花粉の発芽試験
pollen_test
2007/7/1
ホウ素の欠乏で起こる不稔傷害を確かめるには、花粉の発芽試験を行うのが最も確実である。
準備
- 顕微鏡
大まかな判定なら肉眼でも可能だが、障害の程度を数値化するには必須で、観察は、100〜200倍で行う。
夏休み近くになると小学生向け自由研究用に販売される玩具もどきの製品で十分間に合う。(1500〜3000円くらい各種あるが、観察に適した倍率が得られるかを確認する事)
本格的な20万円以上の製品との違いは、レンズの解像度と明るさの他、ピントを合わせる機構の精度なので、玩具もどきの製品では実用上の上限は100倍程度で、仮に600倍の性能を謳っていても観察は困難。いたずらに高倍率である事は選択の条件とならない。
- スライドグラス・カバーグラス
スライドグラスは、本体に添付された物だけでは不足するので買い足すか、板ガラスを切って自作する。材質や加工の違いで値段は大きく違い、100枚入りで600円程度から。
文具店で売られている工作用の透明な樹脂シート(プラ板)や、角型のペットボトル、包装ケースなどを切って使っても良い。
プラ版を買い求める時は、薄すぎると扱いにくいが、1mm 以上になるとハサミでは切れないので、専用のカッターが必要になる。B4サイズ×0.35mm厚 で 150〜200円くらい。
- カバーグラス
カバーグラスは解像度に影響するので、レンズの性能に合わせた物を選ばなければならないが、玩具もどきの顕微鏡で発芽試験に使うだけなら無くても構わない。
スライドグラスの代用にしたような樹脂シートをもう1枚上に乗せて試料を挟むようにしたり、さらに薄手のシートを切って代用しても構わない。
- 湿室
花粉を置いたスライドグラス(または代用品)を納めて発芽させるためのもの。底部に水を入れて加湿するため、スライドグラスが水に触れないための台も必要。
角型の食品保存用シール容器の底に適当な長さに切ったストローを置いて台にしたり、小型の水切りバット(底に水きり網の付いたもの)にラップフィルムで蓋をして使用する事ができる。
蛇腹付きのストローを適当な長さに切って「く」の字に曲げて使うと転がらなくて具合が良い。
- 培地材料
- 寒天
- 砂糖(グラニュー糖か氷砂糖が望ましい。上白糖以下ではカブレ易い)
- ホウ酸
- 計量器具
- 貯蔵瓶:100cc 入る蓋つきのドリンク剤空き瓶などを3つ
- 梵天または化粧筆など
スライドグラス上に拡げた培地に花粉を散らすためのもの
手順
一般的な組成:
水・・・・100ml
寒天・・・1(〜2.5)g
ショ糖・・10(〜20)g
ホウ酸・・10(〜20)ppm
※ ショ糖添加の目的は、栄養源ではなく浸透圧調整で、植物の種類によって適量が異なる(・・・らしい)。
- 培地の調整手順(組成は例)
- 水100cc に、ホウ酸 1g を溶かした溶液(ホウ酸1%溶液)を作る。
- 貯蔵瓶を3つ用意して、それぞれに「発芽試験培地・ホウ素0ppm」「発芽試験培地・ホウ素1ppm」「発芽試験培地・ホウ素10ppm」と書いたラベルを貼る
後でやろうとすると取り違える元になるので、必ず最初に書いてしまうこと。
- 水300cc に、寒天 3g 砂糖 30g を煮溶かした溶液を作り、100cc ずつ3つに分ける。
- 寒天液の1つに、最初に作ったホウ酸溶液を2滴入れて掻き混ぜる。これは、10ppm のホウ酸入り培地となる。
- もう1つの寒天液に、ホウ酸溶液を10倍に薄めてから2滴入れて掻き混ぜる。これは、1ppm のホウ酸入り培地となる。
- 残った寒天液は滅菌して密封すれば何年でも使用できるが、ホウ酸は有毒なので、誤って口に入れる事の無い場所が確保できない時は処分する。
寒天液は概ね30℃以下になると固まるため、以上の操作は手早く行い、固まりそうになった時(←粘りが強くなる)は、湯煎して再加熱する。
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【保存と廃棄】
ホウ酸を添加しなかったものは、トレーなどに流して固めれば砂糖入り寒天として食べる事ができる。
廃棄する時は、そのまま畑に散いてもよいが、溶けた状態で10倍以上に薄めると冷えても固まらなくなる。薄める時は、ぬるま湯を使用する事。
- 予め、スライドグラス(または、シート)の端に油性ペンで ホウ素濃度(0,1,10)を書いてから、中央部に寒天液を垂らして固まらせる。
幅は2cm程度でよい。横にはみ出して垂れてしまったら固まってから取り除く。表面が平らにならない時は、温度が低すぎるので、すぐに加熱し直さないと固まってしまう。
- 花粉を梵天や水彩筆の先で少量取り出し、スライドグラス上で固まった寒天培地に振り掛ける。
あまり多いと観察し難くなるので、僅かに散らばる程度にする。
- 湿室容器の底に水を入れ、スライドグラスを並べて蓋をする。
- 恒温器に入れるか、直射日光の当たらない暖かい場所において発芽させる。
通常、25℃で2〜3時間かかる。30℃以上では死滅する事があるので、恒温器の無い時は注意を要する。
判定
培地上の花粉が発芽するとカビが生えたようになるので、3種類の培地のうちどれか1つが発芽したようなら観察する。
冷蔵庫に入れてしまえば発芽は中断するので、余裕のある時に観察できる。(外に出すと再開するので、中断させる事も出来る)
温度によって時間は変わるが、12時間〜3日くらい。
発芽しても花粉管がよじれて屈曲したり、長く伸びないものは、ホウ素欠乏を起こしている可能性が高く、肉眼で観察してもカビ状の”もやもや”が少ないので違いが判る。