2005/03/25
2006/4/1, 2006/12/21,2011/10/31
INDEX
鉄のクラーク数は 4.7。Fe2O3として地殻の 6.7%を占める成分(←かなり多いと云う意味デス)。
主として2価鉄(Fe++ の形で吸収され、鉄蛋白となって電子伝達系や酸化還元系で触媒などの働きを担う。
体内では殆ど再移動しないため、生育全期に渡って吸収されなければならない。
水田では還元環境(≒酸欠)のため硫化水素が発生し、土中の鉄分が不足すると「秋落ち」と呼ばれる障害を起こす事がある。
イネは湛水下で栽培されたときにだけ、茎葉内部に破生通気組織と呼ばれる特殊な隙間構造ができて、ここを通じて葉から根の表面に酸素を放出することで鉄分を不溶化させ、「鉄のヨロイ」と呼ばれる赤サビの層を周囲に集積させて根を守る。(赤サビは酸素の供給源となって、硫化水素を酸化分解する。)
この結果、鉄分の吸収は極めて少なくなるので、他の作物に較べて土壌に大量に存在しないと欠乏症を起こすことになる。
イネなどの鉄分の吸収力が弱い作物を除き、多くの作物は鉄の過剰に弱く、過剰症はリン酸やマンガンの欠乏として現れる事が多い。
鉄の可溶化は、マンガン過剰や硫化水素の発生などと同様に「湿害」として現れることが多い。
入門書等でリン酸の不溶化を説明した箇所で「リン酸鉄は還元化で可溶化して再利用される」とあるのは、水田作物のみに適用されるもので、他のほとんどの作物ではリン酸と同時に可溶化する鉄の過剰によって激しいリン酸欠乏を起こす可能性の方が高い。(鉄の吸収量が多いと、吸収後のリン酸と体内で結合して不溶化し、導管内に沈着する)
土壌分析を依頼する際に「風乾」を要求されるのは、主としてU価鉄イオンをV価にするためで、水田土壌の分析では必須の作業だが、畑土壌の分析では湿害の判定などを誤る恐れがある。
作物体内に 100ppm 程度含まれる。
欠乏すると葉が黄白色化する(葉緑素の構成成分ではなく、葉緑体のリン蛋白に結合して葉緑素の形成に関与する)
体内で、Fe2+←→Fe3+の相互変化によって酸化還元反応に携わる。
呼吸作用の酸素運搬を行う
チッ素の代謝に関与して、欠乏すると蛋白質の合成が阻害され、体内に可溶性チッ素化合物が蓄積して病気に弱くなる。(病原菌の繁殖に都合の良い状態になる)
α・α'ジピリジル1g、または、o(オルト)-フェナントロリン1gを10%酢酸水溶液500mlに溶かしたものを準備し、土層に直接振り掛けるか、ろ紙上に少量採取して試薬を振り掛ける。
ろ紙を使用した方が色の変化を見やすいし、試薬が節約できる。ろ紙は、吸い取り紙やペーパータオルで代用してよい。)、
| 標語 | 色相 | 反応の速さ | 土色 |
| G+3 | 明るい紫味赤(彩度6以上) | 即時に呈色 | 黒 |
| G+2 | 鈍い赤紫(彩度4〜5) | 即時に呈色 | 緑灰 |
| G+1 | 灰味赤紫(彩度2〜3) | 即時に呈色 | 青灰 |
| g+1 | 紫味灰(彩度2〜3) | 数秒〜数10秒時 | 黒褐〜褐 |
| g0 | 紫味灰(彩度2〜3) | 数分〜数時間 | 黄褐 |
グライ層は、通常地表から 80cm以内。30cm以内だと根腐れの危険がある。
(解説や操作法に原案と異なる部分があります)
【試薬の調製】
共に、冷暗所にて長期保存可能
【操作1・2価鉄--Fe(U)の検出】
【操作2・全鉄--Fe(U)+Fe(V)の検出】
【判定】
| 呈色度 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| テスト液中濃度 | 0.5ppm | 1 | 2.5 | 5 | 10 |
| 乾土1kg当り | 2.5mg (ppm) | 5 | 12.5 | 25 | 50 |
| 土壌溶液中濃度 | 7.5ppm | 15 | 37.5 | 75 | 150 |
| 診断 | 湿害注意 | 湿害 | ← 水田並み → | ||
塩酸で抽出した後、硝酸で酸化してFe(V)として半定量する。
主に水田での遊離酸化鉄の検出法。
ハイドロサルファイト(Na2S2O4)により、酸化鉄(V)を還元し、キレート剤によって抽出する。
試料(土)を腰高の鉢か底を布などで塞いだ筒に詰め、水を張った皿に立て、雨水の掛からない、風通しの良い場所に置いて観察する。
可溶化した鉄分が鉢土の表面に移動して、赤錆となって堆積する。
土の還元化の状態や水分の蒸発速度で変わる。
可溶化鉄分が多ければ1週間で変化が確認できるが、通常、気温20℃で約1ヶ月程度必要。
バケツに土を詰め、稲の苗を植えてミニ水田とし、根を抜いて観察してもよい。
Caと同様、作物体内での再移動が極めて遅く、欠乏症状は、新葉から現れる。
生育中に根からの吸収が衰えると短時間で新葉が黄白色化する。
(初期には中肋〜側脈のみ薄い緑色になる事が多く、進行すると葉全体が黄白色化するい。)
欠乏を放置すると、その後に出る葉が小型になり新芽の伸張が衰え、萎縮状態になる。
Mn欠乏に似ているが、全体的に白色化し、葉脈間が薄緑色になる事は無い。
※Fe・Mn とも、一旦緑化した葉が失緑することはなく、展開の初期から黄白色になる。
白色化した葉に硫酸第一鉄0.1%液をスプレーすると、液の付着した部分だけ、2〜3日で緑色になる。
鉄分の欠乏により、マンガンが異常吸収される。
体内の過剰なマンガンによって鉄分が不活性化し欠乏が促進される。
可給態の鉄分が欠乏したとき以外にも、リン酸や銅の過剰吸収時や低温・日照不足などでも欠乏を起こしやすいので、原因は広範囲にわたることを考慮して診断する。
根は黄変し易く、キュリ・ナス・ホウレンソウ・シュンギク等では根からリボフラビン(ビタミンB2) が分泌されるため、水耕栽培では培養液が黄変する。
鉄の吸収・移動を助けるもの・・・・K
鉄の吸収・移動を悪くするもの・・・Ca(土中)
P,Mn、Zn,Cu(土中・体内とも)
【欠乏の起きやすい条件】
土壌中に不足して起こることは希で、おもな原因は下記に分類される。
【応急処置】
葉面散布
| 陸稲 | 0.1〜0.2% |
| 野菜類 | (露地)0.2〜1.0% (ハウス)0.2% |
| 果樹 | 0.2〜1.0% |
【土壌管理と施肥】
※ フミン酸系土壌改良剤:石油精製カス(コールタール)を硫酸で煮込んだものらしい。
この場合の効用は、原料の工業用硫酸(JIS2級硫酸)を入れるのと同じなのにベラボウに高価なだけなので、個人的には勧めない。
水稲では稀れ。
家庭や工場の排水が流入してアルカリ性になった場所で、新葉が黄化し、心葉が止まり、出穂しない。
陸稲では、pH6.5 以上のとき、置換性鉄 5ppm(Fe2O3)以下のとき、葉幅が狭くなり、心葉が黄白化して萎縮症状を示す。
老朽化水田での鉄資材投入は、硫化水素対策であり、欠乏とは異なるが、
秋落防止対策として、遊離酸化鉄の富化が重要で、国の改善目標は、Fe2O3として0.8%以上。
ただし、含鉄資材を投入しても測定値に反映されない例が多い(≒分析法の確立が不十分)ので、現実には被害の有無で判断するしかない。(検出されるのは投入した酸化鉄の数%程度)
下葉の枯れ上りやゴマ葉枯れの発生程度が軽減すれば目的を達したことにしてよい。
新葉が黄白化し、しだいに白くなる(緑色が抜けるのではなく、黄白色の新芽が展開しながら白くなる)
旧葉は変化しないが、全体に生気が無くなる。ハウス栽培などでアルカリ化した場所で多い。
(ハウス栽培)亜硝酸を吸収して根が害され、鉄欠乏となる事が多い。古い葉は青々としており亜硝酸の消失と共に回復する。
最初に蔓の伸びが悪くなり、次に生長点付近の展開葉の葉脈間が黄変した後、心葉全体が黄白色となる。
欠乏がひどいと早く黄変した葉から順に枯死する。
ガラス室栽培+石灰多用のバラで多く発生する。
新葉が黄白色化し、小葉になって伸長が停まる。
萎黄病
根が浅いところや砂質の所で、石灰が過剰施用されたときに多い。
日照の強い時や干ばつ時にも出易い。
新葉が黄白化し、後から出る葉が小さくなって新梢の伸びが止まる
欠乏が深刻化すると樹全体が生気を失い、落葉・枯死に至る。
石灰の過剰施用で発生しやすい。
施用後、古い葉には変化が無いが、その後に出る新葉が黄白化する。
遅く発芽した下位の胴吹き枝が真っ白な葉になることがある。
突然変異のアルビノとして新聞に紹介されたこともある(ご愛嬌)。
作物体内の節に集積し、リン酸やマンガンの移動を妨げる。
リン酸→難溶塩(リン酸鉄)の形成
マンガン→酸化による不活性化
葉に褐色の斑点を生じる
鉄分の豊富な芝生用の目土や水稲用の育苗培土を、樹幹周囲に盛り土したところ、2年生未満の苗木は発芽後3ヶ月以内に全て枯死した。
成木は徐々に衰弱し、翌年以降に枯死した。
正常に発芽した後、開花直前に枝単位で突然萎れて枯死するものが多く、梅雨時に樹全体が突然落葉するものもある。
樹幹周囲に敷藁や堆肥を散らして覆ったものは進行が早い。
播種床に水稲用の粒状培土(市販品)を使用すると発芽しない。
移植床に同様の水稲用培土を使用すると、移植直後に生育を停止し1ヶ月以上も移植後の姿のままとなる(育たない事以外に、外観に異常はない)が、チッ素入り肥料の追肥を行った途端に黄色化して枯死する。
(水耕)葉縁が黄化し、上葉が下向きにカッピングする。葉脈間の所々が黄変する
(水耕)葉に褐色の斑点を生じる。
(水耕)葉に褐色の斑点を生じる。
有機物の投入で土壌が還元化され、鉄分の可溶化が進んで激しく発生するので控える。マルチは、有機・無機の種類を問わず設置しない。
マルチや鉄源となった客土類があれば、すぐに除去する。
応急対策としての葉面散布は、りん酸とマンガンの欠乏症に準じる。
石灰を投入して、一時的に pH7.5 以上にする。
これにより、他の要素が不溶化して欠乏症が続発するので、これら要素の追肥が必要となる。
イネ科の牧草類を周年生い茂らせることで軽減できる。除草回数を出来る限り少なくして、刈る時は長く刈り残すか、交互に縞刈り(トラ刈り)する。
夏季で再生力が旺盛な時でも、再生中は根の生育が停止するため、除草直後〜1週間程度は著しく可溶化量が増えてリン酸やマンガンの欠乏が進行する。
また、硬化していない茎葉は、刈取直後に発酵(腐敗)をはじめ還元環境を作る事で鉄分を可溶化させるので、刈り草は株元からできるだけ離す。
【F.T.E.】
ようりんと同様の製法・性状の資材で、原料の組成によって成分は大きく異なるため、目的に併せて選択する必要がある。
【硫酸第1鉄(硫酸鉄(U))】
硫酸第1鉄は旧称で、呼称の統一化によって現在は、硫酸鉄(U)と呼ぶのが一般的。
【キレート鉄】
鉄イオンをキレート剤と結合させたもの。
キレートは「蟹の鋏」を意味し、イオンをがっちりと抱え込む様子を表現したもの。「キレート剤」は、酸やアルカリなどの性質と同類の言葉で、特定の物質を挿すものではなく、「クエン酸鉄」などもキレート鉄剤の一種だが、農業資材に限って云えば、「エデト酸鉄」を指すことが多い。
エデト酸は、Ethylene Diamine Tri Acetic Acid の頭文字をとって「EDTA」と略される物質で、民生品はカタカナ読みの頭文字で略したものが当てられている。結合させたイオンを頭に付して、Fe-EDTA などと表記する。
エデト酸は、せっけんの泡が立たない硬水(井戸水)などに用いるのが一般的な用途で、化粧せっけんにも配合されている事が多い。
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