その店は会社から21歩 歩いた所にある。

一応この辺では一番大きな店だが、最近郊外に増えつつある大型釣具店には遠くおよばない。

店内の坪数は20坪ほど その外には10坪ほどのオキアミ 集魚材などの売場がある。

店の人は大人しいおいちゃん 威勢のいいおねいちゃん 常連のお客さんの店員? 

そして、しわがら声のオババ。

店の中を覗くと34人の3才児が好き勝手に遊んだ後、ホンの少し後かたずけした程度の煩雑さ。

釣具屋の法則に「在庫調べは不可能」というのがあるが

なるほど玉浮きの一つ一つ どんどん新しくなるハリ、ハリスの種類の多さ、

古いのか新しいのか解らない竿やリール、おまけに誰がどうやって使うのか解らない仕掛けや道具。

たかだか20坪ほどの中に何種類の品があるのだろう?

税務署が入っても棚卸しだけは勘弁していただきたいものだ。

しかしである 実は店のオババにはちゃーんと解っているのである。

その証拠にたまに入って来る買うのだけが目的なトウシロ客が

(私なんぞ3回行って2回は偵察だけ・・ これがクロウトよ)

「おばちゃん 飛ばしどんぐりある〜」

などと質問しようものなら、いつもは客に肩をもませつつ、気持ちよさそうに目を細め、

「万引きされてもわたしゃ知らないね」といった感じのオババが

キラリと目を光らせその種類、特性、在庫の数までピタリ答えるのである。

またこのオババ、ハリ ハリス 餌 ガン玉と複雑に絡み合った商品を会計場所

に持って行くと最新レジスターがあるのににも関わらず

 田村亮子の一本背おいの如く、電光石火の暗算で客から金を巻き上げていく。

(人聞きの悪い)

そんなKGB CIAも真っ青のオババであるが人知れず悩みもある。

それは自分では釣りに行かないのである。いや悲しくも行けないのである。

オババが釣りに行っては我ら釣り人が困るのである。

きっとオババも釣りに行きたいだろうに・・。

青白い空の朝、または真っ赤な夕焼けが写った広い海で、

思いっきり竿を振りたいだろうに・・。

きっと店に飾った大きな魚拓を見つつ人知れずハ〜アッなどと

ちょっと色っぽく溜息を吐いているに違いない。

我々はそんなオババの犠牲の元に楽しく釣りが出来るのである。

そんなオババ。哀愁のオババ。長生きしてね。

オババのぶんもちゃんと大物狙うからね

そしていつも「みーてーるだーけーー」してても暖かく見守ってくれて有り難う。