幼児教育論
 どんな仕事でもそうだろうが、心身ともに疲れるのでしばらくは幼児教育の現場に復帰はしたくない。先日まで勤めていた保育園は4年勤めた。その前にも違う保育園に2年勤めた。その前は幼稚園に4年勤めていた。実は、ワタシは幼稚園の方が職場的にスキなのである。ただ、幼稚園っていうのは新卒しか採用してくれなかったりするので、仕方なく保育園に再就職したりするのだ。

 保育園と幼稚園を一緒にされちゃ困る。この2つは全く違う役割を持っているので当然、就職の際に必用とする資格も違う。保育園っていうのは、児童福祉施設のヒトツなのだ。両親が共働きであるとか、なんらかの事情で家庭で保育が出来ない子供を預かる施設なのである。幼稚園というは、学校教育法の規定に基づいて設置される3歳から小学校入学までの幼児を入園させて教育を行う学校なのだ。
基本的に、保育園は両親が共働きなどの理由で子供を預けているのでお正月休み以外は土日祝日を除いて毎日。幼稚園は、ちゃんと教育週数が決まっている。確か、39週を下ってはいけないとあったハズだ。夏休みや冬休みがあるのはその為だ。どちらも子供を相手にする仕事なんだけど、実は中身はこんなに違うのである。仕事をするヒトに求められるものも全然違うのである。

 最初に就職した幼稚園は、学生の時に教育実習でお世話になった幼稚園がカトリック系のところでその系列の幼稚園だった。入ってすぐに注意されたのが、言葉使いと服装。「こっちにおいで」じゃなくて「いらっしゃい」「お母さん」じゃなくて「お母様」なのだ。「おばあちゃん」にいたっては「おばあちゃま」なのである。どう考えても「じじぃ」としか見えないようなヒトでも「おじいちゃま」と呼ばなくちゃいけない。呼ぶ方も恥ずかしいが、呼ばれた方はもっと恥ずかしいであろう。服装に関しては、基本的には動きやすい服装でオッケイなのだが、子供にとって母親がキレイにお化粧をしていると嬉しいと感じるように、担任がキレイに着飾っていると嬉しいと感じるものらしい。そんな理由でワタシ達の服装なんかも時々注意されたりした。そういう教頭であるシスターは、いっつも同じ修道服でノーメイクなのに。
 新学期になると、年間指導計画というのを立てる。それを基にして月案というのを作り、さらに週案、日案まで作られる。これらの指導計画は、すべて文部省で定めた教育要領を基に考えるのだ。やってることは、小学校や中学校と変わらないと思う。ただ、幼稚園での教育時間は1日4時間を標準としているので子供が園にいる時間が短い。週に2日はお弁当なしで11時30分頃に降園し、その他の日はお弁当を食べて13時30分頃に降園するのが一般的な幼稚園の生活時間だと思う。これは決して楽じゃないのだ。限られた時間内で、子供に製作やらなにならをさせなくちゃいけなのは大変だ。しかも、それなりにきちんとしたものを作らせなくちゃいけないのである。その為に、事前に準備が必要なのであり、その準備のために遅くまで残業するのだ。恐るべきことに、そういう製作の時間っていうのは毎週必ずある。その他にも、園全体の行事もあったりしてその準備もしなくちゃいけない。必然的に毎日残業。しまいには、家にもって帰ってやらなくちゃいけない仕事もあったりする。夏休みや冬休みがあっていいなぁ〜と言われることがあるが、なくちゃ死ぬ。その休みがあるから頑張れるのだ。

ある日の幼稚園での1日の流れ
〜9:15  各自登園 身支度を整えてお遊戯室で自由遊び
〜9:30  お片付け 排泄 お遊戯室にクラス毎に整列し体操、朝礼
〜9:50  各クラスに入室 朝の会
〜10:00 設定保育
〜10:45 排泄 帰る支度
〜11:00 帰りの会
〜11:25 帰るコース毎に外に整列
〜11:30 降園

 幼稚園を退職した後、せっかく資格をもってるのだから・・・・と保育園に就職してみた。前の仕事の経験があるから、特に不安はなかったけれど入って見て力が抜けた。とにかく「ラクチン」なのだ。指導案なんてあってないようなもんだ。一応、保育所保育指針という教育要領みたいな指導書はあるのだが、置いてあるだけで読んでいるヒトなんていなかった。監査がきた時に困らないように、去年の書類を適当に移し書きをしておけばいい。天気のいい日は散歩か外遊び。雨が降ったら室内遊び。たまに、動物園に遠足に行ったりしたら動物の絵なんかを書いたりする。毎日そんな感じ。残業だって滅多にない。あってもちゃんと手当てがつく。服装はいっつもジャージとエプロン。言葉使いだって、気を使わなくっていい。保母さんという呼ばれ方がなんかイヤで、今までずっと保育園で仕事をすることは考えてなかったのだが、こんなにラクチンだったとは知らなかった。
 でも、最初に教えられたやり方がどうしても抜けない。伸び伸びと自由に遊ぶ子供たちもいいのだけれど、見方を変えると勝手気ままなのだ。小学校に勤めている友達が「今年の一年生って、落ち着いて座ってられないんだよね。ちゃんと保育園で躾てよ」と言う。そりゃそうだろうな、と思う。保育園では、イスに座ってる時間ってお弁当を食べるときくらいしかないんだもん。卒園する頃になって、あわててハサミの使い方を教えたり縄跳びを教えたりするのだ。字だって書けない子がいる。

ある日の保育園での1日の流れ
〜9:30くらいまでに 各自登園 身支度を整えてお遊戯室で自由遊び
〜10:00 一度お片付けして排泄、朝の会
〜10:15 自由遊び
〜11:45 お片付けして排泄、お弁当の支度
〜13:00 排泄に行ってからお昼寝
〜15:00 排泄に行ってからおやつ
〜15:45 帰りの会
〜19:00 各自降園

 幼稚園教諭時代、何人かの教育実習生を指導したことがある。教育大学の初等教育科の学生も来るし、その辺の偏差値の低い学校の学生も来る。可愛そうなのは、後者の学生だ。うっかり、教育大生と一緒の実習期間だったりすると最悪だろうな、と思う。なんせ、実習日誌の書き方から指導案の書き方までレベルが違うのである。当然、しっかり細かいところまで考えながら作られている指導案の方が印象がいいので、その辺の学校から来てる学生の立場がない。担任がいいと言っても、主任が見逃さない。ウルサイ主任にあなたもこれを見習って頑張ってね、と冷たく言われる可愛そうな学生を相手に指導をするのはコチラも辛い。保育園にも実習生は来る。看護学生とその辺の偏差値の低い学校の学生である。やっぱり、看護婦さんというのは観察力は鋭いので感心する。その辺の学校から来ている学生の立場はやっぱりない。しまいには、あの短大からの実習生は取らないとまで言われたりしてしまうのである。確かに、あの短大の学生の態度もワルワルでヤル気がないのだけれどね。
 実習生がくることで、逆にこちらが新鮮な気持ちを思い出すことも出来る。子供達が若いおねーさんに懐いてはしゃいでいるのを見ると、チョットだけつまらなかったりもするのだけれどね。

 客観的に見ると、やっぱり幼稚園に通う子供の方が大人でしっかりしている。保育園に通う子供は、少し幼い。ワタシの勤務時間よりも長い時間保育園で過ごす子供もいるのだから、ちょっと可愛そうである。両親の仕事の都合であるとは言え、一番両親の愛情を必用とする時間に一緒にいられないなんて。犯罪の低年齢化もなんとなくわかるような気もする。子供が事件を起こすと、まず学校が責任を問われるのはどうしてなんだろう。子供のことを一番良く知っているのは母親じゃないのか?
子供には、子供のうちに痛いことや悲しいこともどんどん経験させた方がいい。最近は、そういうことから子供を過保護に守りすぎるんじゃないのかなぁ、って思う。このままじゃ、日本の将来は悲観的だ。我慢が出来なくて、我が侭で、ハシも上手に持てない大人がタクサン増えるだろう。残虐な事件もたくさん起きるだろう。別に、共働きが悪いワケじゃない。自分の子供の面倒くらい自分で見ろというのだ。当たり前のように、ワタシ達にハシの持ち方を教えて欲しいという親が実際にいるから「?」だ。そんな親に限って、子供がチョットでも怪我をすると文句を言う。そんなに大事にしているのなら、最初から子供を預けるな。ハシの持ち方くらい、自分で教えろ。もちろん、そんな事を言う親は少ないのだけれど、そんな親は親失格。子供の将来が可愛そうである。

2001.12.5

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