馬旅の道具

 1999年4月中旬、鞍の組上げと平行して装備の確認を始めた。1999年の旅では、三日月に鞍と全て装備を乗せた。加えて僕の体重が三日月の背にのしかかる。そう思って荷をかなり削ったつもりだったのだが、結構な重さになってしまった。Bikeの旅も荷を厳選しなければならない点は同じだ。しかし今回は生身の馬に担がせるわけで、実際に荷を乗せてみると、自分なりに工夫して減らしたと思った装備では、荷を越えて鞍に乗るだけでも一苦労だった。削り出しを再度行なって下記の様になった。ふぅーっ(^^;


馬具とその他装備(1999年)

馬旅の全装備

馬具と装備一式 和鞍と装備で約30kg、僕の体重が60kg。出発後1ヶ月間、ほとんど休みなしに三日月は常に100kgもの荷を乗せ歩くことになった。その後三日月を壊し自分の無神経さと無知に腹が立ったが、このときの僕は出発前に和種馬のタフさを山中でみせられ過信していたのだ。

 【和鞍と全装備、合計約30kg】

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馬具関連

和鞍 (わぐら)

 使った鞍は和鞍で、鞍下の部分はそこら辺にあるPartsを組んで自作した。普段、牧場で目にしている和鞍の鞍下は、皮と藁、椰子の皮で作られていた。雨の日に使っていれば当然早く痛む弱いものだった。しかしとても軽く作られていた。半年も旅するつもりの僕は、丈夫で雨にも負けない鞍下を作る必要を強く感じた。形はOriginalと同じもの。牛皮(5mm厚)、フェルト(8mm厚×2枚)、化繊カーペット材(2mm厚)、ウレタン(15mm厚)を用いて作った。今では簡単に作ったと言えるが、皮の提供から皮加工の初級技術を教わる所まで、牧場の常連コバちゃんに助けてもらった。金はかからない上に、僕にはあり余るほどの時間がある。一から物を作るのも楽しいもんだ。特に皮加工が初めてだった僕にはすごく刺激的な時間だった。Originalの鞍下には無い、荷をくくりつけるロープを固定する金具も取り付けた。
 のちに旅を経ることで、何百年と進化が止まっていた和鞍の鞍下は、三日月と僕のために進化を始める。

 【青のスタッフバッグとロールマットはショックコードで鞍下の金具に固定される】


 無口(むくち)

 この写真では少々分かりづらいが、茶色い無口の頬と鼻に当たる部分が白いのが分かると思う.。これは上記 SaddleBag の写真と合わせて見ていただければわかるが、アイロンで張りつけるタイプの反射テープだ。夜行動する事は考えていなかったけれど、天気の悪い暗い日、そして何よりも恐かったトンネル越えの対策である。同じ反射テープをズボンにも張りつけて出発した。
 旅に出てみて気づいた、もう一つの大きな利点。それは暗くなってからの放牧時に小さな Head Light で三日月を探し出せることだ。三日月は僕が休む近くの木などにロープで繋いであったが、いつ何時ロープに絡まってしまうとも限らない。そして、もっとも恐れていた事は夜の放馬である。
 このテープ、出発前まで入手できずに困っていたら、牧場の常連モーリーが自宅近くのハンズでわざわざ買って牧場に郵送してくれた。ありがとう、モーりー。出発前から本当に多くの人に世話になったものだ。

 Saddle Bag(サドル・バッグ)

 頭らくや手綱と同じく U.S. から輸入した。小型の和種馬用に背に当たる部分を加工。そして反射テープを貼り付けた。旅の途中に上部フラップに荷を固定できるように加工し、旅の後半では、放牧用の15mロープと飲料水の入った1リットルのペットボトルを固定する様になった。旅が続くと荷物はそれぞれ使いやすいように、定位置を持つようになる。

 蹄鉄と工具

蹄鉄と工具 蹄鉄は競馬で用いられているようなヤワなアルミ製ではなく鉄製なので、非常にかさばって重い。しかし鉄が無くては前には進めないのだからしょうがない、4本足分を1Setで持つ。ただし収納は前足と後足の2本分を皮で包んで、SaddleBagの左右に振り分けて入れた。あと、釘は多めに持つ。当然、素人でヘタッピの僕が打つのだ、一発で決まるわけが無い。鉄交換の後は、働くこと無く散っていった無残な釘の残骸が悲しく光っていた。この釘はアルミ製で、打つときは向きがあったりする。
 工具は、金槌、食切、とラジオペンチ、ナイフ、やすりがいっしょになったLeather man社製のMulti Tool のみ。すべて小型の工具なので、まともな削蹄、装蹄は望めない。旅の途中で運良く装蹄師さんに出会えることを期待して出かけた。

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野営道具

 Bivy Sack(ビビー・サック)
テントの代用品ビビーサック
 重さの問題で、馬との旅にテントは無理だと最初から考えていたが、タープとシュラフだけでは春、秋にはたぶん寒くて眠れないだろう。そこで、以前から気になっていたBivy Sackを購入する事にした。素材にGoreTexを用いたオーバーシュラフだと考えてもらえばいいのだが、頭の部分にポールが入って空間が出来るようになっている。おまけにネットが付いていて、虫を避けて外気を入れることが出来るものだ。おまけに880gと軽い。1999年の旅では、終わりに近い青森市手前まで欠点を感じなかった。でも輸入価格が3万円程度とむちゃくちゃ高かった。重量880g、価格$240(U.S.)、OutdoorReserch社製
REI製折りたためるバケツ
 Folding Bucket(折りたたみバケツ)

 REI社オリジナル製品。最大の利点は小さく折り畳めること。それに思ったより丈夫で軽い。青森県で無くしてしまうまで、旅の間破けたりして使えなくなるということはなかった。主に三日月の飲料水を運ぶときに用いた。飼料を分けて頂いたときの飼桶としても活躍。
 容量10リットル、重量230g、価格$12(U.S.)、REI社製

 Burner Stove(バーナー・ストーブ)
バーナーストーブOptimus123R
 僕とはもう15年以上のつきあいになるBurner、OPTIMUS123R。燃料はWhiteGasolineを使用する。Cooker関連を持つか持たないかは最後まで悩んだのだが、結局人気の少ない山道に入る事を前提に考えた場合、アルファ米か生米を炊くこと、そしてもっと大きな点は湯が沸かせると考え持って行くことにした。寒さに対抗する術を持たない事の方が、僕には怖いことだったのだ。しかしこれを持つと、水(1リットルのペットボトル)、コッフェル、燃料缶、米、調味料、お茶類(Coffee、Tea bag、Cup soup、Miso soup)まで増えてしまった。Coffeeは大好きなDoutorのCoffee豆を挽いたものと甘いインスタントのStick coffeeだ。それらは休憩のひと時をより豊かなものにしてくれた。しかし、その分三日月の負担を増やしてしまったのは言うまでもない。重量550g、OPTIMUS社製

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その他

 記録器材

 ウエストバッグに入る記録用A5ノート、防水カメラ(Canon Autoboy D5)、携帯電話(Docomo800MhzDigital)。電話はあまり持ちたくはなかったけれど、周囲が心配するので持つ。けれど、この電話のおかげで旅の途中ずいぶん友人達に助けられた。彼らと話すことで精神的にすごく救われたのだった。

 医薬品

 馬油、オロナイン軟膏、風邪薬、正露丸、プロポリス、目薬、強力虫除け(REI Jungle juice 100)
 三日月には馬油くらいしか使わなかった。筋肉に炎症を起こして牧場に一時連れ帰る前に、獣医さんからクラーゲン(冷用)とカンメルパスタ(温用)を購入したが、実際クラーゲンしか使うことはなかった。これも結局、秋田の南風さん宅から送り返した。三日月がビッコをひいたときには、持って無くて使えなかったが、結局冷やすなら水があればいいのだ。
 また旅の途中で三日月が蚊、アブ、メジロに血を吸われ、腹下から腿の内側まで血だらけ傷だらけになったので、スプレータイプ虫除けをホームセンターで買った。効力は20〜30分程度だが、気休めにはなる。最初スプレーの音を怖がるかと思ったが、三日月は大丈夫だった。慣れてくると、スプレーされるのをじっと待つようになった。しかし、傷があるとしみて痛そうな様子を見せたので注意が必要だろう。
 人間用に持っていたREI社の虫除け(Jungle juice 100 $2.95)は、国内で市販されている虫除けの数倍強力で、取り扱いを間違えなければすばらしい効力を示す。これをきちんと塗っていれば、多少蚊がいたってネットなしのシュラフで星を見ながら眠りにつけるほど。

 馬の健康手帳

 保険所で伝染性貧血検査、獣医さんに日本脳炎予防とインフルエンザ予防の注射をしてもらう。これが無いと馬や牛のいるところには、入れてもらえない。

 自分用の泌尿器具

 すごくめんどくさいのだけれど、僕には泌尿器に障害があって、この器具なしでは動けない。

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新しく加わったものたち (2000年3月)

四国巡礼での僕たちのアシ

馬運車「ふ〜てん号」 1999年の山梨から青森までの三日月との旅では、すべて僕達の肉体だけを用いたものだった。食料は現地調達、蹄鉄などの消耗品は牧場から補給してもらい進んだ。それ以外に随分多くの精神的な力添えを、友人や旅先で会った人々や馬達にしてもらった。
 にもかかわらず途中で三日月を壊してしまった。そうなってしまった原因は、僕が精神的に弱く、ストレスを自分でコントロール出来なかったことにある。つまり全ての負担は三日月にかかってしまった。その反省をふまえて、今回は馬運車を用意したのだ。北海道を歩くことを前提に考えた場合、前回の様に一日15km程度しか進まないと人間側の食料入手が難しくなる。僕にとっても三日月にとっても、もっと余裕のある旅をしたいと考えた結果が馬運車なのである。

三日月が試し乗り そして今回、紅葉台木曽馬牧場の菊地さんに協力していただいて、僕でも扱える大きさの馬運車を仕立てていただいた。協力していただいただけではなく「ふ〜てん号」という名前も頂くことになった。誰だぁ?似合ってるなんて笑ってんのは。どうせならもっとかっこいいのが良かったのにー(T_T)

 中や後ろの煽りにコンパネをひいたり、サイドに畳を取り付ける作業は自分で行った。意外に難しかったのは車中に付けた飼桶の位置で、牧場のStaff 漆澤君に教えてもらいながらのSettingだった。微妙な高さや角度を三日月の頭の位置から決めていった。こんな所にも小さな Know how がある。また乗り降りのとき、馬にも人にも安全なように取り付けられている後ろのロープの使い方が間違っている事を指摘された。ありがとう、うるし。本当にこの牧場の人々が助けてくれなかったら、僕らは無事に戻ってこれなかっただろうな。

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もう一つの鞍(四国の旅)

マクレラン・サドル 今回は馬運車があるので、和鞍だけでなく洋鞍も持ってきていた。出来ることなら Wintec社製 Western Saddle (corduraと呼ばれる化学繊維で作られた鞍で、軽く雨に強い)を用意するつもりだったのだが、出発に間に合わなかったので McClellan Saddle(U.S.騎兵鞍)を借りて出かけた。この鐙なら僕が駆歩をしても問題はない。三日月でのこの鞍の実績は長くはないが、毛布を厚くして鞍を乗せてやれば背中への負担は少ないだろうと考え選んだ。和鞍やWestern Saddleと違って腹帯のあたる部分が後ろなので、もし馬が腹帯で傷を作った場合にもいいかもしれない。McClellan Saddle の腹帯は、和鞍や Western Saddleのものより後ろ側、つまり傷の無い部分を通るからだ。

<四国の旅から帰ってきてからのコメント> 2000/06/26
 普段使っている革製の Western Saddle とほぼ使い勝手は同じだろうと思って使っていたけれど、実際は尻が痛かった。僕は普段でも駆歩をガンガンすると、尻の割れ目が終わる所近辺の皮がムケる。一言で言えば下手なんだからしょうがないのだが、いつもそんな傷に悩まされずに済むなら、それに越した事はない。でもこの Saddle は浜で駆歩をしたときにしか使わなかったけれど、後ろの部分が立ちすぎていて辛かった。革が硬かったのも問題だろう。というわけで、北海道には一般的な形の Western Saddle と和鞍を持って行く事にした。

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北海道へ向けて (2000年6月〜)


WintecInc. WesternSaddle やっと手に入れたWintec社製 Western Saddle。New Zealandでは、Western typeは扱っていないようのなので、U.S.から輸入することに。 Internet で調べているうちに、Abetta社もcordura製の鞍を販売しているのを知った。これなら国内で販売しているところもあったけれど、実績がなかったので牧場にある Wintec 社製の同型のものを購入することで決着。
 化学繊維で作られているので、雨に降られても革製の鞍のように重くなったりしない事。また手入れが楽だという利点もある。和鞍と違って実際に使われ続けてきたものなので、Size さえ合わせてやれば馬の負担も軽減されると思う。たぶん重要な点は、鞍下の形状と接地面積、そして全体の重量が軽いことではないだろうか。唯一問題になるのは、僕の脚との相性だ。落馬したときに鐙からうまく足が外れますように・・・ Wintec社製 重量8.2kg
 

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