〔No.26〕


山で泊まる:山小屋編(2)



 山小屋に泊まる前に:計画編

■ 山小屋の営業形態

 まず、自分が泊まろうとする山小屋が通年営業か期間営業か、週末営業か、営業時期を調べます。予約の必要な小屋もありますし、素泊まりのみという小屋もあります。

 自炊をするならそのためのスペースが小屋の中にあるかどうかの確認も大切です。風雨の屋外で炊事、などという悲劇には遭いたくないものです。こういう小屋なら食事つきで泊まってしまった方が安心です。

■ 予約

 山小屋は原則として予約無しで泊まれますが、最近ではポピュラーな山域の山小屋などでは予約無しでは泊めてもらえないところも増えています。1泊程度の山ならある程度行程が計算できますが、数泊するような縦走だと、行程はお天気次第になる場合もあり、予約どおりに泊まれるかどうか悩ましい場合もあります。

 尾瀬などは、入山者の抑制と快適登山の実現を目的に、完全予約制をとっています。尾瀬以外でも、予約制をとっている小屋は増えてきています。こうした小屋に知らずに到着すると、宿泊を拒否されることになります。

 以前、北アルプスの横尾の小屋に泊まったとき、遅く到着した単独行者が宿泊を拒否されてモメている場面に遭遇しました。今は旅行会社によるツァー登山もさかんで、小屋側としてもこうした登山者に1畳に3人も4人もで寝てほしいとはいえないのでしょう。夕方でしたから、この登山者は徳沢か明神まで引き返さざるをえなかったでしょう。

 また山小屋によっては入っているはずの管理人が何かの理由で下山してしまう、ということもありえます。

 こうしたことに遭遇してあわてないよう、計画が固まったら早めに予約をして、ついでに山の状況なども聞いておいた方が安心です。

 ただし、計画変更の場合は早めにキャンセルの連絡を入れ、迷惑のかからないようにしましょう。小屋によっては、その日来るはずの登山者が到着しないと、遭難の心配をすることもあります。

■ 到着時間

 泊まりがけの山旅をした人はわかると思いますが、山中での時刻の観念は街とはかなりちがいます。起床から就寝まで、街に比べると1日のサイクルがおよそ2〜3時間程度早く進みます。朝は日の出前から活動が始まり、夜は日没と同時、あるいは夕食後間もなく就寝することがほとんどです。

 早立ち早着きは山歩きの基本です。

 早朝あるいは夜明け前から活動するのは、より長く行動時間を確保するため、また早朝の方が大気の状態がよく、素晴らしい景色を見ることもできるし、夏などは涼しいうちに行動できるからです。午後になると大気が不安定になり、落雷や夕立にあいやすくなります。山中でアクシデントに遭ったときなどでも、時間がたっぷりあれば落ち着いて適切な対応もできます。

 計画も行動も、こうした山時間を前提に組まなければなりません。

 山小屋へはなるべく午後2時〜3時くらいには到着しましょう。たとえ予約をしていても、遅くも夕食の1時間前には小屋に入りたいものです。到着が早いほうが、小屋の中でより快適なスペースを確保できます。夕食が始まったあと到着すると、予約をしておいても食事のサービスを受けられないこともあります。

 山小屋に到着したら

 冬場でアイゼンを装着している場合は小屋の外で脱ぎ、小屋の土間を傷めないように注意します。雨具をつけているような場合は小屋の入り口付近の空いている場所でザックを下ろし、雨具を脱ぎましょう。テーブルや椅子の上にザックや濡れた雨具を置くのはほかの登山者への迷惑になります。

 宿泊料金は前払いです。受付時に水場やトイレの場所、寝る場所や食事の時刻・方法、消灯時刻、その他の注意事項などの説明があります。翌日の弁当の手配が必要なら、このとききちんと頼んで料金も払っておきます。

 濡れ物は乾燥室があれば利用できます。確認しましょう。

 ザックや登山靴の置き方は山小屋によって異なります。よく注意を聞いておきましょう。また、混雑時には、登山靴を取り違えられないよう、しっかり場所を覚えて確認しておきましょう。荷札をくれる小屋もありますが、靴紐などで左右の靴を縛って目印をつけておくのも取り違え防止には有効です。

 部屋に入って先着者がいたら、まず気持よく挨拶をしましょう。譲り合いの精神で、それぞれの寝場所を確認し、狭い場所を気持よく使いたいものです。

 寝場所が確定したら、荷物の整理をし、ヘッドランプ、トイレットペーパー、酒・つまみ・菓子類など、寝るまでに必要なものを取り出すなりすぐ出せるようにしておきます。消灯後がさがさと音を立ててザックの中の荷物を探すのは同室者に迷惑です。

 写真を撮る人は、カメラも取り出し、身近に置いておきます。

 不要なものはザックにしまい、邪魔にならないところにザックを置いておきましょう。

 まれに更衣室を備えている山小屋もあります。こういう小屋での着替えは楽にできますが、更衣室がない場合、特に女性は着替えに苦労します。早く小屋に到着すれば、まだ空いている部屋があるので、そういうスペースを利用することができます。こういう点でも、早着きはメリットがあります。

 山小屋での過ごし方

 寝場所の確保と荷物の整理ができたら、まだ時刻は早いので戸外のテーブルでビールやコーヒーなどを楽しみながら、談笑や稜線の眺めを楽しんだり、付近のお花畑を散策したり、街では味わえないゆったりした時間を過ごしましょう。

 運がよければ、夕方には感動的な"落日"を見ることができます。寒くなってくるので暖かい身支度をし、テルモスの熱いお茶でも楽しみながら静かに日没を待つのは街では味わえない贅沢なひとときです。

 夜、小屋の外に出れば、満天の星を眺めることができます。まれに、人工衛星が夜空を横切っていくのも眺められます。季節と時刻にもよりますが、天の川が空いちめんに流れているのを見ることができたときなど、漆黒の闇の中でほんとうに感動します。

 夕食後、部屋で同室の登山者と山談義をするのも楽しいものです。

 ほとんどの小屋は9時頃には消灯します。就寝前に翌日の出発準備は済ませておきましょう。ヘッドランプはかならず枕元に。

 また、翌朝の早い起床に備えて早寝をする人もいます。夕食後の部屋では大声の談笑はつつしみたいものです。

 朝の行動

 稜線上の山小屋なら天気が良ければご来光が拝めます。朝食の時間を確認し、感動的な朝を楽しみましょう。この感動を体験すると、きっとまた、山を歩きたくなります。

 高山の場合、夏でも日の出前はかなり冷え込みます。防寒着・雨具・手袋・帽子等でしっかり防寒して外に出ましょう。

 山の朝はとにかく早い。まだ暗いうちから出発する人もいます。こういう場合、ほかの登山者の迷惑にならないよう、静かに行動しましょう。早立ちをする人は、入口に近い場所に寝場所をとるといった工夫も必要です。

 出発前に、忘れ物がないか、最後の確認を。特に濡れ物を乾燥室に置いている場合は要注意です。


HOME 目次 BACK NEXT