【花の部屋】
サラサドウダン

〔サラサドウダン*笠取山〕

 春早くに釣鐘型の小さなクリーム色の花を咲かせるドウダンツツジは、公園や庭木に植えられていて、街でもおなじみの花だ。

 初夏になるとこのドウダンツツジの仲間のサラサドウダンが、中級山岳の日当たりのいい林に花を咲かせる。見事な木だと樹高4〜5mほどにもなり、ドウダンツツジよりも大きな、薄紅色の花を枝いっぱいにびっしりとつけ、登山者を喜ばせてくれる。

 サラサドウダンは、淡黄色の地に赤みを帯びた筋が縦に入り、これが更紗染めの模様を思わせることからついた名だ。蕾のうちはこの更紗模様は薄いが、花が開くにつれて色が濃くなり、花の最盛期の大木は梢がワインレッドに染まったように華やかになる。

 サラサドウダンのドウダンは、上に油皿をのせた昔の照明用具・灯台(どうだん)の意味で、やはり花の形にたとえたものだという。したがって漢字で書くと〈更紗灯台〉。いっそうおくゆかしい感じがする。別名をフウリンツツジ(風鈴躑躅)というそうで、これもまた花の形と模様からきているのだろう。

 花もいいが、秋の紅葉もまた燃えるように赤くなって見事だ。

 材は床柱に使われるほか、花の見事さから盆栽にもされるようだ。庭園樹にもされているらしいが、私はまだ公園や街路樹として植えられているのを見たことがない。

 花の色がさらに濃い紅色のものはベニサラサドウダンと呼ばれ、これはなかなかお目にかかれないが、サラサドウダンならかなり手近な山で毎年のように見ることができる。

〔サラサドウダン*乾徳山〕
 なかでも、乾徳山の扇平で見たサラサドウダンは見事だった。6月上旬にアズマシャクナゲを見ようと、乾徳山から黒金山を経て西沢渓谷へ降りたのだが、歩程9時間ほどのロングランなので夜行電車で塩山まで行き、タクシーを使って深夜から歩き出した。扇平には夜明け早々に着き、急斜面を寝不足のけだるい足取りで登っていたら、草原に花盛りのサラサドウダンの大木があり、思わず息を呑んだ。振り返ると早暁の空に富士山が高々と聳えていた。

 一昨年、やはり飛竜山にアズマシャクナゲを見にいったときも、禿岩のあたりに花盛りのサラサドウダンの木がたくさんあり、昼食休憩に花を添えてくれた。次の週に歩いた笠取山でも見事に花をつけたサラサドウダンをたくさん見た。

 毎年何回かは山でサラサドウダンを見ることができて、もうめずらしくもなんでもない花になってしまったが、それでもこの花の美しさに見とれて、ついまた何枚も写真を撮ってしまう。

(2003年6月19日)



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