―――其の昔、存在していた大男の話。

彼は、ある少女を愛していた。

そして其の少女も、彼を愛していた。

然し其の大男は少女を護るため、

己の躰を犠牲にした。

総てを棄てた大男に、

少女は何も云えなかった。

然し、深い嘆きに溺れた彼女は、

其の情のあまり―――死を選んだ。

 

大男は、

巡り廻る時代を、

呪われた其の絡繰の身で、

男爵として彷徨していく。

 

――― 此れこそ、古の巨人と少女の物語 ―――

 

† Beautiful Dreamer †

 

 総てが消え失せ眠りについた、密やかな時間。

満月が帝王として君臨する、闇。粗雑に鏤められたガラス片が光に反射しているような、星達が瞬いている。

―――何処、なのかしら

瓦礫を踏み分けるようにして、慎重に歩を進める少女―――めばえ。崩れた町の残骸を掻き分け、如何にか足を踏み出した。

地震か何かで砕けたのだろうか、ある一角の家の大黒柱は総てくの字に折れ曲がっている。其の中には、眠れる骸。

彼女は柳眉を顰めながら、更に先へと眼を向けた。

 ・・・未だ少し先に、異形のものがあるのが、解る。

遥か彼方には山々の稜線。然し其れよりも目立つ、大きな、『もの』。

月明かりを頼りに、不安定な場所を越えていく。運動神経は悪い方ではない。

一心不乱に『其れ』を目指す。何かに引き寄せられるように。

だが、やはり暗い。めばえは足を滑らせ、悲鳴を上げた。

「い・・・った・・・た・・・」

ぶつけた踝をさすっていると、気配を感じた。突然世界が翳る。彼女は顔を上げた。

すると其処には。

自分より、明らかに大きな・・・というより、比べるには桁が違い過ぎる存在だった。

真っ黒な、電球型の頭。背後からの月明かりが透けている。瓶のように綺麗な乳白色の半透明の躰。抽象画らしい月・星・光・太陽のモチーフ。長く伸びた手足、両肩には植物が這っている。薄紫の花が咲いていた。

めばえは、躰が動かなくなる感覚を抱いた。動かせないのではない。動きたく、ないのだ。

其の大きな手を伸ばし、めばえを『拾い上げる』巨人。視界がみるみる高くなる。

「あ・・・。」

巨人は、めばえを愛しげに見つめた。

正しく云うのなら、瞳があるわけではない。

それどころか鼻も口も、人間の『顔』の一部であるべきパーツが、一切無い。

単純に。巨大電球を取り付けたらしい其の頭は、幻想的な輝きを放っていた。

めばえは、自身の中の感情に戸惑っていた。何故。こんなにも、懐かしいのだろうか。

心臓が僅かに、強く脈打った。知っている。わたしは、"彼"を知っている―――

そして其れは、確信に変わる。彼女が意識しないうちに、唇が開いていた。

「キリコ―――」

巨人の名を口にすると、刹那、ぼんやりと幻影を見た気がした。

蒼白い、あまり健康とは云えない肌。鋭い眼の周りには、黒い痣。通った鼻梁、小鼻を越えた先にある、薄い紫の唇。

まとまることを知らないようなショートヘアは、方々にはねている。精悍に、整った顔。

其の幻影はあまりに一瞬で―――其れでも、めばえの中に残った。

『見つめ』合う。

何も聞こえない。

誰も居ない。

肌に感じる風だけが、柔らかく頬を打つ。少し、寒かった。

自身を抱き締めているめばえを見て理解したのか、彼はそっと左手で壁を作った。小さな部屋のような空間が生まれる。

とても穏やかな目をしている、そんな気がしていた。めばえに、キリコの表情が『こうだ』といえるわけではないが。

考えているのではないのだ。感じている。

「あ・・・」

気づけば、其の手に頬を寄せていた。冷え切った壁。然し何故だろう、温もりを感じた。

言葉は、要らない。

求め合っている、其れを感じている。

答えは其処にある。

沈黙。遠くから聞こえてくる、小さな虫たちの騒ぐ声。脆弱、といっても過言ではない。

 不意に、両手に包み込まれる。暗闇。だが、とても・・・暖かい。

「もう・・・何処にも往かないで・・・・・・・・。」

瞼を閉じる。そして其の侭、手の中へと倒れ込んだ。

キリコは其れを、確かに聞き届けたようだった。大きく、頭をふって頷く。

温もりに甘えるようにして、めばえは微笑んだ。・・・と。次の瞬間。

 掌から何かが、滲んできていた。

蒼白く発光する其れは、優しくめばえを包み込む。彼女も大した抵抗はせずに、其れを受け入れた。

キリコの、回路だった。機械となってしまった己の躰では、こういう形でしか―――彼女を、抱くことができないから。

中で光は、人型へと変貌する。頭、躰、という程度の見分けしかつかない其れであったが、間違いなく、生前のキリコの姿だった。

強く、抱き合う。そして、また光は融け、今度は触手状に伸びる。めばえのワンピースをそっとたくし上げ、下着姿にさせる。豊満な肉体だった。

レースのブラジャーへと、伸びる触手。軽く引っ張って千切ると、めばえの豊かな双乳が露になった。真っ白な雪原を想わせる果実に、小さいものの存在感のある蕾が乗っている。すっかりと勃ちあがって主張していた。

根元から絞り上げるようにして、触手が乳房に絡みついた。先端も細く分かれた其れが、突起を絶え間無く撫で上げる。

「・・・あ、やんっ・・・あ・・・あんっ・・・」

暫しの時間、身悶えざるを得ない。美脚にも触手は絡みつき、抱き上げている。腕にも其れは絡み、白魚のような手にさえも握られていた。

めばえの柔らかな乳房を、飽く迄やわやわと揉み続ける。マシュマロを子供が手の中で転がすように、優しくだ。

口内も勿論、彼の一部に犯されている。喘ぎ、悶えながらも、めばえは其れを受け入れた。

興奮してきたのか、他にもあった触手は、めばえの豊乳を強請った。態々と其の長さを伸ばし、胸に挟み込ませる。唾液と、欲望の液体が、素肌を汚した。

スムースに進む奉仕。咥え込んだもの、掌で擦るもの、胸を嬲るもの、そして焦らすようにショーツを突つくもの、と分かれており、めばえはひとつひとつの愛撫に悦んだ。

「んむぅ・・・ふっ・・・ぅううん・・・」

口の中いっぱいに広がる其れは、確かにキリコの味がした。とても満たされた、暖かい想いとは裏腹に、欲望の炎は燻っていく。

・・・突如、胸の中に居た触手が暴発した。白濁液が、めばえの胸では収まりきらず、乳房全体にまで飛び散る。濃厚其のものだった。彼女の感触に耐えきれなくなったのだろう。

触手は其れを、塗りたくるようにめばえの躰へと撫でつけ、其の匂いを染み込ませた。想わず興奮してしまう。めばえは懸命に、奉仕を続けた。

続いて、手の中のふたつのものの亀裂に、じわりと半透明な液体が滲んでいるのが見える。放出。勢い良く飛び出た其れは、顔面をどろどろに汚した。

「んむ、ぷぁ、ああ・・・」

とろんとした目のまま、めばえは口内のものへの奉仕を忘れてはいなかった。激しく舌を使い、時に優しく歯を立て、吸い上げ、持て得る限りのテクニックを駆使し、キリコを悦ばせた。

めばえの舌は、温かかった。其の事実が、キリコを更に追い詰める。弾け飛ぶようにして、精液が溢れた。

嚥下しようとするが、あまりの量だ。口の端から零れ出る。

乳房を激しく揺さぶられ、嬲られ、弄ばれる度、めばえの感度も上がっていった。被虐趣味のきらいがあるのかも知れない。

遂に触手は満足しきれなくなり、めばえの下着へと侵入した。あっ、と短い声をあげるも、めばえの唇は再び塞がれる。今度は、キリコの唇だった。先程含まされた其れとは違う、キスの味。

めばえの花園を、そっと開かせる。陰毛を掻き分けた先にあるのは、薄桃色の花弁、そしてパールピンクの陰核だ。

其処は既にしとどに濡れそぼり、ぱっくりと口を開いていた。キリコを待ち望んでいるように。

「んむ、ぅうっ・・・あふ、ね、きて・・・きて・・・」

腰を振って強請る彼女が愛しくて、たまらなかった。キリコは少しだけ微笑んで、背後から抱き締めた。

だが其の間も、他の壁から出ている触手はめばえを弄んだ。特に、愛液の溢れる蜜壷、過敏な反応を見せるクリトリスに人気が集中する。無論、乳房は揉みしだかれるまま、だ。

快楽の総攻撃に、めばえは仰け反って喜悦を表した。全身に光る脂汗が、苦悶を物語っている。異常な快感。

「んむぅうっ・・・!!!」

潮を噴き、絶頂を示す。漏らしてしまったと錯覚する程激しいものであったにも関わらず、キリコは手を休めなかった。荒くなっていく息、溢れ出る涙。めばえは首を振ってキリコに哀願する。

「あぅん、キリ、コ、っ、あ・・・あん、あん、あっっ」

小刻みに震えあがり、よがり狂う。

甘く熟した桃尻をさすりながら、キリコはめばえの耳へと息をふきかけた。其れだけで鳥肌がたち、同時に快楽へと変貌する。

「あぁああ、だ、だめえ、ああ、ああっ、いい、いいっ」

矛盾した言葉が口をつく。肉体の制御がきかないのか、涎は垂れ流されていた。

そんな淫らな姿でも、キリコは彼女を愛した。寧ろ、可愛くて可愛くて仕方がなかった。

「ぃひぃい、ああ、ああんんっ、お、おねが、き、きて・・・っ」

必死に指先を伸ばし、自身の秘部を広げる。震える場所は、既に蕩けて陥落していた。

―――・・・いくぞ。

低い声がした。

めばえを嬲っていた触手が総て消え、背後から抱くキリコの姿勢が変わった。四つん這いにされ、腰を掴まれ、先端を埋没させはじめる。雁首までが入ると、一気に貫いた。

「んぁあ、ああああぅ!あああっ!!」

乳房を掴まれ、後背位で犯される。まるで獣のまぐわいのようだ。

腰を叩きつけながら、キリコは只管動いた。めばえを絶頂から下ろさないために。

其の甲斐あってか、彼女は此の世のものとは想えぬ快楽を手にしていた。淫猥にくねる己の膣壁は、驚くほどの精液を零さなかった。

「あひっ!あう!あん!」

彼女を、もっと。もっと愉しませたい。

そして、自身も愉悦に浸りたい。

キリコの中に、そんな邪で―――然し純粋な想いが、生まれた。躰を一度溶かし、めばえの下へと滑り込む。勿論挿入はしたままだ。

彼女は少し驚いたようだったが、其れ以上に秘所から送り込まれる快楽に耐えるのに必死だった。喘ぐ吐息も切れ切れに、めばえは更に悶える。

 ・・・下からの激しい突き上げに翻弄される彼女の目に、信じられないものが飛び込んできた。

壁からもう一人、キリコが現れたのだ。精液でねばついためばえの髪をそっと撫で、そそり立った怒張を突きつける。疲れの見え始めた、其れでも休むことを赦されない彼女の唇は、最早逆らわなかった。もう一本の肉竿を、愛しげに奉仕する。うっとりと見つめ、激しく舐めた。

然し、未だめばえへの責め苦は終わっていなかった。恍惚とする彼女を、更に追い詰める事態が発生した。

背後に気配を感じたかと想うと、其れは、とても優しく、感じ過ぎるめばえの躰を撫で始めたからだ。

そう、もう一人、幻影が現れたのだ。

正しく云えば其れは幻影ではない。めばえと確かに交わることの出来る、キリコの"一部"なのだ。

「んふ、むぅうううっ!!」

めばえの全身をぬめらせ、てからせる樹液をひとすくいすると、やはり彼女の小さく皺の寄った菊座へと塗り込む。

直腸に、骨ばって節々の出た指の感触が、伝った。彼女を、苦しめないよう。飽く迄、快感の為に。

「んむ、ぅう、うううっ!!」

絶頂へ昇らされっぱなしの肉体は、抵抗できるだけの余力など残してはいない。一抹の理性も、秘孔に肉塊の入り込む刺激によって撃ち砕かれた。

気持ちいい。

めばえの躰は、総てを受け入れた。

そう、キリコの何もかもを。

崩壊しそうな自我を限界まで保ちながら、愛し合う。

先程からもう、息をつける瞬間がなかった。快楽のみに溺れる。

めばえの脳髄は、性感に灼け爛れていた。

―――出す・・・っ

短い声が聞こえた。

一斉に、キリコ達が腰を沈める。一枚の皮越しに擦れ合う肉棒も、口内にくまなく入り込んだ其れも。

同時に、めばえの中へと放った。

「あ、あ、ああああああああふぅうううううううっ・・・・・・・・・・!!!!!!」

真っ白い液体に汚されながら、めばえは悶絶した。

そして、瞳を閉じる。涙が流れた。息が荒過ぎて、調えられない。

―――めばえ

間髪入れずに、声がした。びくんっ、と反応してしまう。

―――済まん、やり過ぎたかも知れん

先程の、穏やかな中に残酷さを感じさせる声ではなかった。寧ろ、低く恐ろしい、と云いきるにはあまりに愛らしい響きを秘めている。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ん・・・あぁ、はぁ、はぁ・・・」

全身が戦慄いて、動かない。返事も出来ない。激しい快楽の余韻に浸るめばえ。

―――愛しているんだ

彼女は必死にもがき、ひとつの影となったキリコへ、懸命に腕を伸ばした。

驚いたような表情、に見えた。霞む景色。

―――もう、離れたりしないから・・・・・・

接吻。其れは、めばえが意識できる限りでの、最後の言葉だった。

 

 

 気がつくと其処は、ベッドの上だった。上体をゆっくりと起こし、確認する。

間違いなく、ジズの屋敷だった。

隣には、既に目覚めた主が座っている。心配そうな顔だった。

「如何しました?めばえ―――」

夢、だったのか。

総てが幻だったのかと、めばえは少し、安堵を覚えた。

然し。

何故か、涙が、溢れた。

懐かしく、愛しく、切なく、そして―――哀しい夢。

ジズは僅かに眉をひそめ、面白くなさそうにしていた。

だが、夢にまで嫉妬しているのを知られるのは癪に触ると、めばえをぎゅっと抱き寄せる。

―――離さないで。

めばえがたったひとつだけ、伝え損ねた言葉。

 

絡繰の想いは、果敢無く、今も、此処に。





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いやー書いちゃいましたキリめばエロv(死)
メッセでたいまー様とキリめばについて盛り上がり、パッションを刺激されましたので(笑)一気に書き上げてしまいました♪
途中までは愛を込め、途中からは悲哀を求めました。
少しでもお気に召される方がいらっしゃったら、とても光栄ですv
わたしにしては甘々な作品に仕上がって、満足(笑)

 

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