旅の
記録

(一)

(二)

 もうずっとずっと昔のこと、ちょうど今日と同じ日に奥州路は雪の平泉にいた。
 中尊寺を巡ったあと、雪道にはまりそうになりながらタクシーを走らせ、丘の上の国民宿舎に宿をとった。
 翌朝、カーテンを開けてその日最初に見た景色を今も忘れない。
 木々の枝に着いた霧氷が陽光にキラキラ輝いて、白一色の風景がとてもまぶしかったことを。

 さんざん迷った末に群馬県水上を目指すことにした。条件は、和風温泉、露天風呂、雪国、東京からあまり遠くない、スキー客がいない、宿の規模が大きすぎない、安い方がいいけどちょっとぐらい贅沢も可、等々。今どきらしくインターネットの力を存分に利用した。しかし、お一人様という条件がつくと割高のうえ、選択肢がきわめて少ないのが残念。

 新宿発水上行という列車はない。こちらもさんざん検索した結果、新宿から高崎まで「湘南新宿ライン」、高崎から水上までを上越線の普通列車で行くことにした。上越新幹線利用の場合と時間差がない上に料金がほぼ半額に抑えられる。そのぶん宿ですこし贅沢をしよう、という算段なのだが、さて・・・

◆       ◆       ◆

2005年2月6日(日曜日)はれ
 急ぐ必要もないが、混みはじめる前にと、新宿を12時12分発の湘南新宿ライン特別快速に乗車。新宿でどっと人が降りたこともあり、余裕で座れたのがうれしい。高崎に13時57分着。本を読んでいたせいか、早く感じた。
 寄り道をしながら夕方5時頃までに着けばいいと考えていたが、予定通りにはいかないものだ。
 大雪のため、上越線は沼田より先が不通。沼田から水上間はバスによる代替輸送だという。新幹線で上毛高原まで行き、リレーバスで水上に入るという手もあるが、経費節減、高崎で軽食をとり時間をつぶした。

 15時16分発の水上行に乗る。約45分で沼田着。待っていたバスに乗り換える。乗客は20人弱。このあたりから雪景色に変わった。空は灰色の雲に覆われている。目指す方向はさらに不安な空模様だ。進むにつれ雪は深く、空は暗くなっていく。水上に着いた時、乗客は数人に減っていた。予定の5時ころ到着。山から吹きおろす風に乗って雪が舞っていた。
 トンネルを抜けなくてもそこは雪国だった。

 宿に電話をいれて、十数分で迎えの車が来た。折り返し、圧雪されでこぼこになった山道をしばらく登ると谷川温泉街に入った。もうこの辺りは積み上げられた雪が車の背より高い。5時半前には宿(旅館たにがわ)に到着した。

 着くとすぐ出てきたのが、お茶と洋風和菓子?(葛もちで包んだ生クリームのような?)のサービス。ロビーには休憩コーナーのほかに土産物売り場や、太宰治の作品展示スペースがある(太宰治の逗留が売りらしい)。
 案内された部屋は3階の322号室。広さは一人には十分の空間。8畳に床の間、サンルームと洗面、バス、トイレが付く。

 食事の前に風呂へ。1階のエレベーターホール横に男湯、女湯ののれんが掛かっていた。7時から男女が入れ代わるとある。
 檜風呂の広さは同時に十人も入浴すれば満員といったところ。半面がガラスで外が見える。もっとも絶景が広がっているわけではない。露天風呂を囲む石と雪の壁が見えるだけ。露天風呂も十数人が定員だろうか。他に3人ほどしか入浴していないので、のんびりと寛ぐことができた。泉質は単純泉。ここからは外の景色は見えないが、サービスで3階の貸しきり展望露天風呂が選択できる。夜じゃあ景色も堪能できないからと、升酒を選択してしまったがミスったかな?

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お品書き其の一・あうとどあ事始め其の二・にっぽん行楽事情平成游山江戸叙情写真館連環拾