―――――――――― 002 「夜明け」 ―――――――――― 夜明けまで後40分か………。 後…、後40分で外に出ることが出来る…。 この、薄暗く、汚い小屋ともお別れだ…。 仲間と共に…、な…。 ――それは12時間前の話…。 ここは北海道大雪山…。この日は天候が悪く、雪が横からふきつけ、顔に当たり、「寒い」・ 「冷たい」の類を通り越して「痛い」。 登山をするには最悪の天候ともいえるこの大雪山に4人の若者がいた…。 「皆!大丈夫か?!」 4人の若者のリーダー格…。大学の登山サークルの一員である高田浩二(たかだこうじ)は吹 雪の中全員に聞こえるよう大きな声で言った。 「何とか大丈夫だよ…。少なくとも…」 その隣で冷酷に言い放ったのは築山智弘(つきやまともひろ)。 「こいつ以外はね…」 築山が背負っているのは御手洗カズヲ(みたらいかずお)。頭からは大量の血を流している…。 「そうか……」 「全く、何でこんな鈍間の所為であたし達がこんな事にならなきゃいけないのかしら」 そう言いながら御手洗をつついている女性は田崎章江(たざきあきえ)。御手洗はすでにつつ かれても動かなかった…。 「章江!そんな事言うんじゃない!」 咄嗟に浩二は章江にそれ以上口を滑らさないよう言った。 御手洗は登山サークルの中でも仲間はずれにされていた。 だから今日、この雪山に呼び出して、撲殺し、崖から落ちたように見せかける。と言う完 全犯罪を実行していた。 そして数分後、目的の崖に到達した。 「ふぅ……。後はこいつを…、崖に落として…」 「完全犯罪の達成ってわけだ…。じゃあアタシが落とす。こいつには色々と恨みがあるか らね」 そう言って智弘から御手洗を乱暴に奪い、渾身の力を込めて、思い切り投げた。 ――グチャ…。 肉片が潰れたような音が崖の下でしたような気がしないでもなかったが、あいにく吹雪に よってかき消されたようだ。 「う…うわわわわ…」 ――しかし渾身の力を込めて放り投げたため、足を滑らせて崖から落ちてしまった。 「章江!!…………くそっ…」 「…まさかこんなことになるなんて……。…早く戻ろう…。これは不慮の事故なんだ…」 「あぁ……。事故…だ」 殺人を犯してしまった以上、犯人に残されるのは自首するか時効まで逃げ切るか逮捕され るかのどれかになる。自分達としては時効まで逃げ切れればそれでいい。 それまでここで遭った事は自分達だけの秘密……。 「…それにしても…、いつになく吹雪いて来たな…」 「あぁ…。視界も悪くなってきた……。この状態で歩き回るのは非常に危険だろう…」 「だが……。ん?あそこに小屋があるぞ…。今日はあの小屋に泊まろう…」 見つけたのは小さな小屋…。窓もあるし、一応暖房もおいてあった…。だが問題は…。 「風通しが良すぎる…。な」 「全くだ…。石油ストーブも凍り付いちまってやがった…。このまま寝たら間違いなく凍 死…。だな」 老朽化していたのか、作りが元々雑だったのかどうかは知らないが隙間がかなり開いてい た。 そのため、小屋の中は氷柱があり、唯一の暖房である石油ストーブは凍りつき、とても使 えそうに無い。 「眠ったら最後…。だな」 「いや、眠ったほうが体力を温存できる…」 「だが起こされなかったらそのまま永遠の眠りに付くことになるぞ」 「あぁ…。じゃぁ、こうしよう。十分、片方は眠り、もう片方は起きている。十分後、起 きているほうが寝ている奴を起こす。起こした奴は寝て、そしてまた十分後、起きている 奴が寝ている奴を起こす。これを繰り返すんだ…。こうすることで十分の間は体力が温存 できるし、起きているほうは使命感が沸いて眠れなくなる…。この吹雪も朝には止んでい るだろうから、夜明けまでやれば決行いけるんじゃないかな?今は…午後12時。だいたい 5時ぐらいまで…か…。どうだ?」 と智弘が提案するが、この案には欠点があった。 「…どっちが先に寝るんだ?」 寝るほうはどちらか、と言うことでもめるのだ。無論、自分が先に寝たいに決まっている。 お互い、暫しの間、沈黙する…。 その沈黙を破ったのは浩二だ。 「じゃぁ、俺が起きてるよ、お前は眠ってろ」 「あ…、あぁ。ありがとな」 そう言って、智弘は瞼を下ろした。 ――自分はリーダーだから…。そう思って智弘を先に寝させたのは良かったものの、今は 相当後悔している。いくらリーダーと言っても自分は人間だ…。眠いものは眠い。 だがここで寝てしまっては間違いなく凍死する…。 浩二は暫く葛藤していたが、次第に瞼が重くなり、とうとう眠ってしまった。 ――そして今に至る。 自分が寝てしまったことに後悔した浩二には、更なる後悔が待っていた。 自分の目の前で寝ていた智弘が凍死していたからだ。 自分が寝さえしなければ…。自分はこれで3人もの人間を殺してしまったのか…。 そうは思ったものの、これで御手洗殺害の事実を知っているのは自分だけだ。 自分が口を滑らさなければ、仲間全員が事故死したことになる。 殺人犯として一生悲劇の人生を選ぶのか、不慮の事故に巻き込まれ、悲劇の舞台にたって しまった哀れな人物。として人々から同情をもらうのか。どちらがいい。と聞かれたら殺 人犯としての人生を歩もうとする人間はいないだろう。真実を話して損をするより、嘘を 言って得をしたほうがいいに決まっている。 そう思って、浩二は智弘に一言「すまない」と謝罪をした上で、小屋をでる。と決心した。 案の定、夜が明けて吹雪も収まっていた。 「智弘…。すまないな、死なせてしまって…。お前の分まで俺が生きてやる。安心しろ…」 そういって小屋のドアノブに手をかけた…。が。 「な…、開かない?!」 ドアノブが回らない。そしてドアが動かない。 このドアが開かないことには外へは出られない。 そして、最悪のパターンを告げる死の旋律が聞こえてきた…。 ――ズズズズズズズズ…。 細かな地響きと共に聞こえてくる音…。 まぎれも無く雪崩の合図だった…。 「な…、だ…。誰か!!開けてくれ!!助けてくれ!!誰かーーーーーー!!!!」 しかしその叫び声が届くことも無く、雪崩が小屋へ向かって流れてきた。 小屋が雪崩に打ち勝てるわけも無く、あっけなく小屋は雪に埋もれ、中にいた浩二も圧死 した……。 「皆…。これが僕を怒らせた罰だよ…。僕が鈍間だからって…、仲間はずれにするなんて …。挙句の果てには事故に見せかけた殺し?馬鹿げてるじゃないか…。僕さ、一人で逝く のは嫌だから皆も連れてくだけだよ…?文句は言わないでね…。元々君たちが悪いんだか ら…。僕を殺した君たちが…」 そう、声が聞こえたような気がした…。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― はい、最後の方雑でしたねlllolrzlll でも勘弁してください。いいネタが浮かばなかった…。 一応ホラーにしてみました。…思っていたより怖くないかもしれませんが…。 …では。002「夜明け」を担当したアマノガワでした…。