【焼き銀杏】

 目をつぶってても、梨華ちゃんが泣いてるの、分かるよ。
 泣き虫・梨華ちゃん。
 ネガティブ・梨華ちゃん。
 でも…それもこれも全部引っくるめて…好き。

 柔らかな下唇を挟み込んだら、プニプニッてしてて、気持ちいいんだよね。
「んふ……」
とか言っちゃって……。
 やっぱ、梨華ちゃんの唇、好き!

【チャーミー石川】

 明日香ちゃんが傍にいてくれて、本当に良かった。
「梨華ちゃんは汚れてなんかないよ」
って、本気で言ってくれる人がいる。
 それだけで私は救われた気分になれる。
 もし明日香ちゃんと出会ってなかったら……私、どうなってたんだろう……怖いよ。
 ありがとう…ありがとうね、明日香ちゃん。

 そんな感謝の気持ちいっぱいでキスしてたら、よっすぃ〜のことが浮かんできた。
 よっすぃ〜も、ごっちんのこと汚しちゃいそうで怖いのかも……。
 わかってくれる明日香ちゃんっていう存在がいる私と違って、よっすぃ〜は一人で抱え込んで苦しんでるのかもしれないな。
 こんなこと考えながら、無意識のうちにキスを深めていってたみたい……。

【焼き銀杏】

 唇の感触を楽しんでた私に、突然、梨華ちゃんの激しいディープキスが襲ってきた。
 く…苦しいよぉ、梨華…ちゃん。
 息が詰まりそうなほど、口の中を舌で攻められて……あっと言う間に何が何だか分からなくなっちゃった……。

 頭の芯がしびれるようなキス。
「ふぁ…ん…ん〜……梨……んぁ……」
 名前を呼んで苦しさを訴えることさえできない。
 梨華ちゃんは、何か考え込んでるみたいに片手間な感じだったけど、それでも途中までだったさっきの続きで、私の中の火を燃え上がらせるには十分だった。

【チャーミー石川】

 本当に愛する人にめぐり会ったのは、私もよっすぃ〜も同じ。
 でも私はそれを機に、感じ過ぎちゃう体質っていう束縛から解放された。
 明日香ちゃんは、無茶苦茶な私の過去も含めて、「好きだよ」って言ってくれる。

 反対によっすぃ〜は、ごっちんに出会ったために過去の自分に縛られた。
 それまで、それこそ自由に恋愛を楽しんでいたことが、自分の重荷になっちゃったんだね。
 きっと、ごっちんには何も話してないんだと思う。
 本当に好きだったら…やっぱり話せないよね。

 そこまで考えて、ふと我に返って明日香ちゃんを見たら、ビックリしちゃった。
 涙がいっぱい流れた真っ赤な顔が、私を誘ってた。あの恨めしそうな目は、「もっとぉ」ってことだよね?
 わかりました。ド〜ンと任せて大丈夫。
 明日香ちゃんのお願いだから、腕によりをかけて気持ちよくしてあげるよ。

【焼き銀杏】

 急にキスが中断されて、涙の向こうに見える梨華ちゃんは何だかビックリしてた。
 自分でこんなにしといて驚くことないじゃない。
 思わず恨めしそうな目になっちゃうよ。

 文句を言ってやろうとしたら、梨華ちゃんは勝手に何かを納得したらしく、コクンッて肯いて、布団の中に潜り込んできて……裸の私が快感に酔って、意識が白濁するのに数瞬しかいらなかった。

「あっ!…あん……いぁ…あぅ……」
 乳首からダイレクトに快感が走って、パシッ!パシッ!って目の前に火花が飛ぶ。
 痛いところは避けて、その上にある雌しべが集中的に攻撃されて……別の意思があるようにカクカクッて腰が揺れちゃって……。
 違う。梨華ちゃん、違うの……。
 そんな私の意識は他愛もなく溶けちゃった。

 次に気がついたときには、梨華ちゃんが私をのぞき込んで、満面の笑みを浮かべてた。
「明日香ちゃん…気持ちよかったでしょ?」
 クラクラッて眩暈がしそう……。
「梨華ちゃんの……」
「何?」
「梨華ちゃんの…バカァ〜ッ!」
 真っ赤に怒ってる私を、梨華ちゃんはキョトンとした顔で見つめてた。

【チャーミー石川】

 …どうしよう……。
 明日香ちゃん、「機嫌悪いです光線」を放出してベッド脇に膝を抱えて体育座り。
「明日香ちゃん?」
「………………」
 声をかけても返事もしてくれないし……。
 …どうしよう……。

 そしたら、いきなりスクッと立ち上がって……。
「シャワー…借りるね……」
「いいけど……一緒に入ろうよ。洗ってあげる……」
 キッパリ首を横に振られた。
 明日香ちゃ〜ん!
 何で怒ってるの?

【焼き銀杏】

 シャワーを水だけにして、頭からザ〜ッと浴びる。
 頭、冷まさなきゃ。
 きっと梨華ちゃんは、何で私が怒ってるのか分からないに違いない。

 それにしても……さっきのキス、他に考えごとしながら、リミット無しで全開だったんだろうなあ。
 あらためて、梨華ちゃんのテクニックがすごいってことは分かったけど……。
 …あんなキス……私の身体が保たないよ。

 それにさ…梨華ちゃんと…する…のは正直嫌じゃないけど……キチンとけじめをつけなきゃ、本当に吉澤が言った「肉体でしか、欲望でしか、つながってない汚れた関係」になっちゃいそうで嫌だ。
 梨華ちゃんに、何で私が怒ってるのか、どう説明したらいいか考えながら、シャワーの水を止めた。

【チャーミー石川】

 シャワーも着替えも終わってバスルームから出てきた明日香ちゃんは、私の手を引いて、またベッドのところまで歩いていった。 「梨華ちゃん、ここに座って」  ベッドの前のカーペットのところを指さして、自分もそこに正座。  私も向かい合って正座する。  それにしても…明日香ちゃん、大事なこと言うときは、いつも正座なんだね。  ちょっと古風っていうか…でも何か可愛い。  そんなこと考えてたら、顔が弛んじゃいそうになって、慌てて真面目な顔に戻した。

【焼き銀杏】

 大事なことだから、二人でよく話し合いたい。
「梨華ちゃん……」
「はい」
 梨華ちゃんも真剣に話を聞いてくれてる。

 「私は梨華ちゃんのこと…本当に好きだよ……梨華ちゃんも私のこと……」
「スキ! 大スキだよ」
 梨華ちゃんの瞳キラキラ。
 女の子って、恋すると輝くねえ……。
 ……私はどうなんだろ?

 まあ…そんなことはともかく。
「ありがとう…だけどね、お互い好きだからって、やっぱり、けじめは必要だと思う」
「うん……」
「特にその…あのぉ……」
 この期に及んで口にするのが恥ずかしい……。

【チャーミー石川】

 明日香ちゃんは、いつもはなかなか「好き」って言ってくれない。
 でも、別にそれは冷たいわけじゃなくて…「好き」って言葉は、明日香ちゃんにとって、それくらい大事で重い言葉だってこと。

 だから、大事なときにはハッキリ、「好き」って言ってくれるし、私にもストレートに伝わってくる。
 今だって、もう目がウルウルしちゃうくらい……。
 それに、「好き」って言うときの明日香ちゃん、いつも以上に目元がスキッとして、瞳が優しくて……とにかく美しいのよねえ……惚れ直すってこういうときのためにある言葉よね。

 でも…相変わらず、性的な言葉は照れて言いたくないみたい。
 口をモゴモゴさせちゃって…ついイジメたくなっちゃう。
「特に…何?」
 マジマジと見つめちゃったりとか。

【焼き銀杏】

 自分でも顔が赤くなってるのが分かる。
「…キ…キス…とか……」
 やっとの思いで言ったのに、
「キスとか?」
 梨華ちゃん、興味津々って感じで聞き返してくる。

 …やっぱり…言わなきゃ…駄目?
 もう顔が熱いよ。
「……セ…セックス…とか……」
 梨華ちゃん、「はい。良く出来ました」って感じでニコニコ笑ってる。

 ……梨華ちゃんの意地悪〜!!
 もう、梨華ちゃんなんか…梨華ちゃんなんか…………やっぱり…好き……。
「…コホンッ……」
 照れ隠しに咳払いなんかしたりして……何とか話を続ける。
「……相手の気持ちを確かめながら…その…するべきだと思うんだよね……さっきの…キス…みたいに、突然っていうの、良くないと思う」

【チャーミー石川】

 さっきのキス?
 何のことかと思ってたら、明日香ちゃんが、
「とんでもなく激しいキスだったよ」
って教えてくれた。
 ……私、そんなこと明日香ちゃんにしたのかぁ。
 そりゃ明日香ちゃん、怒るよね。

 明日香ちゃんの言うことは、もっともだと思うよ。
 相手の気持ちを確かめるのって、大切なことだと思う。
 無意識とは言え、明日香ちゃんを襲っちゃったことは反省してるし……。
 でも……何か違うような気もする。
「…全然…ロマンティックじゃない……」
 言葉にするとそんな感じ。

 明日香ちゃんは怪訝な表情。
「ロマンティックじゃない…って?」
 だってぇ……。
「今からキスするよ。いい?」
とか、
「エッチしよう?」
とか、あからさまな感じで、全然、ロマンティックじゃないよ〜。

 大体、明日香ちゃんに、そんなこと言えるとは思えないし……さっきの見てたら…ねぇ?
「ロマンティックな感じ、出ないかなあ……そうかなあ?」
 首をひねって考えてる。
 ……と思ったら、急に私の肩を両手でガシッてつかんで、真剣な視線を私に真っ直ぐ向けて……。

「梨華ちゃん……」
 ふっと照れたみたいにうつむいて……そこで小さく「ハッ」て気合いを入れ直した明日香ちゃん。
「梨華ちゃんと…一つになりたい……」
 うそぉ〜っ!
 でも、明日香ちゃん、すっごい真面目な顔してる……。

 心臓ドクドク。
 カッ!て血が全身に走って、耳まで熱いよ。
 視界は、ぼやけて明日香ちゃんしか見えないし、腰から下はもう頼りない感じ。
 明日香ちゃん…………。
「うん…お願い……」
 倒れ込むみたいに明日香ちゃんの胸に顔を埋めて……ふにゃ〜ん。

【焼き銀杏】

 言った私もドキドキもんだよ。
 でも、これでハッキリしたでしょ?
「…ね? 十分、ロマンティックに出来るよ」
 胸元に見える梨華ちゃんの顔をのぞき込みながら、そう言ったんだけど……。

「?? 梨華ちゃん?…聞こえてる?」
「…ふにゃ〜……明日香ちゃ〜ん……」
 ……駄目だこりゃ。
 梨華ちゃん、真っ赤な顔して完全に出来上がっちゃってるし。
 そう言えば、身体が熱くなってる気がする。

 …どうしよう……。
 私はただ、確認し合いながらでも、ロマンティックな気分は出せるってことを証明したかっただけで……今すぐ、そんなことしようと思って言ったわけじゃ……でも、今更そんなこと言えるような感じじゃないし……。

 えぇ〜い!
 了解! OK! 分かりましたよっ!
 考えてみたら、梨華ちゃんは私のために、さっきから二回も頑張ってくれたわけだし……今度は私が梨華ちゃんのために微力を尽くしてみましょう!

 ……とは言っても、梨華ちゃんみたいに手際よくってわけにはいかない。
 初めて私の方から梨華ちゃんを求めたあの夜みたいに、パジャマだったら何とかなるかもしれないけど……。
 仕方ないから、まずは服を脱いでもらって…それからあらためて、ベッドの上で抱き合う。

 梨華ちゃんみたいにキスしながら上手く脱がしてあげられたら、もっと雰囲気が盛り上がるんだろうけどさ。
 ごめんね、梨華ちゃん。
 まあ、今出来ないことを言っててもしょうがないし、そのうちに。ね?

小説「あすりか」(17)へ進む