小説「あすりか」(47)

【焼き銀杏】

 ……やっぱり怒られた。
「あの…ホントごめん……だけどさぁ…梨華ちゃんに言ったら、止められると思ったから……」
 自分でも言い訳がましいとは思うよ。でも……。
『当たり前でしょ! 止めるに決まってるじゃない!』
 ちょっと理不尽な感じも…しちゃうんだよ。

「でもさぁ……どうしても、あの二人のこと放っておけなくてさぁ……」
 梨華ちゃんだって、ごっちんと吉澤のこと、あのままで良いとは思わないよね?
『……じゃ〜ぁ…明日香ちゃんは、危ないことして、私が悲しんでも良いのね?』
「え?!」
 そ…そういう言い方されちゃあ………ズルくない?
「いや…あの……ごめんなさい……」
 素直に謝るしかないじゃん……何か…腑に落ちないけど……。

【チャーミー石川】

 電話の向こうで、明日香ちゃんが納得してないの、分かるよ。
 でも、やっぱり…イヤなものはイヤッ!
 ワガママだって言われたって、明日香ちゃんの無事の方が大事なんだもん!!

「ねぇ、明日香ちゃん…昨日、よっすぃ〜と何があったの?」
 ちゃんと私にも聞かせて。
『…ごっちんがどう思ってるかとか、あいつに教えてやろうと思って…でも…会ってみて…あいつも…悩んでるって、よく分かったよ』
 そうなんだ〜……。

「上手く…いった?」
『まぁ…半分ぐらい…かな……』
 へ〜、半分は上手くいったんだ。
「そっか〜……」
 やっぱり明日香ちゃんはすごいね。

 あ! 一番大事なこと、聞かなきゃ。
「襲われたり、しなかった?」
 ただでさえ明日香ちゃんは可愛いのに、前にもよっすぃ〜に襲われちゃってるんだから、心配だよ……。
『………………別に…大丈夫だったよ……』
 ウソ! 最初の無言は何!?
 やっぱり危ないこと、されたんじゃない!!
 もう〜! よっすぃ〜のバカァ〜!!

【焼き銀杏】

「もしも〜し?」
『…………』
 やっば……梨華ちゃん、何も言わなくなっちゃった。
 いきなり、
『襲われたり、しなかった?』
って聞かれたから、咄嗟に何て答えたら分からなくなっちゃったんだよ。
 吉澤に襲われそうになったこと、バレちゃったのかなぁ?

 紗耶香に続いて、また吉澤…これは梨華ちゃんに知られちゃマズイッす!
 ……確かに私、ちょっと襲われ過ぎ。
 でも…でも……ちょっと恥ずかしい言葉だけど…心は梨華ちゃん一筋だよ。

「ホ…ホント、何も無かったんだってば!」
『……ウソ…』
 う…確かに嘘なんだけど…ここは「無かった」って言い張るしかない。
「ホントだってばぁ! 梨華ちゃ〜ん、信じてよぉ」

『………会いに来て……』
 はぁ?
『今日、会いに来てくれたら信じてあげる』
 えぇっ!…マジッすかぁ?!

【チャーミー石川】

 それにしても…明日香ちゃん…ウソつくの下手すぎだよ。
 よっすぃ〜に襲われちゃったのバレバレだよ〜。
 明日香ちゃんもバレてるのに気づいて、焦っちゃってるし。

『…いや…あの…流石にそろそろ仕事、サボルとやばいんだけど…』
 無理なこと言ってるって、十分知ってるよ。
 だけど、今の私は聞き分けのない子になってるから。
「ダメッ! 絶対に会いに来て」

 私のこと、傷つけたくないためのウソだってことは、分かるよ。
 でもやっぱり、ウソだって分かっちゃったら…余計に傷つくよ。
 だからね。
 これくらいは……頑張ってほしい。

 今は、ワガママ言いたい気分なの。
 明日香ちゃんだからワガママ言えるの。
 ホントに甘えちゃってるね、私。
 でも……ワガママ言える相手がいて、幸せだって……それは確かだよね。
「いつでも良いから…今日中に会いに来て」
 私からの、ちょっとひねくれた「I Love you」……届くよね?

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