団地住人の秘密

 

今日も今日とてサンクチュリア団地のお閑な主婦達が、公園のベンチで、噂話に花を咲かせていた。
もちろん、いつものメンバー、アンジェリーク、ロザリア、コレット、レイチェルも公園に来ていた。

今日のお題は気になる住人である。

「私、気になってる人がいるのよ・・・。」

コレットがひそひそ話をするようにみんなに顔を寄せた。

「え?!誰よ、誰?」

みんなの顔が興味津々になる。

「ほら、A棟にいる、ヴィクトールさん。あの人なんだかいつも私のこと見てるのよね〜。頬染めちゃってさ!」

コレットはちょっぴり自慢げにそう言った。

「ああ、あの体育教師とか言うヴィクトールさんね?」
「あの人コレットに気があるの〜?」
「ええ〜!いやだ〜不倫?」

好き勝手なことを言う友人達を無視して、コレットはちょっぴりお得意になっていたのだった。

 

<ヴィクトールの正体>
ヴィクトールは某女子高の体育教師だ。
彼はいつも仕事が終わると、急いで家に帰ってくる。
玄関を開けて一目散に自室に向かったヴィクトールは、ドアを開けるなり裏がえった声で叫ぶ。

「ただいま〜!会いたかったよ、ひなちゃわ〜ん!」

ちなみにひなちゃわ〜んなる人物は、今、パソコンゲームではやっている、いわゆる18禁恋愛シミュレーションのキャラである。
ヴィクトールの部屋には、これでもか〜!というくらいそのキャラのポスター、グッズで埋め尽くされている。
やおら、机の上にあるひなちゃんフィギィアに頬ずりをして、鼻の下を伸ばすと、壁に貼ってあるひなちゃん等身大ポスターにくちづける。
ポスターのひなちゃんの口もとだけが、やけにふやけているのはいうまでもなかった。
ロリロリなひなちゃんは、何となくコレットに似ていたり何かする。

 

「私が気になっているのはね。」

アンジェリークが口を開く。

「オスカーには絶対言えないけれど、C棟のリュミエールさんよ。」
「ああ、あのおっとなし〜いサラリーマンの?」
「なんだかあの人儚げよね〜。」

ひとしきりうっとりとする妻たちであった。

 

<リュミエールの正体>
リュミエールは商社に勤める平凡なサラリーマン。
いつも目立たず、質素に暮らしているように端からは見える。
だが彼はある野望を抱いていたのだ。
彼は家に帰り着くと、まずはその堅苦しい背広を脱ぎ、なんだかひらひらした色気たっぷりのドレスに着替える。
もちろんブラもショーツも女物をつける。
そしてやおら、ドレッサーの前に腰掛けると、ずらりと並ぶ化粧品で化粧を始めるのだ。

「うふふ、私ってな〜んてきれいなんでしょう。。貯金も大分たまってきたわ!モロッコへの道はあと少しね〜。」

彼の野望は性転換手術で女になることだった。
めざせカミングアウト!!

 

「私が気になっているのは、オリヴィエさんよ〜。」

レイチェルがうっとりとした表情で言った。

「ああ、あのヘアーサロン(パスハ)のカリスマ美容師の?」
「このカットも彼がやってくれたのよ〜!」
「え〜!予約取れたのすご〜い!」

妻達の黄色い歓声がレイチェルの髪に集中する。

<オリヴィエの正体>
オリヴィエは2丁目のヘアーサロン(パスハ)のカリスマ美容師である。
いつも彼は、流行の最先端の服装にヘアースタイル、メイクを施し、(パスハ)に出勤している。

「カーッ!うめぇ〜!」

今オリヴィエは、枝豆をほうばりながらビールをジョッキで飲みほし、テレビの阪神X巨人を観戦している。
彼は熱烈阪神ファンだ。

「こら!藪!何やとんじゃ−ファボールなんて投げんな!」

ヤジを飛ばすその姿は、まさにオヤジ……。
現に彼の今のカッコウは、グレートステテコ君にラクダ色の腹巻だった。
肩からは手ぬぐいをかけ、応援に熱が入るとそれは、はちまきと化す。
時折、ボリボリと股を掻く姿が親父くさかった。

 

「私が気になるのは、管理人さんよ。」

ロザリアが少々怪訝な顔つきでいった。

「ああ、クラヴィスさんね。あの人暗いわよね。」
「お宅を訪ねても、いつもドアのチェーンごしに話をするだけなのよね〜。」
「いつもカーテンしまってるし、中、まっ暗みたいだし…。」
「不気味よね〜。」

 

<クラヴィスの正体>
クラヴィスはサンクチュアリ団地の管理人だ。
クラヴィスはいつも部屋に閉じこもっている。
ほとんど外に出たことはない。
彼は部屋である練習をしていたのだ。
彼には夢がある。
そのための練習なのだ。

チャッチャララ、チャッチャララ、チャラランチャララン!ウゥ!

完全防音の室内で軽快なサンバのリズムに乗って、マラカスを振り振り、お尻には大きな飾りをつけて、もう心も体もウゥ〜サンバ!
クラヴィスの夢、それはリオのカーニバルに参加することなのだ。

「ふむ。ここはこの腰の振りだな。」

などといっては、お尻を振り振り練習に励むのだった。

 

「ふっふっふ。人間の観察。これほどすばらしい事ありませんね〜。」

一人部屋の中で数台のテレビに囲まれ、一人の男が盗聴と盗撮をしている。
映し出されているのは、サンクチュアリ団地の人々の部屋の中だ。
サンクチュアリ団地の人々の人間模様をすべて把握する男。その名はルヴァ。
彼は毎日他人の家を覗いては、その様子を日記つけて一人楽しんでいるのだ。

「○月×日
今日もまた、あの4人組主婦が勘違いな人間批評していた。真実を教えてやってもいいが、勘違いして動く様も、また面白いのでそのままにしておこう。」

今日の日記はそう綴られたのだった。

 

END

 

団地シリーズ最新作「団地住人の秘密」いかがでしたでしょうか?
これで、ほとんどすべての人々を敵に回したしのちゃんです。
おこんないでね?ぶりぶり。
今回は旦那達が出てこなかったので、残念がっているかもしれませんね〜?
でもそれを上回る住人の人々なので、しのちゃんとしては満足ですわ〜。
怖いけど、感想よろしく〜!