〜戦場からの帰還〜

 ただ「梨華」って呼んであげただけなのに、こんな
に喜ぶなんて……可愛いじゃない……。
 ハッ! いけない、いけない。
 保田圭は、こんなに甘甘なキャラじゃないわっ!
 危なく敵の術中にはまるところだったわ……。
 大体、もう私も帰らないと、明日の仕事に差し支え
るし。




「いし…梨華……もう寝ちゃいなさい。私も明日、仕
事だから帰るよ」
「えぇ〜っ!……」
 うっ…何よ、そのすがるような目は。
 そんな攻撃は反則よ。
 駄目だったら…そんな目をしたって、私は帰るわよ。
「圭ちゃん……」
 ……もうちょっとだけなら…いても……。




 そのときドアが開いて、救いの天使(?)が登場。
「石川さ〜ん、消灯の時間です。申し訳ないですけど、
付き添いの方もここまでで。石川さん、何かあったら
ナースコールしてくださいね」
 白衣の天使とはこのことねっ!
「それじゃ石川、明日には退院できるらしいから、そ
のときにまた来るから。じゃっ!」
 逃げるように部屋を出た。
「保田さ〜ん!」
 …まったく…危ないところだったわ。




 キスもしちゃったし、「圭ちゃん」「梨華」って呼
び合うようになっちゃったし……。
 何だか、よく考えてみると…一方的にラブラブ攻撃
を受けっぱなしだったような気がするわ。
 これできょう、最後の一線を超さずに、無事に家に
帰れるなんて……奇跡よ、奇跡っ!
 ……何の自慢にもならないけど……。
                       (続)

続く