第3話:「チョー緊張?初めての出撃」
雲一つない快晴の富士山麓。由香里が地球防衛のために造られた女性型戦闘用ロボット「ハイ・ポテンシャル・クイーン」、略して『ポテQ』の操縦訓練を行っている。
「そう、そこで右折。スピードを少し落として。そこでストップ。そうじゃ、なかなかいいぞ。」
モニターを通じてコクピットの由香里を指導するチロチャン博士。まるで自動車教習所の指導教官である。
「なんか簡単すぎてつまんない。そろそろ武器でも説明してよ。」
「そうじゃな。じゃあ右側の一番上の"AI"と書いてある赤いスイッチを押してみるんじゃ。」
「えーっと、あっ、これね。」
ボタンを押す由香里。
「はーっ、やっと出番ね!待ちくたびれちゃったわよ。」
突然別のスピーカーから甲高い若い女性の声が響いてきた。驚く由香里。
「ちょ、ちょっとなによこれ!いたずらなの!?真面目にやってよね。」
「いたずらなんぞじゃないわ。彼女はハイ・ポテンシャル・クイーンの戦闘補助用AIじゃ。単純な運動系と違って武器の操作はちょっと複雑じゃからの。しばらく彼女に教えてもらうんじゃな。」
「冗談じゃないわよ。こんな機械に教えてもらうなんてまっぴらよ。」
「ちょっとあんた、黙って聞いてれば言いたいこと言ってくれんじゃない。少なくともあんたよりはずっと詳しいわよ。つべこべ言ってると教えてやんないわよ!」
「まあまあ、二人とも押さえて。これから長い付き合いなんじゃから仲良くやってくれよ。あとはよろしく頼んだぞ。」
博士はモニターから消えてしまった。
「あっ、ちょっ・・・んもー。ちょっとあんた、名前はあるの?」
「バカねー、AIに名前なんてあるわけないじゃないの。」
「じゃあ、私が名付けてあげるわ。あんたは今日から『ポテQ』よ。ロボットといっしょの名前だけどあんたたちは一心同体だから問題ないわよね。いいわね?お互い選択の余地はないみたいだからせいぜい楽しくやりましょ。」
ポテQ…もっとマシな呼び方はないわけ?ちょっと、聞いてんの?」
無視を決め込む由香里であった。
その日、突然清水港に30mはあろうかという巨大な謎の生物が上陸した。灰色の粘着質の身体から無数に伸びている触手。その姿は巨大なクラゲを連想させる。口のような部分から炎を吐き出して進んでいる。街はすっかり炎に包まれてしまった。逃げ惑う人々。すっかりパニック状態である。さっそく自衛隊機が出動したが、お約束通り無力である。次々に炎に包まれ墜落していくF−15。天文学的な金額の税金が消えてしまった。
博士はこの様子を研究所のモニターを通じて見ていた。
「いかん、遂にこの日がきてしまったか・・・」
あの怪物は地球を狙う宇宙人の先遣隊だったのである。博士はマイクを取り叫んだ。
「由香里、すぐ清水に向かうのじゃ!敵が出現したんじゃ!!」
そのころちょうど彼女はポテQから武器関係のレクチャーを受け終わったところであった。
「了解!直ちに現場に急行します!」
「ちょっとあんた、なに急に張り切ってんのよ。」
「ちょっとロボットアニメのヒロインみたいでかっこいいでしょ?実はちょっと憧れてたんだ。」
「まったく…」
「クイーン・ウイング!」
背中から翼を出し、ポテQは清水に向けて飛んでいった。
「あっ、あれね。」
清水上空に到着したポテQのコクピットから謎の生物を見つけた由香里。
「なんかグロいバケモノね。『ヘドロクラゲ』って感じね。ポテQ、私たちの初陣よ!軽くやっちゃいましょ!」
「だといいけどね・・・」
「いくわよっ!ポテQキーック!!」
上空から『ヘドロクラゲ』に向かってキック。背面にヒットし、大きくよろめいた。振り返りポテQを視界にとらえる怪物。
「愛と平和の女神、ポテQ参上!!」
オーバーアクションで見得を切るポテQ。由香里はコクピットですっかり『入って』しまっている。
「ちょっと恥ずかしいじゃないの、やめてよ!」
「うるさいわねー!目立つが勝ちよ。やい、そこの怪物!よくも美しい街をこんなにしてくれたわね。清水次郎長一家が許してもこの由香里様とポテQが許さ・・・あっ、キャーッ!!」
突然ヘドロクラゲの触手が伸び、ポテQに絡みついた。自由を奪われてもがくポテQ。
「ちょっと、バカなこと言ってるから・・・」
あきれるAI。
「うるさいわね。とにかく今はここから脱出しなきゃ。何かいい手段はないの?」
「とにかくこの気持ち悪い触手を光線で焼き切るのよ。」
「ようし、クイーン・ウインク!!」
ポテQの両目から熱光線が発射された。触手が切断され、自由を取り戻した。
「よくも乙女の柔肌に気持ち悪いモノを押しつけてくれたわね!許さないんだから!フィンガー・キャノン!」
ポテQの指先から小型ミサイルが連射された。怪物の体にメリ込んで爆発するミサイル。苦しそうである。
「ようし、これでとどめよ!」
ポテQの胸を覆うアーマーが左右にスライドし、見事なバストが現れた。
「オッパイミサイル!!」
2基の巨大ミサイルが怪物に命中。ヘドロクラゲは跡形もなく吹き飛んだ。そして清水の街に静寂が訪れた・・・
「よし、初めてにしては立派じゃったぞ。これからも地球の平和のために頑張るんじゃぞ。」
夕焼けの中、清水から立川に向かう途中。博士は由香里の労をモニターを通じてねぎらっていた。
「ところでさ・・・」
「ん、何じゃ?」
「今日のバイト代、即金でもらえると嬉しいんだけど・・・」
ガクッと崩れる博士。
「わかった、わかった。時間外手当も忘れずに付けといたでな。」
「やったー!ちょっとポテQ、もっとスピード出ないの?サボってんじゃないわよ!」
あきれてモノも言えないAI。地球は果たして大丈夫なのだろうか? また、こんなお気楽ロボットにあっさり敗れた宇宙人って一体・・・
(つづく)
(98.06.03)
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