病院はドキドキ

「あ〜ん、いや、先生だめです。人が来ちゃう。」

艶っぽい声をあげて、アンジェリークはたくし上げられた白衣の裾を一生懸命下げようとする。

「君がいけないんだぜ、お嬢ちゃん。そんな色っぽい格好で、俺の前に現れるんだから。」
「そんな!オスカー先生。看護婦が、白衣着てるの当たり前じゃないですか〜!」

ちょっぴりふくれっつらで、アンジェリークは恋人の外科医のオスカーを睨みつける。

「ああ、お嬢ちゃんは本当に白衣の天使って訳だな。でもお嬢ちゃんの白衣姿はめちゃくちゃそそられる。今すぐ押し倒したい気分だぜ。」

アンジェリークの耳元にささやきながら、オスカーは白衣の上からアンジェリークを愛撫する。

「ああ〜ん。だめだめ先生〜!」
「だめだめ〜も好きのうちさ。ほら、感じるだろ?」
「いや〜ん、だめったらだめ〜!」

今度こそアンジェリークはオスカーを突き放した。
頬を紅ようさせ、肩で息をして、ちょっぴり乱れた白衣をささっと直し、

「もう!オスカー先生のH!」

と叫んで、アンジェリークは小さな舌を突き出してあっかんべ〜をすると、医務室を飛び出した。

「愛しているよ。アンジェ。」

とじられたドアに向かって、オスカーは愛しげに投げキスをした。

 

オスカーはこのヘルス病院の外科医。
ハンサムなマスクと、甘いセリフで患者も看護婦もメロメロにしてしまう超お人気Dr.であった。
すごいのは人気だけではない。
もちろん医者としての腕も一流だ。
ブラックジャックならぬ、レッドジャックとあだ名されているくらいなのだ。
そんなレディーキラーなオスカーをメロメロにしてしまったのが、今年から配属された看護婦のアンジェリークだった。
正に白衣の天使!
柔らかな金の髪に、とろけるような笑顔と大きな翡翠の瞳に見つめられて無事でいられる男などいない。
例にも漏れずオスカーは一目見たときから、アンジェリークにメロメロだ。

「ああ、お嬢ちゃん…。」

オスカーは日に何度もアンジェリークを思って溜息をつく日々を送っている。

 

アンジェリークは男性患者の憧れの天使だ。
患者の間では、彼女に検温されるのがちょっとしたステータスとなっている。
そして、体を蒸しタオルで拭いてもらったり、食事を食べさせてもらうとさらに熱い羨望の眼差しで見られることとなる。

「素敵すぎる。」

ここにもアンジェリークにメロメロになっている男がいた。
先日交通事故で運ばれてきたアリオスだった。

「彼女こそ本物の天使!俺だけの天使にしたい。」

アリオスは某有名電気製品会社の御曹司だった。
彼はホテル並みの特別教室に入っている。
そして、財力に物を言わせて院長に圧力をかけ、アンジェリークを自分付の看護婦にしていた。

「アリオスさん。検温ですよ?」

そして今日もまた天使はやってくる。

「アンジェリークさん。君は本当に白衣の天使だね。」

アリオスは毎回アンジェリークがやってくるとなんやかんやと、口説き文句を言ってくる。
そんなのはオスカーで慣れきっているアンジェリークの反応はいつも焦りがない。

「まあ、ありがとう。アリオスさん。はい、体温計。」

にっこり天使の微笑みでさらりとかわすと、体温計を渡してさっさと病室を出ていった。
アリオスは笑顔に見とれてポワ〜ンとなているまに、すでにアンジェリークはいなくなっているのでいつも舌打ちをするのだった。

 

「先生〜。」

お色気たっぷりの声でオスカーにすり寄ってきたのは、アンジェリークの同僚のレイチェルだった。

「ねぇ〜オスカー先生。今夜お暇かしら。よかったらいっしょにお食事いたしませ〜ん?」

みょ〜に短めの白衣のスカートをススッとあげて、わざと外した白衣のボタンから胸の谷間をのぞかせて、レイチェルはオスカーの机の端に腰掛けた。
それを見てオスカーは魅惑的な微笑みを浮かべて、

「フッ。悪いなお嬢ちゃん。俺のアフターファイブの予約はすでに全て埋まっているんだ。悪いが他をあたってくれ。」

といった。
レイチェルは真っ赤になりながらも抗議の声を上げる。

「オスカー先生はご存知ないかもしれないけれど、アンジェリーク、もしかしたらこれないかもよ。」
「どういうことだ?」

オスカーはとたんに怪訝な顔つきになった。

「だって特別室のアリオスさん。アンジェに岡惚れしちゃって1日中ナースコールしっぱなしなんですもの。アンジェ仕事がたまって残業じゃないの?」

レイチェルは、フンと鼻を鳴らして、いうだけいって医務室を出ていた。
そして、残されたオスカーは、激しい嫉妬と不安にかられていった。