石灰類(アルカリ資材)

alkali・lime・

1999/08/16-2011/10/20



概要


 カルシウムやマグネシウムを含む資材は、必須元素の補給に他に、土壌酸度の調整に用いられる。
 主として酸性土壌の改良に用いられる資材は、安価な石灰類が多用されてきた。資材の評価にはアルカリ度が用いられる。

 石灰類は、酸性の環境で溶けやすく、アルカリ性では溶けにくいため、強酸性土壌の改良では中途半端な投入量だとすぐに溶脱して酸性土壌に戻り易いが、いったんアルカリ性になると溶脱しにくいため、土壌 pH は高い状態が続く。
 どんな資材もたくさん与えた方が多く吸収するような誤解を受けやすいが、石灰類を過剰投入して溶脱しにくい(=溶けにくい)状態になると、カルシウム肥料としての欠乏を起こし易く、アルカリ性化によって他の成分の欠乏・過剰障害も出易くなるなど、被害が著しい。

 土中に過剰残留している石灰類は殆どが炭酸石灰で、これよりも溶解度の高い生石灰や消石灰の追肥を行うと肥効が期待できる。
 しかし、投入された消石灰などは二酸化炭素を吸収して短期間で炭酸石灰に変化するので、土壌状態はさらに石灰が溶けにくい土壌へと悪化する。

 炭酸石灰の溶解度は、消石灰や石膏(硫酸カルシウム)の 1/2000〜3000 程度で極めて溶けにくいが、土の中など炭酸イオンが過剰に存在する場所では重炭酸カルシウムになって、消石灰や石膏と同程度の溶解度になる。(教訓→耕耘して、見た目だけふかふかになった土は炭酸ガスが逃げるので、石灰は溶けにくくなる)

 石灰を入れると土が固くなるという言い伝えは、主に酸性環境下で抑制されていた分解微生物が活性化して、土中の有機物が消耗するためと考えられる。
 ただし、有機物の消耗は有機物に閉じ込められていた成分が放出される事なので、耕作不適地を肥沃な土地に変える魔法の薬として扱われた。
 この他、生石灰や消石灰として投入した場合は、炭酸石灰に変わる際に「水硬性セメント」と呼ばれる構造を作り土壌硬度が増すが、耕耘により容易に破壊される。



硬度(hardness of water:水の硬度)

 単に "hardness" といった場合は、鉱物などの硬さを意味するので注意。

 水に溶けているCa・Mgなどの塩がせっけんの泡立ちを妨げたり(→洗浄力の低下)、ボイラー内でスケール(缶石)として析出する(→熱効率低下・爆発)原因となるため、水質の重要な指標となる。
 近年では、栄養分としても注目されている(ミネラル・ウォーター)が、この場合は Ca++:SO4 やアルカリ度などの指標も重視される。

 表示には、米式と独式があり、日本では主に独式が用いられている。
 ・米式・・・CaCO3として、1ppm=1(硬度・無名数)
 ・独式・・・CaOとして、1mg/100ml水=1(硬度・無名数)
 ※ Ca++ と Mg++ の合量を Ca++ に換算して表わす

 煮沸すると不可逆的に低下する「一時硬度」と、変化しない永久硬度がある。
 一時硬度は主に「炭酸水素カルシウム」によるもので、煮沸後の低下分がボイラー内で発生するスケールとなる。



【対策1:追肥】
 基肥として大量に与えたら効かず、少量では不足するというのであれば、分肥するのが確実な施肥法となりうる。
 農文協発行の雑誌「現代農業」では20年ほど前から石灰類の追肥によって厄介な病気を防いだり、日持ちが良くなる事例を紹介している。
 当初は畦間への石灰乳流し込みであったが、最近の号では炭酸石灰(炭酸苦土灰)を直接作物の葉に振り掛けても害が無いことを紹介しており、顕著な治療効果も認められる。

【対策2:条状施用】
 1条植えの野菜類で追肥使用とすると必ず条散きになる。
 果樹類は全面散布が一般的だが、汁液中濃度が上昇するのは1箇月程度なのに対して、運動会のように白線を引くようにして条散きすると、汁液中濃度が3-4箇月程度延長される事がわかった。
 条散きされた石灰は、除草や降雨で徐々に飛び散って拡がる。

 校庭で使うラインカー(白線引き器)はタンク容量が少ないので意外に面倒であった。今の所、バケツに入れて玉杓子で散くのが一番楽。
 粒状の生石灰・苦土生石灰を使用すると降雨後に固結して土表面での残留性が増す。(〜消石灰でも同様の効果があるが、成分当りの重量が増すので仕事量としては損)
 全面散布と同じ量を投入するので、間隔は投入量に応じて変わり、100kg/10aのとき3m程度。継続試験中)



各論



ジャガイモ



ホウレンソウ



果樹類

  • リンゴのビターピットなど、カルシウムの不足が原因といわれる障害の対策として石灰を投入すると、ホウ素の吸収を阻害するので突然、実止まりが悪くなることがある。春先など開花前の投入で著しい。
  • 全園散布とせず、列状に筋散きしたり、穴施用など固めて与えた方が 急激な土壌 pH 上昇による障害が起き難く、流亡による損耗も少ない。


  • 主な資材のアルカリ度

    主な成分アルカリ度必要資材量の比(%)
    炭酸苦土石灰(苦土炭カル)CaCO3、MgCO355%(100)
    生石灰CaO8565
    苦土生石灰CaO、MgO10055
    消石灰Ca(OH)26585
    苦土消石灰Ca(OH)2、Mg(OH)26092
    炭カルCaCO350110
    貝化石CaCO3>35>157
    アヅミン苦土石灰MgCO3+腐植50110
    カルミン石灰MgCO3+リグニン、糖50110
    ゴールデンライム(苦土生石灰)10055
    サンライムカキ殻48115
    セルカ45カキ殻48115
    粒状混合石灰(消石灰+生石灰)7276

    1. 貝化石の">35" は、"35%以上で不定"と云う意味。
    2. 投入量を苦土石灰の量として指示された場合、各資材の「必要資材量の比」を乗じて100で割ると、資材ごとの換算量になる。
    3. 粒状混合石灰は、消石灰や炭酸石灰をを造粒する際、生石灰を加えることで、散布後に吸湿して膨張し、粉状になって広がる機能を与えたもの、
    4. 石灰:苦土の質量比により、[生石灰含有率+(苦土含有率×1.5)=アルカリ度] の関係になる。

     石灰類の農業利用は元来、白壁などの建築材料で、混じり物などによる低品位のものは廃棄され続けていたが、これを換金できないものかと考案されたのが始まりらしい。
     童話作家として知られる宮沢賢治の伝記で、死の前日に農家がやってきて肥料の相談を受けているように描かれるシーンは、ボランティアではなく、晩年に白壁材料の業者から廃棄物の有効利用(換金)を持ちかけられて起業した石灰商人(宮沢)が、注文を受けている場面なのだとか。

     カルシウムやマグネシウムが施肥の必要な肥料成分として認知されたのは、ずっと遅れてからなので、資材としての石灰類の必要性を論じたものには新刊書であっても書き写したネタ元の年代によって大きく異なり、未だに混乱が見られる。
     こうした歴史から、石灰の投入を指示してある場合でも、土壌酸性の改良なのか、カルシウムの補給なのかの区別がつきにくく、効果があった事例であっても安易に真似るのは危険。

     貝化石やカキ殻は、炭酸カルシウムとして沈降した石灰岩(←純度が高い)と異なり、海水に由来する各種の微量要素を含むが、砒素や鉛など有害要素も含まれるため、連年・大量の投入には注意が必要。

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