団地亭主の正体

今日も今日とて、サンクチュアリ団地のすぐ近くのカフェテラスにはお暇な主婦が午後のティータイムを楽しんでいた。
そしていつものメンバー、アンジェリーク、ロザリア、コレット、レイチェルの4人も例外ではない。

 

「ねえ、もうみんな旦那のことを許してあげたの?」

そう言って今日の話題を持ち出したのはレイチェルだった。

「え〜!まあねえ。」

異口同音で答えが返ってくる。
そしてしばらく4人は、大きな溜息とともにそのときの様子を思い出していた。

 

ランディは実業団のサッカー選手。
今日もコートで汗を流していた。

「こら!そこ、もっと速く走れ!ちんたら走ってたら体が鈍るぞ!」

ランディはチームのキャプテンで、今いちばんチームのメンバーから信頼されている。
そんなさわやかスポーツマンのランディに憧れる女子社員(チアリーダー)は多い。

「素敵よねぇ〜ランディ様。あの飛び散る汗がさわやかよねぇ〜。」
「そうよねぇ〜あの笑顔と白い歯が素敵!」

そんな声があちこちから聞こえていた。

(コレットの回想)
「ねえコレット〜!コレットってばぁ〜。」

鍵のかけられた寝室の前でランディは情けない声をあげてドアにしがみついた。
もうかれこれ30分はこうしている。
と、とつぜんドアが開き眉を釣り上げた彼の妻が顔を出した。

「もうランディ!うるさくてねられな……キャーなに?何なの!」
「コレット〜!愛してる愛してる愛してる〜!」

ドア開けてコレットの顔を見た途端、ランディは彼女に抱きつき怒涛のごとくベッドに倒れ込んだ。
泡を食って固まっている彼女に覆いかぶさったままパッパと服を脱ぎ去り、コレットの服も履きとってしまった。

「コレット〜!」
「もう〜これじゃあなし崩し…。」

愛撫を受けながらコレットはフーとため息をついた。

 

オスカーは銀行の外交員。
伊達眼鏡をかけたオスカーは、今日もまた定期や新規の契約を取り付けるため各家庭を回っていた。

「奥さん。どうです。こちらの預金定期にいたしませんか?」
「え〜でも……。」

奥さんがしぶったときは必殺技!
掛けていた伊達眼鏡をおもむろに外し、奥様にずいと寄る。
アップに迫った美麗なオスカーの笑顔にまいらない主婦はいない。

「ねえ奥さんどうです?定期になさいますよね。」
「えっ?はい。させて頂くわ〜!」

こうしてオスカーは外交のほとんどの契約をすべてまとめていた。
そのためにオスカーの契約件数は常に銀行のトップでありつづけている。

(アンジェリークの回想)
「アンジェ。今日もそっちのベッドで寝るつもりなのか?」

寝室で2台のベッドに別れて最近二人は寝ている。
いつもはオスカーのベッドに入って寝ていたのにだ。
アンジェリークはオスカーに背を向けた状態で布団をかぶった。
その様子にオスカーはこっそりベッドを抜け出して、アンジェリークのベッドにもぐりこもうとした。

「オスカー!私あなたとしばらく寝るつもりはないわ!」

そのきつい言葉にオスカーの目に涙が浮かぶ。

「アンジェ〜。いつまで怒っているんだよ。おれは君の可愛らしさをちょっと自慢したかっただけなんだよ。」
「あんな恥ずかしいこと自慢しなくていいの!」
「だって君はほんとうに食べちゃいたいくらい可愛いじゃないか。」
「でもだめなの!」
「アンジェ…君ってなんておいしそうなんだ。」

おもむろにベットサイドのボードからジャムやらバターやらが登場し、オスカーはアンジェリークをひん剥くとお好みの味付けでアンジェリークをいただきはじめた。

「どうしてこうなっちゃうの?」

アンジェリークの溜息が漏れる。

 

ジュリアスはオスカーと同じ銀行の支店長。

「誰だ!この決算書を書いたのは!」
「あっ!はい私です。す・すみません。」
「君は銀行員としての自覚が足らないようだな。」

くどくどとジュリアスの説教が始まると、離れたところで他の行員たちがひそひそ話をはじめた。

「あ〜あ。ドジったよな〜あいつ。当分は開放してもらえないぞ。」
「ジュリアス支店長は完璧主義者だからなぁ。俺も間違えないように気をつけよ〜っと!」

ジュリアスはこの銀行で燦然と輝く完璧な支店長として本店からの覚えもめでたく、支店の中でこの支店の売り上げが1番だった。
(その功績はオスカーの微笑みによるところも多いが…。)

(ロザリアの回想)
「ジュリアス、今度はトイレの掃除よ。」
「あいわかった。」

フリフリの白いお嬢様エプロンを裸に身に付けて、ジュリアスはトイレのブラシを持って便器にかがんでゴシゴシしだした。
後には腕を組んで仁王立ちのボンテージ女王様姿のロザリアがいる。
便器をこすりながらもジュリアスはわくわくしてたまらない。
ちょっとわざと汚れたところを残して見ると、すかさずとがったヒールの蹴りがジュリアスのお尻に突き刺さった。

「こら!残ってでしょ!しっかりおやり!」
「ああ〜!女王様!」

お尻の痛みに陶酔覚えながらうれしそうに頬を染めてジュリアスは便器をこすった。

「もう〜!これじゃあ罰にならないわ。」

ロザリアは一人溜息をついた。

 

エルンストは高級官僚。
今日も、大臣室に赴き眼鏡のずれを片手で直しながら、報告書を読み上げていた。

「ーー以上が今回の調査による報告です。大臣いかがなさいますか?」

エルンストの仕事ぶりにうなずきながら大臣は意見を求めた。

「私のですか?そうですね。今回の調査結果から統計的に判断いたしますと、早急に手を打たれた方がよろしいかと思われます。その方が株式に与える影響も少なく済むと思いますが?」
「本当に君は有能だな。わかった君の言うとおりにしよう。」

彼は将来有望な次官候補なのだ。

(レイチェルの回想)
「エルちゃん!」
「なんでちゅうか?ママ。」

テーブルについて、首からよだれかけを掛けて、キャラクター入りのスプーンとフォークを手に、オムライスをほうばるエルンストに、レイチェルはお皿の端に寄せられたニンジンを指さす。

「残してるわよ!」
「え〜だってぇ〜!」
「だってじゃない!ちゃんと食べなさい!」
「はーいママ。」

苦虫を噛みつぶしたような顔で人参をほうばるエルンストにレイチェルは溜息を付く。

「ママ〜。食べたよ。僕えらい?」
「ハイハイ。エルちゃんお利口ね?」
「わ〜いママに誉められちゃった!」

がっくりと肩を落としたレイチェルは大きな溜息をもうひとつした。

「もうどうにでもして……。」

 

妻たちの溜息が今日もサンクチュアリ団地に漏れている。

 

END

 

団地シリーズ第四弾「団地亭主の正体」はいかがでしたでしょうか?
今回はちょっと長いお話でした。
シリーズと化してしまったこの作品・・・。
これでいいのか・・・?
日々疑問は浮かんでくるんだけど、このネタを考えている時の私は傍から見ると変です。
だって一人でニタニタしてるんだもん。
病気の度合いが深まってる〜!!
やばすぎ〜!!
それではまた、感想のほどをよろしく。