; 小説「あすりか」(70)

【焼き銀杏】

 ビックリしたぁ……梨華ちゃん、急に腰の辺りを触ってくるんだもん。
 今日は、梨華ちゃんから触ってきちゃ駄目ぇ!
 だって…ちょっとだけでも、こんなに感じちゃうんだもん。
 もしかして、私の身体、梨華ちゃん仕様になってきちゃってる?
 もしそうだとしたら、益々ヤバイ。
 今日のテーマは、「梨華ちゃんを気持ちよくさせる方法とその実践」なんだから。

 とにかく、自分がされて気持ちいいことは、相手も気持いいはずなんだから。
 まずは…もうちょっとキスを……。
 ハァ〜…やっぱり梨華ちゃんとのキス、はまっちゃうよぉ。
 ……い…いけない、いけない。
 また自分だけの世界にはまり込むところだった。

 今度は…服を脱がさなきゃ。
 でも、やっぱりまだ、梨華ちゃんみたいに手早く脱がしちゃうことは出来ないから……。
「梨華ちゃん…服、脱いで」
 素直にお願いするのが一番。
 今出来ることで頑張るしかないからね。

「うん…明日香ちゃん、大丈夫?」
 協力してくれる梨華ちゃんと一緒に、自分も服を脱ぐ。
 それで分かったんだけど…梨華ちゃん以上に私の方が興奮しちゃってる。
 身体全体が赤く火照ったみたいになってる……。
 駄目じゃん!

 落ち着けぇ、落ち着けぇ。
 自分に言い聞かせながら、指を胸に這わせる。
「焦んなきゃいいんだよ。慌てず、ゆっくり、ソフトタッチ」
 あれ? これって……吉澤のアドバイス。
 唐突に頭の中に浮かんできた。
 アイツの言う通りにするのは癪にさわるけど…四の五の言ってる場合じゃない。
 慌てず…ゆっくり…ソフトタッチ……。

【チャーミー石川】

 最初は本当におっかなびっくりって感じで、私の方がハラハラしちゃってた。
 あ、そこじゃない、とか。
 もっと落ち着いて、とか。
 力が入りすぎててそのままじゃ痛いよ〜、とか。

 自分でする方が断然、楽だって思った。
 でも、明日香ちゃんが一生懸命に試行錯誤しながら私を愛してくれてるんだから、それを受け止めてあげるのが、私の愛だよね。
 それでも、ちょっと身を引いたりずらしたり、手をそっと押してあげたり……。
 なるべく分からないように協力してあげる。
 そうじゃないと、明日香ちゃんの方が先に限界に達しちゃいそうだったから。

 そしたら、だんだん明日香ちゃんも慣れてきたみたい。
 柔らかいタッチで私を愛撫してくれるようになった。
 こうなったら、後は明日香ちゃんの指の動きをしっかり感じるだけで良い。
 明日香ちゃんに誘われて、高みへ昇っていくイメージを膨らませる。
 そう…そうだよ、明日香ちゃん。
 すごい……そこ……ぁん……。

【焼き銀杏】

「あ…すごい…良い! 良いよ、明日香ちゃん」
 梨華ちゃんが望むところを探そうと、あちこち必死にやってたら、当たりを引いたみたい。
 ビクビク仰け反る梨華ちゃんの反応に励まされて、一層頑張ってみる。
 でも…私も、もう…限界に近いよ。
 上気してた身体は、もうカッカする感じ。
 ボ〜ッてする頭に何とか活を入れながら、梨華ちゃんのそこに集中する。

 そしたら、急に梨華ちゃんが、短くハッ!て息を吐き出して、
「あぁん…」
って艶めかしい喘ぎ声。
 腰もカクッカクッて蠢いてた。
 梨華ちゃん?
 イッちゃった?

 這うようにして顔を覗き込んだら、すごく幸せそうな笑顔だった。
 体力を使い果たした感じで、私も横で寝てた。
 梨華ちゃん、荒い息で、ハァハァ言いながら、
「……明日香ちゃん…すごい良かったよ…上手になったね」
って。
 何だか誉められちゃったけど……ちょっと恥ずかしいよね。
 よく回らなくなった頭で、そう思った。

 そのうち、ス〜ッて深呼吸した梨華ちゃんが、私に笑顔でにじり寄って来て……。
「明日香ちゃん、言ってたよね?『どっちかがどっちかを気持ちよくするだけじゃ嫌じゃない?』って」
 嫌な予感がしたけど、もう身体に力が入らないよ。
「だから今度は…私が。ね?」

 動けない私に覆い被さってきて…その後は…言うまでもなく呆気ない結末で……。
 今まで、もう必死の思いで梨華ちゃんが私に対してどんなことをしてるのかイメージしてたから……身体の方は準備OKって状態。
 何だか分からない間に、何度も何度も大波に飲み込まれてた。
 でもこれじゃあ、全然、平等じゃないんですけど……。
 結局、私が頑張ったことって…あれで良かったの?
 …結論を出すよりも早く、意識の方が遠く、遠く……。

【チャーミー石川】

 明日香ちゃんは、私が思った以上に頑張ってくれた。
 最後は何の手加減もなく、明日香ちゃんの手でイカされちゃった♪
 これ以上は、また頑張りましょうってことで。ね?

 だから…たくさん、ご褒美をあげたんだよ?
 明日香ちゃんも、いっぱい感じてくれた。
 自分じゃ気がついてなかったみたいだけど、もう出来上がっちゃってたから、私がちょっと後押ししてあげたら、あっと言う間。
「ぃやん…」
って、喘ぎ声もビクビク震える身体も、全部がすごい可愛かったよ〜。

 そんなことしてるうちに、心地よい睡魔に襲われて、二人で抱き合って眠りについた。
 明日の朝も、このまま抱き合って目覚めるんだね。
 最高に、最高に幸せだよ。
 ね? 明日香ちゃん。

【焼き銀杏】

 朝、目覚めたら…と言うより、気がついたらって言った方が相応しいかも。
 だってぇ…意識がなくなったまま、朝を迎えた感じなんだもん。
 ともかく、目の前には梨華ちゃんの寝顔があった。
 幸せそうに、ちょっと微笑んだ可愛い寝顔。
 こんなに無邪気に見えるのに、私にあんなすごいことしちゃう梨華ちゃん。
 ホント、不思議だよね。
 …そんな梨華ちゃんも、好きだけどさ。

 いろいろ考えながら梨華ちゃんの寝顔を見つめてた。
 じんわり心が痺れてきて、「幸せだぁ!」ってシミジミ実感。
 そしたら、ホワッて梨華ちゃんの目が開いた。
「あ…おはよう、明日香ちゃん♪」
 寝ぼけ眼のまま、ニコ〜ッて。
 まだ半覚醒状態って感じ。
 夢とも現実とも定かじゃないんだろうなぁ。

 そんな梨華ちゃんがまた愛しくて。
「おはよう、梨華ちゃん♪」
 そう言って、頬にキスをしてあげた。
 これくらいなら大丈夫だよね?
 半分、夢の中の出来事だから。

「また…新しい思い出が…出来たね」
 くすぐったそうにしながら呟いた梨華ちゃんの言葉。
 それが私の胸に刻み込まれた。
 どうやら昨日から私は涙もろくなってるらしい。
 必死に涙を飲み込みながら、
「うん!」
って大きく肯いた。

 ささやかな、でも二人にとっては、かけがいのない思い出。
 朝日が射し込んで、机の上でキラキラ輝く壊れたピアス。
 生まれ変わった私の宝物だった。
 これからも…これからも、いっぱい宝物をつくっていこうね?
 頬を触れ合わせたまま、まだウトウトしてる梨華ちゃんに、そう呟いた。

小説「あすりか」(完)