【焼き銀杏】

 私は馬鹿だ。
 自分で思ってた以上に。
 梨華ちゃんの話を聞いて、初めて気づかされた。自分が梨華ちゃんの痛み、苦しみを全然、分かってなかったことに。
 自分に対して無性に腹が立った。

 メール交換したり、電話で話したり、デートしたり……。
 どんどん梨華ちゃんを好きになっていく私がいて……梨華ちゃんにも、それが伝わっていると思いこんでた。
 きちんと言葉で、行動で、伝えたことはなかったのに……。
 私の思い上がりが、梨華ちゃんを苦しめてたんだ。
 私は本当に…馬鹿だ……。
 だから…これから私の思いを、梨華ちゃんに伝えなきゃ。
 これ以上、梨華ちゃんを不安にさせないように。

 パジャマを着た梨華ちゃんの手を引いて、ベッドに座らせる。
 …とは言え、こんなこと初めてだから、どう切り出そうか悩んじゃうよ。
「伝えたいことって、な〜に? 明日香ちゃん……」
「うん…えっと……」
 きちんと伝えなきゃ。
 こういう時は……よしっ、正座だ!

 ベッドの上で正座をして背筋を伸ばして……。
「梨華ちゃん!」
「はい」
 何故か梨華ちゃんも正座になって、私を見つめてる。
 深〜く息をつく私。
「……福田明日香は……」
 膝に置いた梨華ちゃんの両手を握って……緊張で声がひっくり返りそうだよ。
 落ち着くために、もう一回深呼吸。
「…石川梨華のことを……愛しています!」
 言えた……と思って、笑顔で梨華ちゃんを見ると、ポロポロ涙を流してた。

「り…梨華ちゃん?!」
「…りがと……あり…がとう……」
 …そっか……こんなにまで私は、梨華ちゃんを待たせちゃってたんだね。
「今まで、きちんと言えなくてごめん……私…本当に梨華ちゃんのことが好きだから……誰がどんな風に言おうと……私が梨華ちゃんを好きだって…信じてほしい……」
 梨華ちゃんは泣きながら、何度も…何度も何度も肯いてくれた。

 それから……私はもう一回、大きく深呼吸した。
 まだ伝えなきゃならないことがあったから。
「あのさ…それで……あの〜……」
 ええ〜いっ明日香! ここまできて怖じ気づくな!
 一回咳払いをして……、
「…梨華ちゃんを…抱きたい……」
 ……とうとう言っちゃった。
 これで梨華ちゃんに「イヤッ!」て言われたら……ダメージ大きいよ。
 固唾をのんで待つっていうのは、まさにこういうことだね。

 でも私がこんなに緊張してるのに……。
「???」
 …梨華ちゃん、分かってない……。
 もう一回言わなきゃ…駄目?
「…明日香ちゃん……私を…抱きたい…って言ったの?」
 そう。その通り。大正解。
 梨華ちゃんの言葉に、うんうんと肯く。
「……マジで?」
 マジっす。大マジ。
 再度、大きく肯く。
「明日香ちゃん…そういうの…キライだったんじゃ……」
 ……まあそうなんだけど……。

「私が梨華ちゃんのことを愛してるって…それを言葉だけじゃなくて、何かで表したいから……駄目…かなあ?……」
「ダメじゃないよ…ダメじゃないけど……私…ちょっと…怖くて……」
 そっか…梨華ちゃん、あの時のことを思い出してるんだ……私が無我夢中で反撃した時のこと。
「大丈夫だから……今度は無茶やって、無理矢理いかせちゃったりしないから…あの時は、窮鼠猫を噛むって感じで……今度は…梨華ちゃんを…愛してあげたい……」
 正直、自分にそんなことが上手くできるのか自信はなかった。
 だって、梨華ちゃん以外にそんな経験ないし……。
 自信はないけど…それでも、頑張る気は充分にある。

「……わかった…いいよ。私…明日香ちゃんに抱いてほしい」
 乾いた涙の跡が、頬に流れてた。
 目も真っ赤で。それでも梨華ちゃんは笑ってた。
 私まで胸がキュ〜ッとなった。
 だから、手を伸ばして涙の跡を指で追って……。
「ありがとう…私も頑張るから。頑張って、梨華ちゃんを……」
 言いながら唇を近づけて……出来るだけの心を込めて、キスをした。
 長いキスをしながら、二人でベッドの上へコロンッて横倒しに。
 それでもまだキスしてた……今までで一番長いキスだった。

 最初は唇をくっつけてるだけの幼いキス。
 それでも私にとっては、すごく刺激的だった。
 梨華ちゃんの唇はちょっと薄め。下唇の方がプクッて心持ち厚めで……とても柔らかかった。
 顔を傾けたら唇と唇がキュッてこすれて、背筋に電気が走ったみたいに感じていた。

 二人でコロンッて横倒しになった時に唇が離れそうになって、咄嗟に梨華ちゃんの肩を引き寄せて、上唇を自分の上下の唇で挟むようになった。
「んふっ…ぁん…」
 のどの奥でこもった梨華ちゃんの声。
 その声が、私の耳からダイレクトに脊髄の方へと、ゾクッと走り抜けた。
 私は何かに急かされるように、梨華ちゃんの唇を割って舌を差し入れる。
 唇の裏側に沿って動く舌。その滑らかな感覚に、何故か切なくなって…目に霞がかかるように潤んできた。
 その霞の向こうに見える梨華ちゃんの瞳は、いつも以上に穏やかな光を宿していて……月の女神みたいだった。

 もう少し舌を奥へと進めると、梨華ちゃんの舌に触れる。
 始めはチロッて舌と舌がこすれる感じで、次第に絡み合っていく。
 溶け合いたい……唇と唇、舌と舌が触れ合い、絡み合って……。
 私の梨華ちゃん……私だけの梨華ちゃんになって……私に出来る限りの快感を梨華ちゃんにあげるから。
 それ以外のことは、もう私の中にはなかった。

 ひたすらキスを続けながら、それ以上を求める私。
 肩を抱いていた手を少しずつ下ろして、パジャマの上から胸を触る。
「んっ…あ…いゃん……」
 ふわっと柔らかい。でも弾力のあるふくらみが、私の指の動きに合わせて次々に形を変える。
 逆に私の方が包まれているような安心感――。
 手探りで一つまた一つと、パジャマのボタンを外して……途中でそれに気づいた梨華ちゃんは、「私だけズルイ!」って言いたげな目で見て、私のパジャマに手を伸ばしてきた。

 梨華ちゃんの胸がパジャマの下から見えた時、私の胸元もひやっとした空気にさらされた。
 構わず梨華ちゃんのパジャマの上着をはだける。
 その時、私はやっと唇を離して、梨華ちゃんの乳房を直接見た。
 梨華ちゃんの肌はきめが細やかで、それが普段大切に秘された乳房では、より一層、際立っていた。
 誘われるように、お腹の方から指を進めて次第に頂上へと動かしていく。
「…ん…くふぅ……」
 くすぐったがるように身を反らせながら、梨華ちゃんの声は確かに艶を帯びていた。
 もうすぐ頂上の蕾に触れる……梨華ちゃんの呼吸が不規則に早まっている……そこで私の指は外側へと遠ざかっていく。
 引き返すように外側から頂上へ……今度は上側へ遠ざかり、そこから胸の谷間へと動いていく。

 誰に教えられたわけでもない動き。
 でも直感が、いきなり頂の蕾には触れてはならないと告げていた。
「…いゃ…あぁ……明日香…ちゃ…ん……」
 今にも涙がこぼれるほどに潤んだ瞳で、梨華ちゃんは、私にもう一歩を懇願している。
 乳房自体も次第に熱を帯びてきている。
 ごめんね…もうちょっとだけ…我慢してね……。
 指の動きはもう何周目かに入って、肌を触れる程度から、指の動きに合わせて肌がついて行くほどには力を込めるようにした。
 それでもまだ、最後の一歩は踏み出していない。
 もうそこは、期待感を焦らされ続けて待ちきれずに花開く直前のようにピンッと上を向いていた。ルージュを引いたような真っ赤な蕾が。

「……ぁ…あぁ…明日…香…ちゃん……」
 梨華ちゃんの唇が「お願い」って動くのを見ながら…私はその可愛らしい蕾にキスをした。
「!!…はぁぅ……あ…す…か…ちゃ…あぁっ!」
 唇が触れた瞬間、あまりに強い待ち望んだ刺激に、梨華ちゃんは頭を反らして悶えてた。でも、その表情は満たされたように微笑んで……。
 私はもう何の歯止めもなく、唇と舌と指先でその蕾にキスし、コロコロと転がし触れた。
「!…ぅぁん…!…ぃぁ……」
 梨華ちゃんののどからは、もう声にならない音だけが漏れていた。
 そして解放された快感が、梨華ちゃんの全身を貫いて……そのことを感じて、私は深い満足感に充たされていた。

 夢中になって、梨華ちゃんの胸のふくらみに顔をうずめていた。
 私は何度も両方の蕾にキスで挨拶し、そのたびに梨華ちゃんをビクッて悶えさせてた。
 でも私は、ちゃんと知ってるんだ。
 梨華ちゃんには、また余裕があるって。
 だって…時々、私に向ける視線が穏やかすぎるもん。
 焦らしに焦らした後の衝撃はともかく、今はちょっと感じてるだけでしょ。
 だから、もう次に移らないとね。

「…梨華ちゃん……気持ちいい?」
 顔を上げて梨華ちゃんに尋ねる。
「…ぅん…あ…気持ち…いいよ……」
 ワインゼリーのように濡れて光る乳首の向こうに、梨華ちゃんの笑顔。
 すっと動いて、また唇にキスをする。
 やっぱり柔らかくて…好きだなあ、梨華ちゃんの唇……。
「でも…怖い……」
 本当?…丁寧にしたつもりだったけど…乱暴だった?
 ううんと首を振る梨華ちゃん。
「…今までは…何だかわからないうちに、いっちゃってたから……」
 今回みたいに、だんだん気持ちよくなるのは…初めて?
 恥ずかしそうに、
「変になっちゃう自分を見てるみたいで……怖いの…でも、明日香ちゃんがしてくれるなら…大丈夫」
 うれしい…私にその梨華ちゃんの初めてを…ください。
 コクンッて肯いてた。

「じゃ…もっと気持ちよくしてあげる…だから……」
 もう一度キスをして……右手を伸ばしてパジャマのズボンに手をかける。
「ズボン…脱がしちゃうよ……」
 言った時には、もうお尻とベッドの間に手を回して、よいしょっとずらしちゃう。
 キスしたままで超アップの梨華ちゃんの瞳が、ビックリして大きく見開かれたけど、またすっと優しい目になった。
 片足ずつ膝を立ててズボンを下ろして膝を伸ばす。
 梨華ちゃんも協力してくれて、あっと言う間にピンクのショーツだけになる。

 ……触っても…いいかな?
 躊躇いがちに、内腿に沿って指をさかのぼらせる。
「…ぅん……」
って唇の間から声を漏らして、モジモジと足をくねらせてる。
 ショーツの上から谷間をなぞるように、すすっと指を行き来させたら……。
「いゃん……」
 梨華ちゃんが頭を反らせちゃったから、キスはそこまで。
 名残惜しいけど……体をずらして腰を覗き込むような位置に座る。
 それで……両手をショーツにかけて、さっと下ろしちゃう。

 さっきまでキスしてたのに、もう唇がカラカラ。
 私、すごく……興奮してる。
 だって、女の子の裸をこんなに間近で見るのなんて初めてだし……。
 梨華ちゃんはもう両手で顔を隠しちゃってる。可愛いな……。
「梨華ちゃん…力抜いてね……」
 大きく深呼吸して、厳かな気持ちで両足を持って膝立てにして……その間に頭を入れていく。
 ドックン、ドックン……心臓が言うことを聞かない感じ。
 そんな緊張の中で、初めてみる女の子……。
 うわっ、すごい……綺麗……。

 ふわってした三角形の翳りの下側。
 プクッてした可愛いちっちゃなふくらみから、す〜って谷間があって……花びらみたいになってる。
 何だかすごくドキドキしちゃうような赤。
 そう。
 ライブで真っ赤なライトを浴びて踊る、汗に濡れたメンバーの肌の色。
 赤く染まって、しっとりと輝くあの赤色だ。
 はっと息を呑むほど綺麗……。

 吸い寄せられるように顔を近づけて……見れば見るほど、すべてが繊細な花そのものだね。
 そう感心しちゃったよ。
 例えばこれ。谷間の一番上にちょこんってあるこのふくらみ。
 まるで、開花直前のアサガオの花芽みたいだよ……。
 ほらっ、こうやって……チュッて。
「!はぁん…ぃゃ……」
 ね?
 こうやって花芽をくつろげてやれば、花びらの先端がふわって開いて…中から花芯が顔を出してくるんだよ? 可愛くない?

「明日香ちゃん……恥ずかしいよぉ……」
 ハッて気がついた。
 あんまりにも一生懸命に見惚れちゃってた。
 潤んだ目でうらめしそうに見てる梨華ちゃんに、ニッコリ笑い返す。
 ごめんね、梨華ちゃん。これから頑張るから。

 気持ちを新たにして……。
 もう一回アサガオの花芽にキス。
「ふぅぁ……ぁん……」
 谷間の花びらに指を伸ばして、ゆっくりと左右に広げると……トロッて蜜がこぼれる。
 よかったぁ。梨華ちゃん、ちゃんと感じてくれてる。
 勇気倍増!
 躊躇ってた秘密の花園深くに、一歩を標しちゃうよ。

 梨華ちゃんの太腿をしっかり抱きかかえるようにして、花びらに唇を寄せる。
「ぁぅ…明日…香ちゃん……」
 待っててね、梨華ちゃん。もっと気持ちよくしてあげるから。
 つつ〜って外側の花びらに唇を這わせて……舌をその奥へと伸ばしていく。
 蜜でしっとりとした花びらの肌を、ゆるやかに伝っていくと……ジュンッて次々に蜜があふれてきた。
 すごい……まるで清水が滾々と湧く泉だね。
 その底には、どんな女神がましますのか……。

 神聖な泉を汚してしまうんじゃないかと不安になりながら、それでも誘惑に勝てずに中指をそっと沈めてしまう。
 足にギュ〜ッて力がこもって……でも梨華ちゃんは、それ以上の抵抗はしなかった。
 梨華ちゃんの体温を感じながら、中指は第一関節から第二関節へと沈んでいった。
 ゆっくりと指を曲げても、吸い付いたように隙間なく包まれている。
 動きを阻害するものは一切なく、そのくせ抜こうとするとキュッと引き止める。
 温かい…何故ともなく涙で目が潤んで……不意に「護られてる」って感じた。

 感動しながら上を見ると、梨華ちゃんが自分の指を口にくわえて声を抑えようとしていた。
「梨華ちゃん!…私、痛くした?」
 ふるふると首を振る。
「………いぃ…の……」
 乱れた吐息と一緒にこぼれる言葉が、私に火を点けた。
 上体をグッとずり上げて、唇を胸の蕾に遊ばせる。
 中指はゆっくりと泉の底をかき回す。

 口にくわえた指なんて、すぐに役に立たなくなる。
「……ふっ…あ…はぁん…いゃ……」
 抑えようもなく声がこぼれる。
 もう、体全体に快感が走り抜けてるに違いない。
 だって…梨華ちゃんが体全体でそれを表現しているから。
 絶え絶えの吐息。
 両手は私の頭に添えられてる。胸に押し付けるように。
 反りかえった背筋。
 ピンと伸ばされた足。

「……はぁ…あっ…ぃぁん……ダメッ…ダメ〜ッ!!」
 急に梨華ちゃんが叫ぶ。
 グンッて腰が浮いて、中指がギュッて今までない力で締め付けられる。
「ぅわぁっ!……あ…明日香…ちゃん……」
 最後に私の名前を呼んで、グッタリと体を横たえて荒い息をついていた。
 私も頑張りすぎちゃったのか息が荒い。
 梨華ちゃんに寄り添うように寝て、顔を覗き込む。
「気持ちよかった?」
「ハァ…ハァ…うん……お礼…したい」
「お礼?」
 キスが降ってきた。

 梨華ちゃんの唇、気持ちいいから好き。
 ……な〜んて思ってたら、一瞬のうちにさっきと攻守交替。
「…ふぁっ……あ…駄目…あ……」
 梨華ちゃんに胸の蕾をついばまれて、中指でゆっくりとかき回されて……。
 私…私、こんなに感じちゃってたんだ。
 梨華ちゃん、すごい、すごい気持ちいいよ。
 もう、自分がどんな状況かも分からなくなって……最後に叫んで果てた。
 最後の言葉、梨華ちゃんの名前を呼んだよね?
 それだけは自信があるんだ、私。

【チャーミー石川】

 今また二人で、じゃれ合うみたいにシャワーを浴びてる。
 自分までいっちゃって、明日香ちゃんは恥ずかしそうにしてる。気にすることないのにね。
 その姿を見ながら、思い出してクスッて笑っちゃうよ。
 だってえ……さっきの明日香ちゃんが、とっても可愛くて…愛おしかったから。

 私を一生懸命に愛してくれた明日香ちゃん。
 さっきみたいに、登りつめる自分を感じながらいったのは初めてだよ。
 これまではギュンッて感じであっと言う間にいっちゃって、その後は孤独を感じて、ただ虚しさだけが残ってた。
 でも今回は違う。
 すごく充たされて…触れ合う明日香ちゃんの存在を感じて…幸せだった。
 明日香ちゃんは、確かに愛をくれた。

 だから、私も明日香ちゃんに愛のお返し。
 明日香ちゃん、自分じゃ全然気がついてなかったみたいだけど、もう限界まで感じちゃってた。
 きっと、一生懸命に私を気持ちよくしようとして、そのことばっかり考えてたからだね。
 このままじゃ可哀想だなって思って……だから、私と同じようにしてあげたの。
 でもビックリしたあ。すっごく色っぽい声で、
「り…梨華…梨華ちゃんっ!!」
って叫ぶんだもん。
 でも…すごく可愛かったよ、明日香ちゃん。

「…私も……」
 明日香ちゃんが急に、ボソッとつぶやく。
「私も…自分が思ってるより…H…なのかな?」
 チラッて、上目づかいに私を見る。
 ホントに可愛いなあ。
「そんなことないんじゃない?」
って言ったら、
「…そう…かなあ?……」
 ちょっとうつむいちゃったり。

「明日香ちゃん……」
 さっきみたいなこと、明日香ちゃんにとっても初めてだったんだもんね。
 ショック…だったのかなあ?
 心の強い明日香ちゃんでも、悩むことがあるんだね。
「私のこと、あんなに愛してくれたんだもん。すごく、すごく気持ちよかったから……それぐらい、明日香ちゃんは一生懸命してくれたんだから…女の子として、普通のことだよ……ね?」
 だから…気にしないで、明日香ちゃん。

「……本当に?」
「本当に。逆に、さっきので何にも感じない方が、女の子として問題だと思う」
 何だかちょっとお姉さんになった気持ち。
「そう…だよね……」
 小さく肯いてる明日香ちゃんが……初めて幼く見えた。
 いつもはすごく大人っぽいのに。

 抱きしめてあげたい!……って思ったけど、またビックリさせちゃいそうだから、手を伸ばして、洗ったばかりの髪をなでてあげた。
「何?」
 明日香ちゃんは不思議そうに見上げてた。
「か〜わいっ♪」
って笑ったら、
「へへへ……」
って笑い返してくれた。
 狭いバスルームが、二人の笑顔でいっぱいになった。

 私も明日香ちゃんも、特には何も言わなかったけど……二人で一つのベッドに入った。
 とても自然な感じで……。
「あれ? これ……」
 明日香ちゃんが見つけたのは、ベッドサイドに置いてある星型のピアス。
 二人でおそろのピアス。
 私を護ってくれたピアス。

「何でこんなとこに置いてあるの?」
「お守り……傍にあると安心できるから……」
 不思議そうに首をかしげて、「ふ〜ん」って。
 もう一回、ピアスの方を振り返った明日香ちゃんの髪から、シャンプーの香りがした。
 私と同じシャンプーの香り。
 嬉しいよ……何でもないことだけど…すごく嬉しい。
 でも……1日だけだね。
 明日も家に…ってわけには…いかないもんね。

 私の方に向き直った明日香ちゃんは、何かに気づいたように鼻をピクピクさせてる。
「…私も…梨華ちゃんと同じシャンプー…買おうかな……」
って。
 ビックリした私が、「何で?」って聞く前に、表情でわかったみたい。
「だってさ……梨華ちゃんと同じ香りでいたいから……シャンプーもおそろ……ね?」
 明日香ちゃんも同じこと考えてたんだ。
「うん!」
「そしたら、ずっと同じ香りでいられるね」
って、クスッて二人で笑い合った。

 私の目を見て、明日香ちゃんが、ちょっと寂しそうな顔をした。
「…明日は来れないんだ……」
 ずっと一緒にいたいよ!
 でも、そんなことが無理なのもわかってる。
 だから、
「うん……」
ってだけ応えて黙ってる。

「ごめんね」
「ううん……」
 どちらともなく指を絡ませた。
 その後は…二人とも無口で…でも、つないだ手からお互いの温かさを感じてた。
 そのまま手をつないで、狭いベッドで眠った。
 ちょっと切ないまま、でもすごく幸せだった。

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