| 初めての方へ |
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私は、岩手県のとある市に住む労働者の男。年は20代後半、
独身。今のところ、結婚の予定もない。 出身地から遠く離れた、この街に配属された。東北地方で暮らすのはこれが初めて。早いものでもう数年になる。 気に入っているのは、温泉が近いこと、魚がおいしいこと、魚以外にもうまいものが多いこと、そしてキャンプ場がたくさんあること。 いいじゃないか。 転勤するまでの間、この地での暮らしを満喫しようと思っている。 |
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職は、第一希望とした職種だ。世間的には「花形の人気商売」らしく競争率はばかに高い
し、やり
がいは間違いなし。選んだことを後悔してはいない。 だけど、時間外労働や不規則勤務が多くて疲れがとれない。連日、帰宅は深夜。基本的にほとんど残業前提の毎日だから、そりゃストレスもたまる。家に帰るの は、眠るためだけ。部屋の掃除をする暇もない。 愛想笑いに至っては、営業・接客の仕事と比べても何倍も多く要求される。 愛想笑いをするたびに、命が削れていく音が聞こえる。ゴリッ、ゴリッ。人生について、来し方行く末について、思いを致す余裕 はない。 |
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休暇は一応「ある」ことになっている。わが社の組合は結構強く、休暇は
守られている、はずだ。ただ、休んだことにして仕事をしたりすることも日常茶飯事だし、残業も時間数を少なく申請することになる。苦労は虚しい。 休みは貴重だ。 自分で積極的に守らないと休めなくなってしまう。同僚も、休まずひたすらに働いて、一段落してやっと休むという生活を繰り返している。 |
| ■運良
く、自由になる休日があったなら。やはり、人間らしさを取り戻すことに時間を費やしたい。苦しみから遠ざかり、仕事を忘れ、休まなければ。 何かに気を使い、思い悩む休日ならば、それは普段と何も変わらない。休んだことにはならない。 そのためには、やはりひとりになることだ。それも徹底的に、誰もいないところで。 他人や世間とのしがらみを断ち切って、しみじみ深々と孤独をかみしめたい。そんな私が出した結論が、たまたま「ひとりキャンプ」だっ た。 |