064:毒 『エエアアアァェィァェアアアア』 声が、聞こえる。その声は、海の上を良く移動するなら誰でも耳にする。 勿論、それはあの奇妙な少年少女たちも例外ではない。 「……まーた出てるの? あのアムズン島」(アメーバガールのハルカ) 「これで何十回目なんでしょうかね?」(幽霊少年のヒカル) 「さぁな。それにしても相変わらず元気に泳いでるなぁ」(ヒト+モノ÷2なユウト) 「大きさは前と左程変わらないな」(野生児少女のクラウド) 「大きさはアレが最高クラスらしく、あの大きさ以上になった事はございません。ですが人肉反応が増えています」(ロボットガールのセイナ) 「……言うな。そういうグログロ反応は言ったらあかん」(普通人間カリヤ) 今回は六人とも買い出しに行っているのだが、この汚れた世界特有の名物を海上で見つけてそれぞれ好き勝手コメントしている。 彼らの視点の先にあるのは、島。様々なモノで出来上がった、島。 『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』 島から聞こえてくるのは複数の声。ヒトの声、モノの声、沢山の声。 その島の大地は機械、モノ、機械、モノ、土でも木でも無い。そう、モノ。 この島は汚れた世界の被害者達の集い。 「……何か俺の家族よりも悲惨だな、あの島」 ユウトがポツリと呟いた。その言葉に少年少女達は同意する。 最初にその言葉に返事するのはリーダー格のハルカ。 「確かにね。アレはヒトのツミのアカシなんじゃないかしら?」 その皮肉は、とても合っていて、けれども認めたくないね。 ヒトであるカリヤはその言葉に対してこう言った。 「あんなぁ、そんな事言ってもどないせぇ言うねん?」 そう。最早この世界は手遅れ、汚れきってしまっているのさ。 もう一人のヒトであるクラウドは首をかしげながらこう尋ねた。 「あの島、もう戻せないのではないのか?」 世界の歴史は長い。それ故に戻せないものもある。 モノであるセイナはクラウドの問いに頷きながら答えた。 「はい。核を破壊しない限り、あの島は消えません。そして、高確率で戻る可能性はありません」 残酷なのは何なのだろうか。戻るというのは何なのだろうか。 ゴーストであるヒカルは苦笑しながらこう言った。 「僕と同じ亡霊なんですね、あの島は」 そう、あの島は歴史であり亡霊であり、悲劇の象徴。 ――――アムズン島。 それは世界が汚れ始めて生まれた島、それは世界地図から見ればとても小さな島。 だけれどもそれはアムズン感染者達がモノとなってしまった集合体の成れの果て。 その成れの果ては生きていて、海の上を動いている。涙のような声を流し続けながら。 誰が核なのか分からない、ヒトの肉とモノだけで出来た島。 何故あるのかは誰も知らない。 ただ、言えるのは、アムズンという毒の被害者であるということ。 『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』 アムズン島は今日も涙を上げている。アムズン島は今日も動いている。 アムズンの被害者達は今日も動いている。