加里・カリ・カリウム・POTASSIUM・
1999/12/31〜
2005/4/1,2006/8/14,2008/2/5,6/21,2011/10/06,12/25
【放射性物質対策】
2011年3月に起こった福島第1原発の事故で拡散した放射性セシウムへの対策として当初、カリウムの施肥が薦められました。
半年以上が過ぎた現在でも、局所的に高濃度に汚染された農産物が発見されると、「カリの施肥が足りなかった」等のコメント付きで報道されています。
カリの施肥(増肥)が勧められた唯一の根拠は、カリウム(K)とセシウム(Cs)は性質が似ているというものでした。
一体何が似ているのかというと、共に「最外殻電子数が"1"の典型元素である」と云うだけです。
化学反応は原子がくっついたり離れたりする現象ですが、この時に重要な役割を果たすのは原子核の周囲を回っている電子のなのですが、全ての電子は等価ではなく、一定の法則で層を作っており、一番外側を回っている電子だけが化学反応に携わります。
カリウムとセシウムは一番外側を回っている電子の状態が同じと云う意味です。
この仲間は元素の周期表で一番左側の列にあるもたちで、小さい順に、水素・リチウム・ナトリウム・カリウム・ルビジウム・セシウム・フランジウムの7種類です。
そうすると何が似てくるのでしょうか。
水(H2O:組成式)は水素2に対して酸素1の割合で出来ています。水素はいつも2つ一緒なのかというと、塩酸(HCl)のように1:1でお付き合いする事もありますね。
では、酸素の方にそういう趣味(二股)があるのかと云うと、生石灰(CaO)では1:1の清い交際ですね。
こういった、相手の種類と数の関係に法則があって、カリウムとセシウム(および他の5つの元素)は同じですよというだけの関係です。
当初に期待された効果は、カリ肥料の施肥がセシウムの土壌吸着や作物による吸収を妨害する(・・・筈だ)というものでした。
吸着を妨害すると云う事は、土壌溶液中に溶けた状態にすることであって、 ・栽培が困難となった土地(高濃度汚染地帯)で
・表土を掘り上げて洗浄(水洗い)する
のであれば有効ですが、作物の栽培を継続するのであれば、意図したこととは逆に「作物に吸収されやすくなる」ので絶対にやってはいけません。
また、表土を掘り上げての洗浄による除染を前提とした場合でも、カリ肥料の散布によって土壌への吸着を妨害すると下層へと移動するので、表土だけの洗浄では済まなくなる可能性もあります。
カリウム(K)と最も似た性質の元素はナトリウム(Na)ですが、其々陸のミネラル・海のミネラルと呼ばれるほど地球上では偏在しています。【後述「カリウムの挙動」を参照】
この違いは原子のサイズによるもので、ナトリウムの原子はカリウムよりも僅かに小さく、粘土に電気的に吸着された後でも雨水で洗い流されやすいからだそうです。
事故後の研究で、カリウムよりも更にサイズの大きなセシウムは粘土に吸着されると容易には離れられない都合のよいサイズらしく、吸着した粘土が崩壊しない限り土壌溶液中に出てこれなくなるようです。
カリ肥料の増肥は有害で、粘土粒子の崩壊を促進する土壌酸性の矯正(石灰散布)の方が重要になろうかと思いますが、一方で、土壌pHの上昇は微生物の活動を活発にして有機物の分解が進むため、腐植酸に吸着されたセシウムが解放されてしますという心配があります。(石灰の影響は、どうなるかわからないのが現状)
【実肥か根肥か?】
果樹類では実肥・玉肥と呼ばれ、欠乏すると果実の肥大が劣るが、野菜類では根肥と呼ばれ、特に根菜類での収量が落ちる。
[果樹と野菜]・[実肥と根肥]の関係が、リン酸とカリでは逆になる。
これらの特徴は、もともと欠乏症の診断法であったが、入門書等への中途半端な引用によって別の意味を持たされてしまったもの。
欠乏を起こしていない場所でカリの増肥をしても、果樹や根菜類の増収ができる訳ではない。(参照→リン酸の場合)
【果実品質】
果実の減酸に深く関与し、果実中のカリ濃度が高いと熟期に酸味の減るのが遅れる。
食味に関しては極めて微妙で、近年の消費者・指導者の中にも酸味を全く受け付けない人たちが増えており、同じ品種の評価であっても「甘いだけ」「食味が極めて優れる」と評価が2極化する事がある。
ただし食べ飽きする事に変わりは無いようで、「おいしい」と評されても1口限りで「もうたくさん」と云われ、おいしいけど売れない状態になるのは避けられない。
果樹や野菜類で、収穫前にカリ肥料を施用すると製品糖度は上昇するが、果汁中の肥料成分に糖度計が反応するだけの「お化粧効果」。
過剰な成分は代謝を妨げるので、糖分含量は減る事が多く、酸味が増えることで余計に甘味を感じにくくなる。
ただし、降水量の多い状態では肥料焼けに似た効果で吸水を制限するため、甘味が増える事もある。
(参照:糖度計は塩と砂糖の区別が付かない)
【土中カリ含量の実態】
2000年当時の調査では、国内でのカリの充足度は欠乏と過剰との両極端な地域に二分された。
「多い」「足りない」等、他所の状況は参考にならないので、自園の状況がどちらに当たるかは個別に調査す必要がある。
【土にたっぷりあるのに欠乏・・・と云う噂の正体】
土壌分析をすると、数十年分の過剰蓄積という結果が出るにもかかわらず、カリの欠乏症状が出たり、症状が無くても追肥をすると生育が良くなる場合があります。
【カリの挙動】
体内では常にイオンの形で存在し、膨圧の維持に役立つ。 土壌溶液中でもイオンとして動く。 体内で重要な有機化合物は、全く知られていない。
農学書ではチッ素に次いで流亡しやすいと書かれる事が多いが、理学書では「陸のミネラル」と呼ばれるほど陸地に偏在する。
これに対して、海水中に偏在するナトリウムを「海のミネラル」と云い、地球上のカリウムとナトリウムの存在量はほぼ同じと推定されている。
何億年のもの歳月を掛けても、雨が陸地のカリウムを洗い流す事はできなかった事を考えると、過剰時の対策として最も有望なのは作物による吸収で、作物残渣を持ち出すと、急速に消耗する。
「落ち葉に含まれる成分は、植物に不要なものなので、持ち出して処分した方がよい」と説くグループが存在するが、カルシウム、マンガン、鉄などの様に植物体内を再移動しにくい成分は、落葉やリーチングによって地面に落とし、根から再度吸収する以外に必要量を新しく出来た器官に移動させる事が出来ない。
・・・と、そこまで言わずとも、園芸家が「腐葉土」と称した落ち葉を買い求め、採取場所となった富士山麓などでは土地が痩せて植生が変わり始めたという現実を示すだけで、どちらかが間違いなのは明白。
一般に、土壌への保持されやすさは1価のイオンよりも2価のイオンの方が強いと言われるが、これは同じモル数で較べた場合の話で、存在する量が違えば1価のイオン(K+など) でも、2価のイオン(Ca++,Mg++)を押し出す形で流亡させ、カリウムの異常蓄積した土壌では、それ以外のミネラルが欠乏している事が多い。
大量要素としては高価な部類に属し、資源としても掘り尽くす寸前の成分。
既にアメリカでは輸出を中止して資源の保全を図っている。(2008年には中国でも100%の輸出関税を付加)
この点からも、短絡的に「カリウムは流亡しやすい」→「たくさん与えて良い」「過剰害が出にくい」→「多めに与えておけば安心」と考えてはいけない。
・カリの吸収・移動を助ける要素・・・NO3-N・B・Fe・Mn
・カリの吸収・移動を阻害する要素・・・NH3-N・Ca・Mg
※チッ素の形態による差は、土壌環境(酸化的か、還元的か)の違いによって根の生理状態が変化するためと考えるのが主流。通気性が良いとNO3-Nの割合が増えるというだけなので、施肥チッ素の形態による差は少ない。
※共に他の成分による影響は少なく、吸収量の大部分は土中濃度に左右され、むしろ、他の成分の吸収を阻害する作用に留意しなければならない
カリの過剰時に吸収が阻害される要素・・・N・Ca・Mg
【農外での利用】
・草木灰などから分離できるものは炭酸カリウムで、身近なアルカリ資材としてアク抜きや洗濯に用いられてきた。
※洗濯:油脂をアルカリと共に煮込んでできるのが「せっけん」で、脂汚れに直接摺り込んでも、せっけんもどきになって油性の汚れ(=脂分)が落ち易くなるらしい。
※アク抜き:山菜類のエグ味となるアルカロイド(←毒です)は、アルカリ性環境で可溶化する。
・加工食品の添加物の欄などに書いてある「○〇酸塩」の「塩」は、殆どがナトリウムかカリウムで、本体(○○酸の部分)の可溶性を増したり、酸味を中和するために加えられたもの。(原料価格の安価なナトリウム塩が多いが、ナトリウムによる高血圧を気にする風潮により、カリ塩が使用されることもある。カリウムと血圧を参照。)カリの方が毒性が高いので注意。
従来の測定値は、K2O (カリ、酸化カリウム)に換算して表示するのが慣例であったが、近年では K(カリウム)として表示される場合が増えたので、比較するときに注意する。
【原理】
水中でのカリウムイオンは、殆どの物質と化合物を作る事が無いが、カリボール(テトラフェニルホウ酸ナトリウム)と云う試薬は特別で、カリウムイオンと沈殿を作る性質を利用して、生じる濁りの程度からイオンの濃度を半定量する。
この試薬を使用する方法は多数発表されており、以下の手順は「渡辺式迅速養分テスト法」に拠る。
【試薬】
テトラフェニルホウ酸ナトリウム(Sodium Tetrapenylbolate/kalibor)
5%水溶液
※ 中性域では、直射日光を避けて保存すれば3ヶ月以上保存可能。
徐々に検出感度が低下するので、使用の都度、標準液との比較が必要。(調整液は密封して冷蔵し、目薬瓶などに小分けして取り出しながら使えば、貯蔵液は1年以上の使用に耐える)
【操作】
【診断】
| 水抽出(乾土比1:5) | |||||
| 比濁度 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| 新聞の文字 | よく読める | 見えるが 読めない | かすか に見える | 模様の様 に見える | 全く 見えない |
| テスト液中濃度 | 10ppm | 25 | 50 | 100 | 200 |
| 3.2me/L. | 8 | 16 | 32 | 64 | |
| 診断名 | 少ない | 適当 | 多い | 多すぎる | 過剰 |
| 単純換算による参考値(乾土比5倍・生土水分3倍) | |||||
| 乾土100g当り | 5mg | 12.5 | 25 | 50 | 100 |
| (10a換算) | 5kg | 12.5 | 25 | 50 | 100 |
| 土壌溶液中濃度 | 150ppm | 375 | 750 | 1,500 | 3,000 |
カリウムイオンを沈殿させるのに亜硝酸コバルトソーダを使用する方法で、カリボール法が登場するまで広く使われた。
妨害イオンの除去作業が煩雑で、実験室以外での操作は不可能。
・堀場製作所「コンパクトイオンメーター(K+)」
測定範囲:39〜39000ppm
試料要量:0.1ml
参考価格:\32,000(1998年8月)
・ORION社「イオンメーター」
本体とイオン選択電極の合算で約12〜27万円。イオン選択電極は20種。
・東亜電波社「イオンメーター」
pH,ORP,15種類のイオンから2種類を組み合わせて、約33万円
※上の2種は卓上型pH計のように、電極をビーカーの中の試料に浸すタイプなので、電極形状により30〜100mlの試料が必要(カタログ写真からの推定)
チッ素に較べて体内での再移動が遅く、果実肥大期の欠乏では果実周囲の葉から発生する。(チッ素の欠乏は常に下位葉から発生する))
欠乏すると萎れ易くなるため、光合成も妨げられて、伸張抑制・子実収量の低下が起こる。果実に青味が残ったり(着色不良)、イネでは青米が増える。
軟弱となり、病害虫への抵抗性が劣る。(吸収したチッ素がタンパク質へ合成されずに中間生成物のアミノ酸やアミドが集積し、病害虫にとって栄養抜群のエサになる)
根の伸張が悪く、根腐れを起こしやすい。根菜類では貯蔵性が低下する
果実肥大が悪く、味・外観共に劣る。
他のミネラルと異なり、不可給態化して「土の中にあるのに吸えない」状態になることはないが、土中カリの測定値が過剰状態でも欠乏が発生し、施肥が有効な対策になるケースが存在する。
(例)干ばつ時の潅水を少量ずつ頻繁に行うと、作物は水だけしか吸収できない状態となり、生育量の低下や葉縁焼けが発生する。(参照→カリの概要、吸水の仕組み、湿害〜2.潅水による害)
欠乏は、土中の不足だけとは限らず、根の障害や管理ミスによることも多いので、欠乏が確定しても対策が増肥とは限らない。
【主な欠乏症状】
欠乏症状には2つの型がある。ともに、生育初期には少なく、幼穂形成期頃・子実充実期・果実肥大期に現れ易い。
作物の種類による違い
【欠乏の起きやすい条件】
【応急処置】
欠乏症を発見したら即刻、リン酸1カリウム(=第1リン酸カリ)0.3%を散布。
土壌施肥での吸収も早い(数日でピークに達する)ので追肥する。
イネ・ムギで2〜4kg/10a、野菜類で(一般)3〜5、(結球野菜)6〜7kg/10a
【施肥】(畑全面に散布)
青米が増える(登熟不良)。
光合成能力が低下したり、炭水化物の移動が出来なくなるため。
分けつは多いが、草丈が低く、葉が短く濃緑色になる。
下葉全体に2〜5mmの褐色斑点を生じ、先端から枯死する。後に全体に拡がる。
特殊な欠乏症(青枯れ)
出穂20日目頃のデン粉蓄積期に、1〜2日間で急に青枯れ状態となる。根に近い稈が柔らかくなって倒伏するが、通常の倒伏と異なり、株内の一部分だけが倒れ始める。
葉での光合成や子葉への糖の転送に動員され、稈で不足して膨圧を失うためと考えれている。
特殊な欠乏症(赤枯れ)
分けつ最盛期から葉色が暗緑色となって草丈が伸びない。
葉が細く、古葉先端に多数の褐色斑点が出る。
稈が短く、黄金色とならずにどす黒い熟色となる。
湿田地帯などで酸欠で根腐れを起こしたのが原因でカリの吸収が出来ないときに発生する。
葉脈に沿って短〜円形の白斑を生じ、後に拡大してつながり、古葉から枯死する(白斑性カリ欠乏)。
ハダカムギの白斑は大きい。
クローバーの白斑は小さい(ハダニ被害よりやや大きな程度)。
古葉から黄変枯死。
新葉は濃緑で手触りが硬く、葉の皺が多い。
ダイコンと似た症状だが、葉が外側に湾曲するのが特徴
(外側に湾曲:葉縁が裏側に巻き込む事)
(ハンテン病)
欠乏がひどいと葉位を問わず発生する。
果実は上部がくびれて、ひょうたん型になる。
品種によって症状が違う
・ときわ夏節系・・・葉脈に囲まれた小区域が白斑になり、前面に多数の小班を生じる
・久留米H系・・・下葉は大型白斑となり、上位葉は葉脈間が薄緑になる。
果形が細長くなる(→過剰時の症状を参照)
吸収量・要求量が多く、極めて鋭敏な欠乏症状を示す。
結球開始頃、外葉の周辺部が鮮明な黄白色〜黄褐色になり、後に黒褐色となる。外葉全体が萎凋したようになり、下葉から次第に枯死する。
カリの要求量が多く、(N)1:(K)3〜4の施肥量が習慣になっている。
典型的な欠乏症状が古葉から現れる。下位葉から順位収穫するため、被害が甚大。
・製品の火持ちが悪くなる。
・葉全体が脆くなる。
・斑点細菌病が出やすくなる
カリの要求量が多い。
・葉が内側に湾曲(葉表同士が近づく)し、葉縁焼けとなる。
・イモの切り口に青味を帯びた輪が見られる。
・貯蔵中に中心から腐りやすい。
砂質土での栽培が多いため、欠乏しやすい。
生育初期の欠乏では、葉が紫を帯びた濃緑色となり、次第に古葉の周辺が黄褐色になって乾燥し、表側に湾曲し、葉脈沿いに褐色の壊死部が現れて拡大してゆく。
下葉が黄化して緬(縮)れる。
黄化は先端から始まり、葉縁に及び、全体が黄褐色化する。葉が細くなる。
根が伸びない。茎の下位節間が詰まる(短くなる)
穂の充実が悪い。粒が小さく先端は「しいな」になる
(「しいな」が多くても、それ以外の粒は充実して歯抜け状になる場合はホウ素欠乏を疑う。)
典型的な葉縁焼けとなる。
葉の周辺部から黄化し、中央部へと黄化が進み、葉縁が褐色になって壊死する
落葉は、頂部から始まる。(普通と逆なので珍しいかも?)
欠乏がひどいと果実肥大が止まり、果汁の酸含量が不足して味が呆ける。
欠乏診断の目安
・国光 葉中カリ濃度:1.22% 以下 果汁中濃度:910ppm 以下
・紅玉 葉中カリ濃度:1.43% 以下 果汁中濃度:970ppm 以下
開花60日以降になると急速に果実へ移行するので、結果量が多いと枝葉で欠乏を起こしやすくなる。
N/K≦4 (NがKの4倍以上)のとき、極端に果実品質が悪くなる。
(N/K=0.1〜2 が望ましい。)
他の果樹に比べ、欠乏を起こし易い。
果実の肥大期に葉色が薄くなって黄斑ができる。後に葉先から枯れ始め、小さな穴が散在するようになり、葉に生じた壊死部は次第に拡大する。
葉が内側に巻いて中肋が赤〜紫色になって飛び出てくるのが目立つようになる。(穿孔細菌病の症状と似ているので注意!!!)
または、枝の中程の葉の縁が褐色になって葉がよじれる。
チッ素の吸収が劣り、葉色が薄くなる。
果実肥大が劣る。果皮・果肉には変化が無い。
果実肥大期頃から葉縁が黄化し、外側に湾曲する(=葉縁が裏側に向かって巻く)
苦土欠乏と似ているが、カリ欠乏では緑色部との境界が鮮明で着色期〜成熟期に葉が厚く脆くなり、葉縁の褐色枯死と葉身の褐色枯死斑点が出来る。
果粒の肥大も悪くなる
欠乏は出にくい。
・葉の黄化や葉焼けは出来ない。
・葉が萎縮・奇形化したり新梢の伸びが悪くなる。
果実は、N:K=1:1〜1:1.5 のときに良品となる
葉の周辺が黄化を伴わずに褐変・壊死する。
葉縁が破れてギザギザになる。
過剰な施肥によってN・Ca・Mgと拮抗し、これらの要素の欠乏症を誘発する。特にMg欠が起こりやすい。
Mg欠乏の発生地帯で、苦土肥料を散布しても回復しない場合、カリウムの過剰症である事が多い。
果実類では酸の抜けが悪くなる。(カリの吸収量が一定以下の時は、施肥量と酸味が正相関を示し、酸抜けが収穫の目安になる様な作物では収穫時期が遅れるために、日持ちが悪くなる。)
カリを含む肥料の使用を中止する。稲ワラや堆厩肥に由来するカリの持込み量は意外に多いので留意する必要がある。
吸肥力の強い緑肥作物を導入する。ただし、刈り取った後で園内から持ち出さないと意味が無い。
拮抗する成分の肥料を増肥をする。N・Ca・Mgの欠乏が著しいが、あらゆるカチオン系成分が流亡し易くなるので、全成分に配慮が必要。
また、施肥を行ってもカリの過剰状態では土壌に保持されにくいため、分肥するか、「ようりん」や「FTE」のようなク溶性で溶けにくい肥料を併用する。
毎年多用している園では葉が硬化し、枝の伸びが悪く、樹全体が矮性化する。
果実表面が粗く、着色不良、甘味少なく、風味劣る。
倒伏防止の目的等でカリを過剰に追肥したとき、チッ素の吸収が阻害されていもち病が出易くなる。
果実の中心柱が太くなり、縦断すると白く目立つ。
果形が短くなる。
茎頂付近の成葉の中肋部分から得た搾汁液より、K+ として 4〜5000ppm が適正値。これ以下では果形が長くなり、これ以上では短くなる(現代農業1997/10 68-69pp.)
2000年1月現在、N・Pのみの化成肥料の登録は見当たらず、単味肥料で対応する他無いため、カリの過剰を解消しようとすると、施肥の手間が大幅に増えるのが現状。
成分がN・Pのみで、カリを含まない化成肥料(りん安など)は大量に輸入されているが、塩化カリなどを添加した3要素入りに加工して販売されている。(カリ信仰の盛んな日本では、カリを含まない化成肥料の需要が無い)
F.T.E.(←カリ肥料ではない)
「ようりん」のようなガラス質の細粒で、微量要素6成分を配合したもの。(製品によって配合割合が異なる) 根酸などによって徐々に溶けて吸収される「ク溶性」で、肥効が長続きすると共に過剰害が起こりにくく、地下水の汚染なども少ない。
(全く知らない人に説明する場合、「ようりん」からリン酸分を抜いた、微量要素だけのものと云った方が通じ易い)
【塩化カリと硫酸カリ】
2者の違いは、副成分の違いが全て。
塩化物イオン(−に荷電した塩素のイオン)が作物に吸収されると、タバコでは火付きが悪くなったり、繊維状の組織が強化されてイモ類では筋っぽくなって食感に影響するので、これらの作物専用に硫酸カリを配合したものが市販されている。
一方の硫酸化物イオンに含まれる硫黄(イオウ)は作物にとって必須要素の一種で、比較的多量に要求されるが、硫酸化物イオンを殆ど含まない高度化成肥料を連用した畑では不足するため、肥料としての効果が高い。
ただし、イオウの給源として最も安価なのは過リン酸石灰で、石膏(硫酸カルシウム)が重量の約60%を占める。(詳細は、
「(Cl)塩素」と
「(S)硫黄」の項を参照。)
※ 補足:最近の理科では、陽イオンの名前は原子名に「-イオン」を付け、陰イオンには「-化物イオン」を付けて区別するように指導されているんだとよ。
一部の肥料商が「ドンナン理論」の解説と称して、「塩化カリよりも硫酸カリの方が吸収されやすく、果実糖度の上昇に効果がある」と云っているが、ドンナン理論はそういう理論ではない。
引用元とされる【熊沢喜久雄・西沢直子:植物の養分吸収(東京大学出版会、1976)】を改めて読み直したが見つからない。
1:1に分離する塩化カリ(Cl-:K+)と比較しているのは、1:2に分離する塩化カルシウム(2Cl-:Ca++)で、公式を展開すると、1価のイオン(K+)よりも、2価のイオン(Ca++)の方が拡散(≒吸収)しやすいと云う結論が導かれている(硫酸カリは出て来ない。)
読み違えた箇所を推測すると・・・
(1)引用書の該当箇所にに登場する「塩化カルシウム」を「塩化カリウム」と読み間違え、塩化加里に含まれるカリウムは1価のイオンになるが、硫酸加里のカリウムは2価のイオンになると誤解した。
(2)化学式にしたとき、塩化カリ1分子にはカリウム原子が1個は含まれるのに対して、硫酸カリウム分子にはカリウム原子が2個含まれるので、化学式だけ見れば硫酸カリの方が「お得」に見えてしまうのかも?。
重量比で較べると、肥料として市販されている塩化カリのカリ濃度は60%に対して、硫酸カリは50%なのに、お値段は硫酸カリの方が高いので、塩化カリの方が絶対にオトク。さあ、どうする!
(3)文中に解離定数を表す「K」という記号が登場するので、これをカリウムの原素記号と誤解した可能性も高い。
「K」実値はとても小さな値なので普段扱うには不便ですから、pHのような方法(-logK:10-7→7.0)で算術変換した「pK」と云う記号が使われる事もありますが、こちらの関係者は必ず「リン酸加里」と翻訳なさいます。
・・・・・・・・
・ドンナン理論は、根の近傍で正負のイオンが偏在する(片寄る)理由を物理現象として説明したもので、根の生死は問わず、−に荷電していれば有機物(腐植酸)や粘土でも同様に起こる現象。
・糖度計は砂糖と塩の区別が付かないので、作物体内のカリウム濃度を高めれば糖度計の示度を高くする事は可能だが、甘味は増えない。
さらに、カリの過剰は酸抜けをが悪くするので、酸味が強すぎる事で甘味が減る事が多い。
【塩化カリ(塩加)】
最も一般的なカリ肥料。純品は無色の結晶だが、原料に由来する鉄分を多く含んだ真っ赤な製品が増えている。
【硫酸カリ(硫加)】
淡黄色粉状の製品が流通している(粒状品の流通は不明)。
塩素を嫌う作物(タバコ・いも類)に使用され、それらの作物向けに配合された化成肥料の原料に使われるが、塩化カリよりも高価なので、これら以外の化成肥料に配合されるのは稀れ。
粉状品は微量要素肥料などの増量剤(散き易くするためのもの)として重宝する。
果類でも繊維が問題になる品種(リンゴ:ジョナゴ−ルドなど)では、硫酸カリを使用した方が良い場合もある。
【リン酸カリ(リン加)】
主として化成肥料の原料として使用され、肥料として単品では入手困難。(食品添加物としてなら流通している)
化成肥料の解説で、「2つ以上の成分を化学的に反応させたもの」とは、このような材料を使っているという意味。
【硝酸カリ(硝石)】
黒色火薬の原料として水戸黄門などのチャンバラ時代劇で有名。戦後の一時期、肥料としても出回って納屋ごと吹き飛ぶ事故もあったらしい。
化成肥料の原料にもなっている。
【化成肥料】 銘柄に付された数字の前に「S」を付したもの(「S21号」など)は硫酸カリを原料に使用しており、いも類・タバコなどの専用肥料として販売されている。
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