天国の話
1993年にタイのサムイ島に行ったときの事だ。
ここは昔、南の島を巡る欧米の旅人達が見つけた島で、最近でこそ観光地化されたが昔はホテルも交通の便も非常に悪かったらしい。
要するに今で言う映画「ビーチ」のデカプリオような奴らが探し出した島らしい。
そんな島だけあって景色はずばぬけている。
こんなすばらしい景色の中でしらふではもったいないと思ったが周りには日本人はおろか英語の通じる人達もいなくて、困っていた。
リゾート客はヨーロッパ系、他はタイ人で言葉は通じない。
かろうじて英語が通じるのはホテルの中だけだった。
そんな時、ホテルの中のレストランでウェイターと仲良くなった。
彼は「明日休みだから一緒に車でドライブに行って島を案内しようか?」と言ったのでお言葉に甘えて約束をした。
彼から何とかならないかと思ったが一見真面目そうな男でクサとは縁がなさそうだったのでためらった。
次の日、彼に島を案内してもらって話をしてると彼はホテルの寮にすんでるらしい。
大体 寮に住んでると言えば仲間の誰かは必ず持ってるだろうと思い、思いきって聞いてみる事にした。
夜 食事をしながら彼に聞いた、「だれか君の友達でガンジャ(タイ語でマリファナ)を持ってないか?」。
彼は笑って「ガンジャが欲しいのなら僕の寮に行こう、友達のを売ってもらえるはずだ」と言う、ビンゴ!
さすがタイ人、クサの事ではまったく動じない、第一この男もクサは好きだと言う。
早速彼の寮に行って部屋に上げてもらう。
そして彼は友達の部屋に一人でクサを取りに行った。
ホテルはクーラーがかかって快適だったが、従業員の寮は扇風機だけでとても蒸暑かった。
なかなか彼は戻ってこなく、時々どたばた音が聞こえるのがなんか怖かったのを思い出す。
虫とかも部屋に入ってきて裸電球の周りをパタパタ飛んでいていかにも南国っぽかった。
しばらくして彼が戻ってきて一緒に部屋を出て車に乗り込む。
彼はポケットから6cm×8cm位のビニール袋にクサがモリモリに入ったパックを3っつ持ってきた。
タイバーツの値段は忘れたがドンブリ勘定だが60g位を日本円で2000円位で買った。
めっちゃ安だが滞在期間を考えるとこんなに要らない、1パケをその男にあげたら喜んだ。
僕は2パケホテルに持ってかえった。
ホテルでジグザグを2枚使ってマジックインキほどの太さのジョイントを巻きタイスティックもどきでデロデロになる。
次の日から朝から別世界だ。
毎日昼間はずっと海を見てビールを飲み、ビーチで昼寝、夜は満天の星を見てビールを飲み、一日中波の音を聞いて、レストランでタイ料理を満喫して、夜はぐっすり寝る。
ここが天国だと思った。
いいかげん吸い過ぎで効きが悪くなってきたが、それでもクサはなくならなかった。
ホテルで奴にすれ違うとニヤッと笑って親指を立てる。
ジョイントの吸い方も贅沢になって少しくらい残ってても捨ててしまう。
そんなの最後まで吸わなくてもたっぷりある。
毎日タイ料理をたらふく食べてもタイは物価が安く日本で食べる事を考えると異常に安い、金は思ったほどかからない。
マンチー(ぶっ飛んで食べるのにはまる事の俗語らしい)で食べるにはタイ料理はうますぎる。
それでも結局クサは全部使い切れなかった。
こんな世界もある、恐るべしサムイ島。
天国の話でした。