【焼き銀杏】

 きわどいH話をサラッと平気な顔でして、周りの大人たちを振り回していた私は…どこ?
 今の私は、体の中から湧き出てくる生々しい衝動に振り回されて、驚き焦って、恐怖に慄いている。
 見聞きしただけの性知識なんて、何の役にも立たなくて、とにかく梨華ちゃんにしがみついて身を振るわせるだけで。

「……私…変になっちゃったよぉ……」
 そう言うのがやっとで、カッカと火照った身体の心から、沸々と出てくる女の欲望が勝手に下半身を突き動かしてる。
 梨華ちゃんと肌を合わせるごとに、突き上げる衝動が強くなってるのは分かってた。
 でも、今日はホントに突然で、ある一線を越えたところから一気にスイッチが入っちゃった感じで、もう何が何だか分からない状態だった。
 求めるようにひくつく腰の動きが、とんでもなく卑猥に感じられてそんな自分が嫌だった。

「全然、変じゃないよ」
 梨華ちゃんが耳元で優しく囁いてくれる。
「でも……」
 慰めでしょ? 今の私、変だもん……。

「全然、変じゃないよ」
 繰り返す言葉。
「感じる…って、ホントはこういうことなんだから」
 ホントに?
 だとしたら……怖いよ。
 自分が自分じゃなくなる感じ……。

「大丈夫だから」
 梨華ちゃんが目を細くして笑ってる。
 …信じていいの?
「感じすぎちゃう私のこと、『大丈夫だよ』って言ってくれたの、明日香ちゃんじゃない」
 そうだけど……不安だよ。

「私は嬉しいよ?」
 ホントに?
「これからは、明日香ちゃんに気持ち良いこと、いっぱいしてあげられるから」
 ……嬉しいのかな?
 怖いかも……。
「大丈夫だから」
 また繰り返される言葉。
「私に…任せて」
 梨華ちゃん…私……。
「うん……お願いね?」
 心細いから、梨華ちゃんに全部任せるよ。

【チャーミー石川】

 ホント、可愛い……。
 明日香ちゃんは、私より頭一つ分くらい小さいけど、いつもは全然そんなことは感じたことがなかった。
 存在感って言うか、とにかく大きな存在で……。

 なのに今の明日香ちゃんは、とてもちっちゃくて儚げな感じ。
 でも、そんな明日香ちゃんも大スキ♪
 胸の奥が熱いような冷たいような、抱きしめてあげたいって思いでいっぱいになったよ。
 私が守ってあげる。
 私が? 明日香ちゃんを?
 何だか不思議な感じだけど、でもそんな気持ちなの。

 好きな人に触れられて感じちゃうのって、全然、変じゃないよ?
 私だって、今、ドキドキ、すごい胸が高鳴ってきちゃってるもん。
 だから明日香ちゃん。そんなに不安そうな顔しないで。ね?

 明日香ちゃんのすごい柔らかいほっぺに自分のほっぺを寄せて、ゆっくりと滑らせる。
 微かにうぶ毛に撫でられるような感じが気持ちいいね。
 そのまま、あごのラインに触れた唇を沿わせて行って、あごの一番先端へ。
 ちょっと上にある下唇を、そっとついばむ。

「ん…ぅふ…」
 ちょっと開いた唇の間から、色っぽい声が漏れ聞こえる。
 う〜…ゾクゾクッてしちゃうよ〜。

 今度は上唇を挟み込みながら、手を伸ばしてショーツを脱がしちゃう。
 明日香ちゃんもちょっと腰を浮かせてお手伝い。
 すぐに手が届かなくなっちゃうけど、明日香ちゃんが自分で右足を曲げて、ちょっと引っかけて脚を伸ばす勢いで一気に脱いじゃう。
 ほとんど同時に明日香ちゃんも手を伸ばしてきて、私も脱がされちゃった。
 二人とも何も着てない、いわゆる「生まれたままの姿」って状態。
 キスをしながら、丁度重なる胸でお互いの膨らみを感じて、もっともっと熱くなっちゃう。

 そっと脇腹の辺りに手を添えると、ビクッて身をよじる明日香ちゃん。
「…ぁ…ぃやっ…ぃやっ…」
 唇を離して逃げるように仰け反りながら、ずっと、
「ぃやっ」
って繰り返してる。

 ジタバタしてるうちに上へ上へってずり上がってるけど、ダ〜メ。逃がさないも〜ん♪
 右手でギュッて抱きしめたら腰の辺りで、丁度、乳首ちゃんが目の前。
 パクッて吸い付きながら、左手は相変わらず脇腹をス〜ッ、ス〜ッて行ったり来たり。
「ぃやっ…や〜っ!」
 明日香ちゃんの声がどんどん大きく艶っぽくなってく。
 それが耳に入ってきて、私も…ゾクゾクッてしちゃうよ〜。

 だから。
「明日香ちゃん…触って…ほしい?」
 大きく胸を上下させて、ちょっと涙目で私を見つめてる。
 コクッて肯くけど、
「どこが良い?」
って、まだまだ焦らしちゃう。

「もぉ…」
 真っ赤な明日香ちゃんもステキだよ。
「……下の方……」
 それじゃ分かりませんよ〜って言いたいけど、私もそろそろ限界で……。
 太股の方からジリジリッて指を寄せていく。

 花開くように大きくなったそこを、なぞるように指を行き来させる。
「ここ?」
「ぁ…あ…そこ…そこっ!」
 眉をギュッて寄せて、苦しそうな、でも気持ちよさそうな明日香ちゃんの表情がすごい可愛いから、今日はこれで許してあげる。
「ゃ…り…梨華…ちゃん!」
 熱くあふれ出てるその中心に、ゆっくりと指を沈めていった。

【焼き銀杏】

 自分で自分のことを律することもできないまま、梨華ちゃんの指を自分の中に感じた瞬間に視界が点滅して……。
 何か叫んだみたいだけど、そんなことも分からないで、ひたすらに私を突き動かす衝動に従って、梨華ちゃんにすり付くようにして身を震わせてた。

 怖い…怖いよ。
 だって、梨華ちゃんとつき合い始めて、だんだん、だんだん感じやすくなって、イッちゃった時の快感も、深く深くなっていってる。
 このまま、いつかは正気に戻れなくなるんじゃないかって心配になるほどに。

 今もチカチカ点滅してる視界の戻り方が、ものすごくゆっくりに感じる。
「明日香ちゃん、可愛い♪」
 最初に目に飛び込んできたのは梨華ちゃんの笑顔で、それはとっても嬉しくて、ホッとして、ウルッてきちゃって。

「ど…どうしたの?!」
 焦った梨華ちゃんの声が頭の後ろから聞こえる。
 自分で意識するより先に、梨華ちゃんの肩口に抱きついてた。

「どうしたの、明日香ちゃん?…どっか、痛くしたりしちゃった?」
 心配する声に、小さく首を振る。
 きっと梨華ちゃんは吉澤のことを思い出して心配してるんだろうけど、そういうんじゃないんだよ。

「怖かったの……自分が自分じゃなくなるみたいで…それに…」
 そう、「それに」なんだよね。
「私ばっかりなんて、嫌だよぉ」
 こういうことで梨華ちゃんに敵わないのは分かってるよ。分かってるけど……。

「何〜? 明日香ちゃん、どうしたの?」
 顔は見えなくても、当惑してる梨華ちゃんの様子は伝わってくる。
 私、こういうこと自体はやっぱりまだ苦手で、でも梨華ちゃんと触れ合えることが嬉しくて……。
 だから、私だけ一方的にイッちゃうっていうのは違うって思うんだけど。
 梨華ちゃんは……そうじゃないのかなぁ?

【チャーミー石川】

 指が沈んでいった時、急に私の名前を叫んでギュ〜ンッて仰け反ったから、ホントにびっくりした。
 でもそんな明日香ちゃんも、フワッて遠くを見つめてるみたいで神秘的で、すごい可愛かったから、ほっぺが緩んじゃうね。
「明日香ちゃん、可愛い♪」
 虚ろだった瞳の焦点が、ようやく私に合ったのを覗き込んでそう言ったら、明日香ちゃんの顔がクシャッて歪んで。

「ど…どうしたの?!」
 ガバッて感じで抱きつかれて、ドギマギしちゃった。
 でも、可愛いって感じた明日香ちゃんにそんな風にされて、正直、嬉しかったんだけど……。
 チラッて、よっすぃ〜に襲われた明日香ちゃんが、すごい痛がったのを思い出して不安になっちゃった。

 だから、
「どっか、痛くしたりしちゃった?」
って聞いたんだけど、そうじゃなかったみたい。
 ブンブンッて感じで、明日香ちゃんは首を振ってる。
 なのに、明日香ちゃんは震えてるように感じるの。

「怖かったの……自分が自分じゃなくなるみたいで…それに…」
 どういうこと?
「私ばっかりなんて、嫌だよぉ」
 ???
 分かんないよ〜。

 ん〜……「怖い」っていうのは、私にも分かるの。
 最近、明日香ちゃんはドンドン感じやすくなってるから、エクスタシーも深くなってると思うし……。
 私だって、初めて本当の深いエクスタシーを感じたときは、怖かったもん。
 だけど、明日香ちゃんの言ってるのは、それだけじゃないみたい。
 でも、それがどういうことなのか……それが分からなくて。

 明日香ちゃんが、何かを悲しんでるってことは確かで、私にはそれが分からなくて。
 そんなの絶対嫌だけど、だからどうしたらいいの?っていうのが……。
 ね〜教えて、明日香ちゃん。

小説「あすりか」(54)へ進む