【チャーミー石川】

 何か電話の明日香ちゃん、すごく可愛く感じた。
 私の帰りを心待ちにしてくれてるのが、すごく伝わってきた。
 行く前は結構平気そうだったのに……。
 今日は何だか、寂しそうに聞こえたけど……私の考えすぎかな?
 でも、そんな風に感じたんだけどなぁ……。

 もしかして…明日香ちゃんって、意外と甘えん坊さんなのかな?
 そうだったら…かぁわいい……。
 私にもっともっと甘えて欲しいよ。
 帰ったら、そのこと、追求しちゃおうかなぁ。
 明日香ちゃんに会ったときの楽しみが、また一つ増えて、もうルンルン気分ですぐに眠りに入り込めた。
 明日香ちゃんのお陰だね。ありがとう……。

【焼き銀杏】

 ……何か…やばい……。
 電話を切った後も、梨華ちゃんのことしか考えられなくて……しかも足下どころか、腰の辺りがすごく頼りない感じ。
 これは……あのときと同じ感じ……梨華ちゃんに「抱かれたとき」と。

 やばいよ…どうしよう……。
 自分を誤魔化すように、さっさと布団に潜り込むけど……眠れない。
 下半身は、フワフワ、フニャフニャした感じだし、顔から頭まで熱くてボ〜ッとしてる。
 それなのに目だけは冴えて、梨華ちゃんの姿だけはハッキリ見える。
 あのときの梨華ちゃんが……。

 綺麗な肌を私に寄せて、そっと私を包み込む。
 耳元で囁く「明日香ちゃん…」って言葉が、私を溶かす。
 指先が、肌の上を滑るように動いて…「あ…ぁふ…あっ…」……喘ぎを呼び起こす。
 どうしようもなく、そんなイメージが次々に湧いてきて、逃げだそうとする私の理性を駆逐していく。
 したことが無い訳じゃない。好奇心から自ら手を伸ばしたこともある。
 でも…でも…欲求に負けてするなんて……初めて……。
 もう…駄目……我慢…できないよ。

 梨華ちゃん…梨華ちゃんが…欲しい…欲しいよ!
 右手が伸びて胸を包む。
 左の指がお腹の方から、さらに下へと這っていく。
 恥ずかしい……まだそんな理性が残ってる。でも、駄目。その動きを止めることは出来なくて……。

 乳房の周囲をさするように這っていた指が、頂上へとたどり着く。
「ん…」
 昨日の夜、生意気な自己主張をしてた乳首ちゃんが、指の動きに嬉しそうに弄ばれてる。
 指の動きはもどかしいくらいにゆっくりで……「もっと…もっと…」って、乳首ちゃんがどんどん張り詰めていく。
 この指の動き…梨華ちゃんのマネ……それとも…私の本能的なものかも……。

 左の指は、また別の意志を持って、ショーツの中へ潜り込んでる。
 だらしなく蜜を溢れさせた花弁の上、勝手に顔を覗かせている雌しべを包囲するように、じわじわと円を描いて這い回る。
 期待に身を震わせて、ますます固くなるそれ。でも急に身を離して、決定的な接触はお預け。
 今度は花弁を挟み込んで、すり合わせて……。
「うぁ…ん…っはぁ……」
 背中を走る快感に仰け反り、腰を揺らす。

 心の隅の後ろめたさが、余計に快感を増幅してる。
「梨華ちゃん…梨華ちゃん……」
 つぶやきと共に、左の親指が雌しべを撫でて、声も出ないほどの強烈な性感に涙がこぼれる。
「あ…ん…あぁ…」
 信じられない……指が…自分の指が花弁の中央に入っちゃった……。

 意図せず起こった事態。
 でも、そこは何の躊躇いもなく、奥へ奥へと指を飲み込み続けて……。
 初めて飲み込んだ自分の指を、優しくあやすように包む温かさ……心地よさ。
 その優しさの代償のように、身体の芯を貫くような強い快感。
 あっと言う間に翻弄されて、真っ白な視界にただ梨華ちゃんだけが浮かんでいて……。
 胸元にあった右手を唇に寄せて、そろえた薬指と小指にキスをする。梨華ちゃんの唇に見立てて……。

「う…うぁっ……」
 跳ねるように身をヒクつかせて……。
 柔らかい…梨華ちゃんの唇……。
 それでも梨華ちゃんを感じ続けてた。崩れるようにベッドに沈んでからも……。

【チャーミー石川】

 爽やかな目覚め。
 だって今日帰ったら、明日香ちゃんに会えるんだもん。
 お土産で料理して、二人で食べながらおしゃべりして……。
 それから……本物のキス……何とか一緒にお風呂にも入りたいなぁ…キャッ。

 ニヤニヤしながら、早速おはようのメールを打つ。
「おはよう、明日香ちゃん。昨日のキスも嬉しかった。明日香ちゃんをいっぱい感じたよ。でも、今日帰ったら、ずっと一緒にいたいなぁ。お泊り。ね? 梨華」
 離れてても、明日香ちゃんに励まされて頑張れたけど、やっぱり傍にいたいよ。
 これからドンドン明日香ちゃんのいる東京に近づいていくからね。
 待っててね。

【焼き銀杏】

 複雑な感じだよ……昨日のこと。
 もう痛くなかったってことは嬉しいけど……何か…ちょっと罪悪感……。
 梨華ちゃん本人がいないところで…その…想像しちゃって…Hなことして……。
 それに…欲望に負けちゃったってことだし……こんなこと初めてだよ。
 梨華ちゃんのこと、それくらい好きってことだけど……。

 自分の中のHな衝動が、あそこまで大きいとは思ってなかった。
 理性の手におえないほどに暴走する欲望。
 何か…怖いよ…私、大丈夫なのかな?
 やっぱり梨華ちゃんが傍にいてくれないと、私おかしくなっちゃいそうだよ。
 梨華ちゃん…早く帰ってきて。

 そんなこと思ってたら、梨華ちゃんからメール。
「おはよう、明日香ちゃん。昨日のキスも嬉しかった。明日香ちゃんをいっぱい感じたよ。でも、今日帰ったら、ずっと一緒にいたいなぁ。お泊り。ね? 梨華」
 梨華ちゃん……キス、私も嬉しかったけど…素敵過ぎて私、おかしくなっちゃったよ。
「梨華ちゃん、おはよう。キス、恥ずかしかったよ…私には刺激が強過ぎ。梨華ちゃんと話してるだけで十分だよ。お泊り…いいよ。話したいこと、いっぱいあるし。明日香」
 とにかく、早く梨華ちゃんに会いたいよ。

【チャーミー石川】

 明日香ちゃんからのご返事。
 お泊りOKだって! やったぁ!!
 明日香ちゃんの傍にいられるって思うだけで、こんなにドキドキする……ずっとずっと寂しかったんだもん。
 出発時間になるのももどかしいくらいにワクワクして、安倍さんと保田さんを引っ張るようにホテルを出た。

 安倍さんが「ちょっと待ってよ」って私を呼びとめようとする。
「梨華ちゃん、そんなに急がなくっても……明日香は逃げたりしないっしょ?」
「急がなきゃ、ダメです!」
「…何で?」
「明日香ちゃんと一緒にいられる時間を、一分、一秒でも長くしたいんですもん♪」

 それを聞いて、保田さんが呆れたように言う。
「…いや、でも飛行機の時間は決まってるから……」
「何でそんなこと言うんですかぁ。気持ちの問題です。気持ちの!」
「…気持ち…ねぇ……」
「押さえきれない思いが、私を突き動かすんです!」
 それでお二人とも納得し(諦め)てくださったみたい。

 なだれ込むようにしてタクシーに乗って、
「空港まで超特急で!」
 待っててよ、明日香ちゃん。
 愛しの梨華が飛んで帰りますよ。

【焼き銀杏】

 いつも通りに仕事場へ行って、いつも通りに働いて……。
 でも、心の中はいつもと違ってそわそわ。

 梨華ちゃん、お昼頃には東京に戻れるって言ってたなぁ。
 でも、まだ仕事があるって……。
 私も夕方まで仕事あるし……。
 まだ会えるまで八時間ぐらい……はぁ〜……。

 いけない、いけない! 仕事に集中しなくちゃ。
 梨華ちゃんは一生懸命に仕事して帰って来るんだから、私もちゃんとしなきゃ。

 さっきから、これの繰り返し。
 ロッカーの中のバッグに入れたままの梨華ちゃんへのプレゼント、アフロ犬のストラップが気になったり……。
 こんなに人と会うのが待ち遠しいことなんて初めてだ。
 何だか胸が苦しい感じだけど…それが嬉しくもある。

 私も変わったけど、梨華ちゃんもずいぶん変わったと思う。
 何せ、最初はレイプする側とされる側だったんだから……。
 それが今じゃ、つき合ってて、こんなにいて欲しい存在になってるんだから、世の中どうなるかわからないね。
 …ただの耳年増だった私が、実際にあんなことや、こんなことまで経験しちゃったわけだし……。
 ……あらためて自分の身に起こったことを振り返って…ちょっと怖いよ……。

【チャーミー石川】

 飛行機さえも超特急で東京に到着!
「時間通りだけどね」
「保田さん……せっかく私が盛り上がってるのに……」
「はいはい。愛しい明日香に早く会いたいんでしょ。さっさと歩く!」
 保田さんの対応が冷たい。何かの仕返しをするように……どうしたんだろう? とにかくご機嫌斜め。
 私はずっと一生懸命にお仕事したから、きっと安倍さんだね。笑ってばっかりだったし。

「大変だね、梨華ちゃん。圭ちゃん、ちょっと怒っちゃったみたいだよ」
 へ?…私が怒らしちゃったんですか?
「…私…怒らせるようなこと、してないですよね?」
 キョトンッてしてる私を見て、安倍さん、ため息ついてる。

「気づいてないのかぁ……あのね、梨華ちゃん…今回はちょっとハリキリすぎっしょ。圭ちゃん、フォローに四苦八苦してたよ」
 ……そうでした?
「そうだったの!…後で圭ちゃんに謝っといた方がいいよ」
 そうだったのかぁ……全然気がつかなかった。
 確かに振り返ってみれば、かなりヤバイことも連発してたような……。
 保田さん、ドンドン先に歩いていっちゃってる。
 どうしよう……。

【焼き銀杏】

 昼休みにホッと一息ついてたら、携帯電話が鳴った。
『もしもし、明日香ちゃん?』
「梨華ちゃん? もう東京着いた? 飛行機揺れなかった? 仕事、何時頃終わりそう?」
 そんな一度に聞いても仕方ないのに、私、かなり焦ってるなぁ。
 でも、梨華ちゃんも何だか焦ってるみたい。

『どうしよう、明日香ちゃん助けて〜!』
 む! 梨華ちゃんのピ〜ンチッ!
「どうしたの! 何があったの!」
 私が梨華ちゃんを守る!って、力んで訊ねたのに……。
『保田さんを怒らせちゃったみたいなの……』
「…え?……」
 それだけ?…ドッと力が抜ける。

『番組でのトークとか、はりきり過ぎちゃって、保田さんに迷惑かけてたの気がつかなくって……』
 でも、梨華ちゃんは真面目に相談してるみたい。
「そうなんだ……でも、圭ちゃんのことだから、ちゃんと謝ればすぐに許してくれるよ」
『そうかなぁ……そうだよね。よしっ! 私、保田さんに謝ってくるね』
「頑張れ、梨華ちゃん! 私も応援してるから」
 …言ってて、自分でも何だか馬鹿っぽいと思う。

 でもいいんだ。不安がってる梨華ちゃんを励ませれば、それで万々歳。
『うん! じゃ、仕事が終わったらまた電話するから』
「待ってるね。バイバイ」
『バイバ〜イ』
 こんなちょっとしたことでも私に相談してくれるって嬉しいことだよね。信頼してくれてるってことだもんね。
 …そう思うことにしよう……。

小説「あすりか」(25)へ進む