
夜に昼に御本尊を拝みたいばかりに全国を駆け回り、
家族、親戚にも見捨てられそうな悲しい男達の話である。
瀬戸内の小さな島影が夕凪の静けさの中で揺らめいていた頃、
2人の怪しい男が船から降りてきた。
迎えるは食料調達及び本丸設営の重要任務を見事貫徹した4人の先発隊の面々。
お互い顔を合わすのは2度目であるが
もはや人生の大部分を一緒に過ごした家族のように手を取り合い、
今後の祈りに胸を躍らせていた。
彼ら6人が最後の使者「クラゲ」殿の到着を今は遅しと待っていた頃、
島の人々はこれから始まる恐ろしい事態にいち早く気づき
雨戸を閉め息を殺して外の様子を伺い島にはネコが一匹「にゃあ」と泣く声だけが
響きわたった。
くしくも明日12月1日は、この団体の集会が
関東、名古屋、大阪と全国規模で行う予定となっていた。
此処 瀬戸内の本島では関東からの密者「ます」殿を迎え虎視眈々と全国一の
集会にしようと一日前から準備を始めたのだ。
日がどっぷり暮れてきた頃、男達は思い思いに自分のスタイルで拝み始めた。
頭に鉢巻きライトを灯し「きえっ〜」と唸りをあげる者。
ニュルニュルとした虫の頭にハリを突き刺し「ニヘヘ」と笑う者・・・。
しかし、今日は御本尊は姿を見せてはくれない。
1時間が過ぎ2時間が過ぎ、誰しもが御本尊を諦め、心の中で
「今日はやっぱり浮気の虫がさわぐぜ」
と思った瞬間、天から怒りの罵倒が飛んできた。
「うぬぬ・・・おぬしらはメバルごときにうつつを抜かし、
今日は浮気の虫が騒ぐなどとたわけた事を申す。
ぬしらは関東、名古屋、大阪の信者になんと言い訳申すつもりじゃ。
ぐううっ。
もはや我慢ならぬ。天罰じゃ。」
するとどうだろう
さっきまで静かだった海はみるみる荒れ模様となり、風は北から
びゅうびゅうと吹き荒れてきた。
先ほど乗り込んできたクラゲ殿のブッコミ拝みに一路の望みを託すが、
顔を見せるは尻尾の長い「あなご」のみ。
こうなれば皆で御神酒を酌み交わし、踊り狂って「黒鯛」の神様の怒りを沈めねばならぬ。
「夕凪」殿のこの提案にみな納得し足早に本丸に向かう。

「SHU」殿が差し出した「びいる」という御神酒を手にまずは皆が口を清める。
「毛利」殿はおなかをポンポコ打ちならす。
「夕凪」殿と連れさんが「おでん」「焼き鳥」「牛串」を奉納する。
「ます」殿が歌い、「クラゲ」殿が剣の舞を披露する。
しかしながら一向に神の怒りは静まらず ますます激しさをます。
みぞれが頬を打ち、風が襟元を突き抜け、波はしぶきをあげて襲って来る。
遠くでは稲光も見える。
「おお神よ! 我を救い賜え。」
「おお神よ!その怒りをお納め下せれ」
「我々は常日頃より あなた様を崇拝し 食べ物をあたえ、たまにお顔を拝見させて頂い
たときは天にも昇るつもりで喜んで参りました。それなのに何故・・。」
協議の結果、今年の豊貝での御本尊の顔を沢山拝んだ
「SHU」殿と「夕凪」殿が神への生け贄としてテントの中で一夜を過ごす事になるが
「夕凪」殿はその残酷な仕打ちに耐えきれず逃げ出して
天の怒りを誘発し本丸テントが一つ海の中へと消えて行った。
もはやどうすることも出来ぬ。
「クラゲ」殿 「ます」殿 「毛利」殿 「航希」は
不思議な暖かい風の出る部屋で、今後の身の振り方を語りあった。
その間も外では、コンロが 椅子が テーブルが飛んで行った。
しかし生け贄の「SHU」殿はスヤスヤとぶっ倒れたテントの中で寝息をたてていた。
神が怒るはずだ・・。
ようやく恐怖の夜が明け、全国の信者の者達が神の怒りを沈めようと立ち上りだした。
幸いにも 関東の総統が無事 御本尊のお顔を拝見し、丁寧にお姿を写し取り崇めた。
これを境に全国的に晴天となり、人々は安心して釣りが出来るようになりましたとさ。
めでたし。めでたし。
教訓 1 家族は大切にしましょう。
2 黒鯛の神様を崇めましょう。
3 使った釣り糸等は持ち帰りましょう。