【チャーミー石川】

 次の日は朝五時起き。
 でも、私は明日香ちゃんからもらった元気で爽やかに朝から出発できた。
 すぐに明日香ちゃんにおはようの挨拶。
 と言っても、まだ明日香ちゃんは寝てるだろうからメールだけど。
「おはよう、明日香ちゃん。昨日はステキなキスをありがとう。愛してる! 梨華」

 部屋を出たら、隣部屋の保田さんも、ちょうどドアを閉めたところだった。
「おはよう、石川」
「おはようございま〜す」
「ホント、あんたは元気だね……」
 ちょっとうんざりした感じの保田さん。
「愛の力です!」
「…あ、そう……」
 何か反応が良くない。保田さん、昨日の疲れがまだとれてないみたいね。

「おっはよう!」
「あ、安倍さん。おはようございま〜す」
「なっち、おはよう」
 全員がそろって、すぐに出発。
 この後、朝のラジオ番組に出演して、その足で空港に行って仙台へ。
 ハードスケジュールだけど、愛のパワーで頑張っちゃう!
 そんな元気いっぱいの私を見て、保田さんがため息をついてる。
 ……何でだろう?

【焼き銀杏】

 朝、目覚めたら、携帯がメールの着信を知らせてた。
 梨華ちゃんだ!
 飛びつくようにメールを開く。
「おはよう、明日香ちゃん。昨日はステキなキスをありがとう。愛してる! 梨華」
 嬉しい……以前だったら、まず、恥ずかしいよ…って思ってた内容が、とにかく今は嬉しかった。

 返事を、「おはよう」まで打ってから、梨華ちゃんに伝えたいことが溢れてきて……。
 結局、
「忙しくて大変だね。体に気をつけて、元気で帰ってきてね。明日香」
って……。
 普通じゃん!
 ……私、梨華ちゃんみたいに、「好き」って気持ちをストレートには表現できないよ。

 何だか自分が情けないような気がして……ノソノソと着替える。
 昨日の電話越しのキス……また思い出しちゃった。
 だって…今はあれが一番新しい梨華ちゃんの感触だから……。
 でも……何か、普通のキス以上にHな感じだったなぁ。
 頭の中で、梨華ちゃんの唇をいっぱい想像したから…かな?

 ブラジャー着けようと思って前屈みになって気がついた。
 ……何で君は一々反応するのかな? 乳首ちゃん……。
 そっと手を伸ばして掌で包み込むと、思った以上に存在感がある。「早く梨華ちゃんに触ってもらいたいよ」って駄々をこねてる。
「…私も…早く梨華ちゃんに会いたいよ……」
 ちょっと乱暴にピンッて指で弾いたら、キュ〜ッて痛みが胸にしみ込んでいった。

【チャーミー石川】

 朝一のお仕事も無事やり終えて、あっと言う間に仙台に到着ぅ!
 明日香ちゃんに牛タン買って帰るんだぁ。ルンルン♪
「…梨華ちゃん……」
「何ですか?」
 安倍さん、何で呆れ顔なんですか?
「お土産、買いすぎじゃない?…さっきはウニを二箱も、東京に直送してたっしょ……」
「全っ然、大丈夫です!」

 だって、明日香ちゃんへのお土産なんだもん。
 朝の番組が終わって携帯を見たら、明日香ちゃんからの返事メールが届いてた。
「体に気をつけて、元気で帰ってきてね」
って。
 東京で明日香ちゃんが待ってる。
 お土産持って、元気に帰るんだ。
 北海道のウニ。喜んでくれるかなぁ、明日香ちゃん。
 青空に浮かぶ明日香ちゃんの顔に向かって、ニコッて笑う私。
 保田さんのため息が、さっきより深くなったような気がするけど……ま、いっか♪

【焼き銀杏】

 仕事場に行ったら、
「おっ! もう大丈夫なの?」
 主任さんが声を掛けてくれた。
「はい。昨日は休ませてもらってありがとうございました」
 何でもないよって感じで手を振って行っちゃった。

 やっぱり大人って安心感があるよね。
 私もあんな風になれるのかな。
 梨華ちゃんを安心させられるようになりたいな……。
 よしっ! 今日も一日、頑張ろう!
 まずは自分のことをちゃんとしないと。
 ちょっと耳のピアスに手をやって、梨華ちゃんの姿を思い浮かべる。
 梨華ちゃん…いつかはきっと…ね。

【チャーミー石川】

 仙台でのプロモーションもバッチリ。
 ……相変わらず私がハイテンションで、安倍さんが笑って、保田さんがツッコミを入れてる。
 見る見るうちに保田さんが疲れてるような気が……大丈夫だよね。
 ポジティブッ!

 夕食を挟んで、ラジオ、テレビをはしごして。
「明日、午前中が移動で、午後から雑誌の取材があって、その後はオフですよね?」
「…うん……」
「明後日は仕事も午後からだし、のんびりできますね」
「…そうだね……」
 さっきから安倍さんも保田さんも、返事が短い。
 私一人でお話ししてるみたい。

 ようやくホテルに到着したとき、保田さんだけじゃなくて、安倍さんも疲れ切った様子だった。
 でも、私はウキウキ気分。
 疲れてはいたけど、明日には東京に帰れるだもん。
 また明日香ちゃんに会える!

【焼き銀杏】

「お疲れさまでした〜」
「お疲れさん」
 仕事が終わって、急いで着替えてそのまま買い物へ。
 大した物は買えないだろうけど、お帰りの気持ちを込めて、梨華ちゃんへのプレゼント。
 何にしようかなぁ。

 まずは……梨華ちゃん、小物がいっぱい欲しいって言ってたからそこら辺を見てみるかな。
 ん〜と……あ……アフロ犬だ……。
 ホント言うと、私はこいつ可愛いとは思えないんだけど……梨華ちゃんは好きみたいだし……買ってみるかな。
 結構いろいろあるんだね。どれにしよう……ぬいぐるみはもう部屋にあったし……。
 へぇ、ストラップもあるんだ……。
 一瞬、昨晩の電話越しのキスを思い出して……結局、それを買っちゃった。

 安物だけど、ま、梨華ちゃんだってお土産にそんな高価な物を買ってくるわけないし、後は明日ケーキでも買っていけばいいよね。
 それに、可愛いとは思えないそのアフロ犬に、何となく親近感も感じてきたし。
 こいつらも、自分じゃ可愛いとは思ってないよ。
 だけど、自分に自信がないわけでもない。個性的なのが自分のいいとこ。
 きっとそう思ってる。だって……私もそう思ってたから。だからモーニング娘。でいられたんだ……。

 ある意味、私の分身みたいに思えてきたそいつを持って自宅へ。
 「飯、飯」と騒ぐ弟のために料理を温めなおしたり、後かたづけをしたり。
 それからやっと自分の部屋でホッと一息。
 何げに結構忙しい毎日なんだよね。
 ベッドにドサッと腰を下ろすのと、携帯が鳴るのは同時だった。

【チャーミー石川】

 ホテルの部屋に入ったら、超速攻で明日香ちゃんに電話。
「もしもし、明日香ちゃん?」
『梨華ちゃん、疲れてない? 大丈夫?』
「全然大丈夫。明日香ちゃんの声聞いたら、すぐ元気になれるから」
『ホントにぃ?』
 二人の笑い声がそろう。

「明日香ちゃんにお土産買ったよ」
 ウニに牛タン。
 きっと明日香ちゃんビックリするよね。
 何だか、今から楽しみだなぁ。
『気を遣わなくっていいのに…何買ったの?』
「ヒ・ミ・ツ。帰ってからのお楽しみ」
『えぇ〜…教えてよ』
「ダ〜メ。知りたかったら、明日、光の速さで家に来ること」
『チェッ…分かりましたぁ。帰ったら電話してね。すぐに行くから』
「うん」

 それから…今日のことを、いっぱい話して……。
 私を、いっぱいいっぱい届けて、明日香ちゃんを、いっぱいいっぱい、い〜っぱい感じた。  でも……それでもやっぱり足りないから……。
「明日香ちゃん……」
 おねだりの声。
『………うん……』
 昨日よりは短い躊躇い。
 私の唇が電話に近づいて、明日香ちゃんが近づいてくるのも感じて……。
『チュ〜ッ……』
 何だか昨日よりちょっと長めのキスだった。

【焼き銀杏】

 何か…昨日以上にドキドキして……。
 まるで直接、梨華ちゃんとキスしたみたいに感じてた。
 その証拠に……もう顔も熱いし…頭もボ〜ッてしてる。
「…梨華…ちゃん……」
『何ぃ?』
「……好き…大好き……」

 思いはこんなにあるんだよ。
 でも、日ごろはそれが素直に出せないの。
 今は…ただとにかく梨華ちゃんへの思いだけが溢れて……。
『明日香ちゃん…嬉しい…もし明日香ちゃんが目の前にいたら、ギュッて抱きしめちゃうくらい……』
 梨華ちゃんに抱きしめられたら……柔らかい肌の感触が思い出される。
 何か私…一人で興奮しちゃってる?

『明日帰ったら、いっぱい抱きしめちゃうから』
 ホントに?
 キュンッて胸が苦しくなって、今からもう息苦しい感じ。
『じゃ、明日ね。連絡したら、すぐに来てよ? 絶対だよ?』
「…うん……」
『嬉しい。じゃ、おやすみなさい』
「…おやすみ……」

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