不定期
八田利也通信

6/5
誰が見ても力の衰えは明らかなのに、本人はまだ横綱相撲を取ろうとしている。総合電器メーカーはそんな錯覚業種の代表格ではないだろうか。 NEC系列のエルピーダメモリの松本社長からこんな話を聞いた。NECが韓国サムスンと定期的に半導体技術交流をしていた。調べて驚いたという。会合を通じて重要情報がどんどん流れていた。誰も気にとめないので慌てて会合を中止した。 半導体の凋落は知的戦略の欠如に原因があったと一部で言われている。だが、サムスンに完敗した現在でも気前の良さは変わらない。総合電機メーカーには大国意識が抜けないからだ。知的立国を目指すと政府は言う。お題目は立派。経産省の報告書は「ディスクロージャー(情報開示)強化」をうたう。特許などの知的資産の透明度を高めるのが国是といわんばかりだが、しかし今取るべき戦略なのだろうか。「海外のアナリストに技術戦略を根ほり葉ほり聞かれる。絶対ライバル会社に筒抜けになっている」と大手の電機首脳は疑心暗鬼だ。シャープは液晶など技術特許をあえて申請しない。特許では知財は守れないと悟ったのだという。
ここにいい例がある。新潟県六日町。日本一の米どころでマイタケの出荷が伸びている。中国の攻勢でシイタケ産地は壊滅状態寸前なのに、なぜ・・・。実は、雪国マイタケの大平社長は製造ラインをブラックボックス化し、ノウハウを徹底して秘匿にしたせいだという。今の日本で見習うべき知財戦略は、マイコンではなく、マイタケのような気がする。
6/11
売れる薬の種類を見れば、その時代の特徴がおよそ分かるという。例えば、米国ではベトナム戦争時に鎮痛剤が売れ、その後の東西冷戦時代には睡眠薬が飛ぶように売れたという。ベトナム戦争では、兵士の精神的及び肉体的苦痛が社会問題となり、冷戦時代には米国民の精神的不安が大きな社会問題となった。
一方、現代の米国でよく売れている薬はインポテンツの治療薬だそうだ。「男が男の力に対し自身を失いつつある時代の象徴である」であるからだそうだ。世界で比類無き圧倒的な軍備を持ちながらも、イラクに対して武力を振るったのも、実は不安に対して力で取り除こうとしたのではないだろうかと推測できる。なぜなら戦争終結後も、全米の空港では乗客に靴を脱がせたり、ズボンのベルトも外させたりしていた。さらなる不安に対してを取り除くためのだけだったそうだ。 米国ですらこの状況だ。日本においては、まさに不安だらけである。実際、サラリーマンにおいて心療内科に通っている人の数が急増しているという。女性においては、不況にもかかわらず、高級ブランド店へ押し寄せる行動も不安の裏返しかもしれない。この実体のない不安を取り除くにはどうすれば良いか。ここに日本の再生のヒントがあるかもしれない。

6/13
ボストンのMITにメディアラボという伝説化した研究室がある。そこにシーモア・パパートというお茶の水博士みたいな70歳のパンクなおじいちゃん先生いる。この人はいまインターネットにおいての児童教育の世界的な権威といわれている。彼の主張は「教室と教材と教師、この3つが子供を不自由にしている。早く教育からこの3つを取り去って、子供たちを解放させたい」というものだ。でその解放するきっかけをインターネットが作るだろうと言っている。ある若い技術者が彼に「IT、ITというけど、その意味をわかっているのか」と聞かれて「インフォメーションテクノロジー」と答えたら「それは最近のやつらが使っている言葉で、たまたまコンピュータとコンピュータを電話線でつなげたら大量の情報が流せるようになったからそう言われるようになった。本来、ITというのは“インテリジェンス・テクノロジー”人間のためのテクノロジーだ。意味が全然違うのだと答えたという。そうITは人間のために生まれて来たメディアといってもいい。そのことを僕らは忘れちゃいけないと思う。

6/18
人間を規定する言葉にホモサピエンスだとかホモルーデンスだとか、いろいろの言い方がある。その中の一つに「人間はコミュニケーションする動物だ」というのがある。本来コミュニケーションしていないと、人間は生きてゆけない、自分を確認するには他の存在がないとできないということだ。これはもう、人間が持っている宿命的なものである。
作家の立花隆氏は、僕らは情報という言葉を簡単に使うけど、情報って一体なんだろう、そのことを深く理解しないと、インターネットもなにもあったもんじゃないという。自然界の最終単位は、いまの科学で最終的に証明されているもので言えば、物質と情報だという。物質はエネルギーそのものであり、情報は光である。自然界はエネルギーと光で構成されている。言い換えると人間の脳は、情報マシーンである。しかもその情報を効率良く送り出すものが広告だとすると、これは面白いと思う。デジタルの流れの中で、人はコミュニケーションしないと生きてゆけない社会的な動物だ。しかも広告は人間の欲望を促進させるものだということを認識することは、重要ではないだろうか。
6/19
市場として、生産拠点として、中国の重要性は高まるばかりだ。一方で製造立国・技術立国ニッポンは、生産拠点の空洞化や中国への技術移転が進み、行く末が気になる。そんな中、中国から日本企業に資本参加した企業がある。オンラインゲームでは中国最大の盛大ネットワークだ。出資先の日本企業が制作したパッケージゲームが中国では爆発的にヒットしている。(但し、9割が海賊版だそうだが・・・)実力を認めてのことで、今後日本メーカーが開発したネッワークゲームを中国に持ち込み、事業を展開するとのこと。中国のオンラインゲームユーザーは2003年度中に1500万人になると見られている。広州などの沿岸部だけでなく、四川省などの内陸部でも急増中だ。 中国ではパッケージゲームもオンラインゲームも韓国製が市場を圧巻している。だが、あえて韓国製ではなく、日本企業に出資した。魅力的なソフトを生み出すクリエィティビティー(創造力)は10年かかっても追いつかないと判断したからだ。韓国企業の先進性も認めるものの、その優位性はネッワークシステム構築技術にあると見られる。それなら「数年あれば、追いつける。出資する必要はない」。 ゲームに限らず此に似たことは様々な分野にあるはずだ。簡単にマネできないものが何かを見定めて、それを伸ばし、競争力にする知恵が重要なのだろうか。

6/24
現在、世界の情報技術(IT)産業を読み解くキーワードは「標準化」と「コモディティー(市場商品)化」であると言われる。企業のIT投資抑制を背景に、産業標準の技術を搭載した製品が急速に普及し、製品自体が薄利多売型の傾向が一段と強まっている。パソコン市場では1990年代、マイクロソフトの基本ソフト「ウィンドウズ」とインテルの超小型演算処理装置「MPU」を組み合わせた「ウィンテル」搭載製品が業界標準を獲得した。この結果、果てしない価格破壊が起こり、一般家庭でも手に入るようになった。最近は、企業の基幹システムの中核を担うサーバーでも同様の傾向が顕著だ。
90年代後半のインターネットブーム下で、サンマイクロシステムズやIBMなどが独自開発した高性能OSを搭載した1台10万ドルを越す機種が飛ぶように売れた。しかし最近は高額機種の売れ行きはさっぱりである。半面、一台千ドルの低価格サーバーの販売が堅調なようだ。OSには、ウィンドウズが無償配布・改良が可能なリナックス,MPUにはインテル製品を搭載している。日本企業はこれまでIT企業の言いなりなってIT過剰投資し、生産性向上など投資に見合った効果をあげれなかったとの指摘もある。標準化と市場商品化の大波到来は、費用対効果を改善するには絶好のチャンスではないだろうか。

                                                     TOPへ

メールは八田利也まで