白神山地回顧録

谷底の渓 神山地が世界遺産に登録されるとかされないとか世の中騒いでいる頃の話である。
私は、今はアングラーズショップ経営のヒロさんと、当時某釣雑誌社のカメラマンTさんの3人で粕毛川の上流へ行こうということになった。 当然1日の行程では無理なので、前日に行けるところまで行くことした。 みんな仕事が終わってからなので、夜9時頃の出発となった。
約2時間で素波里ダム湖畔の猿ケ瀬園地に到着。釣り道具しかないセダンの車内では、3人が窮屈な格好を朝まで強いられることになった。当然3人とくれば後部座席に一人横たわっているので、前席の人はシートリクライニングを思うように出来ない。朝までこの体勢が続いたので身体の節々が痛いの何のって・・・
 早朝、カップラーメンにおにぎりをほおばって、いざ出発! 地図には無いY字路、十字路をどんどん奥へ突き進む。どれくらい走っただろうか? とうとう終点の行き止まりまで来た。 
そう、ここは山の中腹である。 そこから見える広大なブナ林の山々。そして遙か彼方に見える谷底。 今まさにその谷底まで駆け抜けようとしているのだ。 神の恵みの沢ともいうべき谷底までの標高差は300m以上ある。 食料と水をディパックに詰め、ウェーダーにウェーディングシューズと、川歩きのいでたちで気合いを入れての下山となる? 勿論、ロッドは今日のために新調したパックロッドだ。
 
最初の緩やかな斜面のうちは、ブナ林に囲まれて空気も美味しく感じたり余裕をかましていたのもつかの間、次第に密林の中へと入って行くのである。当然道などあるはずもなく、途中で引き返したり枝にぶら下がってターザンするハメになったりで、釣りに来たのか探検に来たのか分からない状態だった。 でもやっと無事に、あの谷底に着くことが出来たのだが、クールに釣り支度をしているのはヒロさんだけで、私とカメラマンのTさんは汗を拭くのがやっとであった.。
それにしても白神の渓はゆったりと、そして大自然の懐の深さをみているようで自分達が如何に小さいか再認識させられてしまう。それでもここはまだまだ序の口なのだ。
 さて釣りの方だが、河原に着いた所が大石のある青々とした淵であったので、早速試させてもらった。 一投目「ピシャッ」で、すっぽ抜け。 二投目でやっとヒットしたが期待を裏切り7寸イワナであった。でも今入渓したばかりで、まだまだこれからだ。
白神の恵み
いくら人間があまり踏み入れていないとはいえ、生態系のサイクルには逆らえない。その日のコンデションというものがある。とはいうものの、ここは紛れもなく白神の山中。遡行するにしたがって現れてくる淵では、必ず8寸以上が約束される。 そして大きめの淵では、同じ場所から8寸〜尺まで4〜5尾は釣れてしまう。 流石世界に誇るブナの森が育んだ渓である。 
 ここへ来て驚いた光景がある。 何と世界の名峰を目指す人達が使用しているような
立派なテントが渓の脇の草むらにポツンと張られていたのだ。生活の跡が伺えるだけに近くにいるのだろう。でも何の目的なのだろう? 釣りでなければいいのだが!
世の中には、何処へ行っても極める人っているけど、テントの主も何かを極めようとしているのだろうか? 雑踏を逃れ白神の峰々に抱かれ、ささやかな休日を過ごせたらどんなに心身にとって良いことだろう。 それが出来ないから憧れるんだよな!
 我々も渓の素晴らしさ、懐の豊かさなど白神の恵みに十分満足して引き返すことにした。先程の河原まで引き返したが、ここからが大変である。最初は木登りから始まり、そして・・・と続くのだが書くだけで疲れてしまう。
 最後に、二度と行ける場所ではないし、良い思い出となったことも確かであるが、いつまでも残しておかなければならない自然でもあると思ったしだいである。
 また、白神に限らず奥地へ足を踏み入れることは、危険との遭遇も増すことでもあり十分注意しマナーを守りながらの楽しい釣行にしてもらいたいと思うのである。




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