0.8 |
| 根の障害・要素欠乏 | 1.0 | 1.5 |
| 枯死 | 1.0以上 | 1.5以上 |
| キュウリ | トマト | ピーマン | ||||
| 生育障害 | 枯死限界 | 生育障害 | 枯死限界 | 生育障害 | 枯死限界 | |
| 砂土 | 0.3 | 0.7 | 0.4 | 0.9 | 0.5 | 1.0 |
| 沖積埴壌土 | 0.6 | 1.5 | 0.7 | 1.6 | 0.7 | 1.7 |
| 腐植質埴壌土 | 0.7 | 1.6 | 0.7 | 1.7 | 1.0 | 2.4 |
E.C.<1.0、NO3-N=15〜25mg/100g乾土 のとき生育良好。
E.C.>2.0、NO3-N>45mg/100g乾土 のとき、葉が濃緑色になり、心葉が巻き、果実の肩部分に緑色が残り、尻腐れが多くなる。
E.C.>1.0 で障害が出る。
活着後の11月〜1月頃に被覆(マルチ、トンネル)する事が多く、多肥したところでは被覆後4〜5日頃に古い葉の周縁が褐色になり、中央部へ向かって枯れ込む。
被害が進むと新しい葉にも症状が出て、蕚片や蕾が褐色に枯れる。
さらに進行すると、株全体が枯死する。
ガラス室栽培での生理障害が多い。
Mg欠・B欠・伝染病・原因不明・・・などの診断をされる事が多い。
E.C.>4.0 の所が多く、表土の更新によって著しく品質・収量が向上する例が多い。
ハウス内連作4年目以降に正常化が少なくなり収量も低下する事が多い。
奇形果が増え、ツルワレ病などが多発する。
施肥量と根の障害(前田,1968)
| 肥料の種類 | 施肥量 | 20日後のpH | 施肥の5日後と20日後の所見 |
| 硫安 (21%) |
28.4kg/10a | 5.3 | -- |
| 37.5 | 5.5 | 直接触れた部分だけ軽い障害 | |
| 46.9 | 4.5 | 地表下0〜10cmの新根先端が枯死。太根の皮が剥ける | |
| 56.0 | 4.3 | さらに深刻化 | |
| 75.0 | 4.0 | 地表下20cm以下の新根先端が枯死 | |
| 安全施用量は35kg以下 | |||
| 過石 (16.5%) |
28.0kg/10a | 5.5 | -- |
| 37.5 | 5.0 | -- | |
| 46.9 | 5.0 | 敷ワラ下の新根が褐変 | |
| 56.0 | 5.0 | 敷ワラ下の新根の皮が剥ける | |
| 75.0 | 4.8 | 地表下10cmまでの新根先端が褐変し皮が剥ける | |
| 安全施用量は50kg以下 | |||
| 硫酸カリ | 11.3kg/10a | 5.5 | 表面の新根に軽い障害 |
| 15.0 | 5.0 | 肥料に触れた箇所の根が枯死 | |
| 18.8 | 5.5 | 新根末端の褐変が多くなる | |
| 26.3 | 5.5 | 地表下20cmまでの新根先端の皮が剥ける | |
| 安全施用量は16kg以下 | |||
| ナタネ油粕 | 112.5kg/10a | 4.8 | -- |
| 150.0 | 6.3 | -- | |
| 187.5 | 4.5 | 直接触れた箇所の新根が僅かに皮が抜ける | |
| 225.0 | 5.0 | 根の先端が褐変 | |
| 262.5 | 5.0 | 一部の新根の皮が抜ける | |
| 安全施用量は200kg以下 | |||