喧嘩
「うるさい!もう私の事など嫌いなのだろう!?」
「違いますザトー様!決してそのような事は!」
いつもの喧嘩。原因はすれ違い。
ヴェノムが自分の部下の一人と楽しそうに話していたのを見て気に入らなかったらしい。
「もういい!!!出ていけ!!!」
「ザトー様っ!」
「おまえの顔など見たくない!!!2度と私の前に表れるな!!!」
「ッ!!!」
「早くいけ!」
「…わかりました…もうしわけありませんでした…ザトー様…」
一例して出ていく。ヴェノムはうなだれている様子だが、頭に血の上ったザトーには解るはずがない。
「ヴェノムのバカヴェノムのバカヴェノムのバカ」
顔をまくらに押し付けて、呪文のように繰り返す。
こうしてその夜は眠りにつく。
二日目
朝になる。ザトーはいつも隣にいるはずの人に腕を延ばしたが、そこには誰もいない。
昨日の事を思いだした、のろのろと起き上がる。
ヴェノムはザトーが起きる一時間前から、すでに任務にでかけている。
こうでもしないと、落ち着かない。今から自分はどうしても顔を会わせなければならない
時以外は、ザトーと会わないようにしなくてはならない。
そういう命令をうけたのだ。
自分がいけない、ザトー様に不快な思いをさせてしまったのは自分なのだから。
自分を呪いながら、せめて少しでもあの方のお役にたつようにと、任務をこなす。
仕事にまったく手がつかない。ザトーは温室の方に足を運んだ。
少しは落ち着く。しかし、それでも昨日からの出来事が許せない。
愛しい人が自分以外の人に優しくするのは、耐えられない。
自分に自信がないから…
自信がないから、他の人に取られないかと、他の人が好きになるんじゃないかと…
不安でしかたがないから、怒鳴り倒す。
本当にいけないのは…そんな自分なのに…素直になれない自分なのに、
この時点ではそれを認められない。
仕事が終った夜の報告には信用をおける部下にいかせた。
当然だ、もう自分とは会いたくないと…そうザトー様がおっしゃったから。
余ってしまった時間をどうしようかと考える。
いつも時間があれば、世話をやいていたから、どうしていいのか解らない。
ふと読みかけの本があるのを思いだした。
読もうと手を出したが、思い止まる。
『ヴェノム、この本…読んでくれませんか?点字の物が見つからないので…』
一緒に読んでた本だった
『続きは、また今度読んでください。…先に読まないで…一緒に読んでくれますか?』
…もう逢わないなら…その約束もなくなるのだろうか。
少し考えたのちに、違う本を探す事にした。
また逢えるかもしれないという甘い考えがあったわけじゃない、
先に読むなという約束を果たしただけだ。
ヴェノムは表れなかった。当然だ。
「ヴェノムの……バカ…」
寂しさで押しつぶされそうになる。
なぜ来ない
部屋に行って問だしたかった。
そんなに自分が嫌いになったのか?
来るなとは命令した。命令したが本当は来て欲しい。
天の邪鬼の気持は忠誠な部下には伝わらない。
一週間後
夜。ザトーは仕事をおえてからヴェノムの部屋の前に立った。
ノックできない。
もう三日前から何度も扉の前に立っては戸を叩かずに帰った。
今日は、意地よりも、見栄よりも…寂しさが勝ったので扉を叩いた。
その音が、心臓の音と重なってひどく大きく聞こえる。
「はい?」
一週間聞いてなかった声。その声を聞くだけで更に心臓の音が大きくなった気がする。
「私だ…」
声は震えていたが、ヴェノムは驚きで気付かない。
「今開けます!」
久々に最愛の人の顔が見れる。
「ザトー様、どうなされたのですか?」
優しくたずねるが、本人は黙ったままだった。
「お茶をお入れしますので、お入りになりませんか?」
うなずいて、イスに腰をかける。
言いたい事は沢山あった。お互いに沢山あったが…ヴェノムがお茶を入れる音しか響かない。
「どうぞ」
前に出された紅茶を少し飲む。
「あの…」
「なんでしょうか?」
どうしてヴェノムはさっきからこうも落ち着いているのだろう?
どうしてこんなに穏やかに笑っていられるのだろう?
ザトーは気付かない、ヴェノムは自分と居られる時間が何よりも好きなのだ。
だからこんなに穏やかでいられる。
でも、それには気付かない。気付かないから、イライラする。
自分はずっと逢いたいと思って辛かったのに、相手はそう思ってなかった。
間違えた解釈をしたのち、怒鳴りつけた。
「なんで私を避けるんだ!?そんなに私が嫌いか!?」
「えっ?そういうわけでは…ザトー様の前に表れるなとおっしゃられたので…」
自分は命令に忠実にしたがっただけ。相手はそれが面白くなかった事に気付いていない。
「嘘だ!!!おまえは私に逢いたくなかったんだ!」
自分だけ寂しい思いをしてた悔しさをぶつける。
決してそんな事はないのに。
「ザトー様誤解です!私はずっとあなたに…っ!」
「じゃあなんで来ない!?嫌いなんでしょう!ヴェノムは私がどうなってもいいのでしょう!?」
「ザ…!」
「私の事など嫌いなんだぁあああああ!!!!」
ありったけの声で叫んで泣き喚く。今までの気持が押えきれなくなった。
自分のつけてる眼帯では水分が吸いきれないので、頬にもその涙がつたう。
「ザトー様…」
命令を守ったせいで、相手に辛い思いをさせた。二度までも自分の愛する人を傷つけた。
そんな自分が許せない。だが、自分を叱咤する前に、しなければならない事がある。
「ザトー様…愛しております…」
相手を強く抱きしめる。耳元であやすように、優しく何度もその言葉を繰り返す。
「愛しております…」
久々に温もりを感じて…この温もりを逃がすまいとしがみつく。
しがみついてすすり泣く。考える余裕などない、思った事しか口に出てこない。
「…ずっと寂しかった…ずっと、ずっと…ヴェノムが来るの待ってたのに…
来ないから…嫌いになったのかと思って……うぅっ!」
思い出すとまた寂しくなる。また泣き出す。
「ザトー様を嫌いになるはずなどございません…あなたに嫌われようと…
私はあなたを愛しております…」
愛しい人がこれ以上傷つかないように、優しく髪を撫でて、そっと頬にキスを落とす。
「じゃぁ…どうして…来なかったんだ…」
「ザトー様が…私の事を嫌いになられたと思ったので…もう逢いたくないかと…」
「嫌いになるはずないだろ!バカァ!!!」
「申し訳ありませんザトー様…」
「バカ…バカァ…!」
理不尽なのは自分だと気付いている。ヴェノムは自分の言った事をかならず守るのだ。
それでも来て欲しかった。それが我がままだと解ってる。自分が悪いと解ってる。
それなのに謝ってくる。
「バカっ」
自分と相手にその言葉を言い放つ。
「本当に…申し訳ありません」
今だにザトーはヴェノムに強くしがみついて離れない。
離れたくない…だから、少しだけ素直になってみる。
「…ごめんなさい…」
「えっ!?そんな、ザトー様…これは私が…」
「嘘ついて…ごめんなさい…本当は一緒にいて欲しいんです…」
「ザトー様…」
「…ずっと…一緒にいてください」
そうしてくれてさえいれば幸せなのだ。それが壊されそうに思えて取り乱したのが事の始まりだ。
「はい…ザトー様…ずっとお傍におります」
もう一度、その約束をする。今度こそ、守れるように。
***
急にザトーが素直になりすぎた気もするが…まぁよし!(笑)
なんか説明だらけの文だねぇ。こういうストレートなのもおもろいかなぁと(たんにそうでも
しないと書けないんだろ…)まぁね。
後書きいらんほど説明だらけ(笑)
まぁ、でもこの二人はこういう喧嘩をしょっちゅうしてるんじゃないかと(爆)
まぁ、喧嘩するほど仲が良いのだよ!
読んでくださってありがとうございました!感想なぞがございましたら掲示板かメールで
お願いします〜。