| ある日の休日、用事を済ませたら急に釣りに行きたくなり10時頃一目散にまるで何かに引き込まれるように目を付けていた渓流に急いだ。何回か足を運んでいたので、その渓相の素晴らしさに魅せられていたからだ。 12時20分現場に着いてガッカリした。 入渓予定の本流と支流の合流点に架かっている橋には既に先客がいた。 頭にはしっかりとねじりはち巻きをし、熊五郎とでもいおうかひげ面の父っつぁんが状況を観察していたのである。 そこでどちらに入渓するかを聞いたら、あっさり「本流」と返ってきた。 「畜生、もう少し早かったらなあ!」 しったげ(とても)残念であったが相手が福島から来たというので諦めもついた。かな? 支流の沢は入渓したことはなかったが、林道が通っていたので一応安心できたし合流点からはお互い「良い釣りをー」と声を掛け合って分かれたのだった。 何の変哲もないか細い支流は、やがて変化に富んできてそれなりの滝あり淵ありの、わくわくする渓流に変化していった。 右岸に林道があるのをチラチラ確認しながら遡行していった。 岩魚もそこそこ釣れてどんどん奥へ奥へと吸い込まれていった。 |
天狗ノ又沢で |
| 一人で釣るには丁度良い渓流である。 右岸には、まだ林道らしき横じま模様の景色が走ってはいるが10m以上落差がある。 まだまだ釣ろうとだんだん欲が出てきた。 我を忘れて釣りに夢中になった。 もうどれぐらい来ただろうか? 気がつくとゴルジュ地帯の中ではないか。 まるで天井のない手掘りトンネルだ。 戻らなければまずい時間になっていた。 ここまで来て沢を引き返したくない。・・・沢から脱出しようと何回も試みるがズルズルと滑り落ちてしまう。 岩間に生えているチョットした雑草に捕まりながら、やっとの思いではい上った。 |
沢の滝
| 後はもう少し斜面を登って林道に着けばこっちのもんだ。 汗を拭き取って再出発。 暗くなる前に車までたどり着きたい一心で斜面を登り続けた。 「?林道が無い?」廻りは見渡す限りの雑木林。 しばらく登ったのに何もない。さっきまで林道だと信じ込んでいたのはただの断層か? もう薄暗い。 沢に戻れば確実に帰れるのは解る。 でも折角はい上って来たのにまた谷底に戻るのはいやじゃー! よーし、こうなったら野宿じゃ・・・でも何もない。 着替えが無くては、痩せっぽの俺は凍え死んでしまう。「天狗様、欲張った私が悪ろう御座いました。お許しと少々の勇気を」こうして私は、気持ちの上で帰るための勇気を与えられ赤ランプの灯った体力を振り絞って、やっとの思いで獣道までたどり着いたのだった。どれくらい歩いただろうか? 前方に微かに砂利の山が見えてきた。そうなのである。??? ここが林道の終点であったのだ。 それを知らずに遡行したのかー。 クッソー・・・でも泣きたいくらい嬉しかったよ。 もう薄暗い。しかし、このまま歩けば愛車が待っていると思えば何のその! 更に嬉しいことに、入渓する時に本流で分かれた熊五郎?が待ってくれていた。 天狗様がおまけまで付けて俺を勇気づけてくれたのだ。 心がけ一つで山の妖怪は、敵にも味方にもなるんだなあって改めて思った次第です。ハイ。 熊五郎と、お互いの釣果(リリース)を自慢しながら別れた。 勿論何事もなかったかのような口調で。 みなさん初めての渓流は綿密な計画を忘れないように!(今回は例外だよーん) |
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