向日葵のように

「おーい、パティ!」

 名を呼ばれたパティは、声のした方へ歩いて行った。
 その声には、聞き憶えがあったから。

「なぁに、レスター?」

 声の持ち主を見つけて、自分の存在を知らせる。
 こちらを向いた顔は、何となく嬉しそうだった。

「よぅパティ、こっちだ」

 椅子にも座らずに立っている。すらりとした長身。
 手が何かを隠し持ってる様な気がするのは、気のせいかな?

「レスター、なぁに?」

 気にはなったけど、それに気付かぬフリをして呼びかける。
 パティはレスターの顔を見つめた。

「パティ…えと」

 顔と裏腹に、コトバの方はハッキリしない。
 視線が虚空をさ迷ってる。

「どしたのよレスター? なんかヘン」

 パティのキツイ一言に、レスターが少し憮然とした顔になる。
 しかし、すぐ顔を引き締める。

「パティ…これ」

 決心したように、レスターが手に持っていたものを差し出す。
 ―――そこには、向日葵の花。

「わあっ! レスター…これは?」

 喜びに輝いた顔に、ふと疑問が浮かぶ。
 戦火に荒れた野では、向日葵など見かけないのに。

「ミレトスの市場には、何でもあるからな…」

 そう言って、レスターは笑った。
 パティの顔にも、笑みが浮かぶ。

「そうなんだ…レスター、これをあたしに?」

 問いかける声が弾むのを感じる。
 花を贈られたことなど、今まで無かったから。

「ああ。パティには向日葵が似合うだろうと思ったから」

 レスターがまた笑う。
 その顔が少し紅くなっているように思えた。

「そう? そうなのかな…」

 自分では良く分からなくて、パティは返事が出来なかった。
 手にした向日葵を見る。

「パティの笑顔は、いつも眩しいから…まるで向日葵のように」

 レスターの台詞にびっくりして、パティは顔を上げる。
 そこにあったのは、酷く真剣なレスターの瞳。

「……レスター」

 視線がぶつかって。
 …パティは、にっこりと笑った。

「ありがとうレスター…あたし、嬉しい」

 その素直な言葉に、レスターもにっこり笑う。
 とても、嬉しそうに。

「パティが喜んでくれたのなら、俺も…嬉しいよ」

 パティはそんなレスターの袖を引く。
 少し悪戯めいた表情で。

「えへへ…ねえ、レスター」

 袖を引かれて、レスターは身体を屈める。
 突然のパティの行動に、訝しげに。

「どうした、パティ?」

 パティは背伸びして、レスターの耳に唇を寄せる。
 にっこり笑って、囁いた。

「じゃああたし、ずっとレスターの隣で、笑ってるからね!」

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