カリウムが血圧を下げる・・・というデマ


(2005/11/1)肥料→カリウム総合・・から分離
2005/11/1-2008/9/25,2011/10/05



この貢の目的

 農産物の宣伝文句のうち、健康志向に適合させようとして使われる「カリウムたっぷり」などの表現は、近い将来「有害」を意味する表示になる可能性がある。
 現在でも、一部の疾病を持つ人々がそれらの食品を摂取することは「自殺行為」と医師から指導されており、その数は年々増え続けている。
 こうした世の中の事情を知らずに、健康食品業界が一時的な金儲けの為に作った「神話・伝説」の類に便乗するのは危険である。彼らは社名の看板を架け替えれば全て水に流せるが、我々農家は永遠に信用を失う。

 これ以前の「塩化カリウム」は、安楽死させるときの静脈注射に使う「毒薬」というイメージが一般的でした。



カリウム信仰のおさらい

  1. ナトリウム・イオン(塩シオの成分)を過剰摂取すると、血圧が上がる。
  2. カリウム・イオン(カリウム塩エン)を摂取すると、尿に出てくるナトリウムの量が増える。
  3. よって、カリウムは血圧を下げる働きがある。
  4. シオに塩化カリウムを混ぜた「減塩塩げんえんしお」は血圧が気になる人にオススメ。


ここが間違い

 神経細胞ではカリウムが細胞膜の内側へ、ナトリウムが外側に配置することで正常に機能しますが、それ以外の血液中などでは区別されず「浸透圧の維持」という全く同じ働きをします。
 血液中の濃度が上がると、尿として排出する水分を減らして、血液中の水分を増やして薄める働きがあるのですが、血液が増えると云う事は、タイヤに空気を入れるのと同じなので、空気圧のように血圧も上がるという仕組みです。

 血液中では、[カリウム+ナトリウム]の濃度だけが重要で、余分に摂取したカリウムやナトリウムは大部分が区別されずに尿から排出されるため、カリウムを余分に摂取すると、相対的にナトリウムの濃度は下がります。
 しかし、血液中でのカリウムとナトリウムは全く同じ働きなので、摂取量の合計が減らない限り血圧を下げる効果はありません。

 神経細胞に限らず、カリウムとナトリウム(ともにイオン型)の偏在はあらゆる細胞でが起こります。
 カリウムは細胞内に蓄積しやすいため、血圧への影響は少ないとも云えますが、排出されにくいので、高濃度になった場合は細胞内の代謝に影響して機能が低下します(免疫力が下がり、老化しやすくなる)。



誤解しないでね!

 カリウムやナトリウムは、人体に必要不可欠な栄養素です。
 過剰に摂取したとき、健康を害する事だけが問題です。

 医師によって数字は違いますが、食塩の摂取量を変えても血圧に変化が現れない人が40〜60%の割合で存在します。
 血圧に影響が無くても、過剰摂取の影響は他にたくさん知られており、必要以上に摂取すると体に悪い事に変わりはありません。



知識の概略

・・・必要なのは、たった、これだけです。

上の「おさらい」で、実験で確かめられた(医学論文が存在する)のは 1.と 2.だけで、3. 以降は健康食品業界のでっち上げ。お医者さんも国(厚生労働省)も認めていません。





(休題)紛らわしい用語の解説



詳細

 高血圧と塩シオの摂取量に関係があることが広く知られるようになると、次に塩味のしない食品添加物に含まれるナトリウムも同様の作用があることが広く茶の間に知られるようになり、高血圧の犯人はナトリウム(イオン)という認識が定着しました。
 こうしたときに登場したのが、塩味の変わらない減塩食品で、塩化ナトリウムの変わりに塩化カリウムを添加した加工食品です。
 調味料としての「減塩塩げんえんしお」も発売されました。

 それ以前の「塩化カリウム」は、安楽死させるときの静脈注射に使う毒薬というイメージが一般的でしたので使用基準などあるはずも無く、当初野放しでしたが、話題になって添加した商品が増えたため、厚生省(現・厚生労働省)が急遽「50%以下」(塩に対して等量以下)という基準を設けました。

カリウムとナトリウムは共に植物と同様、浸透圧の維持にかかわり水分を保持する働きを持ちますが、血液中でも同様に、過剰に摂取すると血液中に水分を呼び、血液の総量が増えるので血管が膨らみ、血圧が上昇します。

 余分なカリウムやナトリウムのイオンを排出する器官は腎臓ですが、腎臓での排出機能は、不要な成分だけを選び出して捨てるのではなく、最初に血球のようなサイズの大きなもの以外を薄い血管の膜を通して物理的にふるい出した後、必要なものだけを再吸収するという仕組みなので、必然的に血液中の濃度が高い成分は尿中の濃度も高くなります。
 (量が多いと再吸収の作業が間に合わなくて、尿の中に残ってしまう。)

 カリウムを余分に摂取すると、ナトリウムの排出量が増えるという論文は存在する(旧・弘前大学)が、その結果血圧が下がるとまでは言及しておらず、「高血圧の原因はナトリウム」という世間の常識を逆手に取って捏造された話である可能性が高い。

 実際はカリウムにも血圧を上昇させる働きがあり、さらに人体は、細胞膜の外側にナトリウム(イオン)、内側に微量のカリウム(イオン)を配置する事で神経伝達を行っているので、大量に摂取すると前提となるイオンの配置が崩れ、神経などの働きが低下して心停止の恐れさえあります。
 実際に、アメリカでは死刑の方法として採用されているし、日本でも動物の安楽死には塩化カリウムの注射が行われていた(ペットブームにより、飽きて捨てられる数が急激に増えたため、二酸化炭素による窒息死に替わった模様)。

 健康を考えるなら、必要量以上の塩分の摂取は控えるのが大原則で、「減塩薬品」などを使用して Na+:K+ のバランスが崩れると重大な障害を起こす恐れがあります。



デマの正体

 カリウムの摂取でナトリウム排泄量が増える仕組みは、純粋に算数だけで説明できます。以下に図解してみました。

カリウムの摂取によって、尿中のカリウムも増えますが、「敢えて測定しない」のがポイントです!

    (Na+)(K+) ・・・体内に残る部分
    (Na+)(K+) ・・・排出される部分
(摂取時)
標準摂取量の時
(排出時)
■■■■■■■■■■■■
  (Na+)  ↓  (K+) 各々1/2を再吸収(回収能力は6個分)
□□□■■■■■■□□□
−−−\− ↓ −−\−−−−−−−−
(排出時)
カリウム増量時
(摂取時)
□□□□■■■■■■□□□□□□□□
     ┗ ↑ ・・・ ┛ 各々1/3ずつしか再吸収できない
■■■■■■■■■■■■■■■■■■

  1. K=Na=6の状態で、K=Na=3(50%)が排出されるとき、必要なのは 3*2=6 だけとすれば、
  2. K=12 に増やすと、血液の浸透圧を同じにするためには、
    12+6(入る量)-6(必要な量)=12(出る量)・・・なので、排出率は 12/18(=2/3) に増える。
  3. 排出時には区別されないので、均等に配分すると、K:12*(2/3)=8、Na:6*(2/3)=4 となり、
  4. ナトリウムの量だけ見れば、排出量が増えるように見える。
    ・・・カリウムの量を問われた時は、「難しい事はわからない」と答えればよい。



もっと平た〜くしてみた(^^;

 数理モデルの苦手な方向けに、「なんとな〜く」判るような気がするかもしれない解説の試み。

  1. 紅・白2色の砂と、100cc の【グラス】を用意します。
  2. 白い砂を 200cc 測って 100cc の【グラス】に入れると、100cc こぼれます。
    □□□□ → 【□□】 □□
  3. 同様に、白い砂 200cc に、赤い砂 200cc を混ぜてから【グラス】に入れると、300cc 分がこぼれます。
     → 【
     グラス内の白い砂は、50ccです。
  4. 赤い砂を足す事で、グラスに残る白い砂が減りました。
     これで、赤い砂には白い砂を排除する効果が実証され・・・るわけないジャン?



しつこく、ver. 3

 まだ判らないという人が居たので、再度解説に挑戦。

塩だけのとき (イベント) カリウム摂取
正常時体積 増分 ←   血液の量   → 正常時体積 増分
● ● ● ● × 血液の濃さ(浸透圧)は、この位が丁度だとします ● ● ● ● ×
●●●●●● × 塩分(カリウム)を摂ると、一次的に血液が濃くなります。 ●●●●●● ×
● ● ● ● ● ● 血液の濃度を保つために水分を増やして薄めます。
・・・すると、血液が増えたので、血管が膨らんで血圧が上がります。(ナトリウムとカリウムは混じり合います)
● ●
● ● ● ● × 余分なものをおしっこにして出しました。 ● ● ×
あらあら不思議・・・カリウムを摂ったら、血液中の塩分(ナトリウム)が減っちゃった。


尿を作る仕組み

(以下、「家庭の医学」見たいな本数冊から、尿をつくる仕組みを素人なりにまとめてみた。)
 腎臓では、流入する血漿(血液の、血球以外の成分)の約1/5が糸球体(血管を取り巻いた薄膜の部分)で取り出され、原尿となる。
 原尿は、血管と糸球体内部の圧力差によって押し出されたもので、成人で1日当たり150〜200リットル作られる。
 その後、原尿は近位尿細管→ヘンレンのわな→遠位尿細管→集合管へと移動しながら分泌(人体から尿へ)・再吸収(再び人体へ)で濃縮されて尿となる。
 それぞれの場所での分泌・再吸収のされ方は異なるが、近位尿細管での Na+:K+ は、上皮細胞(管の一番外側の細胞)内との濃度差によって吸収(というより、拡散して浸込む)された後、Na+:K+ポンプ(実体は、Na+:K+ATPase と云う酵素)によってさらに内側へ能動輸送される。

 Na+:K+ポンプは、Na+ を細胞間質(細胞どうしの隙間部分)へ、K+ を細胞内へと移動させて細胞膜内外に2つのイオンの不均衡な分布を作る。
 神経細胞では、2種のイオンが入れ替わる事で刺激を伝達するので、K+ が細胞膜の外側に溢れるほど存在すると伝達が巧くいかなくなるし、内側の濃度が高くなりすぎると他の栄養素などの出入りを妨げて代謝が低下する。(代謝が低下させて体温を下げると、夏を過ごし易くなる・・・という健康食品もあるが、ダイエットしにくい体になることなので、ご注意あれ)
 こうして上皮細胞内の濃度が下がることで、尿細管内部の原尿(外側)と上皮細胞(内側)の濃度差ができると再び上皮細胞内への移動が起こって再吸収が進む。
 遠位尿細管では Na+ が再吸収され、K+とH+ が交換分泌される・・・など、体の仕組み自体はナトリウムを留め、Kを排出するのに都合の良い様に出来ている模様。



【番外】カリウムの摂取と体温の低下

 夏にカリウムを多く含む食品を摂ると、体温が低下して過ごし易くなるという宣伝もあります。
 実際には、体温が気温に近くなるという方が正確で、気温が体温よりも低い時にだけ起きる現象です。

 詳細なデータは収集中ですが、カリウムは細胞内に選択的に蓄積されてしまうので、代謝や神経伝達を阻害してエネルギー生産量が不足するためと言う可能性が高いと考えられます。
 この説を信じて実行した場合、基礎代謝が低下して太り易い体質になるわけですから、夏バテと秋太りにご用心下さい。

 恒温動物が死ぬと、体温は気温と同じになります。
 気温が高い状態で体温を気温以下に保つためには、発汗を増やさなければならないので、却って暑苦しく感じるはずです(ハテナ?)。

雑学:汗は拭き散らない方が良いという意見もありますが、発汗が継続して塩分が濃縮されると乾き難くなるので、発汗の効果が少なくなって体温が下がらないので余計に汗が出ます。
 このような状態では、一旦拭き取った方が体を冷やす効果が回復するので、発汗量が減る様です。


【参考】血液検査での正常値

 単位は"ミリエキバレント・パー・リットル" と読みます。意味はわからなくても2つとも同じ単位なので、ここでは比率だけ判ればよい事にしましょう。
 30〜40倍の差があります。

 ナトリウムは血液などの細胞の外側(細胞外液)に多く、カリウムは細胞の内部(細胞内液)に多いため、怪我や病気などで細胞が壊れると極端に増えます。
 阪神大震災では、下敷きになって怪我をした人が救助された後、透析などの治療が間に合わず、壊れた組織から流れ出たカリウムによって亡くなた方がたくさん居ました。



【参考】低ナトリウム血症

 血清中のナトリウムイオンが正常値よりも低い場合をいい、大量の発汗に伴う水分摂取(水だけ補った場合)が主な原因で、ナトリウムに較べて水が多すぎて起こると云う視点から「水中毒」とも呼ばれます。
 濃度によって症状は異なり、疲労・頭痛・悪心・嘔吐・食欲不振・痙攣・呼吸困難・昏睡などで、手当てが遅れると死に至ります。

 腎不全で余分な水を排出できない時は、僅かな水を摂取しただけでも起こります。
 脳下垂体の異常や肺ガンの進行により「抗利尿ホルモン(腎臓で水分の再吸収を促し、尿を濃縮する)」が異常に産生される事があり、腎臓で水分だけが再吸収されるので、相対的に血中のナトリウム濃度が下がります。

 統合失調症(旧称:精神分裂病)による異常行動のうち、水の飲みすぎで起こることもあります。

・・・カリウム信仰もどちらかと言えば、病気かな?



【参考】高ナトリウム血症

 血液中のナトリウム濃度が高くなって起こる症状で、原因の殆どが「脱水症」です。
 水分の摂取が少なすぎる時や、下痢、嘔吐、過度の発汗による相対的な水分不足の場合と、腎機能の異常で大量の水を排出してしまう尿崩症(脳/下垂体の病気)などの病気の場合とがあります

高齢者は、喉の渇きを感じるのが鈍くなっているのと、腎臓で尿を濃縮する能力が低下して体内の水分が保てなくなるので、脱水症を起こしやすくなります。



【参考】アレルギー性高血圧

 アレルギー症状は痒み・浮腫・鼻水などが有名ですが、血圧の上昇として現れる事があります。
 通常は特定の食品を摂取した後に起きるので、突然血圧が上がったり戻ったりと乱高下しますが、毎日欠かさず摂取し続ける習慣がある食品の場合は常態化して、「血圧のクスリ」を常用する事になります。
 血圧を下げる薬を服用している時に、外泊などで摂取しない日があると突然、血圧が下がり過ぎて朝起きられないなどの症状が出るのですが、「旅の疲れかな?」といった自己診断で済ませるのが多いようです。

 筆者の家族の場合「牛乳」でした。夜に摂取すると翌朝の血圧が60〜90mmHg 上昇します。
 別の病気に入院した際に突然上昇してクスリの服用を始めました。たいてい毎日の朝食に牛乳が出ますので退院後も飲むようになりましたが、たまに切らして飲まない日があると、(血圧を下げるクスリを服用しているので)翌朝起きられないほどの低血圧になりました。
 何らかの食品の所為であろうという予想は付いていたので、最近になって摂るようになった食べ物を何点か挙げて摂取を控えるように告げたのですが「牛乳は体によい筈だから」と云う理由で最後まで抵抗に遭い、正常に戻るまで1年掛かりました。
 最終的には、減らして血圧の変化を見ながら1品ずつ減らして突き止めるしかないようです。



【参考】発汗

 通常の緩やかな発汗では体液中のミネラルは回収されて水分だけが汗として分泌されますが、流れるような大量の汗が出る場面ではナトリウムをはじめとしたミネラルも回収が間に合わずに排出されてしまいます。
 ミネラルを含んだ汗が乾くと濃縮されていきますからどんどん乾き難くなり、体温を下げる効果が無くなるので発汗が増える悪循環に陥ります。

 流れるような汗をかいた時は、拭くとス〜っと涼しくなるのが感じられます。
 このようなときのガマンは健康を害しますから、汗拭きや着替えは小まめに行いましょう。


【参考】スイカ糖

 利尿剤として知られる民間薬に、スイカの果汁を水飴状になるまで煮詰めて作った「スイカ糖」があります。
 「利尿剤」には、血漿と同じ成分の「原尿」から水分や糖分など必要なものを再吸収して濃縮した「尿」にする機能を低下させる働きがあり、結果として尿が増えると云う代物です。

 スイカ糖の効用には2説が流布されていて、栄養学や家庭医学を扱う本には「糖分」が高いから、摂取すると血糖値が上がり、排出するために尿が増えるという、(言い換えれば)一時的に糖尿病にする仕組みです。(糖尿病の初期症状は「頻尿」)
 ところが、雑学書や有機農法を扱った園芸書に採用されているのは、スイカ糖のもう一つの成分「カリウム」であり、その根拠は、糖分にそんな働きがあるとは思えないから・・・と云う消去法です。

 一方で、雑学書などでは拡大解釈されて「腎臓病」に利く薬として扱われることもあります。
 しかし、尿が出なくなる「腎臓病」は、血液から一部の血漿を分離して「原尿を作る働き」が低下する病気なので(参照→「尿を作る仕組み」)、作用する場所が全く違い、腎臓に何らかの障害がある時にこうした民間薬を使用するのはとても危険で、一時的に尿が出ても腎臓病を悪化させる事が多いようです。
 そもそも糖尿病は腎臓病の原因の一つですし、カリウムの過剰摂取も腎臓に悪い影響があります。手遅れになる前に、病院に行ってください。

 世の中には、おしっこをする商売と云うのがあって、お金を出して排尿を見せたり、客が自分の体に掛けてもらったり、飲んだりするのですが、商売で行うからにはたくさんの尿を出さなくてはなりません。
 そんな商売の従業員が、深夜のテレビ番組で「コーラを飲むとすぐに出る」とコツを披露していました。
 食品成分表を見ると、清涼飲料水はどれも豊富な糖分を含みますが、炭酸飲料は2割ほど多めに入っていて、その理由は、炭酸が甘味を感じにくくするからなのだそうです。



【参考】牛乳アレルギー

アレルギー反応には血圧が上昇すると云う症状を呈する事があり、筆者の家族は牛乳や乳製品の摂取で急激に 50mmHg程度上昇する。
 病院食には必ず出るので、別の病気などで入院した直後から上昇し、よい習慣だからと言って退院後も飲み続けて投薬が常習化する事がある。身の回りの年寄りだけでも意外に多かった。
 通常、摂取を止めるとその日の内に改善するので、血圧の昇降が激しくなるのが特徴。
 牛乳だけに限らず、高血圧の原因には食物アレルギーも疑って見た方がよい。()



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