屋久島

(95.5.3-5.7)

就職もどうやら決まり、学生最後の年となることとなった。今年は行っておくべきところは全部行こうと、並々ならぬ気合いを持って望んだM2の春であった。ワンゲルの連中は多くは既に屋久島には行ってしまっていたので、一人で行くことになった。

5月3日 あめ

前日に京都より鈍行を乗り継いで博多まで入り、「ドリームつばめ」で朝鹿児島に着き、さらにフェリーに乗り換えて屋久島を目指す。船には、九州地方の沢の権威、吉川満氏がたまたま乗り合わせていた。、宮之浦川・竜王滝の右岸ルートを見つけたときのことなど、色々なお話を聞くことができ、有意義なときを過ごせた。どういう経緯だったか忘れてしまったが、岡山在住のMさんのグループと仲良しになり、白谷の登山口まで一緒にタクシーを相乗りしようということになった。西日本第二の高峰宮之浦岳を主峰に持つ屋久島。航空映像で見ると島自体が一つの巨大な山の塊である。目前には徐々にその黒い影が迫ってきたが、ガスで山の方は見えない。船が港に着くと、他の人は予約していたと思われるタクシーや迎えの車に乗ってさーっといなくなってしまった。少し歩いてタクシーの事務所で聞いてみたが、みんな出払っていてすぐには帰ってこないとのこと。ゴールデンウイークの屋久島を少々なめていたようだ。しかたなく3人で楠川歩道を標高0mから歩いて登ることにした。15:20入山。林芙美子曰くここは1月に35日雨が降るという屋久島、さっそくぼたぼた雨が降ってきた。急登が続き、M氏が少々遅れ気味である。それでも程々のペースで進み、16:36には予定の登山口であった林道に着いた。今日の泊地の白谷山荘には17:36着。すでに混みあっている。

5月4日 くもりのちド雨

6:25発。きょうもどんよりした天気である。辻峠を越え、楠川分れから軌道上を歩く。途中鹿を見た。8:48大株歩道に入る。まずウイルソン株。巨大な杉の切り株で、中に入ることが出来る。その足下をきれいな澄んだ水が流れる。次は大王杉。大きくて、まだまだ元気。ヒメシャラの橙色の幹も鮮やかである。そして10:29にかの有名な縄文杉着。衰弱が激しく、かなりぼろぼろである。周りには柵が巡らされ、残念ながら直接触れることはできなかった。既に雨がぼたりぼたりと降っている。少し歩いて、11:00高塚小屋。小さな小屋である。ここで昼飯。手帳には、ここで「サル!」と記録があるが、あまり記憶にはない。12:07発。小高塚山を越え、12:57に新高塚小屋。新しいだけあって、大きなきれいな小屋。天気も悪いのでうだうだしてしまう。水を汲み、13:20発。第一展望台、第二展望台と過ぎ、森林限界を超えてきたが、相変わらず雨は激しく、ガスでほとんど何も見えない。今日は焼野三叉路の手前、平石周辺でテントを張った。晩になるとかなり冷え込んできて、がたがた震えながら寝た。

5月5日 はれのち快晴

寒さに目が覚めて外を見ると、なんんと昨日までのド雨は去り、目の前には宮之浦岳から永田岳への稜線が慄然とそびえ立っていた。6:20発。靴は凍りついていた。最後の登りはルンルン気分。7:10に宮之浦岳の頂上に着いた。屋久島のど真ん中、多くの峰々が折り重なるようにして足下に広がり、その向こうには青い海がすっかり晴れ上がった朝日の中で煌めいている。

宮之浦岳頂上より。種子島が見える。

少々寒いが、昨日までが昨日までだけに、気分爽快、大満足である。これから向かう淀川小屋方面からも早くも人が来ていたが、その人が憤慨しながら言うには、昨夜の淀川小屋では4、50人くらいの大団体がいてうるさくて寝られず、さっさと先に発ってきたそうである。ドラム缶のようなおばはんも居て、あんな連中が登れるのかと文句たらたらであった。7:42発。ここから投石岳にかけての峰々は、巨岩の乗った小さな緑の峰々が連なり、さながら天井の楽園と言った感じで、歩いていて大変すがすがしい気分になる。

縦走路にて

途中、さきほどの話の団体らしき大パーティーとすれ違った。たしかにドラム缶も歩いていた。明日には開聞岳に登る予定になっているらしいが、この調子で行けるのだろうか。最近登山ツアーでの事故も多いが、このような無茶が多いのだろう。少し下って、9:00投石岩屋に着いた。平べったい大きな岩の上で、ごろりと昼寝を決め込むのもよさそうだ。少し登って縦走路を少しはずれて、黒味岳へ。10:05着。ここからの眺めは連峰中でも随一である。

右が宮之浦岳、左が永田岳

端正なピラミッドの宮之浦岳、ごつごつした永田岳が谷を隔てて美しく眺められる。昼飯を食って、11:03発。また少しくだって、11:35花之江河。標高1600mのこじんまりした庭園のような高層湿原。南国ながら、なんとなく東北の山を彷彿させる。右に包丁で刻んだような岩が頂上に乗った高盤岳の姿を眺めながら下っていく。12:48淀川小屋着。ここも大きなきれいな小屋。20分休憩した後出発、13:39には林道に着いた。運良く15分後には登山客を乗せたタクシーが登場、これに乗車して林道を下った。このタクシーの運転手さんは普段は本土で仕事をしているそうで、シーズンには屋久島に来て稼ぎ、ガイドもするということだ。途中立ち枯れたり、ねじれたりした杉が多く見られた。強い風が吹き抜けている証拠だと運転手さんが教えてくれた。安房でおりてバスに乗り換え、南岸の平内へ。ここには海中温泉がある。満潮時には海の中に没し入れない。この日は日が暮れてから潮が引き、ゆっくり3人でつかることが出来た。近くの公園にテントを張り、島の名産のイモ焼酎とつまみを買い込んで宴会をした。天気も良く、最高の一時であった。

5月6日 はれ

今日も良い天気である。再びバスに乗った。結局3日間お世話になった、今日岡山へ戻られるというお二人とは別れて、私は千尋滝見物のため原でバスを降りた。北へ向かって坂道を歩く。真っ正面には、モッチョム岳のものすごい岩壁がそびえる。展望台から少し遠いものの、千尋滝は一瞬息を飲んでしまう迫力。右岸に巨大なスラブを擁する飛瀑で、大河鯛之川に集まった水の全てを滔々と落としていた。

千尋滝

目を転ずると、高台から見る海もまた青く佇み、海岸線はただただ美しかった。来た道を下り、せっかくなので熱帯果樹園と、下流の河口近くにあるトロオキの滝を見物した。日が高くなってくると非常に暑く、汗をかきかきふらふらしながら歩き回り、またバスに乗って安房へ。昨日タクシーのおじさんに頼んで予約してもらった民宿「花のや」さんへ向かう。少し落ち着いた後、お土産を買いに出かける。杉製のぐい飲みを買った。宿では、団体さんに混ぜてもらって一緒に晩飯を食べ、そのあと屋久島の紹介のビデオを見た。一人のおじさんに、なぜかツメをかむ癖をしつこく指摘され「これから偉くなる人なんだから、絶対にやめないかん」と注意された(その剣幕におされ、それ以来かまないよう心掛けている)。部屋はいろんな人とごちゃまぜの相部屋。そそくさと寝た。

5月7日、朝飯もそこそこに港まで送ってもらって、朝一番のトッピーに乗り、屋久島を後にした。鹿児島より特急、新幹線を乗り継いで、その日のうちに京都へ戻った。

行きの夜行でたまたま隣に座っていた京大生から、名残惜しそうに見送ってくれた宿のお兄さんまでいろんな人と触れ合うことが出来、一人旅行の楽しみを存分に味わった貴重な5日間であった。