1999/12/31〜2008/2/5,2009/1/30,2011/10/05
・肥料では、化学名の「マグネシウム」の部分を「苦土」に置き換えて呼ぶ事が多い(硫酸マグネシウム→硫酸苦土)。
・狭義の「苦土」は MgO(酸化マグネシウム) の事で、酸に溶けて苦味のある塩を作る。
MgCl2・・・にがり
MgSO4・・・瀉利塩(しゃりえん:いわゆる下剤)
・・・とは云うものの、これらの水溶液を直接舐めてもさほどの苦味を感じる訳ではありません。豆乳などに混ぜると途端に苦味が強くなります。
豆腐にした場合、MgCl2 と MgSO4 では味が異なり、MgSO4 の方が強い苦味を感じます。
以前は本物の味と称して、苦味の強い MgSO4 を使用した豆腐を褒める方たちも多くいましたが、(不味いので)当地では2010年頃に店頭から消えました。(本モノはMgCl2を使った方)
豆腐屋としては MgSO4 の方が使い易いらしく、硬く仕上げる事ができるので凍み豆腐の材料にする場合は今でも MgSO4 を使用するそうです。
多量要素なので、野菜類では毎年施肥の必要な成分だが、果樹では施肥されない事が多い。
苦土は土壌中に十分あっても、作物体中では不足していることが多く、多くの場合N・Kの過剰や根痛みが原因。診断の際は苦土以外の要因も考慮しなければならない。
リン酸と双助関係にあり、一方が不足すると吸収・移動が妨げられて双方同時に欠乏症状を起こす事が多い。
主な資材の原料鉱石は蛇紋岩で、ニッケルを0.1%含む他、蛇紋岩は必ずクロム鉄鉱と共存する。
天然の鉱石粉には有害なNi・Crを含むので、有機栽培など特殊な事情がある場合を除き、必ず加工品(肥料として登録されたもの)を使用すること。
この他に、キーゼライト(硫酸苦土が主成分、独・ハートザルツ産)やブルーサイト(水酸化苦土が主成分、中国産/水滑石)などを粉砕したものがJAS・有機農法対応肥料として市販されている。
光合成全般に密接に関わりをもち、症状の出ない「潜在的欠乏」によって収量が低下している事がある。
家庭菜園などで、苦土欠乏は肋骨模様の黄斑ができるので診断は容易だと流布されている事がありますが、似た症状を表す他の成分による障害や、別の成分による拮抗阻害などもあるので、経験無しに容易に診断できるものではありません。
生体内で葉緑素の素材に使われているのは約1割で、その他は酵素の活性化や架橋剤として働いている。欠乏時の消失順位は、
この関係をグラフにしてみました。 海水に含まれる塩化マグネシウムは、塩化ナトリウムに比べて湿りやすく(吸湿性≒潮解性が強い)主婦から嫌われた。
空煎りすると炭酸マグネシウムに変わって吸湿性が低下するので、主婦の知恵として広まった時代もあるが、純度の高い製品が広まってこうした工夫は忘れられた。
海水から塩を製造する過程でも最後まで結晶化せずに残るので、極めて長時間かけて出来た岩塩などは意外に純度の高い塩化ナトリウムの結晶となる。
火力乾燥の天然塩では、煮詰めた後、下部に穴の開いた筒に詰めて塩化マグネシウムの濃厚溶液を抜く「苦り抜き」の工程があり、これをしないと苦味が強すぎて調味料として使えない(らしい)。
現代では不足が問題にされ、純度の高い塩シオを悪者扱いする風潮があるものの、これはみんなが望んだ事で、マグネシウムを排除する事が食品化学の歴史でもあった事を忘れてはいけない(過如不及の見本!)。
【人体での役割】
・ストレスを受けたときに分泌されるノルアドレナリンは、Mgを汗や尿と一緒に排出する副作用がある。
・肉には、ほとんど含まれていない。
多く含む食品−−マメ・ゴマ・魚類・シイタケ・野菜類全般
・近年の野菜では減少しており、土壌中での欠乏による減少に加え、カット野菜化(細断後の水さらし)による流失が顕著。
農薬の使用で3割減ると言われている(雨による葉からの流失が増えるため)。
・2004年4月1日より栄養機能食品表示基準が改正され、マグネシウムが追加になった。以下は、表示基準
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・苦土と呼ばれ、食品や飲料水中に多量に含まれると味が悪く、下痢を起こすなど「あく」の成分でもあるため、飲食用水中に多量に含まれる地域では、取り出して捨てるための調理法が工夫されてきた。
硬水である黄河(中国)流域の調理では、煮炊きに先立って軟水化する作業が必須で、日本で言うところの「だし汁」や「スープ」つくりに当たり、タンパク質を含む材料を煮て、泡状に浮き上がった苦土化合物を取り去らなければならない。
注・「あく」の多くは、山菜などに含まれるアルカロイドと呼ばれる神経毒を指し、これらはアルカリ性にすると溶け易くなる為、「あく抜き」と称してカリ灰(草木灰のこと、炭酸カリウムが主成分)などを加えて煮出す事が多い。(灰をアクと読み、灰汁で毒を抜くと云う意味)
このとき、マグネシウムもカリウムに置換されて煮汁中に出てくるので、苦味も少なくなる。
・無機の苦土塩は吸収されにくく、有機物と化合したものを摂取しなければならない。
吸収され難さが下痢の原因になったり、純粋な苦土塩溶液を舐めても苦味がない原因になっているらしい。
・2004年末から2005年に掛けて、「にがりダイエット」がブームとなった。
にがり液には多量の塩化マグネシウムが含まれ、過剰に摂取すると下痢を起こして急激な体重の減少が起こるが、あくまで「下痢」なので、常用すると脱水症や必要な栄養分の摂取が出来ずに深刻な健康被害を起こす危険があり、厚生労働省などから注意が呼び掛けられた。
「スイマグ」「ミルマグ」などの商品名で市販されている水酸化マグネシウム・スラリー(どろどろの懸濁液)は、胃酸過多等に少量を服用するものだが、定期的に大量摂取して下痢を起こすのにも使われる事があり、彼らの多くは「洗腸マニア」と呼ばれている。
下痢の程度には個人差があるといわれているが、摂取のタイミングでも大きく異なる。食事の30分前くらいに摂取すると激しい下痢症状を起こすが、食事に混ぜたり食後の服用では下剤としての効果が現れない事が多い。
この現象はオリゴ糖入りの食品や甘味料(シロップ)などでも同様に起こる。
病院で、軽い便秘には酸化マグネシウムの錠剤が処方されることがあります。
リン酸と同様、基準物質は精製のし易い酸化マグネシウム(MgO)
※冶金では炭で還元できる限界が鉄であり、鉄よりもイオン化傾向が大きいマグネシウムは錬金術の時代から長い間、単体の金属として取り出せなかった名残り。
(解説や操作法に原案と異なる部分があります。
富士平工業の簡易土壌分析器も原理は同じもの)
【試薬の調製】
【操作】
【判定】
| 水抽出(乾土比1:5) | |||||
| 呈色度 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| テスト液中濃度 | 2.5ppm | 5 | 10 | 20 | 50 |
| 1.9me/L. | 3.7 | 34 | 15 | 37 | |
| 診断 | やや少い | 適 | やや多い | 多い | 過剰 |
| 10%酢酸ナトリウム液抽出 | |||||
| 呈色度 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| テスト液中濃度 | (水抽出と同じ) | ||||
| 診断 | ← 欠乏 → | 少い | 適 | ||
| 単純換算による参考値(乾土比5倍・生土水分3倍) | |||||
| 乾土100g当り | 1.3 mg | 2.5 | 5 | 10 | 25 |
| 土壌溶液中濃度 | 38ppm | 75 | 150 | 300 | 750 |
生理障害の原因がリン酸の欠乏であった場合にも、苦土の補給によってリン酸の体内移動が助けられ、症状が改善されることが多いので診断の際に留意が必要。
リン酸と共に成長の盛んな新芽や子実に移動するため、下葉・古葉・果実付近の葉に症状が現れ易く、特に収穫期に現れ易い。
果樹類で、ひどい欠乏症状(落葉など)が発生したときには、樹幹〜根中のMg含量も低下しているため、施肥を行っても回復するまでには2〜3年掛かる。(全摘果などの着果制限をすると早く回復する)
果実の着色に影響し、葉面散布が有効に働く場合がある。
欠乏症状の発生後に葉面散布を行っても肉眼で判る効果が出るには3〜4週間を要する為、徐々に進行が止まるだけで、いったん黄化した葉が回復することは無く、落葉によって目立たなくなるだけである。
葉面散布で補給されたMgの初期吸収は早いが、移動しにくいため短時間で飽和してしまう(葉の内外濃度差が無くなって吸収が止まる→繰り返し散布しないと効果が出ない)ので、7〜10日おきに3〜5回の散布が必要。
【主な欠乏症状】
【初期症状の分類】
【カリ欠乏との比較】
カリ欠乏では葉縁だけが黄色化した後に茶褐色になって枯死するので、縁取り状に黄色の部分と緑色のままの部分が偏在するが、マグネシウム欠乏では葉脈付近だけ肋骨状に緑色を残して全体的に黄色化する(2色が入り乱れる)
※語注
・偏在:1枚の葉の中で、色の違う部分どうしがはっきりと分かれて存在する状態で、「鮮明に分かれる」と表現されることも多い。
・混在:色の異なる小さな区画が入り乱れる状態。
・点在:色の異なる小さな区画が僅かにある状態。
・扁在:「イ(にんべん)」の付いた偏在とは正反対の「まんべんなく」という意味。読みはどちらも「へんざい」
【欠乏の起きやすい条件】
カリウムとの拮抗が著しく、マグネシウム含量の少ない畑でカリの増肥をして発症するケースが多い。カルシウムとも拮抗し易い。
土壌から流亡しやすく、酸性土壌で著しい。
置換性マグネシウムが「8〜10mg/100g乾土」 以下になると発生しやすくなる。
Mg要求量の多い作物が増え、単位面積あたりの収量も増えたため、土壌中の含量が不足してきている。
果樹では、結果過多で発生しやすく、労力不足などで摘果を怠ると発生しやすい。
リン酸の欠乏が原因で苦土の移動が妨げられる為、リン酸の施用のみで回復する事も多いので、診断は平行して行わないと誤診しやすい。
【応急処置】
葉面散布:硫酸マグネシウム1〜2%液を10日おきに5〜6回散布する。
追肥:
| 土壌が酸性の場合(<pH6.0) | 苦土石灰80〜100kg/10a | 水に溶かして畦間に流し込むか、粉末のまま散布した後で潅水する、 |
| 水酸化マグネシウム 60kg/10a | ||
| 土壌がアルカリ性の場合(>pH6.0) | 肥料用硫酸マグネシウム | |
| キーゼライト |
・土壌pHの上昇に伴って苦土の吸収が低下するのと反対に、pHが低いままだと溶脱が増えて利用量が減るので、資材の選択に留意する。
【根本的対策】
(症状は不鮮明で、見落としされやすい)
田植え後3〜4週目に下葉の先端から縞状に黄化して窒素欠乏に似ているが、葉舌のところから直角に垂れ下がる(ユウレイ病)。
下葉は後に枯死・消失して、分けつ盛期には判らなくなる。
着粒数への影響は報告によってまちまちだが、欠乏圃場では枝梗基部の籾が不稔となることがある。
下葉が黄化して、葉を透かすと緑色の斑点が数珠玉状に見える(波打った黄色い筋になる)
進行すると葉先が黄化し、葉縁の褐変枯死や、褐色に縁取られた白斑を生じ、枯れる。
葉が軟弱になって垂れ下がり、黄白化してタコ足状に地面を這う(青枯れ症)。
並行する葉脈間に黄色の筋が入る(白色のこともある)。
下葉や果実の付いた近くの葉から黄化する。
葉脈の周りから黄化して全体に及び、ひどくなると落葉する。
(キュウリでの症状は、広葉作物の典型的症状)
(他の作物と異なる例外的な症状を示す)
葉脈間が黄化する。黄化が紫色に変わったり葉裏の葉脈付近が赤〜紫色になってリン酸欠乏と似ているが、マグネシウム欠乏独特の古葉の黄化を伴う。
根の肥大が始まる頃から葉縁が黄化し、葉脈間へと拡がる(けっこう綺麗な模様だったりする)
イシュク病と間違えられやすいが、不規則な萎縮症状は出ないので区別できる。また、イシュク病では黄化斑の出方が不規則で斑紋部分が脆くなる。
ダイコンの症状と似ているが、葉縁の黄化部分が後に灰色になって壊死する。
下葉または中間葉の葉脈間が黄化する。
果実のたくさん付いたところの被害が大きい。
結球開始頃から収穫期にかけて発生する。
外葉先端から黄化が始まり、周辺部と葉脈間に進行する。
古葉の葉脈間が斑点状に緑色が薄くなり、黄白化する。後に褐色に壊死することもある。
心葉だけ緑色で古い葉は黄色を経て褐色に枯死。
葉脈間が斑点状に黄化し、網目状になる。
葉脈間が黒紫色になり、進行すると葉縁部がチョコレート色になる。
欠乏初期の黄化は見られない。
葉脈間に薄い緑色の部分が出来、後に白色を経て褐色の斑点となる。
進行すると、葉が外に巻き、下葉全体が黄化、葉縁が褐色に枯死する。
果実の肥大〜着色期に、葉が黄化し始める。着果過多で必ず発生する。
はじめ、葉の先端・葉縁・葉脈近傍に緑色を残しながら、中肋付近から葉縁に向かって平行に黄化が始まる。
(中肋付近から葉縁に向かって広がる。葉脈にもはじめのうちは緑色が残るので、胸のレントゲン写真のようになる。)
早生温州が最も発生しやすく、三宝柑・夏ダイダイ・ハッサク・ネーブルオレンジは発生しにくい。普通温州は最も発生しにくい。カラタチ台よりもユズ台で起こり易い。
・発育枝や結果枝先端には出ない。
・症状が進行すると、全体がぼけた色になって落葉する。
・隔年結果する。
・健全樹の葉中Mg:0.25%以上
・欠乏樹の葉中Mg:0.05〜0.20%(いずれも温州)
「しまっ葉」「トラ葉」と呼ぶ地方があるが、他作物で別の原因(Mn欠乏など)のものを指す場合があるので注意が必要。
カリ欠乏との比較
| カリ欠 | 葉縁の黄化部は褐変する | 葉柄付近は緑色が残る |
| 苦土欠 | 黄化部は褐変しない | 葉全体が葉脈を残して黄化する |
葉縁と葉脈間が淡緑色になり、次に白緑色になる。その後、紫色の大きな斑紋が出て壊死・落葉に至る(ブロッチ、帯黄病)
果実の貯蔵が劣る(ボケ易くなる)。
褐斑病等に冒され易くなり、病斑形成が黄化と同時に進行するが、殺菌剤を散布しても落葉は止まらない。
着果量が多いほど被害も大きく、最終肥大期には半日程度で黄色化が完了し、落葉まで数日しか掛からない場合もある。
葉脈間が失緑して次第に壊死する。(知らない人が見れば綺麗・・・、後に哀れな姿になる)
秋の黄化・落葉が早くなる。
根の伸張再開に伴うもので、チッ素過多だと根の伸長が抑制されるため黄化・落葉が遅れ、「チッ素が足りない」「チッ素過多が改善された」と思い込まれている事がある。
過剰時の拮抗成分(N・K)によるカウンター効果は皆無で、根本対策は Mg含有資材の投入中止しかない。
【Mg過剰で誘発される他要素の欠乏症の対策】
土壌 pH6.0 以上のときは、第1リン酸カルシウム 0.3%液か、塩化カルシウム0.3〜0.5%液の葉面散布を行う。
土壌が酸性の時は、肥料用石灰を100kg施肥する。
pHが高く、Ca・Mgとも過剰のときは、B・Mg・Zn等の欠乏対策を個別に行う。
塩基飽和度は80%を理想とし、
当量比=Ca(50%):Mg(20%):K(10%) にする。
・・・Ca/Mg=2.5、Ca/K=5.0、Mg/K=2.0
原料による分類
・海マグ:海水から作るもの。精製度高いが、ほかのミネラルが少ない。
・山マグ:岩石から作るもの。精製度低いが、ほかのミネラルを含む。
水酸化苦土
海水中に0.3%含まれる塩化マグネシウム(MgCl)に、石灰乳を加えて水酸化マグネシウム(Mg(OH)2) として沈殿させ、水洗・乾燥させて粉末にしたもの。(ク溶性)
製造直後はフワフワして飛散するため扱いにくいが、1年放置すると散布作業が楽になります。
硫酸苦土(海マグ)
水酸化苦土スラリー(水を加えてゆるい泥状にしたもの)に硫酸を加え、熟成して作る。水溶性のため、流亡し易いので追肥を主に必ず分肥すること
硫酸苦土(山マグ)
蛇紋岩・カンラン岩(主として国内産)を粉砕し、硫酸を加えて抽出したもの。
天然硫酸苦土(JAS・有機農法対応)
キーゼライト(独・ハートザルツ産)を粉砕生成したもの。
天然水酸化苦土(JAS・有機農法対応)
水滑石・ブルーサイト(中国産)を粉砕生成したもの。
現在では製法に拠らず「塩化マグネシウム」の別名となったが、古くは、海水を天日で濃縮した後に釜炊き(燃焼による加熱)して塩を得る過程で、水分がなくなる前に絞って得た水溶液のこと。
塩化ナトリウムとの溶解度の違いから、大部分の塩化マグネシウムが結晶化せずに、水溶液として分離できる。
この操作は「あく抜き」と呼ばれ、塩の味を良くするための工程であった。
【教訓】海水中の主要な塩化物の中でも溶解度の低い塩化ナトリウムは析出し易く、鉱物として産出する「岩塩(がんえん)」や海水から製造する「海塩(かいえん)」は、想像以上に純度が高く、海水の組成とは異なる。
仮に海水と同じ組成の「塩(しお)」を作っても苦すぎて食用に耐えないばかりか、下痢をします。
某・食通漫画の台詞を鵜呑みにして恥をかかないようにね(^^;
カルシウム系肥料は別項(石灰類)参照。
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