071:幸福 何時もいる島から離れた大陸と呼べる島、その島で何時も行ってる街を見下ろせる小さな丘。 カリヤとハルカはそこにいた。 カリヤがハルカをリードしてここに連れてきたのだ、ハルカもまんざらではないらしく彼女は街が見下ろせる位置から景色を眺めながら少しうっとりしたように呟く。 「こうして見ると中々良い景色ね……。キメラとかロボットとかで汚れてしまった世界とは思えない」 ハルカの隣で景色を眺めていたカリヤはハルカの呟きを聞くと自分も口を開く。 「ほんまやなぁ。お天と様は神様みたいなもんやからな、どんなに汚れた世界でも見捨てへんのや」 「でも人を助ける事はほとんど無い。本当に神様は天気よね」 何時もとは違う悲しいような切ないような表情で答えるハルカ。 カリヤはそんな彼女の横顔を見て、痛々しさと弱さを感じてしまう。そして思い出す。 ――――ハルカは、この汚れた世界で生まれた存在だということを。 アメーバン、ヒトが作り出した新たなる生命体。 動物でも植物でもロボットでもない、けれど知識を持ち形を作り生きる事の出来る存在。 恐らくヒトの科学力で史上最大級の成功作品であり、失敗作品であろう。 そのアメーバンが最も多く増殖したのは世界が汚れだしてから、ハルカもそうやって生まれた。 その事を思い出してカリヤは少しだけ目をつぶり、ゆっくりと開きながらハルカに声をかける。 「…………なぁ」 「何?」 「お前、アメーバンに生まれて幸せやったか?」 強気な笑顔を振り回せる彼女に問うには重かったかもしれない、カリヤはそう考えてしまう。 だがしかしその問いを聞いたハルカの答えは思っていなかった答えだった。 「えぇ、幸せよ。アメーバンだからこうやってあたしはカリヤと出会えたから」 その言葉にカリヤは大きく目を見開いた。 遠まわしだけれど、その言葉は――――――――。 ギュッ 抱きしめていた。いつの間にかカリヤはハルカを抱きしめていた。 いきなり抱きしめられたハルカは一瞬呆気に取られたが事態を飲み込むと顔を真っ赤に染めながら声を上げる。 「え!? ちょっ、いきなり何すんのよ!?」 「抱きしめてるんや」 「あたしが聞きたいのはそこじゃなくて……!」 よっぽど免疫が無いのか恥ずかしがっているハルカにカリヤは可愛いと感じながら、小さな声で、けれど彼女に聞こえるようにハッキリこう言った。 「わいはお前が好きやから、お前を抱きしめたんや」 それは愛しい愛しい少女に送る言葉。 「カリヤ……。あたしも、あんただけだからね……。こうやって抱きしめられるのは……」 少年と少女は雪降る聖夜の中、口付けをかます。