038 朝のできごと 朝起きると、目覚ましの音が鳴っていた。予想した位置にゆっくりと拳を振り上げ、叩き落した。 がしゃんと音がする。確実に停止音ではなく破壊音なような気がしたが、気にしても仕方ない。 その所為で生じた手の痛みが、眠気を徐々に覚ましてくれた。 「んー……いい朝だ」 カーテンをさっと開ける。外は爽やかこの上ないだろう、日本晴れだった。 朝起きると、爆発音が聞こえた。丁度いい目覚ましになってくれた。流石に非常識な音だったから。 「朝っぱらから何してんだ……って、料理か」 自分の料理センスは自身が一番知ってると思うんだが、何故それを承知の上で挑むのか。 根性があるといえば聞こえはいいが、諦めが悪いとも言える。 「大丈夫かー母さん」 さて、朝飯はいつものようにトーストかな。パンとトースターが犠牲になっていなければの話だが。 朝起きると、ドタドタと階段を上がってくる音が聞こえた。ここ数日、聞かなかった五月蝿い足音。 「起っきろー!」 「……起きてるから近くで大声を出さないでくれよ」 今日の目覚ましは沙希の五月蝿い声だった。 こいつはたまに朝の部活をサボって俺を起こしに来る。なんでも「一緒に登校する日」とやらを自分の中で作っているらしい。 今一瞬でも羨ましがったやつ、現実にあったら迷惑この上ない事をお忘れなきよう。 「ほらほらー、朝ご飯出来てるよー!」 唯一の救いは、母さんの壊滅的料理センスの血を受け継がなかったことだ。 妹に朝飯作ってもらうのは微妙な心境だが、背に腹は変えられない。 朝起きると、腹に軽い重みがあった。予想がつくのと同時に、頬に暖かく湿った感触が走る。 「お前は、ホントたまーに早起きだよな」 「みゃぁ」 マーブルの舌で舐める行為が妙な感覚を生み、頭をクリアにさせた。 ここ最近で一番穏やかだが、即効性がないということもある。 「つーか朝飯ねだるなら母さんとこ行けよ」 俺の部屋には餌はない、なーんてことは全くスルーするようにノーブルは俺の腕の中で軽く鳴いた。 朝起きると、ドカンと鉄球でもぶつかったような衝撃で一発で目が覚めた。 地震かと勘違いしたが、そうやらそうじゃないらしい。ちょっと安心した。 一階のキッチンへ行くと、母さんと沙希が騒いでいた。事故だそうだ。 うちの近くの電柱に大型トラックが突っ込んだらしい、それならあの衝撃にも頷ける。 家を出るときに嫌でも事故現場が目に入った。なんせ出てすぐ左で野次馬の垣根が出来ていたから。 「南無……」 俺は合掌してそう呟くと、とっとと学校に向った。 中学の時に見た最悪の光景と似ていたからか、足並みは落ち着かず、早めようと思ってもなかなか出来なかった。 朝起きると、布団がはげていた。五月半ばとはいえこの愚行、けっこう寒かった。 とっとと着替えてキッチンへ下りる。すぐさま温かい味噌汁をすすった、美味い。 卵焼きを食ってみる。醤油じゃなくて、ちゃんと出汁を使ったものだとわかった。 あいつの料理はどんどん昇華している。いい嫁になる素質があると思うと、兄としては安心だ。 「ご馳走さん」 「はーい、お粗末さまー」 片付けぐらいは手伝ってやった。流石に任せきり気分が悪い。 時間の掛かる沙希の身支度を寛大な心で待つ。別に気にせんでも十分だと思うんだが、女の心はわからん。 お決まりのドタ音が聞こえたところで俺は玄関の淵から腰をあげた。爪先で地面をつついた。 「んじゃ、いってくる」 「いってきまーす!」 「はい、いってらっしゃーい」 玄関を出てすぐに、左手に見える大きな榊の木に顔を向けた。 「父さん、いってくる」 同じ名前のその木から、いつも見てるんだろう? すると突風が吹いた。深緑の葉と白い花が、俺と沙希の制服についた。 互いに顔を見合わせて、なんとなく笑い合った。 なにげない、朝のできごとだった。
自分でもなにが書きたかったのやら、良くわからない次第で御座います
ただ「何があっても朝は始まる」的な事を書きたかったのか、かけてたら嬉しいかもしれない
ちなみに親父さんの名前が不自然なのは気にしないで下さい、お願いですから
ではでは...