緑と水のふる里
北山杉は応永年間(1394〜1427)頃から始められ、室町中期以降には“茶の湯”の流行によって、茶室の建築に用いられ、ますます盛んになりました。悠に600年の歴史をもつ京都の伝統産業で、天正年間には麿丸太が仙洞御所の茶室に用いられ、朝廷の御用木として北山杉の名は確定されました。

桂離宮や修学院離宮、島原角屋等は北山丸太を使った数寄屋づくりの代表的建築で、北山の歴史が残した尊い遺産でもあります。

この自然の木肌の清純さ、格調の高さは「京都府の木」として指定されております。

北山杉の里は、洛西の名所三尾(高尾・槙尾・栂尾)から一足入った谷間の別天地に、その全景を見渡せる小高い山麓にございます。

ちょっと足を延ばしてはいかがですか、そこは都会の喧騒を忘れさせる別天地です。

 

 
〒601-0131 京都市北区小野下ノ町101
tel:075-406-2243・fax:075-406-2339
北山杉資料館 tel:075-406-2241


 
「古都」川端康成著

小さい頃に生き別れになった双子の姉妹がふとしたきっかけで再会する。一人は京都の呉服屋に拾われ裕福な生活を送るがもう一人は北山の杉山で働いていた。
 その姉妹を取り巻く、家族、恋する男性との人間模様を京都の旧家のたたずまいや、祇園祭の華やかな雰囲気を美しく取り込みながら描かれた作品。自然の雄大さ、幽玄的な美しさを醸し出している。

1963年に監督中村登、主演岩下志麻で原作を映画化(松竹)された。

「古都」の一説を刻んだ文学碑が北山杉資料館に建っている.

「古都」はなんとも心地よい、優しい感じのする物語である。
それは、全編を通して流れる京都弁の、穏やかな響きが大きいだろう(川端氏の意志で、あえて、京都弁ではないままに残した部分もある)。そして又、京都の風物や四季の移り変わりも、勿論そういった雰囲気を盛り上げている。だが、何よりも、北山杉の村の澄んだ空気感を背景に生きる苗子と、中京の呉服問屋に拾われて育った千重子姉妹の娘らしい心の描写が、物語の優しさを決定づけているのではないだろうか。
同じ京都を舞台に描かれた「美しさと哀しみと」に比べても、遥かに静かでたおやかな時間の流れ方である。
姉妹の過去に広がる背景の重さも、決してやりきれなさに通じる事なく、そこにあやどられる淡い恋愛感情もあって、静かな柔らかさを助長している。
そしてこの物語の特徴のひとつは、それまで知られていた、神社仏閣の散在する京都市街ではなく、外れにある北山杉の村を舞台とした事だろう。
この場所は「京都」という、華やかだがしかし、尚かつ日本人の心のふるさとたる静粛な場所を後ろ楯に、一層輝きを増している。

「古都」の物語は、別々の環境で育った姉妹が千重子の家で一夜を共にし、ちらちらと雪の舞う朝、別れて行く所で終わる。姉妹としての幸福な一夜を抱いて、苗子は北山杉の村へ帰ってゆく。
優しい物語のまま終わるのである。
川端康成は、「古都の続きは書きたいが、書けばこの姉妹は不幸になって行く様な気がする」という様な事を語っている。