第4話:「行こう!フランスへ!!」
フランス。ここローランギャロでは全仏オープン・女子シングルス準決勝が行われていた。優勝候補最右翼、ランキング1位のヒギンスが出場するとあって会場は超満員である。対するは苦戦しながらもここまで勝ち上がってきた日本期待の霧野リサ。今年めきめき頭角をあらわし、現在ランキング2位である。第1セットは3−6で落としてしまったが、後半勝負とにらんだリサはヒギンスを左右に振り、スタミナを消耗させることに成功していた。その結果、このセットは5−2でリードしていた。
「リサ、頑張って!」
四谷大学の学食から声援を送る由香里。在校生が大活躍しているとあって夜であるにもかかわらずTVの前は黒山の人だかりである。相変わらず金欠状態の由香里は時間の許す限りリーズナブルな学食で栄養補給するよう心掛けていた。
「そう、そこっ!やったーっ!!」
リサが第2セットを6−2で奪った。この全仏に勝てばリサはランキングトップに躍り出る。学食は興奮状態である。と、その時。画面の中に見慣れない物体が現れた。空中を巨大な球体が浮遊しているのである。
「何なの、あれ?」
と同時に由香里の携帯が鳴った。
「今TVを見ておるか?どうもパリに怪物が現れたようじゃ。至急現地に向かってくれんかの。」
「いいけど、今日は土曜日よ。」
休日出勤なのでバイト代を割り増してほしいと暗に請求しているのである。
「まったくこんな非常時に…よし、わかった。20%増しでどうじゃ?」
「それっぽっち?でもしょうがない。人類の運命は私にかかってるんだもんね。OKよ。ところで…」
「ん?まだ何かあるのか?」
「帰りにサントノーレやレアールでショッピングしてきていい?」
「…つべこべ言わずに早くするのじゃ!金はあるのか、大体!!」
相変わらずお気楽な由香里であった。
凱旋門前に着陸した謎の物体はシャンゼリゼ通りを転がっていく。逃げまどう車、人。しかしその回転は突如ストップした。
「ちょっと、あんた。ワールドカップはもう少し先よ!!」
ポテQがパリに到着したのである。
「ここで暴れ回られるとブティックが壊れてウィンドー・ショッピングができなくなっちゃうわ。迷惑のかからない場所まで来てちょうだい。」
怪物を抱えあげたポテQはブローニュの森まで移動した。
「さあ、かかってらっしゃい!思う存分相手になってあげるわ!!」
怪物は突如煙幕のような黒煙を吹き出した。まったく視界が遮られてしまった。と同時に怪物はポテQに体当たり攻撃を開始した。
「キャーッ!」
四方八方から体当たりを受けうずくまるポテQ。
「おい、何をやっとるんじゃ!早くAIを起動せんか!」
「あっ、そうだったわね。私としたことが…」
スイッチ・オン。突如スピーカーから例のハイトーン・ボイスが響いてきた。
「あちゃー。派手にやられてるわね。」
「何のん気なこと言ってんのよ!早く何とかしなさいよ!」
「あっきれた。それが人にモノを頼む態度?でも私のボディーがこれ以上傷つくのはやだから助けてあげるわ。サブモニターのスイッチを入れて。」
ポテQに装備されている高性能レーダーが捕らえた怪物の動きが表示された。
「これでいいでしょ。後は勝手にやってちょうだい。」
「機械のくせに何様のつもりよ…」
そうは思っても口には出せない由香里。彼女の怒りは必然的に怪物に向いた。突進してくる怪物をがっちりキャッチするポテQ。
「よくもやってくれたわね!たっぷりお返しさせてもらうから覚悟しなさい!クイーン・ウインク!!」
命中。怪物は動力部を破損したらしく動けなくなった。
「お次はこれよ。ヒップ・アターック!!」
ポテQはジャンプして上空から攻撃。ポテQの上向きのヒップに押しつぶされる怪物。哀れさすら漂う姿となってしまった。
「これで終わりよ。ワールドカップ日本出場記念・ポテQキーック!!」
蹴り上げられた怪物は上空で爆発して四散した。やれやれ、何のために出てきたのか…
「ゆーかーりーっ!」
足元で呼ぶ声。そこにはリサがいた。
「あれっ、こんなとこで何やってんの?試合は?」
「バカねー、こんな状況でできるわけないじゃないの。退避命令が出て延期よ、延期。」
「あちゃー、いい感じだったのにね。」
「しょうがないわ。由香里のおかげでパリも救われたんだし。また頑張ればいいのよ。ところでお願いがあるんだけど…」
「何?」
「実は大会が2週間順延になっちゃったの。その間こっちにいるわけにもいかないし。悪いけど乗せてってくれない?」
「…いいわよ。さあ乗って。」
ポテQの手のひらにリサを乗せ、コクピットに招き入れる由香里。親友たっての要望を断るわけにもいかず、由香里のウィンドー・ショッピングは夢と消えてしまったのであった…
(つづく)
(98.06.11)
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