西表縦走記録

〜悪戦苦闘の2日間〜

 

T 日 時 平成13年9月9日(日)〜9月10日(月)

U 縦走者 西村・花房・伊藤

V 装備  ザック・テント(2m×2m)・シュラフ・銀マット・食料(カロリーメイト・キャラメル等)・水筒代わりの
      ペットボトル・着替え(シャツ・下着等)・ライト(頭装備用)・地形図(2万5千分の1)・ポンチョ・方位磁石
      デジタルカメラ・虫除けスプレー・ばんそうこ・包帯・ガイドブック(まっぷる)・水着・タオルetc.....
                                                〈伊藤のみのもの・約12キロ〉

W 行程 浦内川遊覧船〜マヤグスクの滝〜第1山小屋跡(泊予定)〜大富

 

反省記録

 

 9日 7時30分  民宿マリウドにて起床。部屋にテレビもなく,エアコンもコイン式だったが,ホームページに
           「浦内川まで送迎有り」というフレーズを見つけて予約した宿。ただ,洗濯機もあったし,売店も
           併設,飯はうまい,とまあ値段の割には満足だった。しかし!西表に入ってから全く携帯が
           つながらないのには参った。さすがJ-PHONE恐るべし。
             マリウドは1人旅の人が多い。神戸出身の若者とも出会った。いいなー時間を気にせず放浪
           できる学生は!

    8時00分  朝食。台風情報をTVで見ながら箸を動かす。沖縄本島から西に逸れていったはずの台風
           何と西表方向に向かっている!どういうこっちゃ!
            天候については一番心配しており,一週間くらい前から絶えず予報をチェックしていた。しかし
           予報はめまぐるしく変わり,全くわからない。(事実台風はこの後も一回転したり,完全停滞する
           など迷走を続け,TVでは一時予想進路を出さなくなった。)

            そもそも昨日西表に到着できたことも奇跡的。羽田発は自分の便から通常時刻の運行を
           開始し,残り2人の関空発は,石垣空港に1時間半遅れで到着し,石垣港に着いたのは西表
           に渡るための最終便出発の5分前であった・・綱渡りでかいくぐってきた強運もこれまでか・・

    8時20分  現在の天候は良好。ただ上空は怪しい雲の動き。台風が近づいているのも納得できる。

            駐在所に届けを出しに行く。歩いてすぐ。駐在所の犬(パピというらしい)にワンワン吠えられる。
           駐在さんは不在で奥さんが応対してくれた。「南国西表の総合案内」からプリントアウトした入山
           届けを使用したが,合わせて血液型を聞かれ,改めてハブの脅威に不安を感じる。しかし,今の
           不安は天候の方が大きい。

    8時40分  マリウドの庭のハンモックに揺られて記念撮影。後から考えたら,まだこのときの自分たちには
           心にゆとりがあったのだと思う・・山を越えたときは,出発前ハンモックに揺られていたという事実
           がなんだか可笑しくて笑ってしまった(笑)

            ただ,この時点では縦走初体験の2人にあまり不安はなさそう。それを見る自分はより不安に
           なるという悪循環・・準備不足だった我がパーティーの反省点等をちょっと思い起こしてみると・・・

            @ 前日夜の,地形図を広げての打ち合わせを真剣に遂行できなかった。
            A 縦走体験談HPを全員が習読していなかった。
            B 入山届の緊急連絡先に自分の携帯電話を書いている!
              (2人とも携帯電話が通じると思っていたらしい)
            C 荷物量が絞れていない(カバンを2つ持ってきている者もいた)
            D 食料不十分(1人は柿ピーなど軽(?)食のみ。もう1人はその夜購入)。
            E 装備不十分(軍手もない者あり・ライトは自分のみ持参)

            これらはすべて経験者である自分の責任。もっと事前に細かいところまで指示を出しておくべき
           だったと反省。ただ,そこがやはり千葉と大阪の遠距離。メールを盛んに打って連絡をまめに
           入れていたのだが返事もそんなに返ってこず確かに不安だったのだが・・・今更悔やんでももう遅い。
           後から聞くところでは「伊藤君のことだから話半分に聞いてた」とのこと!全く遭難の意識が
           伝わってなかったらしい・・あれほど言ってたのにどういうこっちゃ!!これも私の人徳のいたす
           ところか・・ 
            ただ,自分も含めた我がパーティーの根本的な反省点としては,@ジャングル・悪路であると
           いう意識の希薄 A遭難に対する意識の希薄 の2つに集約できる。この点をもっと事前に確認
           しておくべきであった。

            まだ現在の天候は良好。ただかなり雲の動きは激しい。太陽消えるな!頑張るんだ!!

                            

    9時05分  数日前に始発時刻を乗り場に問い合わせたときは,「その日は9時10分か40分」と言われて
           いて,マリウドを出る時刻も迷っていたのだが,結局マリウド発の予定時間(9時10分)通りに
           合わせて乗り場に行った。(しかし通常と変わらず9時30分始発であった。)

            マリウドの送迎車に乗り込む。運転していた奥さん(?)曰く,
           「軽装でマヤグスクまで行った」 ・・・ ん?そんなに悪路ではないのか?
           「マヤグスクからイタジキ出合に帰るのは15分だった」 ・・・ ん?意外に近いのか?
           「途中で泊まるのなら行ってみたら?」 ・・・ よーし!絶対見るぞ〜!!(興奮)
           「一昨日うちのキャンプ場に泊まってたパーティーも逆コースから縦走してるよ」
              ・・・・ お!縦走者いるんか!事前に経験した友達に聞いたらピークの時期だったのに
                  2,3組しか会わなかったと言ってたが・・良かった,安心。
           「ヒルはいっぱい出るよ」 ・・・ やっぱり!う〜ん・・あんまりかゆいのはいややなあ・・

    9時20分  車内での小粋なトークを楽しみ,意気盛ん,絶好調で遊覧船乗り場到着!
           さあ早く船を出してくれ!! 桟橋の女性係員に近づく。
           にこやかに挨拶。・・・向こうは・・ん?こわばった顔・・?
             開口一番
「縦走?やめなさい」

            まさかそういう言葉で出迎えられると思ってなかったのであっけにとられる。重ねるように,
           「台風の情報知ってるでしょ?だめだよ,今日は」別の男性の係員も加わった。
           「今は,船出るけど,明日は出ないよ。そうなると(大富に)抜けるしかないよ。よく考えなさい。」

            う〜ん。これは強烈な出だしやなー。でも今の天候(何とか保ってる)で止めるとは言えん・・
           行くだけ行って,天候荒れてきたら戻るか・・(待合室の中で別の2人組縦走者に「どうしても行くなら
           今日中に抜けなさい」という声が聞こえる)う〜ん・・今日中に抜ければいい・・すなわちマヤグスク
           には行けないということか・・・(縦走中止というのはこの時点では頭の中になかった)           

            係員同士で,「届出出してるんやったら,うちには止める権限ないからなー」という投げ捨てる
           ような声が聞こえる。とりあえず行くだけ行くしかないやろ,と思って切符を買おうとする。
           金を出し,切符を受けとろうとすると,また新手の係員が「縦走?じゃあちょっと待って」と切符を
           横からひったくる。「届出は?」「テントは?」詰問された後,「じゃあこれにも書いて」とここでも
           届出を書く。
「死なないでね」と言われてさすがにブルー。「一緒に行動を共にするように」と
           先の2人を紹介される。(2人は入山後またたくまにハイスピードで消えていったが)

            残念ながらここの係員の印象は最悪なまま終わってしまった。まあそれもこれすべても自分たち
           の責任なんやけど。確かに,遭難でもしたら,この人らも仕事の手をとめなあかんのだろうし,
           捜索にも出なあかんのかもしらんし,(ある意味では)道義的責任も感じるかもしらんし,経験上
           危ないって分かってるんやろうし・・・止めるにはそれなりというか山のように理由はあるかー・・・

            しかし,もっと自分たちにとって不幸だったことは,この状況を全面的に受け入れられるほど,
           まだ俺が大人ではなかったこと・・・・・
            くそーこいつらー。今日を逃せば一生西表縦走なんてできんかもしらんのやぞ!これまでどれだけ
           準備をしてこの日を待ち望んでたというねん!!そう簡単に止めろなんて軽々しく言うなー。俺らの
           想いはどうなるんじゃー(必ずしも3人共通の想いではなかったようだが・・・)。絶対縦走してやる
           からなー。と生まれもっての負けず嫌いの性格が増長してしまったことは,この旅一番の反省点
           であった・・

            今では彼らの姿勢を全面的に受け入れることができる。仮に自分が係員でも身を張ってこんな
           無謀な者たちを止めることであろう。

                            

    9時30分   遊覧船出発。切符を受け取る最初に出会った係員が,重ねて「山の中でキャンプしようなんて
           思わないでくださいね。」と念を押す。乗り込んでしばらくするとさっきまで出ていた太陽も影を
           潜め,急速に天候が悪化していくのが手に取るように分かる。もはやあたりの植生物を説明する
           船頭の声も耳に入らない。これ以上の天候が悪化しないことを祈りつつ,本当にマヤグスクをあきら
           めるのかなどこの先のことを思いつつ船に揺られる。

   10時00分   軍艦岩到着。ここでも山に入る我々に高圧的な態度を取る係員に気分を害しながら,入山。
           船の中では,3人の意思確認をした。決定事項は,「マヤグスクに行くかどうかは,イタジキ出合で
           決する」ということ。自分の中では,今日はマヤグスクは無理か・・また数年後にマヤグスクだけ
           来るか・・と諦め半分であった。しかし,甘かったのは,この時点では,マヤグスクに行かなければ
           1日で抜けれるのだろう・・と軽く考えていたこと。

   10時20分   マリウドの滝展望台到着。記念撮影だけ済ませる。といっても滝ははるか遠望で小さくしか見えず。
           先を急ぐことに。そう言えば乗客は我々3人,別パーティーの2人,そのほかに6〜7人だったか。
           この辺りは道も整えてあり,遊歩道と言っても過言ではない。ずっとこんなんだったら良いのに・・
           と思いながら,さくさく前を進む。途中にマリウドの滝に降りれそうな道があったが無視して進む。
           西村氏の足取りが重い。やはり荷物が重いのか?

                             

   10時40分   カンピレーの滝到着。滝というよりは大きなせせらぎか?記念撮影。
             はるか遠方に見える乗船前に紹介された2人の姿を確認し,その方向へ進む。
           事前の予習ではこの入山口がわかりにくいということだったはず。とりあえず標識を確認し,
           いよいよこれからだということで,西村氏の荷物を一部花房君に移し,奥に進んでいく。しかし!
           看板から5分。いきなり迷う!!!川沿い(真横)を進んでいきこれか?という切り立った斜面を
           乗り越えようと数十m・・苦労した末,先に進めなくなる。

            「道じゃないと思ったら道じゃない」という先達の言葉を思い出し,これは道じゃないと決定。
           数十m戻ると反対側からはあっさり入り口のテープ・さらに少し登ったところに距離看板を発見。
           ロスは往復10分か。事前の予習でこの入口が分かりにくいという話をつかんでいて,「最初に迷う
           と辛いから気を付けよう!」と前日にそう言って注意していたのに・・
           思えばこれがこの旅の苦闘の前兆だったか・・

   11時00分   入山。しばらくはそこそこましな道を進んでいく。マヤグスクへの往復をする人が多いのなら,
           イタジキ出合まではこんな感じかな,と楽観的に進む。
             先頭・花房,中間・西村,しんがり・伊藤

   12時10分   1度休憩を挟み,第2山小屋跡到着。天候もまだなんとか持っている。ペース的にやや急ぎ気味
           に歩いていたこともあったが,あっという間に着いてしまったというのが率直な感想。また,心配して
           いたルート探索もここまでは全く問題がなかった。そのため精神的にもだいぶ楽になっていて,
           1年ぶりの縦走を楽しむ余裕もあった。

   12時40分   イタジキ出合着。岩上に女性2人を発見。と同時に先頭を歩いていた俺はいきなり水中に没す
           靴・ジーパン水浸し。財布・カード入れ等にも被害が及ぶ。定期は使えるのか!(大丈夫だった)
           紙幣も濡れた。(このせいで後日ATMを一時故障に追い込む。大原郵便局さんごめんなさい!)
           岩の上は滑りやすいとは聞いていたが,まさかこれほどとは。

            でもこの姿を見て,花房君は,「こんな道では身なりを構ってる場合ではないんだ・・なりふり構わず
           がむしゃらに進まなければ・・」ということを理解してくれたらしい。確かにおニューの装備に身を固め
           た花房君は慎重の上に慎重を重ねて渡渉していた。定期が使えるかどうか不安もあったが,彼ら
           のためにはなったか。自分にも「大胆に進む!それが縦走だ!!」と慰めながら川から這い出る。

            可哀想に・・という目で岩上で見ている女性2人は,行きの車で聞いていた別パーティーに違いない。
           挨拶をし,この先の状況を聞き,天候の状況を伝える。結局この旅ですれ違ったのは彼女たち
           だけであった。マヤグスクまでの道が不安だったので,連れていってもらおうかと思ったが,
           岩上で四苦八苦してる2人と少し休息することにした。彼女たちは岩上に固められたザックの
           様子から見ると,7〜8人のグループで,残りのメンバーは既にマヤグスクへ発った後らしい。
           「マヤグスクは絶対行くべき」と力説されて,今後の道のりを思案する。先の道のりを尋ねると,
           「道が悪いから,健脚でないと今日中に抜けるのは無理では。」との言葉。「崖から滑り落ちた者も
           いて時間がかかった」「第一山小屋に泊まったけど広めのスペースで良かった」などなど。

            さあどうする。

            この時点で,雨が微かに肩に落ちたのが分かった。上空は厚い雲。
            現在の疲労度・ペース・残りの距離・天候など総合的に考慮する。1年に360日雨が降ると
           言われている屋久島でも1週間快晴に追い込んだ俺の力を持ってもやはり雨は避けられないのか・・
           じゃあマヤグスクへ寄っている暇はないのか・・そうすると今日中に抜けるために先を急ぐか・・ただ,
           このまま行っても今日中に抜けることができるのか・・・日没まで6時間・・・ぎりぎりか・・しかし・・
           マヤグスクは諦めることができるのか・・彼女たちも行っているではないか・・・ここまで来て自分たち
           は諦めるのか・・雨は・・・止んだ。台風は本当に近づいているのか・・・雨は降るのか・・・?     

            女性2人を見送り,思案する。進むべきか,マヤグスクか。あんまり悩んでる余裕はない。
           雨は?・・まだもってる。決行。我々も荷物を岩上で固め,雨に備え,ビニールシートをかぶせる。
           結局我々をマヤグスクへ駆り立てたのは,マヤグスクへの想いだったのか,それとも判断力の甘さ
           だったのか・・・                  

   13時10分  マヤグスクへは,「途中まで川をさかのぼり,そこから右手に入れば良い」との車中で教えて
           もらったとおりに進んでいたが,どうやらさかのぼり過ぎたらしい!
            マヤグスクの土台が見えてきたところで川を岩づたいに進めなくなる。進めなくなった辺りにも
           テープがあったため,非常に判断に迷った。なんのためのテープだったのかは今でもわからない。
           少し戻り,右手に道らしきものを発見。無事迂回ルートに戻る。それにしてもこの迂回路も大変な道。
           ついに西表らしい(?)道になってきた・・と思いながら枝・根の合間を進む。到着の5分ほど前か,
           急に下って,川付近に戻るところで,滑り落ち,肩を強打。さらに枝が首に絡まり,絞首刑のような
           状況に!!

                              

   13時40分  四苦八苦しながら,マヤグスク滝に到着
           荷物はデジカメのみの軽装に関わらず,かなり消耗。滝の水をひたすら飲み,英気を養う。
           そしてしばし,マヤグスクの激流に魅入る。と同時に滝上をうごめく人々を発見!
           どうやらさきほどのパーティーらしい。登る人がいるとは聞いていたものの,間近で見ると
           なかなか怖い!よく見ると靴もそれなりの靴。転落したときのことを考え,我々は後込み。
           「登ってみると楽しいですよー」と言われたが・・
             ちなみに彼女たちは今日も山中で一泊するので,ゆっくりしていくらしい。念のため,
           明日台風が直撃すると船が来ないかも知れないということだけ伝える。14時出発。

   14時20分  うーん。こっちでいいんかなーとぶつぶつ言いながら帰路につく。復路は,川に戻らずに,出合
           まで迂回路を行くコース。行く時に通っていない道を通るのはちょっと厳しい。四苦八苦しながら,
           何とか無事荷物を固めたイタジキ出合岩上に復帰。

            そして,ついに・・・雨が落ちてきた

            

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