楽しい旅
スイスアルプス旅浪漫 (8月15日ー22日)
旅には夢があり、ロマンがある。
上高地から蝶ヶ岳に昇ったとき、目の前に広がる穂高の山並みや
遠くにそびえる槍ヶ岳の鋭い峰に圧倒された。
翌朝、山頂から仰いだ朝日もすばらしかった。
寒さに震え、じっと日の出を待つ。
やがて、稜線を赤く染めて、真っ赤な太陽が姿を現す。
生きていることを実感し、胸が自然と熱くなった。
日が昇ると同時に姿を見せた雷鳥やコヒオドシ、ミヤマモンキチョウ
などの蝶との出会いも楽しかった。

いつか、スイスに行ってみたい。
そんな思いが胸の中に膨らんでいた。
その思いが叶った。妻とふたり、スイスアルプスの草原をのんびり歩く。
青い空、咲き乱れる可憐な高山植物、アイガーやユングフラウが目の
前の手の届くようなところにある。
8日間のスイスの旅はロマンと夢あふれる楽しい旅だった。

ラッキーな旅立ち
「やったあー」
何か拍手したい気持ち。
HISの添乗員の倉持由喜江さんが神妙な顔つきで言う。
「誠に申し訳ありません。手違いがございまして、もしご不満の方が
いらっしゃれば、考えさせていただきますが」
「な、なんだ。出発間際に」
すると彼女は一瞬いたずらっぽい笑顔になって「ルフトハンザ
航空の手違いでオーバーブッキングになり、皆様は全員
ビジネスクラスにご搭乗いただくことになりました」
倉持さん自身もうれしそうだ。
渡された搭乗券は「M」ではなく「C」クラス。ほんとにラッキーだ。
午後2時40分の出発だが、最初の経由地、フランクフルトまで12時
間の長旅なのだ。
離陸後1時間して、飲み物が出る。ぼくはドイツのビール「BECKS」
と白ワインを飲む。


午後4時、夕食。
メニューはやっぱり豪華。まず、オードブル。
サーモンのルラード、エッグヨークムース、きゅうり、たらこ、アスパラガス。
サラダ。
シーズナブルサラダ、ドレッシング、ロールパン、バター。
続いてアントレ。
牛のテンダーロイン、マディラ酒とトリュフのソース、人参、南瓜、スイート
ポテト。(ともちゃんはすずきの焼き物を選んだ。こちらはズッキーニ、
赤ピメント、ナス、サフランライス)
そして最後にチーズとデザート。
カマンベール、チェダー、エメンタールチーズ、チョコレートケーキ、
フルーツサラダ。
一品ずつ配膳されるし、器もプラスチックじゃない。なんかエコノミーの人
に悪いなあと言いながら、顔がほころぶ。
8時半には軽食のチーズケーキと紅茶。ケーキの種類もたくさんあり、
チョコレートケーキ、フルーツタルト、果物もある。


飛行機はシベリアの大平原の上空を飛んでいる。
どこまでもなにもない。ただ、まっ平らなツンドラが広がっている。
その中をうねうねと川が蛇行している。
地球の広さを実感させられる瞬間だ。
そうかと思うと、白い雲がじゅうたんのように広がっている。
じゅうたんの真中がぽこっと富士山のように盛り上がっている。
なんという自然の造形美だろう。
また、食事。もう、午前0時10分になっている。時差をヨーロッパに合わせ、
時計を7時間遅らせると午後5時過ぎということになる。
また、BECKSを飲んで食事をして、そんなことをしているうちやっとフランク
フルトに着いた。もう午前2時10分(午後7時10分)になっていた。
フランクフルトからジュネーブに飛び、さらにバスできょうの宿泊地シャモニー
のホテルにたどり着いたのは、現地時間で午前1時をとっくにまわっていた。

モンブラン雪模様
きのうは午前2時に寝たが、6時前に目がさめた。
ホテルALPINAのぼくらの部屋のベランダから見ると、
アルプスが手にとるような近さに飛び込んでくる。
モンブラン?の上に月と星。
夜、雨の音がしたが、もう上がっていて雲がどんどん取れていく。
食事前、ぼくらはシャモニーの街を散策した。
真っ白な雪を抱いた山が少し赤くなって、朝が明けていく。
「きょうは天気がよさそうだ」
チーズ屋さん、ワインショップ、かわいい人形屋、しゃれたプチホテル。
ここはフランスだけあってとってもお洒落なセンスがあふれている。
スイスフランはどこでも使えるが、スーパーでミネラルウォーターを
買ったらお釣りがフランスフランだった。
「スイスフランでくれ」と言えばよかったらしいが、あとで気付いたが
失敗だった。スイスではフランスフランが使えないのだ。
午前8時45分のロープウェーでエギーユ・デュ・ミディ(3842メートル)の展望台
に登っていく。さっきまで青空が広がると思わせていたのに、ロープウェーを待
っているうちに雲行きがおかしくなった。

わずか10分ほどで、標高1030メートルのシャモニーから2317メートルまで上
がる。ちょっと前の青空が嘘のように、みぞれが舞っている。あわててセーターや
ヤッケを着こんで、さらにロープウェーを乗り継ぐ。
10分ぐらいで標高3777メートル。
ここからエレベーターで一気に3842メートルの頂上のテラスに到達した。
このテラスからは4807メートル、ヨーロッパ最高峰のモンブランをはじめ
グランドジョラスなど大パノラマが広がっている。
だが、無情にも展望台は雲に覆われ雪さえ舞っている。
風が吹いて、一瞬山並みが見えて、また一面の雲。
アルプスの女王、モンブランは顔を見せてはくれなかった。
ゴルナグラード山頂ホテルの晩餐
山の天気は移り気だ。
ツェルマットのひとつ手前、TASCH(テーシュ)では、また黒い雲が出てきて雨が
降りだしたが、ツェルマットへ来ると青い空が顔をのぞかせた。
午後5時12分の登山電車でゴルナーグラードへ向かう。
ゆったりと山を上がっていく。
車窓から見ると、高山植物の名残がとてもきれいだ。
うさぎに似たマーモットがぴょんぴょんと走り回っている。
明治31年(1898年)に開通したアプト式の登山電車。右側の座席から
マッターホルンが見えてくる。
雲は多いが、空はどんどん明るくなった。
マッターホルンは頂きにこそ雲がかかっているが、まずまずだ。
ちょうど40分で山頂駅に着く。

駅からの展望は圧倒的だ。
左から4634メートルのモンテローザ(MONTE ROSA)、リスカム(LISKAMM 4527
メートル)、真正面にブライトホルン(BREITHORN 4160メートル)、その右側に
クライン・マッターホルン(KL.MATTERHORN 3883メートル)
と4000メートルのアルプスが連なっている。
山の中腹からは氷河が広がっている。
そして、マッターホルン(MATTERHORN 4478メートル)が悠然とぼくらを見つめている。
ぼくは昔昇った蝶が岳からの穂高の山並みを思い出し、妙に懐かしい気持ちになった。
ぼくらは今晩、この山頂のクルム・ホテル・ゴルナーグラードに泊まるが、
昼間ごった返していた観光客はもうみんなツェルマットへ下山した後なので、
この雄大な景色を独り占めというわけだ。
もっと晴れてくれれば言うことはないが、それは欲張りというものだろう。
ゴルナグラードからの落日もモルゲンロート(朝焼け)も見られなかったが仕方がない。
山頂ホテルの晩餐はビ−ルにサラダ、マカロニグラタン
(ともちゃんはラムのステーキ)ケーキ。
夜、激しい稲光。遠い雷鳴。うとうとしながらしのつく雨脚を聞く。
5時前、目を覚まして窓から外を眺めるとまばゆい星の光がきらめいていた。
ツェルマット旅情
日の出は6時15分と聞いていた。
早々と起きて、ホテルから5分ほどの山頂に行く。展望台は3130メートル。
少し急ぐと息が切れ、心臓の鼓動が激しくなる。大きな声で話していても
ドキドキとなる。やはり高山病の一種なのだろう。
ちょっぴり寒い。

三脚を立ててじっと待つ。昨夜来の雷の影響で東の空には厚い雲がかかっている。
やがて雲の切れ目のところがピンク色に染まっていくが、やっぱり無理だ。
鹿のようなアイベックスが塩を舐めに来ていた。
なんとか晴れてきそうだったが、山の天気はほんとに短時間で急変する。
ゴルナーグラードから一つ下のローテンボーデンからリッフェルアルプまでハイキングし
湖面に映るマッターホルンの写真を撮る予定だったが、出発と同時に雨が降り出し、お
まけに雷も鳴り出した。
雷は夕方まで鳴っていた。
午後からはスネガやクライン・マッターホルンに出かけようと思っていたが中止となった。

ツェルマットは癒されるところだ。
ぼくとともちゃんは雨の散策もまたよしと、散歩に出た。
ホテルやレストラン、お店にはどこもゼラニウムなどの花があふれている。
駅前広場に馬車が並んでいる。
駅から奥に伸びているバーンホフ通りを歩いて行く。
観光客はとっても多いが、車が入ってこないのでとっても落ち着いている。
ツェルマットでは通りから一歩奥に入って散策するのがお勧めだ。
山岳博物館に立ち寄って、教会にで出る。
荘厳な雰囲気だが、ともちゃんが「ちょっと変ね」と言う。
そう言えば、教会の祭壇?は普通、キリストの十字架像があるはずだが、ここの教会の
祭壇はなにやら貴族(王様?)みたいな人がメインに座っている。
キリストはと探すと、礼拝席の一番前の右側のところにいらっしゃる。
左手のステンドグラスもマリアさまより、王妃の方がどう見ても中心になっている感じだ。
変なことをふたりで考えながら、マーモットの噴水のところからMATTER VISP川の方に
折れていく。噴水のマーモットはどんなご利益があるのか、みんなが頭をなでていくので
ピカピカに輝いている。
すぐ近くに墓地がある。
どの墓もそれぞれ花があふれんばかりに咲いている。
マッターホルンで遭難した登山家の墓も多いというが、十字架や墓石に写真がはめ込ま
れ、その業績などが刻み込まれている。
墓地というより明るく可愛らしい雰囲気だ。

氷河の水を集めて、ミルク色に濁ったVISP川の橋からはマッターホルンが仰ぐように見
える。橋の向こうはオールド・ツェルマット。ここをぶらぶら歩いてまた川を渡って戻って
くると、まるでタイムスリップしたような空間に出た。
昔の穀物倉庫だそうで、ネズミ返しのあるミニ正倉院のような建物が軒を連ねている。そ
こにも花が飾られているのはさすがだ。
通りに戻って、山岳博物館の裏手のもう一つの教会に入ると、若い男の人がチェロの演
奏会をやっていた。
小さな画廊に入りマッターホルンの写真と画を買う。写真は14フラン(1000円)、
画の方は45フラン(3500円)。

2階で人だかりがしているので覗くとひとりのおじいさんがサイン会をしていた。
ULrich Jnderbinenさん。100歳。
マッターホルンに300回以上登頂したマッターホルンの神様のような
ひとだと教えてくれた。
シルトホルンの大展望
「ALPEN REZORT HOTEL」のぼくらの部屋からはマッターホルンがよく見える。
朝5時起床。ベランダから空を見上げると満天の星だ。
きのうとはうって変わって快晴だ。
きょうはツェルマットから汽車を乗り継いでシルトホルン(Schilthorn)に行く。
ツェルマット8時10分の汽車に乗る。
駅前で待っていると、どんどん青空が広がり、マッターホルンの頂上に
最後までまとわりついていた白い雲がさあっーと流れ、神々しいまでの
真っ白な頂きが青い空に突き出てきた。

思わず「わあっ」という歓声。
みんな一生懸命シャッターを押している。
また、「わあっ」と歓声。そして拍手。
最後の最後に、マッターホルンが姿を現したのは、
誰かがよっぽど心掛けがいいのだろう。
汽車に乗っても、振り返り振り返り、マッターホルンを見る。

いとおしいような気持ちだ。だんだんマッターホルンが小さくなり、
やがて汽車が大きく曲がって、
手前の丘に遮られて見えなくなる。
ブリーク(BRIG)で乗り換え、10時発の汽車でSPIEZ(11時着)。
わずか7分の待ち合わせでホームを走り、インターラーケンオストを経由して
ラウターブルンネン(LAUTERBRUNNEN)に11時35分着。
ラウターブルンネンの谷から登山電車、ゴンドラを乗り継いでいく。
ミューレンを過ぎる頃から天空を行く感じがする。
シルトホルン(SCHILTHORN)に着いたのは午後1時半だった。
回転レストランピッツ・グロリア(PIZ GLORIA)でステーキを食べる。
ビールを飲みながらゆっくり大パノラマの景色を見る。

映画「女王陛下の007」で有名になった人気の高い展望台。
きょうは天気もよく、土曜日。
ちょうどトライアスロンの競技会が行われており、展望台は
ごった返しだった。それにしても2970メートルまで
マラソンで上がってくるからすごい。
ときどき雲が流れ、アイガー(EIGER 3970メートル)やユングフラウ
(JUNGFRAU4158メートル)、グレッチャーホルン(GLETCHERHORN 3983メートル)
、ブライトホルン(BREITHORN 3782メートル)がつぎつぎ
姿を現しては雲に包まれていく。
大パノラマはすばらしく、幻想的でもある。
あまりの大展望に酔っていると、犬もあがってくる。
アルプスを散歩する犬も粋なものだ。


夕方6時半、グリンデルワルド(GRINDERWALD)に入った。
駅前から見ると、アイガーがのしかかるようにそびえている。
アルプスの花々
ホテルの名前は「アイガー」。部屋から見るとアイガーが額縁の絵のように見える。
朝食をとっているうちに青空がどんどん広がっていく。
きょうは今回のツアーのハイライト、
ユングフラウ観光だ。

ホテルから散歩に出てアイガーの写真を何枚も撮る。
9時出発。
グリンデルワルド駅にこんなプレートがあった。
Azumimura ist das
Schwesterdorf von Grindelwald
スイス ベルン州 グリンデルワルド村は
日本国長野県南安曇郡安曇村と姉妹村です
一駅5分、次のGRUNDまで行き、4人乗り、ヨーロッパで最長のロープウェーで
上がっていく。ケアンズからキュランダに行くロープウェーのように下に
樹林が広がっている。
違っているのは左手にアイガーをはじめスイスアルプスの白い山並みが
連なっていることだ。

ロープウェーの終点、メンリッヘン(MANNLICHEN)はそこがもうユングフラウヨッホの
展望台だ。標高2225メートル。
ツアーの皆さん15人で記念写真を撮る。
伊藤さんと花田さんはご夫婦、松田さんは一家4人、三好さんは5人そしてぼくたち。

のんびりハイキングをしよう。
それにしても何という良い天気なんだ。この2000メートルの草原は見渡すと高山植物の
大群落地帯だ。可憐な黄色、ピンク、赤、ブルー、さまざまな小さな花をつけた高山植物が
咲き乱れている。
一面の花のじゅうたんだ。


日本の山でこんな光景を見たことがあっただろうか.。


昔、霧ヶ峰の七島八島の湿原をテントを持って歩いたとき、こんな光景を見たことが
あるような記憶がおぼろげにある。
でもはるか彼方の記憶ではっきりしない。
ぼくたちはゆっくりと歩いた。
どこからかカウベルのカランカランという澄んだカネの音が聞こえてくる。
草原で草を食む牛たちの首につけられたカネの音だ。

スイスはどこでも2000メートル近くの高さまで、山肌に牧草を植え付けている。
短い夏の間、牛たちは雲上で草を食み、だんだん下へ下りていく。
牧草の鮮やかな緑をスイスの色といえば、
カウベルの音色はスイスの音といえるのだろう。
はるかなユングフラウ
花に足を止めては、レンズを向ける。
振り仰げば青い、抜けるような空がある。
目の前には氷河を抱いたユングフラウが悠然と
白い肌をさらして寝転んでいる。
ユングフラウ目指してクライネシャイデックまで歩く。

途中、添乗員の倉持さんが手配してくれたチーズとハムのサンドイッチの
昼食をとった。高山植物をよけて、大草原に座り込み、
サンドイッチにかぶりつく。
ぜいたくな旅だ。
近くで双眼鏡を覗いていた観光客が「メンヒを登っている人がいる」という。
双眼鏡を借りて見てみると、ほんとに三人のクライマーが
黒い点になって動いている。
頂上直下のところを登っているのがはっきり見えた。

2時間かけてクライネシャイデックまで歩いた。
クライネシャイデックとは「小さな峠」という意味だそうだ。
グリンデルワルドからラウターブルンネンを経由した登山電車はここまで斜面を登って
来ており、ここからはいよいよユングフラウ鉄道に乗り換える。
倉持さんが座席もリザーブしてくれているので、大混雑なのにぼくらはゆうゆうと座れる。
12時半、小さな電車は右手にアイガーやユングフラウを見ながらゆるゆると登っていく。
すぐに電車はトンネルに入る。アイガーの土手ッ腹にトンネルを掘ったのだという。
1895年(明治28年)、今から100年以上前にこんなところにトンネルを掘ると考え、
それをほんとにやってのけたのだからスイスのひとは発想がでかい。
全体の4分の3はトンネルで、トンネルの全長は7・1キロある。
途中,2回電車は止まり、アイガーの中腹から氷の世界を覗くことができる。
クライネシャイデックから50分、標高3454メートルのユングフラウヨッホ駅に着く。
文字通り「TOP OF EUROP」、鉄道の駅ではヨーロッパ最高地点だ。

空気ももうかなり薄い。
駅からエレベーターでさらに展望台のある「スフィンクステラス」
(SPHINX TERASSEN)に向かう。
ガラス張りの展望台からテラスにでると、もう標高3573メートルだ。
1時間前まで花に囲まれた草原だったのに、ここは白一色の世界。
アイガーの頂上がほんとに手の届く近さにある。
そこから伸びるメンヒ、ユングフラウ、ブライトホルンなどの白い峰々。
アレッチ氷河がものすごい迫力でひろがっている。
ぼくは言葉もなく立ちつくしていた。

駅舎まで戻って「氷の宮殿」(EISPALAST)に行く。まさに氷河の心臓部だ。
透明に光る氷が穿たれ、氷の回廊になっている。
雪原に出て雪の感触も思いっきり味わった。
きょうはほんとに夢とロマンをたっぷり味わった一日だった。
氷河特急で行く

スイスの旅も終わりに近付いた。グリンデルワルドともお別れ.
きょうはバスと氷河特急を乗り継いで、チューリッヒへ向かう。
フルカ・グリムゼル峠を越え,アルプスの最後の景観を堪能する予定だったが、途中
土砂崩れがあって,通行できないとのことで、スーステン峠越えに変更になる。
シュタイン氷河の雄大な景観を堪能しながら、バスはヘアピンカーブを進む。
右側は深い峡谷になっている。

途中、AARESCHLUCHTで川沿いの渓谷を歩く。
奥多摩をもっとスケールを大きくしたようなイメージだが、
渓谷に張り出したテラス式の遊歩道が取り付けられており、
そこを歩いていく。
高所恐怖症のぼくにはなんともつらいハイキングだが、ともちゃんは楽しくて
「きゃあ」とか「すごい」とか、歓声を上げている。
アンデルマットのすぐ手前には「悪魔の橋」というのがあった。
峡谷に橋を架けるのに困っていると、悪魔が「三日で橋を架けてやる。
その代わり一番先に橋を渡った者の魂を奪うぞ」と、いけにえを要求した。
人間たちは相談して、橋が完成したとき
真っ先にヤギを渡して悪魔を騙したという。
ここも美しい峡谷だが、ナポレオンの時代、この橋を巡ってフランスとロシアが
激しく戦ったと、当時の戦闘の画を描いた看板があった。

アンデルマットからはクールまで氷河特急の旅。
1時半だったので、乗車してすぐ昼食になる。サラダ、子牛のクリーム煮、マッシュポテト、
グリーンピース、人参のソテー、デザート(パイ風のケーキ)とうまい料理だった。
スイスの景色を楽しみながら、くつろぎの時間を持つ。
氷河特急はクールに向かって高度をどんどん下げていった。
クールからはチューリッヒまで特急の旅。ぼくらの車両は1等だったが、ほとんど乗客は
いなかった。老人が葉巻をくゆらせているので、写真をパチリ。
とっても絵になっている。

老人はフランス語しかできないと言うし、こちらの英語もあやふや。
そのうち、老人が一枚の写真を持ってきた。
品のいい婦人。「美人の奥さんですね」と、ぼくらも楽しくなって勝手に言っていると、
近くにいたもう一人の乗客がやってきて「これは奥さんでなく
、ガールフレンド」と解説した。
「ええーっ」と驚くぼくらに,老人はにこやかにウインク。
そんなことをしているうちにチューリッヒに着いた。
チューリッヒの史跡
もう旅も終わりだ。
出発までちょっとだが、4時間あったので、チューリッヒの史跡を巡った。
ぼくらのホテルは中央駅のすぐ近くの「セントラル プラザ」だったが、
朝食に味噌汁やサケまであったのは驚いた。
味噌汁は何も具が入っていなかったが、それにしてもうまいなあ。
ホテルを出て、目の前にあるリマト川のバーンホーフ橋を渡ってバーンホーフ通り
を歩く。小道に入ったりして,また,川沿いの道を行く。
小さな骨董店、画廊、コーヒーショップなどがあっておもしろい。

まず、聖母教会でシャガールのステンドグラスを見る。
教会は12世紀から15世紀にかけて建てられたという古いものだが、
聖堂のステンドグラスはともかく美しい。
ちょうど観光客もおらず、イスに座って静かな気持ちになると
、朝日がステンドグラスに当たってきらきらと七色に輝く。
大聖堂もよかった。

ほとんどの人は礼拝堂を見て帰ってしまうが、ひとり2フランを払って
礼拝堂の横から60メートルの塔の一番上まで上がった。
狭い石段を登って、さらに木の梯子のような階段を息をきらしながら上がる。
やっと上がった塔の上から一望できるチューリッヒの市街のすばらしさ。
「これは感動ものよ」
「チューリッヒっていいところねえ」
ともちゃんは感嘆詞を連発する。塔を吹き抜ける風が心地よい。
ぼくは恐る恐る身を乗り出して写真を撮る。

聖ペーター教会もシンプルで落ち着いた教会だ。
石畳の道を上り、教会のすぐ近くで小さなお店に入り、
かわいらしいペアカップを買う。
大きな時計塔が目印だが、この教会は結婚式などに良く使われるらしい。
ここにはステンドグラスはなかった。
迷いながら歩いてチューリッヒ美術館にたどりついた。
「ミュージアム」と妖しげな発音がまったく通じず、「列車で3つ先だ」とか、
歩いてきた道と逆の方向を指差して「この坂道を下がって」なんて言われ、
ちょっと困っていたらすぐそばだった。
10フラン払い、特別展はパス、「ノーマル・エキシビション」とか言って、通常展に入る。
ともちゃんの大好きなゴッホやセザンヌ、ゴーギャン、
モネなどの絵画が充実していた。
もうタイムリミット。スイスの時間もなくなった。