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オスカーはランディを捜す為にしばらくこの館に滞在することをアンジェリークに許された。
アンジェリークも、ランディのことが気がかりと言った様子だった。
でもオスカーの頭からはすべての疑惑が消えたわけではない。
あのランディが彼女のもとを本当に去ったのなら、町に帰ってきているはずだ。
だが彼は帰ってはこなかった。
ランディはオスカーほどではないが、剣の腕は確かなものだ。
その彼がどうして姿を消してしまったのか。
オスカーはアンジェリークが噂どおりランディを殺したのではないかと考えていたのだ。
だがそれは疑いであって、確信ではない。
その確信を得る為にオスカーは証拠をどうしても探さなければならないと思っていたのだ。
そうでもしなければオスカーの心はどうなってしまうか予想がつかず怖かった。

 

まず最初に手をつけたのはこの館の中だった。
もしランディが殺されたのなら、その死体は地下室にあるか、そこに埋められた可能性が高い。
オスカーは館の散策をしている振りをして、地下室を捜した。
だがあいにくこの館には、地下室と呼べそうなものはワインクーラーと、書庫だけだった。
その部屋の床はすべて石畳で出来ていて、掘った後は見られるはずも無いし、その石畳もとても重くて持ち上がりそうに無いくらい一つ一つが大きく、そして、隙間無くぴったりとはめ込まれていていたのだった。
それを確認したオスカーは、館の中を諦めて館の周りを探り始めた。
館の庭はよく手入れされていて、とても綺麗で不信を抱くような場所も無い。
よほど巧妙に隠さなければここまで何も無かったようには装えないだろう。
このような人里離れた場所で、人の目をそれほど気にして人ひとり埋めるはずも無かった。
そうこうしているうちに、オスカーはいつのまにか館の裏側へとやってきていた。
そしてそこで、木々の間にひっそりと立つ平屋の建物を発見した。
その建物の入り口には、大きな神鳥をかたどったレリーフが施された扉がついていて、それは固く閉じられていた。
不信を抱いたオスカーはその建物に近寄り、扉を開けようとノブに手をかけた。
ずしりとした重厚感のあるその扉は、思った通り鍵がかかっていてびくともしなかった。
そしてこの建物の様子からして、ここがもうずっと前から使われていないのは明白だった。
オスカーはますますこの建物に不信を抱いた。
どうにかしてここをこじあけられないものかと鍵穴を覗いていると、

「何かご用ですか。」

と不意に背後より声をかけられた。
突然のことにオスカーは剣の柄に手をかけて飛び退りとっさに身構えた。
今まで、何をやっていても背後を取られたことなどなかっただけにオスカーの驚きは大きかった。
そして、そこに立っていたのはオートマターのロザリアだった。
オスカーは急に警戒を緩め、剣から手を離して息をついた。

「なんだ君か・・・。驚いたよ急に声をかけるから。」

オスカーは少々おどけた振りをしてロザリアに言った。
ロザリアの方はというと、まったくその表情を変えることなくオスカーをずっと眺めている。

「ここはご主人様のラボです。鍵はご主人様がお持ちで、もうかれこれ100年は使われては居りません。ここにオスカー様は何かご用があるのでしょうか?」

ロザリアの淡々とした説明にオスカーは肩をすくめて言った。

「いや、ちょっと気になっただけだよ、なんだろうって。まあちょっとした好奇心だよ。すまなかった。」
「いえ。ここはどなたも開けることが出来ませんので、なんの意味もありません。アンジェリーク様でさえここに入ることは出来ないのですから。」

ロザリアのその言葉にオスカーは、降参したように笑ってその場を離れた。
ロザリアはそんなオスカーをまた無表情で眺めていた。

 

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