1999/12/31-2007/5/29,2011/7/12
INDEX
【カルシムイオンとしての機能】・・・主として体内
【アルカリ資材としての機能】・・・主として土壌
資材として石灰類が安価なため多用されるが、土壌 pH を過剰に上昇させると、他の多くの要素の欠乏症が起きやすくなる。
カルシウムの吸収を助ける要素: P
カルシウムの吸収を悪くする要素:N・K・Mg
・骨の主成分は、リン酸カルシウム。
・筋肉の収縮は、Ca2+ の濃度変化(上昇)で起こる。
・卵子に精子が到着すると、Ca2+ の濃度が上昇して表層が浮き上がって膜になり、他の精子が侵入するのを防ぐ。
・細胞分裂時に、分裂の境界部分に放出される。
・神経細胞間で情報を伝える神経伝達物質は、神経細胞内の Ca2+ の濃度上昇で放出される。
・神経軸策の成長中に誤った方向に伸びると、短時間の Ca2+ の濃度上昇が起こり、先端部の膜が内部に取り込まれて短くなる(後戻りする)。
これらの機能は Ca 濃度の上昇と復帰(下降)の速度に依存するので極めて迅速で、Ca 振動(=濃度変化)と呼ばれる。
細胞内に大量の Ca2+ があると有害で、通常の濃度は血液中の1万分の1。
細胞内 Ca 濃度の増減は従来、細胞外からの出入りによるものと考えられてきたが、細胞内小器官の小胞体に蓄えられており、小胞体の膜に存在する "P400" と呼ばれるタンパク質が蛇口の働きをして放出されることが判った。
P400 は、外部の刺激によって細胞膜で作られる "IP3" と結合する事で蛇口が開くことから「IP3受容体」とも呼ばれる。(回収には別の経路が存在する)
【NHK教育テレビ(現在は「Eテレ」に改称)・サイエンスZERO(2011.6)】
(上記を主とし、京大法、公定法の解説を参考に修正を加えて使用しています。)
試薬:蓚酸アンモニウム4gを1%酢酸溶液100mlに溶かす。
・室温で数年間保存可能。光にも安定。
・冬季低温時には結晶を生じるが、上清を使用するだけでよい。(加温すれば再溶解する)
| 蓚酸アンモニウム(無水/1水/2水))【医薬用外劇物】
(化学式)(COONH4)2 |
操作:
試薬添加量は、1/4〜4倍の範囲で可。
比濁度1〜2のときや、植物体の検定では、pH5.2 に調製した10%酢酸ナトリウム溶液を使用すると抽出量が増す。
試料は、pH4〜10 の間で影響なし。
酸性域では沈殿が出来難く感度が低下するが、試料からの抽出量が増すために相殺される。必要に応じて検出試薬を加える前に希アンモニア水を数滴加えて中性以上にすれば、感度を維持できる。
判定:
| 新聞の文字による比濁度の判定 | |||||
| 比濁度 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| 見え方 | よく読める | 読みにくい | 見える | かすかに見える | 全く見えない |
| 水抽出(乾土比1:5) | |||||
| 比濁度 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| テスト液中濃度 | 10ppm | 25 | 100 | 150 | 300 |
| 診断 | ← 適 → | 多 | ← 異常 → | ||
| 10%酢酸ナトリウム液抽出 | |||||
| 比濁度 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| テスト液中濃度 | 50ppm | 100 | 175 | 250 | 400 |
| 診断 | ← 欠乏 → | 適 | |||
| 乾土100g換算 | 25mg | 50 | 88 | 125 | 200 |
| 単純換算による参考値(乾土比5倍・生土水分3倍) | |||||
| 乾土100g換算 | 5mg | 13 | 50 | 75 | 150 |
| 圃場 10a 換算 | 5kg | 13 | 50 | 75 | 150 |
| 土壌溶液中濃度 | 150ppm | 375 | 1500 | 2250 | 4500 |
| 5.4me/Litt. | 13.4 | 54 | 80 | 161 | |
抽出液に10%酢酸ナトリウムを使用したときのテスト液中濃度が異なるのは、酸性環境によって判定薬の感度が低下するため。(上の判定表は、公定法での分析値を元にしているので、現場での判定はこれに従ってよい)
比濁度4以下のときは欠乏なので、操作法の備考に挙げたように、希アンモニア水で中和して感度を上げる必要は無い。
渡辺式と同じ試薬を使用するが、添加直後の操作法が異なるため、判定方法違う。
渡辺式と較べて感度は低下するが、比色表や標準液の準備が要らない判定法になっている。
| 状態 | 判定標語 | 交換生石灰含量 |
| 直ぐに白濁し強く濁る | 頗る富む | 0.2% 以上 |
| すぐに白濁するが濁りが少ない | 富む | 0.15% 内外 |
| 暫くすると僅かに白濁する | 含む | 0.1% 内外 |
| 白濁しない | (不足)極僅か含む | 0.07% 以下 |
※ 置換性カルシウム:概念上は「土中の水溶性カルシウムと土壌粒子に吸着されているカルシウムの合計」と云う意味だが、多肥園ではCEC(カチオン置換容量)よりも多く検出される事例が頻繁に見られる事から、施肥後に溶け残って不可給化した部分が、抽出に使った塩溶液で溶け出したものも含まれると考えられており、補正の方法が各種提案されている。
入門書の類では「甘味を増したり果色を良くする効果がある」とだけ書かれることが多いが、全ての肥料成分が「甘味と着色」を増すのに役立ち、必須成分が一つでも欠けると正常に生育できなくなる。(要するに、カルシウム独特の作用ではない)
葉中で行われる代謝作用で発生する有機酸を中和して過剰蓄積の害を防いでいる。
細胞壁でセルロースやペクチンと架橋を作って結合し、細胞壁を強化すると共に、必要時に内部に取り込まれて利用されるため、欠乏時には軟弱となる。
液胞にも多く含まれるが一方通行なので、膜が破壊されない限り液胞から出て再利用される事は無く、原形質内での不足によって膜機能が維持できなくなると流出して、過剰障害による壊死が起こる(収穫間近の果実など、液胞が大きく貯留量が多いと、周辺細胞に伝染ぢて肉眼で見える大きな壊死斑になる−−リンゴのビターピット、トマトの尻腐れ)。
細胞膜の機能によって原形質中の濃度を低く保たれているため、生きた細胞で出来た師管経由での移動は極めて遅い。
アンモニア態窒素の吸収が多いと要求量が増えるため、Caの絶対量だけでは欠乏症が発生するかどうかの予測は出来ない。
(取り敢えず、多く与えておけば良いと云う乱暴な意見もあるが、むやみに増肥すると拮抗成分が欠乏しやすくなる。)
欠乏の出やすい作物は、健全な時の体内含量が多い作物と一致する。(要求量が多い作物に出やすい)
・単子葉植物(イネ・ムギなど葉の狭いもの)は、欠乏しにくい。
・双子葉植物(果樹・野菜など葉の広いもの)は、欠乏を起こしやすい。
【主な欠乏症状】
【欠乏の起きやすい条件】
【しり腐れ/尻腐れ】
はじめ、果頂部の内部が水浸状となり、やがて黒色となって凹む。
生育初期には出にくく、第2花房の収穫頃の第3花房に発生し始めるが、乾燥の続く年には第2〜1果房にも発生する。
第1花房に発生するような著しい欠乏では開花前から発症し、茎先端の芽が黄色になって萎縮し、脆く、茎の先端は枯死する。
【縁腐れ】
結球葉の周辺部が水浸状になり、次第に灰白色となって内側に湾曲しながら枯死する。外葉に発生する事もある。
【心腐れ】ハクサイで特に多い
結球葉の周辺部がアメ色になり、腐敗菌が付いて軟腐状になる。
結球を縦に切ると、中心部が腐敗しており、中心葉の先端から始まっているのが見える。
ただし、カルシウムを増肥しても解消する事は稀で、チッ素の過多や一時的な水分不足によって体内バランスが崩れた時に発生すると言う説が有力。
【黒色心腐れ】
はじめ、中心部の若い葉から黄化する。
酷いときには、黒変した後で細菌が繁殖して軟腐病となる。
B欠と紛らわしいが、葉柄に亀裂は入らない。(B欠では、葉柄の内側が黒色化して、葉柄の外側に横方向の亀裂が入る)
新葉の先端が褐色に枯死する。このとき、新葉の中央部に褐色の斑点が生じる。
葉には症状が出ない。
収穫時〜貯蔵中に縦に切ると中心部に水浸状〜黒変した心腐れが見られる。
中心部のりん片は健全で、数枚離れた場所のりん片が冒される事もある。
【黒色心腐れ】
Mg欠乏と併発した場合、葉の葉脈部を残して黄白色化する。
芋が肥大せず、1〜2cm にしかならない。
葉縁が白色化し、葉先から次第に枯死する。
家庭菜園の入門書を中心に「ホウレンソウの育ちが悪い=石灰不足」のような記述が横行しているが、酸性土壌では発芽し難いという性質の誤解で、発芽後の生育では土壌のアルカリ性化によるマンガン欠乏である事が多い。
また、リン酸や苦土の欠乏で葉が黄化している場合も多いので診断には注意する。
果樹の中でも欠乏しやすい作物。
花房の肥大期に新葉の葉縁部に葉焼けを生じ、葉が内側に湾曲する
古葉は濃緑色を保つが、葉身に褐色の斑点を生じ、組織が脆くなる。
・健全葉中のCa濃度 1.0〜1.5%
・欠乏葉中のCa濃度 0.2〜0.4%
欠乏しても新梢の成長速度は変わらず、落葉もしない。
果実肥大が盛んになると、若葉の先端から葉縁に沿って黄白化し、後に黄褐色〜暗褐色となって壊死する。
果実への吸収(総含量の増加率)は開花後1ヶ月頃をピークに減少するので、欠乏症の対策は落花直後から行う必要がある・・・と云われてきたが、
カルシウムは体内で再移動したり、貯蔵した後で利用できる成分ではないため、体内量が増加する時期に葉面散布で補給するという指導の効果は極めて疑わしい。
原形質内の濃度は常に極めて低濃度に維持されなければならないため、総含量の測定は、液胞などに移封(廃棄)された量を測定しているに過ぎず、増加率の低下は果実が葉に覆われて果面からの蒸散量が低下したために根からの移行量が減っただけとも考えられる。
【ビターピット】(果実・後期の欠乏)
デリ系・スターキング・ふじ・つがる・ジョナゴールド・王林・陸奥に出やすい。
収穫直前〜貯蔵中に発生する。赤道部から下の果皮に小さな凹みが出来て、はじめは緑色だが後に暗褐色になる。重症だと水浸状となり2次的に腐敗することもある。
病斑は小さく軟らかい。果肉へは果皮直下に留まることが多い。
大果ほど発生しやすいので、強剪定・強摘果を避ける(・・・ように指導されてきたが、一部の品種を除き、現在公設市場を通じて流通しているサイズは全て大果に該当する・・・どうしたものやら?)
発生してしまったら窒素・カリ肥料の大幅な制限が必要。
葉面散布は、6月下旬〜収穫の2・3週間前まで7〜10日おきに行う。
(散布時期はビターピットだけを回避する場合のもの。これ以外の障害には落花後2週間程度からの散布が必要。)
(もりおの所見)「ふじ」では収穫の1箇月前頃から発生し始める。
果実の重みで枝が下垂して日陰になった部分や懐枝に付いた果実など、果面からの蒸散が抑制される場所で発生が多く、早期に枝吊や摘葉などで果面を露出させると激減した。
体内での再移動が制限される要素で、水分とともに根から吸収したものだけが届くので、果面からの蒸散確保は重要と考えられる。
葉面散布の効能書きにある「カルシウムの吸収は、果実肥大期の初期だけ」と云う話は、生理的な特性ではなく、果実を覆う葉が繁茂する事で、カルシウムが果実へ移行するのを妨害していただけとの可能性も出て来た。
【コルクスポット】(果実・始期の欠乏)
デリ系・スターキング・ふじ・ジョナゴールド・恵に出やすい。
・7月〜8月頃に発生する。はじめ、赤い小斑点を生じ次第に拡大して硬く窪み、亀裂を生じることもある。
・収穫前の樹上に限られ、貯蔵中に発生することはない。
・果皮は褐変しないが直下の果肉が褐変してコルク化する。
・果実全体に生じ、果肉内にも発生する。
・ビターピット同様、大果ほど発生しやすいので、強剪定・強摘果を避け、 ・発生してしまったら窒素・カリ肥料の大幅な制限が必要。
・葉面散布は、落花1週後より7〜10日おきに3〜4回行う。
この時期は薬害を生じやすいので、塩化カルシウム 0.2%に、クレフノンを80〜100倍で加用する(クレフノンは薬害防止に役立つのであって、カルシウムの補給には役立たない事に注意!)
・摘果の際に落とした物がぶつかった場所が後に凹斑となってコルクスポットと誤認されることもあるが、下面には出来ないし、下枝部に限られる。
ともに、大元の原因はアンモニウムイオンの過剰によって細胞内の諸器官(ミトコンドリア・小胞体・液胞)でカルシウム要求量が増し、これらの内部に溜め込もうとする。
細胞質内のカルシウムイオンは、もともと低濃度でしか存在を許されないので膜を維持するのに必要な分が不足して壊れしまう。
液胞の膜が壊れると、内部に溜め込んだカルシウムイオンが漏出するので、今度は"過剰"なカルシウムイオンによって細胞が壊死し、さらには周辺の細胞へと次々に広まって、肉眼で見えるサイズの斑点になってしまう。
このため、搾汁液などによる植物体分析では、障害を起こした畑の方が近隣よりもカルシウム濃度が高い場合も多く、基準値と比較するだけの診断は全く役に立たない。
広島県・粘土質の赤黄色土・強酸性土壌の園で発生した事例。
6月の春葉が出る頃に新葉の先端から黄化して周縁部へと拡がり、後に落葉する。(Mg欠のように葉脈間へは進行しない)
黄化症状の出る樹では生理落果が多く、結果量も少ない。
健全葉と較べて幅が狭く、奇形となることもある。(葉先端の成長が止まるので、本来尖るはずの先端部が丸くなったり、甚だしいときは凹んだりする)
【応急処置】 葉面散布
| 資材 | 適用作物 | 濃度 | 備考 |
| 塩化カルシウム | 全般 | 0.2〜0.5% | |
| リンゴ・コルクスポット | 0.2% | クレフノン80〜100倍加用(生石灰・不可) 落花1週後より7〜10日おきに3〜4回 | |
| リンゴ・ビターピット | 0.2〜0.4% | 6月下旬〜収穫の2・3週前まで7〜10日おきに散布 | |
| 蟻酸カルシウム (スイカル、など) | リンゴ・ビターピット | 0.5〜1.0% | ・ブドウに薬害がある ・乾燥して析出しやすく、白粉を生じ作業者の眼に入るので不評であったが、固着剤を配合した改良品が販売されるようになった。 ・作物によって効果の差が大きい云われている。 |
| リン酸1カルシウム (第1リン酸カルシウム) | 全般 | 0.3% | (過リン酸石灰の主成分) |
いづれの資材も散布液の付着した場所近く(周囲1mm 程度の範囲)にしか効果が無いので、繰り返し散布する。
同じ理由により、果実へは幼果期から散布しないと皮下で発生する欠乏は防止できない
備考蘭の「クレフノン」は、炭酸カルシウム水和剤の商品名
【追肥】
消石灰 50〜80kg を水に溶いて畦間に流し込む。
軽い欠乏のときは、100kg をそのまま全面散布
【潅水】 適湿状態を保つ。
【N・Kの減肥】欠乏症状の発生を確認したときは、N・Kの施肥を中止する。
【塩類濃度の適正化】塩類濃度が高くなるとCa吸収が衰えるので、施肥は分肥したり、全層混和する。
【堆厩肥の投入】 保水力や緩衝能を高める
【作付体系の見直し】 Ca吸収量の多い作物を連作しない。
カルシウムそのものの過剰害は殆ど発生せず、他の要素の拮抗阻害である事が多い。
アルカリ性資材として投入される事が多いため、土壌pHを高くして、Mn・Fe・Zn・Bなどの吸収を妨げる。
(石灰類の過剰によるカルシウムの欠乏)
石灰類自体もアルカリ性環境下では溶け難くなり、長年〜過剰に投入すると欠乏し易くなる。
pH 7.5〜8 以上の場所であっても、生石灰や消石灰(≒水酸化カルシウム)であれば水に溶けて吸収されるが、空気中の二酸化炭素と結合して炭酸カルシウムに変化するため、短期間で肥効を失う。これらを追肥すれば効果があるが、これを繰り返すと徐々に追肥の効果も薄れてくるので、投入量を増やす事例が多い。
この事例を以って、「土に不足している」「土壌検査は間違っている」などの宣伝にも注意が必要。
【インゲンの土壌pH(KCl)と要素吸収量(出展不明)】
| pH | 4.3 | 4.8 | 5.0 | 6.0 | 6.4 | 6.6 |
| Mn(ppm) | 320 | 210 | 180 | 80 | 20 | 40 |
| Zn(ppm) | 230 | 190 | 150 | 90 | 50 | 20 |
※ 石灰類の過剰投入が害になる事は広く知られるようになりましたが、相変わらず「酸度矯正ではなく、カルシウムの補給が目的」などと言い訳しながら投入を続ける農家や指導する業者が多いようです。
目的が違っても、同じ事をすれば結果は変わらないので、そっと注意してあげましょうね。
(公的機関による指導指針では、土壌pHを下げることに主眼を置いている)
参考・【土壌のpHを1.0下げるのに必要な薬剤の量(長野県)】
| 土質 | 硫黄華(kg) | 濃硫酸(litter) |
| 細粒質 | 80 | 240 |
| 中粒質 | 70 | 200 |
| 粗粒質 | 55 | 160 |
【私見】
客土により発生した鉄の過剰症対策として、リン酸の増肥や葉面散布は枯死を免れるだけの効果しかなかったため、石灰の投入で土壌pHを上昇させて鉄を不溶化させた後、pH の上昇によって欠乏が引き起こされる成分(B,Mn,An,Cu)を補充した方が格段に低コストの上、収量に貢献した。
作物の生育不良は、土壌がアルカリ性なのが原因ではなく、アルカリ性で不可給化する成分のせいなので、不足する要素の増肥も対策のひとつとなる。
この場合、ECの上昇や、後に土壌pHが低下したときに増肥した成分の残留によって過剰害が発生する恐れがあるため、化学分析を併用して最小限度の使用に留める必要があり、作目や品種の変更時には各要素への感受性の違いに留意する必要がある。
資材には主として石灰類が用いられる。
石灰類は日本で唯一自給可能な資材で、肥料成分としてよりも酸性土壌の改良剤として扱われてきたが、土壌のアルカリ性化が進行した圃場では、非アルカリ性のカルシウム資材(硫酸カルシウム=石膏、塩化カルシウム、有機酸カルシウム、など)や、有機物として扱われる貝化石・貝殻粉砕品(主としてホタテ)等も注目されている。
石灰類は全般に酸性の方が溶けやすいため、酸性土壌の改良に使用したときは作物にもよく吸収されて劇的な効果が得られるが、投入し続けて圃場がアルカリ性になるとるとカルシウムの欠乏症が発生し、農薬では防ぎきれない病気が多発する。
石灰類が農業資材として商品化された起源は、白壁に必要な建築材料(生石灰)を得る際に夾雑物(ゴミ混)などの為に廃棄されていたものを換金出来ないかと云う動機であったらしい。童話作家として知られる宮沢賢治さんが晩年に石灰業者に不良品の処理を相談されて出資し、東北一円に売りさばく事業を起こしていたエピソードが有名。
(資料)カルシウム資材の溶解度(丸善・理科年表より抜粋)
上は何れも蒸留水を使用し、25℃、溶液100g中に溶け込んでいる物質の量
(*補追:生石灰の溶解度が抜けているとの指摘がありました。生石灰を水に溶かすと消石灰になるので、通常は掲載の対象外となります。
数値が必要な場合は、モル当の質量比で換算(×0.76 )します)
天然に産出する石灰岩は、炭酸カルシウム(炭カル、炭酸石灰)が主成分で、これを高温に加熱して得られる酸化カルシウムが生石灰と呼ばれる。生石灰に水分を与えると化合して水酸化カルシウム(消石灰)となるが、放置すると空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムに戻る。
炭カルは溶解度が低い為に「溶けないカルシウム」等と宣伝されるが、これは蒸留水に対しての溶解度であり、真水にはきわめて溶けにくいが、炭酸イオンが過剰に存在する環境(密閉された空間)では重炭酸カルシウムとなって溶解度が2,000倍程度に増す。
(炭酸イオンは二酸化炭素が水に溶けてできる物質で、土中では有機物の分解によって大量に発生する。)
これらの溶解度は、いづれも蒸留水に対するものなので、土壌の酸性化に伴って溶ける量は増し易い。このため、石灰類の過剰投入で中性〜アルカリ性になってしまったときのpH低下は非常に緩やかだが、酸性化の進行した土壌では流亡し易く、pH低下速度も速い。
(pHの目盛りは対数なので、値が1ずつ大きくなるごとに10倍のアルカリ物質が増えていくことになる。
pH7→pH6の変化と、pH5→pH4の変化での資材量は100倍になるが、圃場では同じ程度の時間しか掛からない)
石膏(硫酸カルシウム)の無水物とは、「焼き石膏」と呼ばれ、造形用に購入して水を加えると発熱して固まるお馴染みのもの。
石膏(5水物)を高温に加熱して作るが、この際に粘土をまぜるとコンクリートの原料になるセメントができる。
大抵の方が「石膏」と聞くと石膏像の様な大きな塊を想像するらしく、「美術室にあるミケランジェロみたいなのじゃなくて、粉になったやつですよ。」と断りを入れるのが良いでしょう。一旦、焼き石膏にしてから水を加えて固めないと、大きな塊はつくれません。
肥料取締法では、品質を厳しく定めた普通肥料の他に、有機肥料のように成分のばらつきが多いため、保証が難しいものについて「特殊肥料」という枠を設けています。
特殊肥料は政令で種類だけが定められ、普通肥料のように成分の分析や工場の立ち入り検査等は行われず、定められた種類に該当すれば都道府県知事宛に届け出るだけで販売が許可される制度になっています。
「特殊肥料」は、特殊な用途や効果がある肥料という意味ではなく、品質を定めるの規格や検査が無いと云う意味なので、誤解しないようにね。
この特殊肥料の種類の中に、・・・
・「カルシウム肥料(主としてカルシウム分の施用を目的とし、葉面散布に用いるものに限る。)」
・「石こう(りん酸を生産する際に副産されるものに限る。)」
・・・の2つが、ひっそりと混じっています。
ちなみに、特殊肥料に指定されたものは、普通肥料として申請しても受け付けられないそうです(誰もしないだろうけど^^;)。
また、成分の保証をするためには法で定められた要件を満たさなければならないので、何も決まっていない特殊肥料については、保証してはいけないのだそうです。
・・・とはいっても、普通肥料の包装に印刷された「業者保証票」と云うタイトルが付いた枠の内容に付いての定めなので、使い方の説明や効能書きとして成分含量を表示するのは構わないようです。
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