手に手に主武装のサブマシンガンを携え、取り囲むように接近する三つの敵機。 こちらの兵装の射程外から包囲し、三方向から狙撃するつもりでいる敵の挙動を読み取ったスベロアは、長引くと不利だな、と判断を下した。 今も多数の農民が暮らす村にその機体は駆け抜けていく。 黒く塗装されたチタン合金で覆われた装甲に、人工筋肉が搭載された厳つい四肢。 頭部のデュアル・センサーはエメラルドグリーンに輝き、駆動部分は絶え間なく騒音を立てている。 その姿はまるで黒い巨人と言うべきであろうか。全長16mにも及ぶ「それ」が一歩進むたびに、畑に巨大な足跡がついた。 その黒い機体を、塗装も終わっていないような白色装甲が目立つ三機が追っている。 スベロアがコクピット側面のスリットにあるレバーを手前に右手で引くと、機体の背中に装備されたバーニアが素早く反応し、姿勢制御を行った。 前方に三つのモノアイを確認するや否や、機体のオペレーションシステムが敵機にロックオンをかける。 しかしスベロアは引き金を引かず、機体を低くかがめながら再びバーニアを吹かし、敵機とすれ違いになるように動いた。 それに反応した敵機が姿勢制御をかけたときには既に時遅く、再び振り向いたスベロア機からのレーザーロック警告が機体に赤ランプを点していた。 スベロアは金属自動照準を使いながら、機体の右腕に装備されたライフルの引き金に手をかける。 「前に出てくるから!」 口の中で言ったその言葉に続くように、低くくぐもった音が戦場に響き、銃口からまるで光球のような弾が発射された。 その43mmケースレス弾は音速を超えて直線に飛ぶと、敵機の頭部に直撃する。頭部は、独特の金属音とともに、トマトが潰れるように砕け散る。 指揮系統を失った機体胴体部の核ジェネレーターが暴走し、数十万ボルトにも及ぶ電流を放出しながら、耳をつんざくような音を立て爆散。 ジェネレーターから放出された炎により、さながら煙幕のように視界がくもった。 相手の機体が見えなくなったことに動揺した敵の一機がうかつにも前進すると、 その機体の側面の煙中から黒色の腕が現れて敵機頭部を鷲掴みにし、続けてその胴体部側面に強烈な膝蹴りを入れた。恐らくコクピットには凄まじい衝撃が走っただろう。 機体自体は破壊されていないものの、衝撃波によってパイロットが気絶したその敵機は、まるで魂を抜かれたかのように動かなくなった。 「退けよ!」 なおも突進してくる最後の一機に向かって、スベロアは決して相手には聞えない言葉を放つ。 敵機のサブマシンガンが火を吹き、続けて両肩部のミサイルランチャーから誘導弾が飛び出した。その刹那、スベロアはレバーを力いっぱいに引き、縦から横に倒す。 背部のバーニアが最大出力で稼動、その姿から通称「イーグル」と呼ばれる機体が、サブマシンガンの弾丸を何発か受けながらも、その巨体を宙に浮かせた。 誘導性の低いミサイル弾は目標を見失い、数秒前までイーグルがいた空間を通過し、爆発する。 その間に、イーグルは左腕部と同化している大口径の銃口を敵機に向けた。 胴体のジェネレーターから左腕部へ高圧電流が送られ、黄金色に発光するイーグル。 一瞬目標を見失っていた敵機がそれに気付き、バーニアを吹かして距離を取ろうと後退するが、 上空数十メートルから狙いをつけるイーグルからは逃げられるものではないと判断し、対光学兵器対策が施されたシールドを構えて防御体勢をとった。 「そんなもので、防げるものかよ!」 その咆哮がイーグルのコクピットに反響するや否や、目がくらむような光を発しながら左腕部から電流弾が飛び出す。 空中で安定を保っていたイーグルの機体が反動で大きく揺らぎ、スベロアは落下しそうになる機体をマニュアルで操作し、なんとか飛行状態を保つ。 電流弾は敵機のシールドに命中すると、シールドを焼き溶かし、そのまま敵機もろとも貫通し、地面に激突した。 直撃を受けたシールドはもちろん、ぽっかりと穴が開いた胴体部までも赤く発熱し始めた。爆散はせず、そのまま崩れるように最後の一機は倒れた。