1月**日  究極の露天風呂




冬になってすっかり出不精になっている拙者兎耳で候。
しかし、そろそろ温泉にでも出かけたい気分になってきた。
温泉はいいのお。拙者は温泉好きである。
ん?猿が温泉に入るという話は聞いたことがあるが、兎が温泉に入るという話は聞いたことがない?
うむ、拙者も聞いたことはないが、まあご勘弁くだされ。

さてさて。今までに行ったことのある温泉地はどこもよかった。
北は北海道定山渓、 南は関東一円の温泉地か。
残念ながら伊豆より南の温泉はまだ未踏の地である。
そういえば伊香保温泉の周辺の町並みは実に味があってとても気に入った。
急勾配の石階段がずうっと続き、その両側に温泉饅頭やそのほかの土産物の店が軒を連ねている。
なんとも風情のある石階段で、多少息は切れるが楽しくそぞろ歩きをしたものだ。
温泉饅頭が美味かった。
そこからちょいと路地に入ったところの饂飩屋でいただいたけんちん饂飩もとても美味であった。

それにしても温泉というのはどの季節に行っても良いもの。
春の桜の下もよし、夏の湯浴みの後のビールもよし、
秋に紅葉と入るもよし、もちろん雪の中の湯気もよし。
嗚呼、想像するだけで体がぽかぽかしてくるようだ。

さて、拙者の知る限りで最も印象的だったのは
数年前に友人たちと大挙して出かけた会津の湯野上温泉であった。
駅から十数分歩いたところに藁葺屋根の宿がある。
入り口近くには囲炉裏があり、炭火で魚を焼いている。
小奇麗という言葉には程遠いが、料理も美味く、すすけた客室もまた良かった。

温泉地にある宿なので、当然風呂も温泉から引いており、昼夜問わず入れる。
それだけでも拙者は満足だったが、宿のご主人が
ちょっと歩いたところに大きな川があって、そこに面白い露天風呂があるから行ってみなさいよ
と教えてくださったので、夜が明けると我々は何人かで連れ立って出かけて行った。

なるほど、大きな川が見えてきた。しかしその温泉はいずこ?
きょろきょろと辺りを見渡すと、少し先に湯気が立っているのが見える。

・・・もしや、あれだろうか?
川岸ぎりぎりのところにコンクリートの寄せ集めで作ったような小さな箱が置かれている。
青空の下、湯気の立った箱だけが剥き出しになっているのだ。
どうやら川岸ぎりぎりのところに温泉源があるらしく、そこから湧いてくる湯を
コンクリートの風呂桶の中に引きこんでいるようだった。
湧いている湯の大半は川に流れ込んでおり、川のところどころでも湯気が立っている。

ほほう。なんとも風情のある露天風呂だこと。
これぞ本物の露天風呂なのであろう。

しかし・・・、これは混浴とか混浴ではないとか、そういうことを問題にするような風呂ではないのである。
そもそも服を脱ぐ場所もない。友人は早くも木陰に隠れて服を脱ぎ始めている。
拙者は・・・拙者は・・・・・・・・・
ここには女友達もいることだし・・・・・・・・・

結局拙者にはその露天風呂に入る勇気はなく、もう一度宿に戻って内風呂に入ったのであった。
いやはや、シャイだとこういうときに損をするものじゃ。

さて、そろそろ風呂にでも入ろうかの。では閉店。





兎耳堂