イギリス海軍 戦艦 ネルソン

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第2次世界大戦前の、まだ平和が続いていた昭和の初期、日本の長門クラス、アメリカのカリフォルニアクラス、そしてイギリスのネルソンクラスは、世界の3大戦艦と言われていた。いずれも少しでも強い戦艦にするため、海軍当局と造船技術者が血の出るような苦心を重ねて作り上げた巨艦であったが、特にイギリスのネルソンクラスは9門の40.6cm砲を全て艦の前半部に集めるという変わった方法をとっており、世界の軍艦の中でも異色の存在であった。
イギリス造船界の至宝と言われたサー・ユースタス・テニスン・ダインコートが、この異例の主砲配置に踏み切った理由は、普通の主砲配置では、9門の40.6cm砲を始めとし、近代戦艦に必要な諸設備を積み、しかも充分な防禦力を持たせようとすると、軍縮条約に規定された主力艦の排水量35,000トン以内という制限を越えてしまうためである。
ネルソンのような主砲配置をとると、弾薬庫、機関室等の重要部分が船の中心部に集中してくるので、普通の配置の場合よりも装甲板を貼る部分が短くてすみ、充分な厚さの装甲をしても、まだ装甲関係の重量を節約できるという利点もあったのである。
ただし、この方式をとると、艦橋が後方になるため操艦に不便なことや、全主砲を後方へ向けて撃ったとき艦橋がものすごい爆風を受けるという欠点があった。
この主砲の配置の他にも、いくつもの新機軸がとり入れられているが、その一つにインターナルアーマーと呼ばれる防禦構造がある。これは船体の内側に傾斜させて装甲を貼る方法で、ネルソンの場合、バルジも内蔵されていたし、38mmの対魚雷隔壁も設けられ、更に重要部分は15.9mmの防禦甲板を貼るという徹底した重装甲が採用されていた。
第2は、このクラスの巨艦は4軸式タービンが普通であるが、ネルソンの場合は速力を23ノットにおさえたため、タービン2基の2軸推進式で済んだことである。しかし、この23ノットという低速力はのちに運動性の悪さと共に、本艦の泣き所となった。
特色の第3は、普通の艦と逆に機関室をボイラー室の前方に配置したことである。また、乾板が高いことも特色で、これは悪天候下で行動するとき大きな威力を発揮した。この他、砲塔式でしかも対空戦闘にも使用できるよう60度という高仰角をとれる副砲、搭形の艦橋等も、長門式やカリフォルニアにくらべると一歩進んだ設計であった。
密集した弾幕がはれるポンポン砲をはじめて採用したことも特色で、対空兵器は最初はこの8連装ポンポン砲2基と12cm高角砲6門であったが、大戦中、8連装ポンポン砲を更に2基の他、40mm4連装機銃4基、20mm機銃61挺を追加している。しかしこうした特色のかげには、いくつかの泣き所も潜んでいた。航空兵器の貧弱さもその一つで、ネルソンは1936年以降、水上偵察機を1機搭載したが最後までカタパルトは積まず、デリックで海面へ降ろして発進させるという不便な方法をとっていた。
これにひきかえ電波兵器は充実しており、1939年に完成した79Y型警戒レーダーをいち早く搭載したのを手始めに、レーダー装備に力を入れ、大戦中期以降は対空用の279〜281型、主砲射撃用の284型、高角砲射撃用の285型、ポンポン砲射撃用の282型、方位測定用の271型等を搭載していた。
1922年12月28日、ビッカース、アームストロング社で建造を開始したネルソンは4年半の日時を費やしたのち、1927年6月に完成、ただちに本国艦隊旗艦として活躍していたが1939年12月4日、ロック港入り口で磁気機雷に触れて損傷した。翌1940年6月、修理を終えたネルソンはその後1年余り本国に所属していたがマルタ島攻防戦が激化したため、1941年7月地中海のH部隊に移った。そして船団護衛にあたっていたが、9月27日イタリア空軍のサボイアSM84雷撃機の攻撃を受けて損傷し帰国した。1942年4月修理を終えて戦列に戻ったネルソンは、8月のオペレーション、ペデスタル(台石作戦−マルタ島増援作戦)に参加したのち、11月に再びH部隊に編入された。そして11月8日のオペレーション、トローチ(たいまつ作戦−北イタリア上陸作戦)を始め、1943年7月のシシリー作戦、9月のサレリノ上陸作戦等に参加したが、1943年11月修理のため再び帰国した。
修理完了後は本国艦隊に加わり、1944年6月のノルマンディー上陸作戦では僚艦ロドネイ等とともに援護射撃を行ない、40.6cmの巨弾をドイツ軍防禦陣地につるべ撃ちに射ち込んでいたが機雷に触れて損傷した。翌1945年修理されたのちは東インド艦隊に編入され、ここで終戦を迎えた。そして1948年3月老朽化のため解体されることとなり、20年にわたるその生涯を閉じたのです。
≪ポンポン砲≫
12:21 03/03/25 ビッカース社で開発した中距離用の対空砲で、口径は40mm、8連装で密度の高い弾幕を張ることができ、特に急降下爆撃機や雷撃機への攻撃に有利でした。
≪英国戦艦ネルソン主要データー≫
基準排水量:35,000トン 全長:710フィート 喫水線長:702フィート
最大巾:106フィート 基準状態における喫水:30フィート
乾舷高さ 前部:29フィート 中央部:25フィート6インチ 後部:27フィート
軸出力:ブラウン・カーチス式タービン 2軸 45,000馬力 速力:23ノット
推進器回転数:毎分160回転 重油積載量:4,000トン 乗員:1,400名
武装:主砲 16インチ砲 3連装砲塔3基(9門)
副砲 6インチ砲 2連装砲塔6基(12門)
高角砲 4.7インチ高角砲 6基(6門)
その他 2ポンドポンポン砲 8連装6基(48門) 水中魚雷発射管 2門
防禦:舷側 14インチ 砲塔固定部 15インチ 砲塔 16インチ 甲板 61/4インチ
※ キット同梱の「イギリス戦艦ネルソン」組み立て解説書より抜粋
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