1. side : natsumi
2. side : asuka
3. epilogue

真っ暗なステージ…
シーンとなった観客席…
さらにその後ろ。カメラを置くためのセットの柱の陰にわたしはひっそりと立つ。
まわりにはきくちさんをはじめ知ってる人の顔も何人か見える。
でもほとんどが知らない人。
場違いなわたしの存在を不審そうに見るスタッフさんもいる。

どう考えてもわたしのいる場所じゃないな……

関係者用のパスを首から下げて、
関係者しか入れない場所に立つ17歳の芸能人でもなんでもない家事手伝いのただの子供。
そんなヤツなかなかいないよね…
少しばかりの優越感と大半を占める自嘲の念に苛立ちを覚え、帽子をとって髪をかきあげる。
この帽子の存在さえわたしには腹立たしい。
量が多くておさまりの悪いわたしの髪。
でもこうした人の多い場所には帽子をかぶって来ざるを得ない。
ましてやテレビカメラがあるところなんだから、
いつ気付かれて煩わしい思いをするかわからない…

…そう。思えば去年のあのときも帽子をかぶっていた。


 ・

わたしの誕生日まであと一週間にせまった12月10日。
紗耶香の復帰後初のコンサートがあるっていうから
渋谷のAXっていうコンサート会場まで足を運んだ。
モーニング娘。を辞めてからは近付くこともなかったその場所。
周りには初めてコンサートをやった渋谷公会堂や
紅白で出演したNHKホールがあってどうしても意識してしまう…
わたしのかつての栄光、芸能人フクダアスカ……

会場に入って紗耶香から送られてきたチケットを見ながら席を探していると
後ろから軽く肩をたたかれた。
「よっ! 明日香」
振り向くとそこには懐かしい顔。
「あ…平家さん…」
「なんや改まって。昔みたいにみっちゃんでエエよ」
相変わらずこの人は声がデカい。
ばれるのが心配で回りをきょろきょろと見回してしまった。
「大丈夫やって。ここいら辺、関係者しかおらんから」
そういう問題じゃないだろうとか思いながらも、みっちゃんに席まで連れられていく。
「ほら、ここ座り」
「えっ? そこわたしの席じゃないよ」
「かまへん、かまへん。
 ほら、早う座らんと1階のお客にばれるで」
「…でも」
後から来た人と揉めるのは避けたいし、極力目立つことはしたくない。
「そこな、あっちゃんの席なんよ。今日来れんて連絡あったからどうせ空いてんのよ」
「あっちゃん?」
「あ、そうか…明日香はほとんど知らんのか? 稲葉のあっちゃんや」
わたしと入れ替わるようにして事務所に入った稲葉さん。
何回か顔を合わせたことはあるけどあだ名で呼べるような関係ではない…
「稲葉さんが来ぃへんから、始まるまでヒマでヒマで。
 明日香が来てくれて良かったわー」
じゃあ、それならということでわたしが席につくとみっちゃんが声をひそめて話しかけてきた。
「ここいら辺の席な、堀内さんやばんばさんの知り合いばっかりなんよ。
 例のバーニングのお偉方もいっぱい来てるし……って、明日香は知らんか…」
わたしが辞めてから起きたいろいろなこと。
わたしに心配かけさせまいとしてかメンバーはほとんど話してくれなかった。
でも和田さんが娘。のマネージャーを外されたときや、
紗耶香が辞めたときにちょこっと聞かされた話だけでもイヤなことだらけだったから、
きっと真相はもっとイヤなことなんだろう……
会場の雰囲気とはかけ離れたスーツを着たオジサン集団をちらっと横目で見て思う。

紗耶香もよくこの状況で復帰を決意したよね…

紗耶香が辞めてからたまに会ってたけど…
紗耶香から音楽の勉強をしてるなんて話はぜんぜん出てこなかったから
てっきり復帰はあきらめたものだと思ってた。
復帰の話を聴いたときも「そんなんでいいの?」って言いたかったけど、
何よりも自分が「そんなんでいいの?」って状態だったから何も言えなかった……

みっちゃんはわたしにかまわず話し続ける。
「頼子ちゃん? 歌うまいよねえ、明日香」
「えっ? 会ったの?」
「なんや、聞いとらんのか…
 こないだ事務所で紗耶香と会ってなあ…
 ちょうどそのとき和田さんとソニンと頼子ちゃんも来ててな、みんなでカラオケ行ったんよ」
「そうなんだ…最近あんま連絡とってなくて…」
「友達とはちゃんと連絡取らなあかんでー、明日香」
「ふぁーい」
ちょっとおどけたように返事をする。
「…まあええわ。
 でな、和田さんはともかく、みんな歌うのが好きな連中だから
 みょーに張り合っちゃってなー、あんな疲れるカラオケ二度と行きたくないわ」
行きたくないとか言いつつそのときの事を楽しそうに話すみっちゃんを見ると、
ホントは楽しかったんだろうなあって思えてくる。
みっちゃんはずーっと歌うこと好きだもんね…
きっとこれからもそうなんだろうな……

ライブが終わると紗耶香と裕ちゃんに挨拶してから帰ろうと思って、
みっちゃんと二人ステージ裏に向う。
こんなときみっちゃんと二人で良かったなあって思った。
もうわたしじゃ顔パスってわけにはいかないだろうから…

紗耶香と裕ちゃんの楽屋は意外と閑散としてた。
アップフロントやゼティマの人たちは接待で忙しいらしい。
取り留めのない会話をして楽屋を後にすると、いつの間に来てたのか和田さんに呼び掛けられた。
「よう!福田。最近どうだ?」
「…普通です」
それ以外どう答えろっていうのさ。わたしの状況知ってるくせに…
絶対わたしが困った顔するのを期待して言ってるな、この人。
近付いていくわたしに、和田さんは自分の横に立っていた人を指差して言う。
「懐かしいだろ、この人?」
…うん。
わたしはその人を知っている。
わたしが歌いたかった『神田川』を番組で歌わせてくれた人。
わたしとなっちの二人を『ラブラブあいしてる』のステージに呼んだ人。
そしてつい2ヶ月前、わたしが中1だったころのブルマ丸出しのVTRを流すように指示した人。
…わたしの卒業コンサート以来だから、会うのは2年半ぶりだ。
「きくちさん、この間は<爆裂お父さん>ありがとうございました」
ちょっとぶっきらぼうに言うわたしを見て、和田さんときくちさんが目を合わして苦笑する。
「変わらないなあ、そのしゃべりかた」
「だってあれのおかげでバイト変えなきゃならなくなったんですよ。
 週刊誌にも追いかけられたし…」
「そうか…ごめん、ごめん。あのVTR、岡村も気に入っててな、
 爆裂お父さんの中での一番の名シーンだから外すことできなくって……
 すまん、この通り」
そう言って、顔の前で手を合わせて頭を下げる。
「…………」
あのー、きくちさん…顔が笑ってますよ。

一通り和田さんも交えて近況報告をすると、不意にきくちさんは聞いてきた。
「どう?最近は歌ってるの?」
「…コピバンで歌ってるくらいですかね。なかなか歌う場所がなくって…」
「ふーん…そんで、そのバンドでデビューしようと思ってるの?」
「いえ、そういうわけでもなくって……まだ悩んでるんですけど…」
「もったいないなあ。それだけ歌えて、歌える環境もいつでも準備できるってのに…
 あんまり好きじゃないか?人前で歌うのは」
「いや、違くって……なんていうか……納得して歌いたいっていうか……
 自分が納得してなければ歌ってても意味がないと思うんです。
 歌が伝わらないと思うんですよね。昔つんくさんから聞かされた受け売りですけど」
「事務所に準備してもらえる環境じゃ納得できないし、伝わらない…か?」
「…………」
「ここには俺たちしかいないから正直に言って平気だぞ」

そんなこと言われても私自身、自分の気持ちを整理できてないから
何が正直で何がウソなのかわからない……
だから口から出た言葉は
「…いや別に、今のままでは戻りたくない。それだけです…」
これしか言えなかった。
きくちさんは続けて聞いてくる。
「今戻るって宣言して市井みたいに扱われるのはイヤか?」
なんなの!この人は?
わたしに何を言わせたいの?
「紗耶香は関係ないと思いますけど」
睨みつけるように言ってやった。
「そうかな?…じゃあ今日の市井、良かったと思うか?
 市井が納得して歌ってると思うか?」
ズバリ言うきくちさんに何も言えなかった。
紗耶香の復帰と裕ちゃんに会えたことはうれしかったけど、
本当は何とも言えない微妙なライブだったから……
曲のセットリスト、途中で登場したゲスト…
そして曲の雰囲気とはかけ離れた場違いな観客のノリ…
すべてがコメントしにくいことだった。
紗耶香が歌いたかった曲はこのライブにはなかったってことも分かった……

わたしの沈黙を受けてきくちさんは続ける。
「確かにな、市井はぜんぜん納得してないだろうな…
 でもな、だからといってそれが無駄かっていうとそうでもないと思うんだよ。
 なんていうのかな……
 自分の思うように歌えないでいる中でも必死に歌ってれば、
 『本当に歌う』ってなったときに表現できるものって大きくなると思うんだよ。
 少なくとも今日の市井は、市井なりに今出来る精一杯の歌を歌ってたと思うぞ…」

そうかな?
わたしには今の紗耶香の状況で歌うことは、とても紗耶香のためになってるとは思えない。ときどき見せる紗耶香の暗い表情を見ると、復帰が良かったことなのかことなのかどうかも分からない。
唯一希望が通って歌えた曲だっていう『ふるさと』も本当に心から歌えたのかな…

ふと『ふるさと』を歌っているメンバーの顔が浮かんだ。
なっち、カオリ、矢口、圭ちゃん…
みんな何年たっても自分の歌いたい歌を歌わせてもらえる機会なんてこなかったじゃない…
わたしが辞めたときよりも、もっとどんどん歌う機会が少なくなっていって…
カオリなんて会えばいつも愚痴ばかりだったじゃない。
「『本当に歌う』機会なんて来るんですか?
 仮にきくちさんの言う通りだったとしても、
 その機会が来ないんじゃ結局は無駄になってしまうんじゃないんですか?
 それだったらわたしは自分で好きに歌ってる方がいい。
 歌を嫌いになるなんて、もう二度と経験したくないから…」
今度は正直に自分の気持ちを吐露した。
恥ずかしいことを言ってるのかもしれないけど、
わたしには紗耶香や娘。に残ってるメンバーみたいに歌いたくもない歌を歌うことなんてできない…
きくちさんは
「『歌う』機会か……」
と言ったきり黙ってしまった。

別れ際、きくちさんとメールのアドレス交換をする。
いや、どっちかっていうと『させられた』の方が正しいかな…
ホントは芸能界の人にアドレスを教えることなんてしたくなかったんだけど、
となりで和田さんがしつこく勧めるもんだから…
「福田よー、教えといて損はないと思うぞ。
 相手はフジテレビの大プロデューサー様だぞ。
 俺に教えとく方がよっぽど危ないだろ。
 俺だったらお前のアドレス、ファンのやつらに売りつけかねねえもん」
和田さんがそんなことしない人だってのは分かってるけど
「じゃあ、和田さんに教えてるくらいだから」
って言って、きくちさんに教えることにした。
「でも、わたしなんかに用無いと思いますよー」
「まあ、なんかおもしろいライブとかあったら教えてあげるよ。ライブ見るのは好きだろ?」
うっ。それはラッキーかも。
ちょっと期待してしまう自分が情けない。
「はい! ライブ見るのは好きです。年明けにもエレカシ見に行こうと思ってますし」
「じゃあ、適当に好きそうなのがあったらメールするから」

……そんなことがあったのが去年の12月。
でもそれからきくちさんからはぜんぜん連絡なくて、
わたしもそのことはすっかり忘れていた。
その間もわたしの回りの流れは早くて……

3月末に頼子はインディーズデビューが決まって渋谷で初めての単独ライブをやった。
わたしも後ろの方で見てたけど…
サイリウムを持ち出したお客が前の方にいたからその場を去った。
あの会場の雰囲気で、しかも頼子の曲でサイリウムを振り出すお客。
そんなモーニング娘。のコンサートのノリを持ち込むお客。
きっと頼子の歌なんてどうでもいいんだろうな……
もしわたしが見つけられてしまったら、きっと紗耶香のときみたいに
雰囲気なんかぶちこわしで大騒ぎするんだろう…
最後まで聴けなくてごめん……
あと、わたしの紹介が足を引っぱっててごめんね…頼子…

和田さんはあの後いろいろと大変みたいだった。
ユウキ君が復帰したと思ったらすぐにあんなことになっちゃって…
発売直前までいってたアルバムも全部無駄になったとか。
頼子の話だとハーモニーも相当損害出したみたい。
和田さん、会長に呼び出されたって話だし…大丈夫なのかな…
また『社長なんかやりたくなかったんだ』って愚痴ってるんだろうなあ…

わたしの回りはどんどん変わっていくのに、わたしだけそのまんま…
みんなわたしをおいてどんどん先に進んでいく……
バンド練習で歌ったりして、その場では楽しいけど、
家に帰ってくるとどこか虚しさがつきまとう…
わたしは自分の歌に納得してる…でも、聴いてる人はどうなんだろう。
今のわたしの歌を聴いて感動する人なんているんだろうか?
目的も無くただ歌ってるわたしを見て『魂が震える』なんてことがあるんだろうか?
これじゃあカラオケで歌ってるのと変わらないよね……
ベッドの上に横になって大きくため息をつく…


…はぁ……なにやってんだろ、わたし……


しばらくしてから、何も決められないで悶々としていたわたしに1通のメールが来た。

 『お久しぶりです。
  時間があまりないので簡潔に書きますが、
  来週の4月19日にフジテレビでライブがあります。
  出演はROSSOやLOSALIOS等の硬派なバンドを予定してます。
  関係者の所で見れるようにしておくので、来てみますか?
  時間は17時くらいで大丈夫だと思います。
  連絡まってます。           きくち』

きくちさん、忘れてなかったんだ…
ずっと連絡なくて、挨拶代わりのアドレス交換だったんだなって…
そう思い始めたところでのメールだったからちょっとびっくりした。
…ROSSOは見てみたいかな。
ミッシェルとブランキー、そんなに好きってわけでもなかったけど、
バンドで歌ってる以上やっぱり気になるし…
LOSALIOSも出るのか……TOKIEさん、かっこいいんだよねぇ。
でもめちゃイケで武田さんとは顔合わせてるからなあ。顔覚えられてたらやだなあ…
…それがちょっと引っかかったけど、結局はROSSOの誘惑に負けて連絡してしまった。


 ・


……そして今日。
わたしはこうしてお台場のフジテレビまでやって来た。
1階の関係者用の喫茶店の入口で待ち合わせしてたけど、
時間になってもなかなかきくちさんが来なくて不安になる。
「ごめん、ごめん。いろいろ押しちゃってて。
 代わりのスタッフを迎えに来させるわけにいかないし、
 スタジオの中にいたから携帯も使えなくって…」
「すいません。わざわざ迎えに来てもらって…」
わたしなんかのために時間を割いてここまで来てもらうのは気が引けてしょうがない。
「さっそくだけど、もう始まるから。すぐ行くよ」
「えっ! すぐですか?」
ちょっとお茶でも飲んでからいくのかなあなんて思ってたから、
ライブを見る心の準備が出来てない。
「うん。会場に着いたら、たぶんすぐに始まるから」
そう言ってきくちさんは、もう歩き始める。
かなり押してるんだなあと思いつつ、慌ててきくちさんの後を追いかける。

テレビ局の廊下。
ときどき見える乱雑に置かれたセットや束になったコードが懐かしい。
途中できくちさんが説明してくれる。
「今日の観客の控え室がここなんだ。もう会場に入ってるから誰もいないけどね」
ちょっと覗けば、そこには無数のカバンが無造作に散らばっている。
あれ? ここって……
隠し芸大会の練習した部屋だ。
そっか…普段は控え室としても使われてるんだね…

わたしがちょっと止まっている間にもきくちさんはどんどん歩いていく。
しばらく行って、行き止まりの暗い廊下で立ち止まった。
「これ、スタッフパスな。首から下げとけよ」
「はい。ありがとうございます」
一旦帽子を外して、言われた通り首から下げる。
「ここからちょっと通路がないから観客の中を通っていくからな」
ちょっと! 聞いてないっすよー。
「早歩きで行けば大丈夫だから」
そうかなあ?
きくちさんも大胆なことするなあ。
「はあ」
と曖昧な返事をしつつ、帽子を深めにかぶり直す。

入口にいるスタッフさんが仕切り代わりになっているカーテンを上げたあとはひたすら早足。
スタンディングで始まるのを待っている観客の中を必死にかき分けて進む。
緊張と観客の熱気とで、後方のスタッフブースに着いたときにはうっすらと汗がにじみ出ていた。
「あとはここいら辺で適当に見てていいから。
 何だったら客席の方に行っちゃってもいいよ。
 …それと…俺は1組終わるごとにここの席外すから、気をつけてな」
きくちさんにそう言われて自分のポジションを探す。
観客席の方に行くのはためらいがあった。
どんな雰囲気になるかまだわからないし、カメラも回ってるから。
わたしは結局セットの柱の陰にひっそりと立って始まるのを待つことにした……


 ・


始まるまでのちょっとした時間…
暗いながらも小さな青白い明かりのついたステージを見ているとぼんやりと様子が見えてくる。
なんで今日のライブのラインナップでアコギが置いてあるんだろう?
ピアノはまあ分からなくもないけど、奥の方には変な太鼓みたいのも見えるし…
不自然なステージのセットにちょっとした疑問を覚える。
ヒマついでにもっと凝視してやろうとしたら小さな光さえも消されて真っ暗になってしまった。


ブーーーーーーーーー


開演を告げるブザーが鳴る。
下手側から何人か出てきて楽器の位置についたのがなんとなく分かった。
少し遅れてボーカルらしき人も出てくる。
タイミング合わせでもしてるのだろうか?ちょっとした間があく。

……そして会場にアコギの音が響きした。
曲名もアーティストも何も発表されてない歌が始まる。


 ♪ 僕の話を聞いてくれ
   笑いとばしてもいいから
   ブルースにとりつかれたら
   チェインギャングは歌いだす
   仮面をつけて生きるのは
   息苦しくてしょうがない
   どこでもいつも誰とでも
   笑顔でなんかいられない


歌が始まるとなんか前の方の人たちがざわざわとしだす。
中には拳を突き上げてる人もいる。

…あれ? この声……

わたしはこの声に聞き覚えがある。
いや、ちがう……聞き覚えがあるとかじゃない。
もっと身近にあった声だ。
いつもわたしの近くにあった声だ。

歌声が響く中、ステージの照明が徐々に灯いていく。
そこにはかつてのわたし仲間……
忘れることのできない記憶を一緒に共有している仲間が立っていた。


……なっち!!


なっちがなんで!?


予想外の登場に会場全体に歓声があがる。
そりゃそうだ。まさか、なっちが……
なっち一人がこのステージに立つなんて誰も想像していないだろう。
国民的アイドルグループの一人が、今日ここに来るなんて誰一人思わなかっただろう。
なっちがこの客層相手に登場してくるなんて……

なっちは観客の歓声に惑わされず歌い続けていく。


 ♪ 人をだましたりするのは
   とってもいけないことです
   モノを盗んだりするのは
   とってもいけないことです
   それでも僕はだましたり
   モノを盗んだりしてきた
   世界が歪んでいるのは
   僕のしわざかもしれない

   過ぎていく時間の中で
   ピーターパンにもなれずに
   一人ぼっちがこわいから
   ハンパに 成長してきた
   なんだかとても苦しいよ
   一人ぼっちでかまわない
   キリストを殺したものは
   そんな僕の罪のせいだ


うん。なっち歌えてるじゃん。
最初騒いでたお客さんもみんななっちの歌に聴き入ってるよ。
わたしが聴いたことのないその歌をなっちは真剣なまなざしで切々と歌い上げていく。
なんだろう?この曲…
オリジナルではないっぽいし、お客さんの中には知ってる人もいるみたい。
わたしはなっちの歌に耳を澄ませた…


 ♪ 生きているっていうことは
   カッコ悪いかもしれない
   死んでしまうという事は
   とってもみじめなものだろう
   だから親愛なる人よ
   そのあいだにほんの少し
   人を愛するってことを
   しっかりとつかまえるんだ
   だから親愛なる人よ
   そのあいだに
   ほんの少し人を愛するってことを
   しっかりとつかまえるんだ

   一人ぼっちがこわいから
   ハンパに 成長してきた
   一人ぼっちがこわいから
   ハンパに 成長してきた
           (THE BLUE HEARTS「チェインギャング」より)


……あれ? この歌詞…
歌詞の内容にちょっとした引っかかりを覚える。
なっちはちゃんと歌詞の意味を考える人のはずだから…
…そういえば、わたしがモーニング娘。だった頃、
わたしたちが子供すぎてなかなか理解できなかった歌詞の意味を二人で必死に考えたこともあったっけ……

あっという間に曲は終わって、なっちはMCに入る。
「FACTORYへようこそ」
「今夜のオープニングアクトはわたし安倍なつみがお贈りします」
わたしの前の方に立つ人たちがみんな手をあげて応える。
中にはタトゥーをいれてるような腕も見える。
そうか…なっちの歌は支持されたんだね、この会場にいるみんなに。
なっちの『歌』は会場にちゃんと響いたんだね。

なっちしか見てなかったステージを改めて見回す。
最初にギターを弾き始めた人は……あ、坂崎さんだ。
ピアノは……武部さん。それに加藤さんやスティーブさんも。
『ラブラブあいしてる』のメンバーか……
拓郎さんに誘われた有志が集まって作ったバンドで番組をやってるって聞かされて、
とても興味深かった番組。
わたしが歌いたかった『神田川』を歌わせてもらえて、とってもうれしかった……

…なっちがもう一言。
「それでは、もう一曲聴いてください」

一曲目の重たい雰囲気とは変わって、テンポアップした曲が始まる。
照明もそれに合わせて青白い光からオレンジ色の光へと変わった。


 ♪ はっきりさせなくてもいい
   あやふやなまんまでいい
   僕達はなんなとなく幸せになるんだ
   何年たってもいい 遠く離れてもいい
   独りぼっちじゃないぜウィンクするぜ

   夕暮れが僕のドアをノックする頃に
   あなたを「ギュッ」と抱きたくなってる
   幻なんかじゃない
   人生は夢じゃない
   僕達ははっきりと生きてるんだ
   夕焼け空は赤い 炎のように赤い
   この星の半分を真っ赤に染めた
   それよりももっと赤い血が
   体中を流れてるんだぜ
           (THE BLUE HEARTS「夕暮れ」より)


なっちの歌がストレートにわたしの胸に飛び込む。
なっちの歌うその歌詞がわたしの胸に突き刺さった。
わたしの鬱屈した気持ちを吹き払うかのような衝撃……
ちょっとした間、わたしは放心状態になってしまった。

なっちは歌い終わるとすぐに舞台袖に引っ込んでいく。
でも…わたしの胸の動悸はおさまらない……
いくら落ち着かせようとしてもドキドキしたまま。

……昔なっちが言ってた……
わたしの卒業を数日後に控えたときのこと……

「なっちはね、プリンセスプリンセスの『M』を福ちゃんに贈ります。
 福ちゃんといつも一緒にいたかった。となりで笑ってたかった……」

そう言って、悲しそうな顔をしてたなっちを思い出した…
そのときはわたしもいっぱいいっぱいだったし、
務めて冷静でいようとしてたから深く考えなかった。
なっちがどれだけわたしのことを大切にしてくれてたか…
わたしがいなくなってどれだけ寂しい思いをするのか、考えもしなかった……
あんなに毎日一緒にいたのに…
休日でさえも一緒に遊んだりしてたのに……


…なっち…


……なっち……


…………なっち…………


……ごめん。わたし独りぼっちなんかじゃなかったんだね。
孤独なんかじゃなかったんだ。
ずっとなっちは「一人じゃない」って言っててくれたのに…
わたし、それに気づきもしなかった…
かえって鬱陶しく思ったりしたこともあった。
誰もわたしのことなんか理解してくれないと思ってた。

わたしはバカだ。

バカでバカでどうしようもない子供だ。

ずーっとわたしは子供のままだったんだ。

今日この場で、3年かかってようやく気づいた自分自身……





……


……なっちに会わなきゃ!


ここでなっちに会わずに帰ったらわたしは何も変わらない。
また孤独を平然と装う大人のふりをした自分に戻るだけだ。
本当は寂しくて寂しくて仕方がないのに…

急いできくちさんの姿を探す。
わたしが今なっちと会うためには、きくちさんの力を借りる以外手段がなさそうだ…
幸いきくちさんはスタッフブースを離れることなく、スタッフさんと歓談中。
乱雑に並んでいる機材の中をぬうように歩いて近付いていく。
きくちさんの方から気づいてくれて声をかけてくれた。
「よう、福田。どうだった?びっくりしただろ?」
「はい、めちゃびっくりしました」
きくちさんにこれ以上甘えることに気が引けて、ためらいがちに聞いてみる……
「あの……、なっちに会わせてもらうことってできませんか?
 無理言ってるっていうのは自分でも分かってるんですけど…、
 …今日、なっちに会ってから帰らないと絶対後悔しそうなんです……」
きくちさんはなぜか笑いがちに答えてくる。
「あー、大丈夫だと思うけど、
 安倍も時間あんまりないと思うから今行かないと会えないと思うよ」
「…はい。できれば今すぐ会いたいです」
「でもそれだとお目当てだったROSSOとかは見れなくなっちゃうけど、いいか?」
「はい、かまいません。なっちに会う方が今のわたしにとっては重要ですから。
 誘っていただいたきくちさんにはホント申し訳ないんですが…」
「うん。まあ、それはかまわないんだけどな……うーん、どうしようかな…」
そう言ったきり、後ろを向いてあごに手をあてて考え込んでいる。

突然きくちさんがくるっと振り向いて手をパチンと叩いた。
「じゃあ行こうか」
「えっ!?」
わたしが戸惑う間にすでにきくちさんは歩き始める。
なんか来たときもこんな感じだったような…
慌ててきくちさんの後を追う。
すでにステージはセットの組み替えが済んで、あとは次のバンドの登場を待つばかり。
なっちの登場に騒いでたお客も今はもう臨戦体制だ。
そんな中をすり抜けてカーテンを上げてもらってスタジオの外に出る。
本当だったら番組収録が終わるまで出られないはずなのに、
きくちさんの後に続いて出ていくわたしを見て不思議そうにしている人もいる。
きくちさんは
「安倍はまだスタジオの中にいるけど、
 そこに福田をつれていくのはいろいろとまずいから楽屋の方に行くからな…」
そう言って、来るときに通ってきた道を引き返していく。

迷路のように入り組んだ通路を早足で歩きながら、きくちさんに聞いてみた。
「あの…、なっちが今日歌った曲ってなんていう曲ですか?」
「ああ、あの曲な。
 2曲ともブルーハーツの曲で1曲目が『チェインギャング』で2曲目が『夕暮れ』っていうんだ。
 もう10年以上前の曲だから福田は知らないだろ?」
わたしだってブルーハーツの名前くらい知ってるけど、細かい曲名までは分からない。
「なっちも知らなかったんじゃないんですか?」
なっちからブルーハーツの話なんて聞いたことない。
なっちが好きだったのはラルクやイエモンなんかの
わたしたちがオーディションを受けてた頃に流行ってたグループだ。
「うん。確かに安倍、知らなかったなあ…
 他にもないくつか候補曲出しておいたんだよ。
 安倍の好きそうなジュディマリとかもいれてな。
 でもな、サンプルで渡したCD聴いた安倍がどうしてもあの2曲がいいって言うんだよ。
 こっちとしては同じグループの曲はあんまりやってほしくなかったから、
 『何かブルーハーツに思い入れでもあるの?』って聞いたんだよ。
 そしたら、『聴くのは初めてです』だって…
 よっぽどあの2曲が気に入ったんだろうな」
わたしには分かる。なっちがあの曲を選んだ理由、歌いたかった訳……
あの歌にはなっちの気持ちがいっぱいつまっていた。

「ちょっとここで待ってて」
って言って、きくちさんはわたしを廊下の長イスにおいてどこかに行ってしまった。
戻ってきたときには、女の人と二人。
わたしの姿を確認すると
「じゃあ、そういうことなんで…」
きくちさんがその女の人に言う。
「今回っきりですよ。事務所にばれたらわたしだってヤバいんですから」
そういう言って、しぶしぶといった感じでポケットから何かを取り出す。
そしてわたしの前に差し出した。
「はい、これ。安倍さんの楽屋の鍵。絶対になくさないで。
 あとわたしに渡されたことを安倍さん以外には誰にも言わないで。
 バレたら『これ』になるから」
そう言ってクビを手で斬るまねをする。
どうやらなっち付きのUFAのスタッフさんらしい。
「えっ? いいんですか?」
わたしはその人の顔を窺う。
きくちさんが
「いいから、いいから」
ってさえぎるように言う。
きくちさんがなにやら仕組んだのは確かだ…
わたしがためらっていると、その女の人はわたしの手を取って無理矢理わたしに鍵を握らせた。
「そこ曲がったところが安倍さんの楽屋だから。人がこないうちに早く行って!
 そのうち一人で帰ってくると思うから、それまでは楽屋からは絶対出ないでね」
……今は素直に従った方が良さそうだ。
お礼だけ言って楽屋に急いで向う。

『安倍なつみ様』と書かれた紙が横に貼ってある扉。
この扉を開けばもう引き返すことはできない。
ドキドキしながら鍵を差し込んだ。

「おじゃましまーす……」

誰もいないのは分かってても小声で挨拶をする。
思ったより狭い楽屋。
なぜか足を忍ばせて奥に入っていった。

ぐるっと見回して、本当に誰もいないことを確認してふぅっと一息ついた。
なっちのバッグ、なっちの帽子、なっちのサングラス……
楽屋にはなっちの匂いが感じられるものが溢れている。
わたしは所在なげに鏡の前のイスに腰をおろした。

もうすぐなっちと会える。3年間意識的に避けてきたなっちと……
わたしはどんな顔をしてなっちを迎えればいい?
なっちになんて言ったらいい?
今のわたしには眩し過ぎるなっちに臆することなく言葉がでてくるだろうか……


 ・


しばらくすると静かだった廊下に足音が聞こえてきた。
それに混じって変な鼻歌も聞こえる。
薄暗い廊下には似つかわしくないなっちの明るい声。

ハタチにもなって『アイスが呼んでる』とか歌ってる場合じゃないでしょうに……

そんなところは昔と変わらないね、なっち。
ちょっと笑いながらイスから立ち上がり、なっちを迎える準備をする。
扉の前で足音が止まった。
……いよいよだ。いよいよなっちと再会するときが来る。
ドアノブに手をかける音が聞こえる。
心臓の鼓動がよりいっそう早くなったのが分かった…

なっち、わたしを見てどんな顔するかな?





……


…………


あれ? 入ってこない。
何やってるのよ〜、なっち。

(しょうがないなあ。わたしの方から声かけようか)


「おかえり、なっち」


ちょっとの間があって、ゆっくりゆっくりと楽屋の扉が開けられる。
そこにはなっちのいつも通りの笑顔……のはずだった。
でも違った。
何かに堪えたような精一杯無理して作った笑顔。
右手を中途半端な位置で止めて、小刻みに動かして、必死に何かを言おうとしている。

そんな顔しないでよ、なっち。わたしだっていっぱいいっぱいなんだから……

久しぶりの再会……

思わぬかたちでの再会……

覚悟を決めるための再会……

クールでいようとするわたしは今ここにはいない。

なっちは震える声でなんとか言葉を口にした。


「ただいま、明日香……
 ……そして、おかえり……福ちゃん…」


そう言って、ゆっくり近付いてきて抱きしめられた。
3年振りに感じるなっちの温もり。

あの頃はわたしの方が小さかったけど、今ではわたしの方が少し大きくなってて、
でもやっぱりなっちはなっちのままで…

なっちの温もりは昔と変わらずわたしを包んでくれて…

自分でももう何を考えてるのか分らなくなった……

……わけもわからなく涙がこぼれて、何も言えなかった…
なっちをぎゅっと抱きしめ返すことしかできなかった。

お互いの顔が見えなくて良かったと思う。
もう目を開けていられなかったし…
わたしは素直に目を閉じた。
きっとなっちもそうしているはず……

「久しぶりだね、明日香…」

「うん…」

「元気にしてた?明日香…」

「うん…」

「背、伸びた?」

「うん…」

わたしは「うん」しか言えない。
耳もとで聞こえるなっちの優しい声に、それしか答えられない。
声につまって言葉が出てこなかった……


なっちはわたしに聞いてくる。
昔の様に、親しみを込めて…

「ねえねえ福ちゃん。今日のなっちどうだった?」

「…すごい良かった…伝わってきた……なっち上手くなったね…」

本当に良かった。わたしの心に伝わってきた。
わたしがモーニング娘。という中では得られないと思っていた『歌』の世界。
でもなっちは3年間で着実にモノにしてたんだ。
あんな歌ともいえないパートをぶつ切りにされた歌を歌いながらも、
知らない間になっちは成長してたんだ。わたしが見放したその世界で…
決意を込めてなっちにそのことを伝えなくちゃ。そしてなっちに謝らなければ……

「3年間頑張ってたんだね、なっち…つらいこともいっぱいあったよね?」

「ごめんね…なっち…ひとりぼっちにさせて…」

「あのときわたしが逃げなければ……」

わたしはぽつぽつと語る。

「いいんだ、明日香。今のなっちは充分満足してるの。
 つらいことなんて、今日こうやって時間を取り戻せたことに
 比べれば小さなことだよ…」

「取り戻せた?」

「うん。歌手安倍なつみを取り戻せた。
 みんなの夢を…モーニング娘。の目標を取り戻せた。
 そして、明日香といっしょにこうしている時間を取り戻せた…」

『歌手安倍なつみ』『みんなの夢』『モーニング娘。の目標』…………

…5年前のことを思い出す。
みんな歌手になりたくて集まったライバル。
合格したって「何かをつかめる」保証もなにもなかったオーディション。
そんな中でも、みんな必死になって合格を勝ち取ろうとして
ボイスレッスンやダンスレッスンに臨んでた。
わたしはただ歌が好きなだけで応募したけど、
勝ち進んでいくうちにみんなの熱意にあてられて、
いつしか「勝ち残りたい」と思うようになっていた。
そして落胆した5人で見た、みっちゃんの武道館でのデビューイベント…
お客が集まらなくて大失敗に終わった横浜アリーナのわたしたちのデビューイベント…
いつかこのステージをわたしたちの力でいっぱいにしてやろうと誓ったあの日。
思えばわたしは何も誓いを果たせなかった……
それに比べてなっちは……なっちは……全部誓いを守ったんだ。
わたしが辞めたあとの3年間で全部つかみ取ったんだ。
わたしも逃げなければなっちといっしょにつかみ取っていたかもしれなかったんだ…

「…ねえ、なっち」

「…ん?」

「わたしも3年間で失ったもの取り戻せるかな?
 いっぱい、いっぱい失くしたものが多すぎたよ、わたし…」

「…大丈夫だよ、明日香。
 だってもう今日半分取り戻したんだよ」

「えっ?」

「昔二人で一人前とか言われてたんだから、
 明日香は今日なっちのこと取り戻したから半分取り戻したでしょ?」

「なんかよくわかんないよ、その例え」

ホントはなっちの言いたいことはなんとなく分かった。
なっちとわたしは足りないところをお互いに補完しあって存在してた。
二人一緒だったからあそこまで出来たんだ。
でも、ちょっと照れくさかった…

「でも…うん、そうだね。頑張ってあと半分取り戻すよ。フクダアスカの部分を。
 じゃないとなっちも一人前になれないもんね」

「なにおー! なっちはもうどっからどう見ても一人前の大人ですぅー」

「よく言うよ。『アイスが呼んでる』とか歌ってたくせに」

こうしてじゃれあって会話ができる時間が取り戻せたことがうれしい。
素直に心から笑えたのなんて久しぶりな気がする。
閉じていたわたしの心、沈んでいた気持ち…安らいでいくのがわかる。


なっちは、優しくわたしの耳もとで囁いた。


「…福ちゃん、頑張ってね。
 つらいことがあったら言っていいんだよ…
 なっちが守ってあげるから…
 今度は絶対に守ってあげるから…」

「……うん。ありがと…なっち」

うん。これからは意地を張らずに、素直になっちに甘えるよ。
『お姉ちゃん』らしくなったなっちに。
だから、わたしがなっちの横に立てるようになるまでしっかり見守ってて。
もう一回なっちの横に立つのにふさわしくなれるように頑張るから見守ってて。
わたしがもう一度『歌』を歌えるようになるその日まで。
そしたら、二人で一緒にまた歌お。
いつになるか分らないけど、絶対一緒に歌おうね。

言葉にできなかったけど、きっと決意は伝わったはず。

3年振りのわたしの決心。
すべてを振り切ったわたしの決心。
カッコ悪いって言われたって、みじめだって言われたっていい。
わたしは『歌』の世界に戻る。
好きで好きでたまらない『歌』の世界に。


……そして、彼女の待つ世界に…………




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