楽しい旅
ケアンズ癒し旅(5月2−6日)
亜熱帯の樹々の葉はなんでこんなに深い緑色をして
いるのだろう。
日本より数倍強い紫外線を浴び、もう秋が始まるという
のに、枯れ葉になることもなく、艶やかに輝きを増して行く。
日本の新緑も魅力的だが、ぼくはこの艶やかな深い緑色
の樹々が好きだ。それはあのルビーのようでもあり、オ
パールの原石のようでもある。
ぼくは矢も盾もたまらず、5月のゴールデン・ウィークを利
用してオーストラリアのケアンズに飛んだ。
ケアンズの朝

ケアンズに着いたのは午前4時半だった。時差が1時間
あるから日本時間でいうと、午前3時半ということになる。
ワインを飲んで寝ちゃおうと思ったが、夜の飛行機はど
うしても寝られない。
少し眠い。
きょうは早速、キュランダ高原に行くスケジュールになって
いる。ケアンズ市内の旅行会社に連れていかれて、滞在
中のスケジュールやら注意やら、買い物の押し売りやらい
ろいろ聞く。ふと横を見ると、旅行会社のカウンターの両替
のレートは1万円が146ドル。
「あれえ、損しちゃった」
ぼくはケアンズ空港で取り敢えず3万円両替したのだが、
そこのレートは1万円が141ドルだった。5ドル違うという
ことはざっと350円。3万円では1000円以上損するとい
うことになる。
旅行会社ではすぐ近くのホテルの朝食をしきりに勧めるが、
朝のケアンズの街をぶらぶらして、コーヒーでも飲
むことにした。まだ7時前なのでどの店も閉まっているが、
ぶらぶらすると「Beethoven」というカフェがあった。
なかなかうまそう。
女の子も「グッ・モーニン」と愛想がいい。
ぼくはサーモンとチーズの野菜たっぷりサンドイッチにカフェ
ラッテ、ともちゃんは生ハムとチーズの野菜サンドイッチに
カプチーノを注文した。
「シックステイー」というからぼくは慌てて50ドル札を2枚渡そ
うとすると、女の子はにこっと笑って「16ドルよ」
表の通りに面したテラスに座って待っていると、つぎつぎと客
がやってくる。自転車や車でやってきて、テークアウトしていく。
すぐコーヒーとサンドイッチがやってきたが、なかなかうまい。
「いける、いける」
「おいしいね」
ケアンズの市内はどこも大きな樹が街路樹になっていて朝早
くから、鳥のさえずりがにぎやかだ。ぼくの家のまわりは最近
カラスが騒々しいが、その鳴き声とちがってこちらのは爽やか
で美しい。
ぼくらは毎朝、海岸通りなどでカフェを探して朝食をとったが、
この「Beethoven」が一番のお勧めだった。安くてコーヒーも
サンドイッチもとにかくうまい。
キュランダに行く

午前8時20分の出発時間になり、バスでキュランダ高原に向
かう。バスでそのままキュランダ村まで行き、帰りは高原列車
というコースと、行きはスカイレール、帰りは高原列車というコ
ースがある。
普通のツアーはバスになっているので、ぼくらは一人30ドルを
追加で払ってスカイレールのコースにした。
国道1号を北へしばらく走る。キャプテン・クック・ハイウェーとも
言い、オーストラリアを一周する。南はシドニー、全長が1万27
00キロとかでともかく長い。ギネスにも記載され、文字通り世界
で一番長いハイウェーだ。
20分ほどバスで行くと、CARAVONIKA(カラボニカ)駅に着いた。
「世界でもっとも美しい熱帯雨林を堪能できる」と書いてある。

ぼくらは4人乗りのゴンドラに乗り込む。空からの世界遺産散歩
だ。すぐ真下にユーカリの森林地が広がる。樹齢数百年だという。
きらきら光っている葉はペーパーパークだ。
つる草に覆われた熱帯雨林があちこちに広がっている。その間に
ヤシの一種のアレクサンドラパームが突き立っていたりする。
樹林の枝に白オウムが集団で遊んでいる。とってもきれい。
スカイレールの下に広がっているのは1億2000万年前にオース
トラリア大陸全体を覆っていた巨大な森林のほんの一部。絶滅の
危機に瀕している飛べない鳥のひくいどり、原始的なマスキーラット
カンガルー、ラムホルツツリーカンガルーなどを今も守り育てている
そうだ。
道路を作ればこの人類の遺産を破壊してしまう。ヘリで熱帯雨林の
中に工事機材を落とし7年がかりで7.5キロものスカイレールを
1995年に完成させた。

残念ながらゴンドラに乗る頃からちょっと雲が厚くなってきて、途中
ざあっと激しいスコールがきた。天気がいいと熱帯雨林と遠くグリーン
島の方の海がきらきら輝いているというが、きょうはお預け。
途中、レッドピーク駅、バロンフォールズ駅2箇所で乗り換えてKUR
ANDA(キュランダ)村に向かった。
この二つの駅では途中下車して熱帯雨林の森林浴やバロン川や渓
谷、滝を眺めながらいくともっとすばらしい。それぞれ20分程度の散
策で、キュランダ駅まで1時間半のスカイレールの旅になる。
いずれにしろ、バスで村に直行はやめたほうがいい。
キュランダはのどかなトロピカルタウンだ。
ぼくらはそこのレインフォレステーション・ネイチャー・パークで時間を
過ごした。ぼくは水陸両用車に乗ってテーマパークの中の熱帯雨林
を回って見たかったが、ツアーの時間ではちょっと無理。カンガルー
の写真を撮ったり、アボリジニのダンスショウやブーメランの実演を
見て時間を過ごした。
ここではコアラを抱いて写真をとることができる。入れ替わり観光客が
抱っこするので、コアラもノイローゼにならないかと心配になるが、コアラ
はともちゃんの腕にしがみついて、とってもかわいい。写真2枚で25ド
ル。パソコンからつぎつぎプリントアウトして30分もすると出来上がって
くる。

昼食のオージービーフのステーキは柔らかくてまずまず。ビールは5ドル
だった。アイスクリームがともかくうまい。アイスクリームはどこで食べても
日本では味あえない美味しさである。
満腹になったので、ぼくらは村を散歩。「バタフライ・サンクチュアリー」
に入った。(入場料11ドル)。「ようこそ世界最大のバタフライファームへ」
というのがうたい文句だが、ぼくはマレーシアのペナン島やシンガポール
クアラルンプールの蝶園に行ったことがあるが、ここはそこと比べると、か
なり小さく蝶の数も少ない。
ちょうどユリシーズが羽化したところを、飼育箱から放していた。羽の色が
メタッリックブルーの鮮やかなユリシーズはものすごくきれいだが、蝶の数
があまりに少ないのにはがっかりした。

高原列車に乗るため、キュランダ・ステーションに急ぐ。午後の列車は2
時発。19世紀のレトロな木造列車がホームに停車している。
熱帯雨林のジャングルを縫って、渓谷沿いにゆっくり走っていく。
ケアンズまで1時間半ほどの旅。
途中バロンフォールズ駅で小休止。海抜300メートルほどの所にあるこの
駅の目の前には雄大な滝が流れ落ちている。乗客はみんな列車から降り
て、ホームの端にある見晴台に上がって、パチパチ記念写真を撮る。
雨季には水量が増え、この滝はごうごうと景観はすばらしいという。

バロン川沿いにまた列車が行く。するとまた、すごいスコール。
列車の窓を開けたり閉めたり、忙しい。雨が止むと、身を乗り出してデジカ
メのシャッターを切る。
大きなカーブを切って高原列車が鉄橋を渡っていくと、歓声が上がってみん
ながカメラを構えて身を乗り出す。僕の前のボックスのおばさんも勇敢でビ
デオカメラ片手に半身を乗り出す。「おばちゃん邪魔だよー」
楽しく、のんびりな高原列車の旅だった。

グリーン島で遊ぶ
グリーン島は楽しかった。
ぐっすり眠って、翌朝(5月4日)、ぼくらはグリーン島へ行った。
グリーン島の1日ツアーは午前8時半にケアンズを出航して午後2時過ぎの
船で帰ってくるのと、10時半出航,午後5時の船で帰ってくる,二つがある。
ぼくらは10時半に出発した。
島までは約1時間の船旅。デッキに上がり海風を浴び、強い紫外線と時々
あがる海水のしぶきをあびながらなんとも心地よい。乗船客の多くは西洋人。
グリーン島に立ち寄り、そのままグレートバリアリーフの観光にいくらしい。
きょうは快晴。波も穏やかだが、それでもちょっと揺れた。
島に近付くとサンゴ礁の海がだんだん色を変え、なんとも言えない美しい海に
変わっていく。その中に鮮やかな緑の島。

桟橋に船が着いて、すぐぼくらは11時半のグラス・ボトム・ボートに乗った。
沖縄でも乗ったことがあるが、船底がガラスになっていて、そこから海の底が
見える。この船、島での食事、シュノーケリングの機材の貸し出し、プールの
入場、英語ガイドつきの熱帯雨林散策などが全部パックになっていて、お金は
島ではほとんどかからない。
ゆっくりボートは桟橋を離れる。
しばらくすると海底のあちこちにサンゴや巨大な貝、色とりどりの熱帯魚が泳
いでいるのが見えてくる。そのときすうっと黒い大きな影。また、すうっと黒い影。
サメだ。

何匹も何匹も、大きなサメが悠々と泳いでいる。その側をまた悠然と大きな熱
帯魚が泳いでいく。魚の宝庫だ。
船長が船べりから餌を海に投げると、ばちゃばちゃと音を立ててサメや熱帯魚
が集まってくる。海面が魚で盛り上がってくるようだ。
白人のおばあちゃんが「オウ、オウ」とか言って驚いている。
グリーン島はケアンズの沖合い27キロほどのところにあり、島を一周しても1時
間もかからない小さな島だ。
ちょっと早めの昼食をとり、泳ぐことにする。グリルのバイキングを皿にとり、テー
ブルにいくと、すぐ小鳥が人懐こく寄ってくる。島にはともかく鳥が多い。
メジロやウグイス(と思う)のほか、白いサギのような鳥まで近付いてくる。
鳥が嫌いな水着姿のグラマーなお姉さんが、トレー片手に悲鳴を挙げて逃げて
いる。

シュノーケリングの道具を借りて、ビーチに行く。真っ白な砂、ブルーの海。
でも、きょうは灼熱の太陽。このままではひどい火ぶくれになってしまう。ビーチ
パラソルを借りてそこに避難することにした。22ドルだった。
貴重品はホテルに置いてきたが、カメラや多少の小銭はある。
ビーチに置いたままともちゃんと二人で海にいくのもいやなので、
交代で潜ることにした。
最初はぼく。遠浅だが、ちょっとごつごつした岩とサンゴなどの岩礁。フィン(足ひ
れ)をつけて歩くのは初めてなので危なっかしい。すぐ転んで足を切ったりすりむ
いたり。それでもシュノーケリングしてみると、透明な海に熱帯魚がいるいる。
「なんてきれいなんだろう」
とひとりで感動してしまう。
次はともちゃん。やっぱり感動して戻ってくる。
パラソルの下で青い海とビキニの女性を眺めながら、うとうとと太陽を浴びる。
体の底から癒されていくようで、リラックスしていく。

夕方、船に乗る前に島を歩く。
濃い緑の熱帯雨林が心地いい。ジャングルを抜けるとまた海岸だった。砂浜に二
人で座っていると、海がバチャバチャと音がして、盛りあがる。するとどこからか、
一羽のカモメが飛んできて上空を滑空し始めた。と、思うとアッと言う間に海面に
降り、魚を両足にしっかと捕まえる。
「ああ、すごい」
カモメは魚が大きいのか、なかなかうまく飛べず、海面すれすれを水平飛行しなが
ら、やっと森の方に飛んでいった。
アイスクリームを食べる。二つで2ドル20セント。
とっても甘く、うまい。
余計なお世話
旅行会社ではあらかじめ水着を下に着て、ビーチサンダルなどの軽装でと言
われ、その通りで出かけたが、島ではいろいろな楽しみ方ができる。簡単な
ネイチャーウオークもできるので、軽い靴を履いてサンダルを持っていくのが
いいかもしれない。
船でコーヒーと紅茶のサービスがあると聞いていたが、これは出航前の話。
船がでたあとはサービスはないから、船に乗ったらすぐ確保しておこう。
島にはシャワーもあって泳いだあと使えるが、二人分だけ。女性はなぜか行列
が出来ていても知らん顔で長い時間使っている。ともちゃんは結局あきらめた。

感動のセスナ遊覧
きょうぼくらは夜行性動物の探検ツアーというのに申し込んであった。午前中時
間があるので、「グレートバリアリーフ遊覧飛行」に挑戦することにした。
二人で300ドルだったが、これが感動もので最高だった。
「おはようございます」
午前9時25分、オーストラリア人の運転手が迎えにきた。
「私の名前はカールです」
とってもうまい日本語。このカールがドライバー兼パイロットだった。
明るく、働き者のカールは元スイスの航空会社で働いていたパイロット。日本に
も8回行ったことがあるという。
「この遊覧飛行は4000回も飛んでいる」と自慢する。
もう一軒ホテルに寄り、若いカップルと一緒に、きょうのフライトはカールも含め
5人だ。
ケアンズ空港に着くと確かに小さい。
「ええっ、こんなに小さいのお」と、ともちゃんちょっぴり不安そう。
カールは胸を張って、「コースはふたつある。一つはずうっと北の方に飛んで、
有名なハート型のサンゴ礁を見て帰ってくる。でもこっちは海、海ばかり。もうひ
とつのコースはこっち。これはサンゴ礁がとってもきれい。ぼくはこっちを勧めま
す」と、地図を指差しながら説明する。

ぼくらはカールのご推奨のコースを飛ぶことにした。
どちらもフライト時間は50分。
「操縦席のすぐ後ろは窓が開いて写真を撮るのにいい。自分の横は窓越しの
撮影になる。どっちがいいか」
ふつうはジャンケンか譲り合いか、喧嘩になるが、ひとのいいぼくは黙って若者
に譲ってやる。こういうときは「ありがとう」ぐらい言いなさい。
プロペラがぶるんぶるんと回り。滑走路に出る。やっぱり不安。
管制の許可が出て、カールはぐうっと操縦管を押す。勢いよく走り出したセス
ナはすぐふわっと離陸。みるみるケアンズの街やゴルフ場、スカイレールの駅
が下に広がっていく。
とっても気持ちがいい。
セスナは大きく旋回して海にでる。きょうは絶好の快晴。

「あれがグリーン島だ」とカール。
上空から見ると、グリーン島は一際美しい。島の周りのサンゴ礁の鮮やかな美し
さ。「わあ、きれいねえ」と、ともちゃんは声もない。
一度、二度島の上を旋回してカールは機首をグレートバリアリーフに向ける。
美しいなんていう陳腐なものではない。
なんと表現したらいいのだろう。
ブルーやグリーンやら、時にはイエローやピンクとさまざまに色を変えてサンゴの
海が広がっている。サンゴに当たって白い波が砕けていく。
やっと海上に出来始めたちっぽけな陸地なのか、小さな小さな島が赤茶色の肌
を覗かせている。

こんな光景を見たことがない。
昔、与論島の上空を飛んだとき、窓から見た海もあざやかだったが、これは感動
ものだ。絶対お勧めです。
海からもいいが、ケアンズのガイドブックにある写真はみんな上空からのもの。海
からだけだとどこか違和感があるが、それがすっきり解消した。
50分のフライトが終わって、カールは思わず親指を立てて「イエーイ」
ぼくらもそろって「イエーイ」
夜の動物たち
「どきどき夜行性動物探検ツアー」というのに行ってみた。
セスナ機遊覧から戻って、ホテルで少し休憩して午後1時50分にホテルへ迎
えがくる。夜9時過ぎに戻ってくるツアーで、一人130ドル。
やってきたガイドのグレイは日本語の達者な、駄じゃれを連発する騒々しい
オーストラリア人だ。
窓の外のサトウキビ畑を指差して「あれはなにか」と聞く。
乗客が「サトウキビ」と答えると「サトウキビは秋の収穫期のこと。まだ、小さい
からあれはサトウチビ」なんて言って笑わせる。
夜行性といってもまだ昼間だが、ほんとにさまざまな動物と出会う。さすがオーストラリ
アだ。グレイが走っているバスの中からほんとにすばやく見つける。
「カンガルー」
大きな声でグレイが叫ぶ。
みんながびっくりして草原を見ると、ぴょんぴょんとカンガルーが跳ねながらすごい
勢いで草原から林のほうに走っていく。
「シラハラウミワシ「「白オウム」「黒鳥」と忙しい。
途中MAREEBA(マリーバ)というところに立ち寄る。
岩場が広がり、その岩の陰にロックワラビーが生息している。ここには60匹が
いて、そのうち20匹ぐらいが人に慣れているという。

ぼくらが餌をもらって待っていると、ロックワラビーがちょっと警戒しながらそれでも
餌が欲しいのか岩陰からぴょんぴょんと出てくる。小さなカンガルーのようだ。
手を出して固形の餌を差し出すと、近付いてきて手のひらの餌を食べる。とっても
その仕草が愛らしい。
オーストラリアには野生の猿は生息していない。
猿は強い雑食性の動物だから、もし、猿が生息していたら、オーストラリアにしかい
ないカンガルーやロックワラビーのような有袋類は絶滅していたかもしれない。
午後5時ころ、YUNGABURRA(ヤンガバラ)に着いた。
ここは小さな川が流れていて、きょうの目玉のカモノハシが生息しているという。
川は少し濁っていてゆるやかに流れている。その岸辺にカモノハシが巣を作っている
のだという。
カモノハシは音や物影に敏感だ。ぼくらはグレイについてじっと川べりに潜む。夕暮れ
が近付いてくるが、いっこうにカモノハシは現れない。しばらく休憩してまたみんなで
カモノハシ探し。
「あっ、カモノハシ」
グレイが叫ぶ。ちょっと離れたところを水が動いていく。しかし、もう夕闇が迫っており、
しかとは確認できない。
また、グレイが「カモノハシ」というが、もうぼくには残念ながら確認できなかった。
川べりのキャンプサイトでバーベキューが始まった。
ジュウジュウと大きな鉄板の上で肉を焼く。カンガルーとスネークとカモノハシの肉な
んて、冗談まじりに笑って言うが、うまいオージービーフだった。サラダとパンもある。
きょうのツアーはバス2台で40人ほど。わいわい言って食べる。
そのとき、テントの上にどさっと何かが落ちて、一瞬みんなびっくり。ポッサムだった。
食事の匂いで近くの木の上からやってきたらしい。
そのうち、ポッサムがつぎつぎ集まってくる。ぼくの側にきたポッサムは、ぼくのズボン
を引っ張って、しきりにパンを催促する。
抱いて木のベンチの横に座らせると、こんどはぼくの腕を引っ張って、パンを
くれという。
「はなちゃんと一緒だあ」
家に置いてきた愛犬のはなもパンが大好きで、食事のときぼくの腕を引っ張って
催促する。その仕草がそっくりで、ポッサムがとっても大好きになった。
とにかくポッサムがいっぱいいる。10匹近くだろうか。中にはこどもを抱いた
ポッサムがいて、これがまた、かわいらしい。
食事の後、みんなで森の中を散策。
真っ暗な中、懐中電灯を持って歩く。ガイドがすぐに、樹上で寝ている
ムシクイを見つける。
ぐっすり寝ているのかみんなが懐中電灯の光を浴びせても身じろぎもしない。
森を抜けてちょっとした草原に出た。
見上げるともう、満天の星。きょうは月が満月に近いので空がとっても明るいのが
残念だが、それでも星の数がすごい。ジャングルの上に、ひときわ明るいのが木星。
そのすぐそばに火星。振り返ると、南十字星がきらきらと十字架のように輝いている。
ときおり大きな鳥が飛び交って驚かされる。
「オオコオモリです。そろそろ引き上げましょう」とグレイ。
バスに乗ってケアンズに戻る途中、グレイが何か叫び、バスが突然ストップした。
何があったのかと思ったら、グレイはバスを飛び降りて駆け足で走っていった。
しばらくしたら、
グレイはなにやら両腕に抱えてもどってきた。
「ニシキヘビ」と得意そうだ。
バスの乗客は「きゃあ」と言って大騒ぎ。道路を横切ろうとしたニシキヘビを目ざとく見
つけたのだ。
それにしても大きい。体長が3メートルはあるだろうか。胴回りが直径10センチ
ぐらいもある。うろこがつやつやとして、光っている。
「この模様だったら、日本なら100万円します。バッグなんかには最高」
乗客をキャーキャー言わせながら、グレイは大きなニシキヘビを元のジャングルへ
放してやった。
ふわり熱気球

きょうはケアンズ最後の日。
10時前にホテルに迎えのバスが来ることになっていたが、ちょっと欲張って早朝熱気球に
乗ることにした。きのうはホテルに戻ってきたのが遅かったので、ともちゃんもお疲れ気味
だが、午前4時半の迎えで熱気球に乗って、8時半までにホテルへ戻るという強行軍。
ケアンズからバスで1時間。アサートン・テーブルランドが熱気球フライトの基地になっ
ている。夜明けにふわりと大空に浮かんで、日の出を見るという優雅な大空の散歩だ。
基地に着くと、もうバルーンがふくらんで準備ができていた。
さっそくぼくらは乗り込む。4,5人乗りかと思っていたら、20人ぐらい大丈夫という
からびっくり。けっこう大きい。籐の籠のようになっていて、そこに立ったまま乗る。
カメラ以外、所持品は一切ダメ。
ときおり、バーナーから炎が気球に向けて吹き出て、それが熱い。頭の髪が焦げそうだ。
全員が乗り込むと、ふわり。気球は離陸した。

ゆっくりと大空に飛び立っていく。乗る前までは不安だったが、以外に安定がある。
朝の風が気持ちいい。だんだん朝が明けてくるが、きょうはちょっと雲が厚い。
草原の上をゆっくり飛ぶ。あちこちからバルーンが飛び立ち、熱気球の競演だ。
野牛が群れを作って遊んでいる。
「あっ、カンガルー」と、ともちゃん。
下を見ると、草原の中をカンガルーの家族が7,8匹楽しそうに
ぴょんぴょん跳ねまわっている。
夜が終わり、しらじらと朝焼けが始まったが、やっぱり日の出はむり。それでも
雲間から茜色の陽光が美しくきらめき始める。30分のフライト。(二人で300ドル)
ケアンズの旅はそろそろ終わりだ。

食事のこと
こんどのツアーは食事なしだった。むしろそれがよかった。
ケアンズの日本人が行くレストランは旅行会社が予約を取ってくれ、その方がいいと勧め
られるが、ぼくらは予約無しでふらりと行ったが、もちろんOKだった。
最初の夜(5月3日)は「バーナクル・ビルズ・シーフード・イン」に行った。海岸通りの有名
な「カニーズ」のとなり。日本人も含めかなりにぎわっている。テラスの席と室内の席がある。
シーフードのジンジャー炒め(16ドル50セント)、ブイヤベース(29ドル)を取った。辛くて
すっごくうまい。最後にマッドクラブを注文した。
まるごと一匹、大きな姿煮が出てくる。堅い甲羅を割ってうまいかに肉をほじくりだす。これ
だけでお腹いっぱい。全部で125ドル。
5月4日は「カフェチャイナ」。
ケアンズで人気の中華料理店でリッジス・プラザ・ホテルの一階にある。
ここへ来る日本人はみんな旅行代理店のチケットを持っており、決まったようにアワビのし
ゃぶしゃぶを食べている。右も左もアワビのしゃぶしゃぶというのもなんかおかしい。
ぼくらはカに肉の卵スープ、中国野菜のオイスターソース炒め、イカのから揚げ、ロブスター
の青ネギと生姜風味炒めを食べた。会計は102ドル。
ロブスターがちょっと高かったが55ドル。それでも大きな皿にたっぷりのロブスターで3500
円ほどだ。好きなものを好きなだけ食べる。このほうがよっぽどいい。
朝食もホテルの高いものより、ぶらっと街に出よう。
ケアンズはびっくりするほど小さな街で、10分も散歩すれば海岸通りに出る。外国人の観
光客はここのカフェでのんびり朝食をとっている。どこでも似たりよったりだが、最初に書
いた「Beethoven」が一番よかった。
飛行機のこと
今度のツアーはカンタス航空とJALの共同運航便だった。といっても、JALのマイレージは
だめだった。飛行機は新しく快適だったが、男の乗務員がほとんど。
成田発は午後8時15分の夜便だったが、1時間後にドリンク、そのあとチキンかシーフード
の食事。シーフードを取ったがエビ、貝、しいたけ、にんじん、いんげん、卵の炒めご飯にサ
ラダ、パン、バター、プリン。
ケアンズからの帰りはチキンかステーキ。ぼくのところに来たときにはステーキはなくなって
いたが、ぼくは「チキンは食べられない」ときちんと言った。
スチュワーデスは困っていたが、しばらくしたら「ビジネスクラスにシーフードのカレーかビーフ
がある。どうですか」と言ってきた。
「ビーフ」と注文すると、分厚いステーキがやってきた。エコノミーとちがって、ちゃんと皿に乗っ
ている。うまいうまい。まわりの人がうらやましそう。
でも食事のときぐらい座席シートを元に戻すのが常識だろう。
前の女性に言うと、いやあな顔をされた。食事が終わって、まだトレイの片付けが終わってい
ないのにまた、さっさとリクライニングにする。
ひとこと「すいません」と言えないのかなあ。